ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

「沼津」初心者はこう楽しんだ!〜秀山祭九月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想


秀山祭昼の部、感想第二弾!

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昼の部ラストの演目は「沼津
「伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)」というお芝居の中の、有名であり見せ場となる一場面です。

前半は気楽な楽しい場面が続き、出演者が客席を歩いたりして盛り上がるのですが、後半になると一転、切ない悲劇が待ち受けます。

中村吉右衛門さん、歌六さん、雀右衛門さんという大好きな方々が作り出す、情に溢れた深みのある舞台に、後半から涙が止まりませんでした。。

多分、筋は理解しきれていないところがあると思います。
それでも胸打たれる、大切な時間を過ごすことができました。

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今月の特別ポスター。十兵衛(右・吉右衛門さん)と平作(左、歌六さん)の名場面。



■初心者でも楽しめるのか?


楽しめると思います。ただ、言葉が少々聞き取りづらいところもあると思うので、ネットなり筋書なりであらかじめ筋を知っておいた方が安心かもしれません。

前半はひたすら気楽に、肩の力を抜いて観られます!
後半、真実が次々明らかになっていくあたりで振り落とされず、それぞれの登場人物の行動の理由を理解できるかというのがカギ。

***

後半に関して言えば、(大いなるネタバレではありますが)以下のことが分かればおおよそ問題なく理解できるかと思います!

十兵衛(吉右衛門さん)と関係が深い人物・沢井股五郎(※今回の芝居には登場しません)が、お米(雀右衛門さん)の夫・志津馬(※芝居には登場しません)の仇。
・現在 股五郎の行方は分かっていない。
平作(歌六さん)は、実は十兵衛の実父。つまりお米は十兵衛の実妹。

=十兵衛と平作・お米父娘は、肉親でありながら仇だった!!


肉親の情をとりたいけれど、股五郎への義理もある十兵衛の苦しみと、
それを分かっていつつ、何とか股五郎の居場所を突き止めたい平作との緊迫したやりとり。

前半のほのぼのとした空気はどこへやら、壮絶なドラマが待っています。


■私はこう見た!ここが好き!


まずは楽しかった前半から。

舞台は沼津。東海道の宿場町なので、結構栄えている様子です。
茶屋の前を、物売りやら、町人やら、飛脚やら、いろんな人が行き交います。
何気ない場面ですが、一気に物語の時代にやってきた気分になれるところ。

ここで忘れてはならないのが、小川綜真くんの初お目見得ですね!
お父さんである中村歌昇さんと、叔父さんに当たる中村種之助さんの演じる夫婦に手を引かれ、上手からとことこ登場して花道に向かいます。

舞台にいる鎌倉の呉服屋・十兵衛中村吉右衛門さん)と、その荷物持ちの安兵衛中村又五郎さん)に声をかけられ、幕見席まで聞こえるお声でご挨拶。

「おがわそうまでございます、どうぞよろしくおねがいいたします」
の最後の「す」あたりで、気持ちはもうパパに抱っこされることに向いているのが非常にかわいらしい…!笑

はい、十兵衛と安兵衛めろめろですね
特にお孫さんの初お目見得とあって、又五郎さんは「目に入れても痛くない」とアドリブを。笑

何年かしたらいろんなお役をやるようになってくるのでしょうね!今からとても楽しみです。お顔が歌昇さんそっくり!

***

さて。
安兵衛を使いに走らせ、一人残った十兵衛のもとに現れる、一人の年老いた雲助(宿場町や街道で荷物持ちや駕籠かきを担った、宿を持たない人たちのことをこう呼ぶようです)

これが、この先の物語を動かしていく平作中村歌六さん)です。

平作の荷物持ちはいい感じにじれったくて笑いました!
すーぐに休むんですよ、天気の話なんぞ持ち出したりしながらさりげなく。笑

で、二人が荷物を持って歩き出したらお楽しみです。
平作と十兵衛、客席を練り歩いてくれます!

私は幕見席からの観劇だったので、残念ながら下界でどんなに楽しいことが起きているのか全く見えなかったのですが、
一階席のざわめきと笑いとがちょっとずつ場所を移動しつつ一周している気配があり、想像で補って楽しみました(豊かな妄想力)
知っていてなおかつ余裕があったら、ぜひとも一階席を取りたいところでしたね…!

ここで、「十兵衛が印籠から出した薬で、平作の足の怪我が瞬殺で治る」という場面があります。

この印籠、何でもないように出てきますが、今後の鍵になりますので覚えていてください。

***

この平作の娘・お米中村雀右衛門さん)に惚れてしまう十兵衛。
流れで二人の住むあばら家におじゃますることに。

このね、お米を口説くセリフがいいんですよ。
直截的に言うのではなくて、「杜若をいい床に生けたい」という表現で婉曲に(本人目の前ですので遠回しでも何でもないですが)伝えるのです。
吉右衛門さんがとても気持ちよくこのセリフをおっしゃるので、何だかほんわかしてしまいました。笑

このあたりの場面、細かいポイントでふふっと気がほぐれる展開が続きます。

***

ところが、床を敷いてそれぞれが眠りにつこうとするあたりから、様子が一変。

お米、こっそりと十兵衛の床に忍び寄り、先ほどの印籠を盗み出そうとします。
驚く十兵衛、激怒する平作。

ここのお米、非常にかわいらしいんです…!
いや、やっていることは本当にやってはいけないことなのですが、必死に印籠を隠しながら、悩み、泣く。
その懸命な姿の、何とも可憐なこと。。

さて、どうしてその印籠を盗もうとしたかと聞かれれば、夫の怪我を治したいからという。
ここから、冒頭で触れた怒涛の展開になっていきます。

お米の夫の正体、それと自分との関係、
平作・お米父娘と自分との関係…

お米が語り、平作が語るうちに、十兵衛はその複雑な関係性に気付いてしまうのです。

二人のために、その仇である股五郎の行方を知らせてやりたい。
一方で股五郎への義理もある。

結局十兵衛は何も言えないまま、それらの事実を二人に知らせるために、いろいろと「忘れ物」をして平作の家を出るのです。

去っていく十兵衛の、花道での「降らねばいいがな」というセリフ
物語の筋とは直接関係のない一言というか、重大な内容を含む一言ではないわけですが、

この重さがすごいんです。

たぶん、十兵衛の胸の内にはものすごくたくさん思うことがある。
でも、そのどれもがこの場では言えないことで。

言いたいこと、言えないこと、ともすれば溢れそうな気持ちが全部、この「降らねばいいがな」のセリフに凝縮されたような凄み

私はこの一言で泣きました。

***

十兵衛が平作の家に置いてきたのは、先ほどの印籠、そして金子。
実はこの印籠には股五郎の紋が入っており、金子を包んだ紙は、平作が幼い十兵衛を養子に出したときの書付でした。

全てを理解した平作、十兵衛を追っていきます。

平作、年老いて体が動かない設定で始まっているのですが、走ったり転んだりで実際の役者さんとしてはかなり動くのではないかと思いました。笑

去っていく十兵衛に追いつく平作。
ここからの二人の場面がまたいいのです。。

お互い、親子だと分かっています。でも立場上、それを明かせない。

平作、本当は息子を抱きしめてやりたいんだろうなぁと。
それでも懸命に自分を抑え、自分が今しなければならないことを最優先にするのです。

待ち受ける、止むに止まれぬ展開。

竹本の「孝行の仕納め」という詞章が刺さります
ここで、竹本も悲痛な声になるのです。

こんなはずじゃなかったんだろうに。本来ならばもっと、しかるべき再会の仕方があったろうに。

降り出した雨に、父親に笠を差しかけながら、股五郎の行先を「九州相良」と叫ぶ十兵衛の心の内。
当然、伝えている相手は平作ではありません。
近くで聞き耳を立てているであろう、お米に聞かせているのです。

平作の命の際に、二人はやっと、実の親子であることをお互いに認めます。
父親の膝にすがる十兵衛が切なくて切なくて。

立ち去りかける十兵衛ですが、振り返り、手に持った笠を取り落とし、今まさに息を引き取った父に対して手を合わせます。

この笠の落とし方が絶妙なんです。

「手を合わせたいから笠を置く必要がある」という物理的な理由もあると思います。
しかし、そんなのじゃ説明できない、もっとどうしようもない心の動きが見えるんです。
理由などなく、ふっと笠を取り落としてしまったという感じ。

本当に、最後の最後の細部まで、しみじみとぐっとくる舞台でした。


■まとめ


「完璧に筋は理解しきらなかったかもしれないけれど、どうにも泣けて仕方ない」という舞台がときどきあります。
これがまさしくそのパターンでした。

濃密で、何気ないセリフ一つ一つにずしんと重みがあって、全部そうなるとしか思えないような説得力で。
舞台の間近で観ていると錯覚するくらい引き込まれて、のめり込んで観ました。


名前だけは以前から知っていた「沼津」。
私が知っているのだから、有名な演目なのでしょう。
そんな大きな演目を初めて観るのに、この配役で観ることができて幸せです。



「お祭り」初心者はこう楽しんだ!〜秀山祭九月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想


さぁ、始まりましたよ!今月の歌舞伎座は秀山祭!!

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今月一発目の観劇は、「お祭り。梅玉さんの鳶頭が観たくて観たくて。

鳶頭に若い者が絡み、芸者が絡み、途中に太鼓の演奏が入り、曲も明るく楽しく、ただただいい気分で観られる踊りです!

13:15〜13:33と20分弱の観やすさに加え、幕見席なら500円でチケットを入手できるという手軽さ!

「筋が難しそうで…」となかなか歌舞伎観劇への一歩が踏み出せない方でも、あまり考えずに雰囲気を楽しめる一幕なのではないかと思います。

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今月の絵看板。鳶頭(左下)と芸者(右上)の、すっきりした一枚です。




■初心者でも楽しめるのか?


うっかりここに書くべき内容を最初に書いてしまいましたね…

楽しめると思います!
それほど長くない踊りですし、曲も最初から華やかで明るく、いろんな場面があるので飽きにくいのではないでしょうか。

何より20分で、500円で観られるというのがポイントで、特段あらすじを気にする必要もないので、だいぶハードルは低いと思います


■私はこう見た!ここが好き!


やっぱり中村梅玉さん鳶頭がすっきりとしていてかっこよかったです!
 
この踊りの最初の好きなところが、鳶頭が出てきてじきにあるセリフ。

大向う(客席から舞台へ掛け声をかける方たちのこと、この記事参照)からかかる「待ってました!」の掛け声に、鳶頭が「待っていたとはありがてぇ」と答えるんですが、
このやりとりが何でもなくて、本当に言われたから答える、という感じの自然さで、さらっとしていて素敵でした!
「おぅ、待っていたとは…」とおっしゃっていたように聞こえて、この「おぅ」のところにその自然さがあったのかな、と思います。

「待っていたとはありがてぇ」というセリフではありますが、きっと待たれ慣れているんだろうなぁという余裕を感じました。笑

梅玉さんの鳶頭の粋な感じはちょっとしたところに表れます。

例えば、笠を置くところ。
普通に置いているわけなのですが、ちょっと手先にさばさばした感じがあって、絶妙だなぁと思いました。

それから着物を直すところ。
こういうのも、役によって仕草が変わると思うのです。
今回は鳶頭なので、江戸っ子らしく(江戸っ子がどんなだかいまいち分かっていませんが)ちょいっと軽く直していらっしゃいました

お扇子をざらっと開くところなんかも、軽くて小気味良くて素敵!

そんな鯔背(いなせ)な鳶頭に絡むのは、二人の芸者お駒中村魁春さん)とお萬中村梅枝さん)。

お駒とは馴染みが深そうな感じがありました。
実のご兄弟でいらっしゃいますもんね。笑
魁春さんの、ちょっと気の強そうな雰囲気のある女方が好きです。

一方梅枝さんの方は、なめらかで柔らかい雰囲気の芸者
守ってあげたくなってしまう系女子だなぁと思いました。

梅枝さん・梅玉さんのお二人で踊っているところの歌詞で、「庄屋ぽんぽん狐拳〜♪」というところ、リズムが楽しくて好きです。笑
手も狐の形にするんですよ!ちょっとした楽しいポイント。

その後には鳶頭が太鼓を叩くところがあったりして、清元も調子よく、明るい気分になれる展開です。

最後にはぞろぞろと出てきた若い者たちと鳶頭の絡みになるのですが、華やかですねぇ!
鳶頭を中心に、お祭りの道具を持った若い者たちが放射状に広がって決まる舞台の鮮やかさ

最後まで見せ場が詰まっていて、今月一発目はとても幸せな時間となりました


■まとめ


今月の物知らずシリーズ(こちら)に「観るたびに演出が違う気がする」という旨のことを書いたのですが、
筋書を観ると「この度は、ここへ婀娜な芸者が絡んでの踊りとなります」(p.13)とあるので、やはり演出に大きな決まりはないようです。
上演記録(p.66〜68)を見てみても、鳶頭だけだったり、芸者だけだったり、絡みに鳶の者が出たり手古舞が出たり、かなり多様

いろいろな演出を楽しめるのも、踊りのいいところだと思っています。

芸者二人や鳶頭が客席の上手、下手、真ん中にご挨拶してくれる拍手ポイントも何度かあって、一緒になって盛り上がって楽しめる演目だなぁと思います。
やっぱり踊りが好きだな、という気持ちを新たにした一幕でした!



物知らずが行く歌舞伎#13〜秀山祭九月大歌舞伎(歌舞伎座)今の知識と演目選び

この企画は、知識が足りないゆえに
歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方
の背中を押すべく、
歌舞伎歴1年半の初心者が何を知っていて、何を目的に、
どのチケットを買うのか
をさらけ出す企画です。
初心者の無知っぷりと、この1年半でちょっと学んだことを、
背伸びせず、恥ずかしがらずにお伝えできればと思っています。


あぁもうだめだ、私はこのコーナー存続の意義を考えるべきときにあるのかもしれない。。
始まっちゃってますよ!秀山祭!!

もともとチケットを買う前に、歌舞伎に親しみがない方の背中を押すことができればと思って始めた企画だったのに。
始まっちゃってますよ!秀山祭!!(2回目)


気を取り直して。続けることに意味があると信じて。自己満足には目をつぶって。

9月です。秀山祭の季節です。
「秀山祭」とはなんぞや、というところについては、最後に改めて触れますね。

さて、今回は楽しみな演目、配役が揃いました!!

個人的にとても好きな吉右衛門さん、歌六さんに加え、歌昇さんのご子息・綜真くんの初お目見えがあり、梅玉さんと魁春さんに梅枝さんの加わる踊りがあり、仁左衛門さんの弁慶があり…

初めて歌舞伎を観る方でも、「歌舞伎を観たぞー!」という満足感が得られるに違いないボリューム
ではないかと思っています。 

全演目の見どころなどは、すでに公式サイトに掲載されていますのでそちらをご参照いただき、
「歌舞伎公式総合サイト 歌舞伎美人」秀山祭九月大歌舞伎の情報はこちら)(当方三度にわたり完全なる出遅れ)
ここでは「歌舞伎初心者、こんな感じの予備知識で観に行きますよ!」というのを晒します!

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■歌舞伎座 秀山祭九月大歌舞伎の演目は?


九月の歌舞伎座。
演目は以下の通りです。

【昼の部】
一.極付幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)
 「公平法問諍」
二.お祭り(おまつり)
三世中村歌六 百回忌追善狂言
伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)

三.沼津(ぬまづ)
【夜の部】
菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
一.寺子屋(てらこや)
二.歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
三世中村歌六 百回忌追善狂言
三.秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)



演目の名前としては、歌舞伎によくある「そんなの読めるわけなかろう」というのは今回はありませんね。

ただ「極付幡随長兵衛」「伊賀越道中双六」と漢字が並ぶと、それだけでちょっと難しく見えてしまうので悲しいところ…。

文字面がアレでも、観に行ってしまえば問題なく伝わるはずなので、どうかこの漢字の壁に跳ね返されないでほしい!
正直、題名はそんなに意識せずとも楽しめます


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


【昼の部】

「お祭り」は、これは私の知っているもので合っているのでしょうか…。
それだとしたら、この記事でも触れた踊りです。
ちょこちょこ舞踊会でかかりますが、観るたびに演出が違うような…?
 
「沼津」は、全く記憶がありませんが観ているはずなんですよね、国立劇場で『伊賀越道中双六』の通し、観ているはず…。

と思って調べたら、このときは「沼津」は割愛したようでした。笑 良かったーあっけなく忘れちゃったのかと思いました。


あとは演目としては知らないのです。。

【夜の部】

「寺子屋」は、歌舞伎でも文楽でも観ているはずです。
三大浄瑠璃の一つである『菅原伝授手習鑑』の中でも、一番有名な場面だと思います。

「勧進帳」もよく上演されますね…と言って実はまだ生では一度も観ていないのですが。笑
流れは何となく分かります。

あとは初めましての演目でした。


*現時点で知っていることは?


◇極付幡随長兵衛


すみません、演目としては全く知らないのですが、
幡随長兵衛ってあの「鈴ヶ森」(この記事)の…?

というだけです。
よくこれだけで「知っていること」にしたな、というレベルの薄さですが、本当にちょっとでも耳馴染みがあるだけで、初心者は安心感が全然違うんですよ!笑

◇お祭り

先述の通り、私の知っている演目か甚だ自信がないのですが…

今まで観ているのは、鳶の者を中心として、周りが絡んで華やかに、粋に踊るもの
(主役が芸者のものもあります。そうすると絡みも変わるので、何度か観ているはずですが正しい形が分からない…

楽しい踊りであることには違いないかと!
大向うとの掛け合いもある、はず。笑

◇寺子屋

「忠義のために我が子の命を犠牲にする」という、浄瑠璃に非常によく見られるお話の流れです。

ものすごくざっくり書きますと、

舞台は藤原時平(しへい)vs菅丞相(かんしょうじょう)という時代にあります。
時平側は菅丞相の息子・菅秀才(かんしゅうさい)の命を狙っており、これを避けるために菅秀才は田舎の寺子屋に匿われています。(※この辺りの設定は、特に芝居の中では触れられないはず。)

しかし実はこの居場所がすでにバレており、寺子屋を営む武部源蔵(たけべげんぞう)夫婦は、菅秀才の首を差し出すように命令されているのです。

何としても菅秀才の命は守らねばならない源蔵。

折しも今日、この寺子屋に新たに入門してきた男の子がいました。
ちょっとこの辺りでは見ないような、品のある顔立ちをしています。

そうです。
「菅秀才」と偽ってもおかしくないような雰囲気をたたえているわけです。
 
源蔵夫婦、苦渋の決断でこの子を身代わりにして、首を差し出すのです。

首実検にやってきたのは、時平に仕える松王丸。
差し出された首を見て(この「首実検」が見せ場!!)、子細ありげな様子を見せながらも「相違ない」と、この首が菅秀才の首であることを認めます。

しかし、歌舞伎において首が本物であることなんてほぼなく。笑

さてこの首の正体とは、松王丸の隠している真実とは、というところに大きなドラマがあります。

最後の「いろは送り」と呼ばれる部分が名文なので、ぜひ浄瑠璃にも耳を傾けてみてください。
文楽公演でここの床本(台本)を手に入れたときは、本当に嬉しかった。 

◇勧進帳

この記事に書いてあることくらいから知識は特に増えておりません。笑


■観てみたい演目は?


「沼津」と「寺子屋」は絶対に外したくない!と思っています。

吉右衛門さん歌六さん、そして菅秀才には5月に襲名したばかりの丑之助くん、「沼津」では綜真くんの初お目見え…他にも好きな役者さんが並ぶという嬉しさに加え、竹本(語り)は先日人間国宝になられた竹本葵太夫さん
目も耳もどっぷり味わえる一幕になるに違いありません。

それから「お祭り」、これは年始に観た「勢獅子」(この記事)で、梅玉さんの鳶頭の佇まいがとてもかっこよかったので、また観たいのです。

「勧進帳」は仁左衛門さんの弁慶が外せない。きっと思慮深くて抜群にかっこいい弁慶なのだろうなぁと想像しております。

最近いろんなお芝居で「いいなぁ」と思っている歌六さんが主演の「松浦の太鼓」も、ぜひ観ておきたいところです。


■どのチケットを買う?


今月、できることなら昼夜どちらも買いたかった!3階でいいので…

ですが、スケジュールと金銭面の都合で、今回も幕見席からの観劇になりそうです。

「勧進帳」「松浦の太鼓」あたりは会社帰りに行けるかしら?と踏んでおります。


■まとめ


さて、最初に触れなかった「秀山祭」についてですが、
「秀山」というのは、今の吉右衛門さんのおじいさまに当たる、初代吉右衛門さんの俳名です。

この初代吉右衛門さんの生誕120年を記念して、2006年9月に最初の「秀山祭」が催されたそうです。
以降、9月の興行にはこの名前がついている模様。

私も詳しくは知らなかったし、最初は特に意識しなくてもいいと思います。
言われたところで「はぁ」という感じではないかと。

でも、これから一年のうちに何度か歌舞伎を観に行くつもりであれば、知っていると楽しみが増えると思います。
去年初めて「秀山祭」という言葉を知った私ですが、早くも今年は「吉右衛門さんの月が来るぞー!」というわくわくでいっぱいでした!

***

思えば去年の秀山祭は、今よりももっと何も知らなかったんだなぁとしみじみ。
当時の苦悩がブログにしたためられています。笑

いや、今でも分からないことだらけで、悩みに悩むんですけどね!

振り返って嬉しいのは、好きな役者さんが増えたこと。
「この役者さんを観に行きたい!」という楽しみが増えたこと。

それを別名「沼」とも呼ぶのでしょうが。笑

何はともあれ、大好きな役者さんがたくさんご出演の9月、今からわくわくしております。


【関連記事】
 「お祭り」初心者はこう楽しんだ!〜秀山祭九月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想
「沼津」初心者はこう楽しんだ!〜秀山祭九月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想


プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇2年目、毎月何度か劇場に通う日々。
◆着物好きの友人の影響で、着物でのお出かけが増えてきた今日この頃。

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