ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる②梅にも春


日本舞踊を始めてから習った曲を、習った順に振り返ってみる企画の第2回です。

第1回はこちら▶︎ 【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる①初稽古〜京の四季

始めてから確か2ヶ月くらい。
2曲目に教えていただいたのは、「梅にも春」という、こちらも3分ほどの曲です。

「京の四季」もそうだったのですが、この曲も畳1枚の中で踊れます。
基本的には踊り始めた位置で踊り終わる日本舞踊。
今思い返せば、元の位置から大きく動かない踊りから始めることで、その基本を知らず知らずのうちに教えていただいていたのではないかな、と思います。

※ひとつお断りしておくと、流派によって、どころでなく同じ流派でも先生によって、振付は全く異なります。あくまで、私が習った振りでのお話です。
 
***

これもいろんな風物が出てきて、お扇子も大活躍で、ますます日本舞踊がおもしろくなった一曲でした。


たとえば裾をちょっと押さえて、袂を帯に挟んで、井戸の水を汲む振り。

生活の中で着物を汚さないように、あるいは動きやすいようにするにはこうやっていたんだ、というのが分かる振りですよね。
ちょっとしたこの仕草がまた、なんだかしっとりお上品に感じられたりするのです。

井戸だって触ったことがあるのは人生に2回ほど。
実際に井戸が見えるように踊るのは、まだ2曲目では難しかった
でも、そう見せようと工夫するのがまたおもしろい!


それから、煙管に草を詰めて、火をつけて吸ったり、笠をかぶったり、駕籠に揺られたり…
浮世絵で見るような光景は、こんな風に動いていたのかな、と。

今まで知らなかった昔の暮らしの一片が、踊りを通して立ち上がってくるのです。

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踊りの面で言えば、この曲を始める少し前に初めて舞踊の公演を観に行き、「自分がやっているのはこういうことなのか!」というのがほんの少しだけ見えたのは大きかったと思います。

「首を振る」って、「おすべり」って、「踏む」ってこういうことか、と。

そんなわけで、この曲あたりから首を意識的に動かすようになりました。
まだちゃんと触れるレベルではなく、あとから映像を見直すとただひたすらにぐにゃんぐにゃんです。
いいんです。ここからです。笑

▶︎【日本舞踊】首振り三年?
 
***

「踊りって楽しい!」と思い始めたのは、この曲からだったと思います。
もちろん1曲目も楽しかったに違いないのですが、まだまだ頭の中が未分化で、自分が何をしているのかが掴みきれていなかった。
それを、「踊り」として認識して踊れるようになったのはここからだった気がします。

教えていただいた曲はどれもこれも大好きだし思い入れがありますが、その意味において「梅にも春」は、とても大切で思い出深い曲です。


「石切梶原」初心者はこう楽しんだ!〜六月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想


6月の歌舞伎座、昼の部二幕目「梶原平三誉石切(かじわらへいぞう ほまれのいしきり)。通称「石切梶原(いしきりかじわら)です。

こういう時代物、台詞が聞き取りにくかったり、展開が現代から考えるとちょっとどうかと思うところがあったりして人に勧めるのは難しいのですが、私はいかにも歌舞伎らしくて好きなのです。

中村吉右衛門さん梶原景時。たまらなく素敵で、ため息ものでした。
セリフの心地よさに、聴いていて何度もにんまりしてしまいました。怪しい。 

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今月の絵看板。右端の石が切られてますかね…?ガードレールの写り込みが激しい。




■初心者でも楽しめるのか?


楽しめます!が、
軽くでいいので予習しておくと良いと思います。
私はとても好きな一幕でしたが、事前に筋書を読んであらすじを頭に入れておきました。

耳慣れぬ言葉遣い、しゃべり方に加え、
梶原が二股武士(外面は平家、心は源氏)であること、
本筋である刀の件に至るまでに少し時間がかかることが、
もしかすると難しく感じられてしまうかも。。

でも、個人的にはこういう「わきまえた武士」が非常に好きなので(笑)、そしてまた演じる吉右衛門さんが非常にかっこいいので、
「分かりにくいかも」とか書いてしまいましたがどうか厭わないでいただきたい…! 

***

あらかじめ、ざっと以下のことが分かっていると良いかもしれません↓

【設定】
・最初に出ている兄弟(白塗りと赤っ面の二人)は、何かにつけて梶原と折り合いが悪い。
・特に赤っ面の方(俣野、弟の方)は見た通り嫌なやつ。
【本題】
・途中で出てくる親娘は、娘の婿のために三百両がどうしても必要で、差し迫っている。
・お金を作るために、兄弟の兄の方(大庭)に刀を売ろうとする。
・刀が三百両に値するものなのか、梶原が試し斬り(「二つ胴(ふたつどう)」という方法)をして確かめる。
・この「二つ胴」で誰を斬るか、というところにドラマが生まれる。


二つ胴は、「刀の斬れ味を試すために人間をふたり重ねて胴斬りする」(筋書p.17)という何とも荒っぽい刀の鑑定方法です。

切られるのは罪人なのですが、この場面では罪人が一人しかおらず…という辺りからが盛り上がってくるところです。


■私はこう見た!ここが好き!


幕が開くと、大好き浅葱幕!

幕が振り落とされて舞台一杯に登場人物たちが並んでいるのは、いつもながら浅葱幕効果で壮観です。

背景は鶴岡八幡宮。
遠近法がすごいです!書割(かきわり、「建物・風景などを描いた張物」(『歌舞伎事典』昭和58年,平凡社))を見るのも楽しみの一つ。

***

初っ端に出ているのは、大庭三郎景親中村又五郎さん)、俣野五郎景久中村歌昇さん)兄弟。
兄弟と言えど、又五郎さんと歌昇さんは親子でいらっしゃいます。歌舞伎はそこも面白い。

大庭は白塗りで、落ち着いていて立派な感じ。
俣野は赤っ面で、しゃべり方も若く荒っぽく、粗野な感じ。
こうやってはっきりキャラクターが分かれていると、それぞれの雰囲気を楽しみやすいですね!

梶原平三景時吉右衛門さん)は花道からの登場です。
黒字に金の衣装がすでにかっこいい!

兄弟と梶原は折り合いがよくないので、俣野が何かと突っかかりますが、余裕綽々で返す梶原、さすが気分がいいです。
俣野もいかにもで、分かりやすく「嫌なやつだなー!」と思えるのがいい!笑


さぁ、花道から六郎太夫中村歌六さん)とその娘・中村米吉さん)が登場(こちらも実の親子による父娘役)
この二人が持ち込んでくる刀が、いよいよ物語の発端になります。
娘を振り返る六郎太夫の温かみと、刀を抱きかかえるように持つ梢のかわいらしさ

三百両でこの刀を買い取ってほしい、と頼まれる大庭。
梶原が刀の目利きをするのですが、この一連の流れが良いです!

刀を検めるのにきちんと手順を踏もうとする梶原に、自分などの持ってきた刀なのでそこまでしなくても…と小さくなる六郎太夫。
しかし、梶原は武士としての刀への礼儀として、手水をして、懐紙をくわえ、じっくりと刀を検めるのです。

この梶原のセリフ、しっかり覚えていないのですがかっこよかった。
そして「鈴ヶ森」でも思ったのですが、無言のうちにじっくりと刀を見極める様子、形として非常に絵になるというか、美しいんですよね。目の表情もいい。ずっと見ていたい。。
▶︎「御存鈴ヶ森」観てきました!〜四月大歌舞伎(歌舞伎座)昼の部 初心者の感想

で、刀を見極めた後の「見事、天晴れ、稀代の剣」から始まる梶原のセリフ。
これはもう、聴いているこちらも心が晴れるような気持ち良さです。


せっかく梶原が名刀と認めたにも関わらず、突っかかってくるのはやっぱり赤っ面のアイツ。そうです、俣野です。笑
実際に斬ってみないと分からない、と「二つ胴」(先述)を提案するのです。梶原の目利きの意味!!

ここなんですが、竹本(舞台上手の語り)が俣野のセリフの前、ちょっと早口になっていました。
他にも梢のところはちょっと柔らかい語り方になっていたりして、語りにキャラが出るんだなぁと再認識。
竹本かっこいいですよね…!!

さて、二つ胴といっても、死罪に当たる罪人は剣菱呑助中村吉之丞さん)ただ一人。
試せないので今日のところは引き上げるように大庭に言われた六郎太夫は、以前二つ胴で試し斬りをしたときの折紙(鑑定書)が家にあると言い、梢に取りに行かせます。

娘をこの場から離れさせる六郎太夫のセリフが、後から思い返すとより一層刺さる
折紙はお仏壇の下の引き出しにあるから、ついでにお仏壇にお供えをしておいて、と何気なく伝え、「遅うなっても大事ないぞ」「怪我せまいぞ」と娘を見送るのです。
こういうところの歌六さんの温かみが好きなんです。。

この流れで娘を一人行かせ、仏壇のことを言い置く。
嫌な予感です。

案の定、六郎太夫は、二つ胴の二人目に自らがなると言い出します。
慌てる周囲。しかしそこまでして、六郎太夫は娘のために、三百両をこしらえてやりたいのです。

ここで竹本、「大庭は一途に刀の欲しさ」と聞こえてきます。
そうか、大庭は悪気があるわけではなく、一途に刀が欲しいんですね。
そのためなら、と六郎太夫の提案を飲んでしまうわけです。
うーむ。大庭、憎めない、けど、視野が狭い。。

科人である呑助にも、優しく語りかける六郎太夫。どこまでも温かい。


この罪人である剣菱呑助ですが、名前の通り飲兵衛でして、この人の長ゼリフにはお酒の名前がたくさん出てきます
私はあまりお酒に詳しくないのですが、詳しい方が聞いたらきっと「おっ!」となるに違いない。笑


そうこうしているうちにヤツが痺れを切らしますよ。そうです、俣野です。(2回目)

ここ!個人的に大変好きなところです!!

自ら試し斬りをしようとする俣野を「無礼者め!」と止める梶原の一連のセリフのかっこよさたるや!!!もう何か何というか、これぞ!という感じです。
それにたじたじとしながらも、意地のように一歩踏み出して刀を梶原に渡す俣野の、ピンと張った勢いと迫力もとっても良いです!!!

いよいよ試し斬りのときがやってきます。
六郎の様子を語る竹本、「目元にほろりと一滴 わつと泣くよりいぢらしく」と聞こえてきて、またその様子を見た梶原の何とも言えない表情も切なくて。

折悪しく(いや、芝居的には最高のタイミングで)梢が戻ってきます。
事の流れを理解して、動転する梢。
しかし必死の抵抗むなしく、足軽に肘鉄砲を喰らって気を失ってしまいます。


大変に細かいところなんですが、梢、倒れるときに頭を床につけないんですよ。。
頭(鬘)を壊さないように、ということですよね。
鬘は結構重さがあると思うのに、頭を浮かせたまま、自然に倒れているように見せるってすごいことだなぁと思います。
気付かないだけで、こういう少しずつのすごさの結晶なんだろうなぁ。


この場面、梶原の頭の中には考えがあるわけです。
結局、この刀は一人目は真っ二つに斬りますが、二人目の縄を切ったところで止まります。

六郎太夫は斬られなかった。
「二つ胴」としては失敗です。

細かいとこですが、二つ胴の前に水で清めた刀をざっと振る梶原、かっこいいので注目です。笑

粗悪品を摑まされるところだった、と帰っていく大庭・俣野兄弟。俣野、帰り際まで嫌なやつー!笑

しかし梶原の表情をご覧あれ。
晴れ晴れとした、温かい顔をしているのです。到底失敗とは思えない。

それもそのはず、梶原はもちろんわざと失敗したのです。
父娘が源氏方であるのを、刀の銘から知っていたこと。そして自らも、平家方についてはいるが、心の中は源氏方であること。
この辺の事情を説明する梶原のセリフにまた聞き惚れるのですよ。。

で、ここへきてやっと石切なのですが、
石ってそれ切るの?!という。笑

なんと神社の手水鉢を真っ二つに切るのです。

いや、すごいけれども!確かに名刀だけれども!!
なんか罰当たりそう。。笑

何はともあれ、名刀に間違いなしというわけで、梶原がこの刀を三百両で買い取ることを約し、三人は梶原の屋敷へ向かうのでした。

最後、幕が引かれてからもしばらくお芝居が続きます。
こういうの、何だかちょっと長く楽しめた気がして好きなんです。単純。笑


■まとめ


はぁ、、何とも濃厚な舞台でした。味わいました。
又五郎さん大庭の貫禄、歌昇さん俣野の勢い、歌六さん六郎太夫の温かみ、米吉さん梢の可憐さ、
そして何と言っても吉右衛門さん梶原の圧倒的な大きさ。かっこよさ。気持ちのよさ。

加えて、歌舞伎らしい、現代から見たらとんでもない演出がいろいろ楽しめるのも嬉しいところです。
二つ胴の場面に使われる、ブラックジョークのような小道具。
ばっくり割れる(のに中の水には特に支障がない)手水鉢。

それから、先述した梶原と俣野との二人できまるところとか、梶原の刀の検分とか、そういう絵として記憶に残しておきたいような場面もあって。

歌舞伎を観たー!という感じの充実の一幕でした。

今月は月の前半に昼の部を観られたので、もう一回くらい行けるといいな。
昼の部は仕事帰りに行けないので、一度目は早めに観に行っておかないと、「もう一回観たい!」と思ったときに手遅れになるのだと最近やっと学びました。笑

 

【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる①初稽古〜京の四季


いえ、まだ始めてそんなに経ったわけでもないのでアレなんですが、
日本舞踊を始めてから習った曲を、習った順に振り返ってみる企画です。
(どうしても流派が特定されてしまいそうなものは省きます。笑 ) 

今のお稽古場に来る前の、大学の日舞サークル時代に教えていただいた曲。 
踊りに出会い、どんどん面白くなって、踊りが好きになっていく過程を綴ってみようかなと。

第1回は、初めてのお稽古のことと、最初に習った「京の四季」の思い出です。

※ひとつお断りしておくと、流派によって、どころでなく同じ流派でも先生によって、振付は全く異なります。あくまで、私が習った振りでのお話です。

最初のお稽古


「浴衣を着てみる」というところからのスタートでした。
先輩に教えてもらいながらやっとこさ帯を結び終わるまでに、20分くらいはかかっていたはず。

先生へのご挨拶の仕方を先輩に教えていただき、いざお稽古開始です。

まずは和服で歩いてみるところから。
先生が適当な曲を流しながら、内股、摺り足で歩いてみます。

幼い頃、週2だか3だかでクラシックバレエに通っていた身としては、この「内股で踊る」というのにとっても違和感があるんですよね。

摺り足自体は空手をかじった経験から何となく分かる気でいましたが、それも足袋を履いて浴衣でやると全く違うもので、これだけでも「分からないところに来たぞ!」という感じ。笑

でも何だか楽しくて、聞き取れないなりに曲も華やかで、早く踊ってみたくて仕方なくなったのでした。

残念ながら初回のお稽古はここで時間切れ。
先輩に浴衣のたたみ方を教えていただき、やっとたたんだ浴衣を全部ばさっと広げられて「もう一回やってみて」と愛のムチをいただいて帰りました。笑 


一曲目:京の四季


さて、念願の一曲目の踊りのお稽古です。

私のいたサークルでは、初めての曲は大体これ。
題名通り京都の春夏秋冬の風物を詠み込んだ唄なのですが、春と夏だけ抜粋してやりました。
おそらく、初めてだと全て通すのは負担が大きいのです。 春と夏だけなら、3分弱くらいのはず。

いやぁ、それでももうなかば体操でしたよね。笑

何せ知っている動きが何もないので、何を目指せばいいのか分からないんです。曲も聞き取れないしこの記事。 

でも、とても興味深かった

山や桜を眺める振り、酔っぱらう振りなんかは、演劇的な要素がとても大きくて、ただ音楽に合わせて身体を動かすだけではない楽しみがありました。

それからお扇子でのあおぎ方、今まで手持ちの扇子であおいでたのは男のあおぎ方だったんだ!とか。
(普段、親指を外側に持ってあおいでいる方が多いと思うのですが、女の踊りであおぐときは親指は身体側、残りの指が正面にそろって見えるようにお扇子を持ってあおぎます)
 
武士のことを「二本差し」というのも、この曲で初めて知りました。
「二本差し」という歌詞のところで、お扇子を刀に見立てて腰の横で左手で持ち、右手はもう一本の刀を握っているように見せます。
お扇子が刀になるのも、単純かもしれませんがちょっと予想外で面白く、また「二本差し」という言葉に出会ったのも興味深かった。

とにかく、知らないことだらけで発見の喜びが止まらなかったのです。

純粋に踊ることがもともと好きだったのもありますが、ただ踊るだけではない要素が多くて、これは楽しいぞ、と思いました。 


で、

私この曲、覚えきれないまま終わった気がするんですよね。笑

初めの曲だからなのか何なのか、最後まで先生が横か前で一緒に踊ってくださっていたので、何となくそれを盗み見しつつ雰囲気で乗り切っていたのですが、
なんとか最後まで踊りきった私を見て先生が誤解してしまい、「なかなかいいペースで覚えましたね(^^)」と次の曲へ。

いや、先生、

覚えてないんです!!

***

これが一曲目。2ヶ月くらいかかったのかしら。定かでありませんが。。

何にせよ、「日本舞踊って楽しい!」と思った背景には、江戸の文化や生活の一片を知ることができる、という点だったり、思った以上に演劇的である、というところだったり、
踊りだけではない側面もとても大きかったのではないかしら?と。

新しいことを早く知りたくて、お稽古の日を心待ちにする生活が、こうして始まったのでした。


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プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇2年目、毎月何度か劇場に通う日々。
◆着物好きの友人の影響で、着物でのお出かけが増えてきた今日この頃。

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