ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

イヤホンガイドと筋書、どっちがいいの?歌舞伎歴1年の初心者が比較してみた

今更ですが、
イヤホンガイドデビューしました!笑

ずっと筋書を買っていたので、イヤホンガイドなしでも問題なく理解できていたのですが、今月は回数行かないこともあり、イヤホンガイドを試すにはうってつけだったのです。

どちらも使ってみて、それぞれの良し悪しが分かり、自分なりに「こちらが好き」というのが掴めたので記事にしてみました。




1.概要と価格


■イヤホンガイドとは


【価格】
利用料500円+保証金1,000円 計1,500円
※保証金1,000円は利用後に返金されるので、実質500円です。

その名のとおりイヤホンのついた小さな端末で、
舞台の進行に合わせて見どころや配役を同時解説してくれるものです。
台詞の大意を、適切なタイミングで挟んでくれます。

イヤホンは片耳だけで、ちゃんと舞台の音も聞こえますのでご安心を!
 
ちなみに開演前から、あらすじや物語の背景、舞台となる場所、モデルとなった人物などの解説が始まっているので、要チェックです。

■筋書とは


【価格】
劇場、公演にもよりますが1,000円前後〜1,500円くらいです。 

「筋書」とは、いわゆる公演プログラムのこと。
 
詳細なあらすじや細かな配役、見どころに加え、著名人によるエッセイや歌舞伎にまつわる方のお話、江戸文化のコラム、出演俳優のコメントなど、読み物としても楽しめるボリューム感です。

サイズはB5が主ですが、まれにA4の場合があります(以前観た新春浅草歌舞伎はA4でした)。 



2.メリットとデメリット


■イヤホンガイドのメリット


時間をかけて予習をする手間なしに、あらすじを理解しながら観劇することができます。

また、主役を見ていてうっかり見逃しがちな脇役の動きに注目させてくれたり、衣装の柄や細かな所作などを解説してくれたりするのは同時解説ならでは。

初めての観劇でも隅々まで楽しめる工夫がいっぱいです!
 

■イヤホンガイドのデメリット


音楽や舞台の空気感を全力で楽しみたい方は、少々欲求不満かもしれません。
 
役者さんの台詞に極力かからないようにしているためか、どうしても音楽(語り)のときに解説が入ってしまいます
また、柝が鳴って幕が開いて「いよいよ始まるぞ!」というときにも耳元で解説が聞こえているので、あのわくわく感がややそがれてしまう気がしました。 
 
当たり前といえば当たり前ですが、片耳がずっとイヤホンなので、音を100%楽しみきれない感じはありました


■筋書のメリット


あらかじめ読んでおけば、あとは舞台に集中して楽しめます。
 
また、イヤホンガイドでは解説しきれない細かい配役が書いてあるので、気になった役がどの役者さんだったのかを見直すことができます

見直すという点で言えば、舞台を見ただけで理解しきれなかったことを再確認できるのも便利なところ。
 
読み物としても非常に情報量が多く、公演が終わった後も読み返すことができるのも、筋書の楽しみの一つです。

■筋書のデメリット


大前提として、そもそも読むのに時間と頭を使います
登場人物が多かったり、話の筋が複雑だったりすると、一読しただけでは分かりにくいこともあります。

また、上演中に舞台が暗くなってしまうと手元が確認できないため、舞台と並行して内容を確認するにはやや不便かもしれません。

さらに、筋書は場所をとります。観劇当日には荷物になりますし、毎月通って買い溜めていくと片付けも厄介です。


3.私が選んだのは「筋書」でした


これだけデメリットの多い筋書ですが、
やっぱり私は筋書派だということに気付きました!笑

というのも、私は何よりも舞台全体の音と空気をまるごと楽しみたいという思いが強く、そうなると片耳が常にガイド、となるとほんのちょっと感興をそがれてしまうのです…

また、家に帰って読み直せるというのもポイント。
何度も歌舞伎を見に行くうちに、「あのときのあの役はどなただったんだろう」「あの場面ってどういう流れだったかな?」と振り返ることが多くなりました。
そのときに手元に残るものがあると、すぐに調べられて非常に便利なのです。
文楽の場合は筋書を買うと床本(台本のようなもの)がついてくるので、読み返しながら再び感動に浸ることができます。 

場所は取りますが、筋書が好きです。 


4.まとめ


私は筋書に落ち着きましたが、一緒に行った友人(歌舞伎2回目)は「イヤホンガイドの方が分かりやすかった」とのことで、好みやニーズは本当に人それぞれだと思います。

私とてイヤホンガイドが面白かったのはもちろんのことで、同時解説でなければ気付けないことや、筋書では読み落としてしまうであろう豆知識に出会うことができました。

いずれにせよ、初心者の観劇にはどちらもとてもためになるし、より楽しむためには重要なアイテムです。
ぜひ活用して、観劇をより一層充実したものにしましょう!!!
 

歌舞伎座座席レビュー【2階席後方・右側 編】

実際に座ってみた歌舞伎座の座席を
場所ごとにレビューしてみよう!という企画です。

観劇は決して安いお金じゃないから、
なるたけ見やすく、楽しめる席がいい。

しかしどこがどんな様子か
さっぱり見当がつかない!

そんな気持ちから、なかば自分のために始めてみた企画です。笑

徐々に更新していく予定。
少しでもお役に立てれば幸いです。

*** 

第3回は、【2階席後方・右側】。二等席にあたります。
竹本が近かった!!





■歌舞伎座二階席後方からの見え方


見え方はこんな感じです↓

2階の見え方

舞台のてっぺんが、ちょうど三階席の端っこと重なるくらい。
つまり上の階の座席によって、舞台が遮られることはありませんでした。

役者さんもとても近くに見え、表情や細かい所作までよく分かります。

舞台上に高い建物が出現したときは、その上層階が真正面に来ます
このときは「楼門五三桐」を見ましたが、「絶景かな」の石川五右衛門は本当に真ん前でした!

一階と同様、傾斜は緩やか。
前の方が身を乗り出してしまうと、とても見にくくなってしまいます
特に花道はみなさん乗り出しがちだったので、隙間から辛うじて見える程度でした。

二階に限った話ではありませんが、花道をよく見たい場合は各ブロックの花道寄りの座席を確保した方が良さそうですね。 

それから大事なところ!
最初にも書きましたが、二階席は竹本の座る床が近く、よく見えます!
ちょうど座席と同じくらいの高さだったのかもしれません。
それを思うと、二階席は「音楽を担当する方たち」を見るにはとても良い場所なのではないかと思います(舞台自体の見え方も良いので、もちろん長唄・清元の見え方もばっちり)。

二階席でも、オペラグラスがあるとより一層楽しめます!
周りにも使っている方が多くいらっしゃいました。


■歌舞伎座二階席後方の音響


二階席は、どういう音の流れか分かりませんが黒御簾(舞台向かって左の、囃子や効果音等を演奏する場所)の音がよく聞こえました!
幕見席では聞こえなかった音がしたり、いつも聞いている音がもっとクリアだったり。
なぜなのでしょう…音響学の方に教えていただきたい… 

それから、もはや耳タコですが竹本が近いので、あの迫力が目でも耳でも楽しめます

三階席が上を覆っているので、確かに音はこもりがちではあるのですが、
一階後方席と比べると、高さがあるからかこちらの方が良かった気がします。

二階席で強く感じたのは、拍手の音がこもること。
会場全体の拍手が何だか遠くて、二階席の拍手が単体で聞こえてくる感じでした。
「二階席」という室内にいるような感覚になりました) 

劇場全体の盛り上がりを感じたいならば、もしかするとやや物足りないかもしれません。

 

■二階席の服装(洋服・着物)


日によるのかもしれませんが、私が行った日は洋服の方が多かった印象です。
一階席ほど気張ってはいませんが、気を配った服装という感じ。

もちろんお着物で行っても何ら問題はないかと思うのですが、
この日は和装の方が多くはいらっしゃらなかったので、格などの観察ができず…。
後日補足いたします。申し訳ございません。。

ちなみに私は「友達と週末にちょっとお出かけ」くらいの洋服で行きました。


■二階席のいいところ


花道が見えづらい、傾斜が少ない、など不便はあるのですが、
そうはいってもやはり役者さんがとても近く見えます! 
本舞台全体をちょうどよく俯瞰するにはベストなのかな、と思います。

同じ「役者さんが近い」でも、一階は振動を感じられたり衣擦れの音まで聞こえたり、という物理的な近さですが、
二階は感覚的な近さというか、舞台を絵として眺めるときに、一番うまく額縁に収まる距離感、といった感じです。


■まとめ


一階後方席と同様、傾斜の少なさや音のこもりはやや気になるのですが、
そのデメリットを「舞台全体の見え方」の面で補ってくれる席でした。

普段三階や幕見から、オペラグラスにすら目を凝らして見ている者としては、
やっぱり二階席もちょっとした贅沢なのです!

役者さんが正面できまるときの視線の高さがちょうど二階くらい、と聞いたことがあります。
今回は後方席でしたが、前の方に座ると他の階とはまた違った迫力を感じられそうですね!
いつか前の方に座ってみたいものです。

最後になりましたが、
二階に上がる階段の踊り場に川端龍子による「青獅子」の日本画が飾られています。
迫力のなかにどこか愛嬌があるこの獅子、ゆっくり眺められない踊り場にあるのはもったいないのですが、二階に上がる際はぜひ階段を!

物知らずが行く歌舞伎#5〜壽 初春大歌舞伎(歌舞伎座)今の知識と演目選び

この企画は、知識が足りないゆえに
歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方
の背中を押すべく、
歌舞伎歴1年の初心者が何を知っていて、何を目的に、
どのチケットを買うのか
をさらけ出す企画です。
こんなに物を知らなくても歌舞伎を楽しんでいますよ
というのをお伝えできればと思っています。

物知らずシリーズ第5弾です。
おめでたい1月の歌舞伎座。もうそんな季節なのですね…。
先日鏡餅が売られているのを見つけ、軽いめまいを覚えました。

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■歌舞伎座 新春大歌舞伎の演目は?


1月の歌舞伎座。
演目は以下の通りです。

【昼の部】
一.舌出三番叟(しただしさんばそう)
二.吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)
 鴫立澤対面の場
三.廓文章(くるわぶんしょう)
 吉田屋
四.一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
 檜垣、奥殿

【夜の部】
一.絵本太功記(えほんたいこうき)
 尼ヶ崎閑居の場
二.勢獅子 (きおいじし)
三.松竹梅湯島掛額(しょうちくばいゆしまのかけがく)
 吉祥院お土砂の場
 四ツ木戸火の見櫓の場
  浄瑠璃「伊達娘恋緋鹿子」


いいですか、「一條大蔵譚」は「いちじょうおおくらものがたり」ですよ。
私は「いちじょうおおくらたん」だと長らく思っておりました。
ええそうです、「盟三五大切」もつい最近まで「めいさんごたいせつ」と読んでいた輩です(正しくは「かみかけてさんごたいせつ」)
電車内とかで口に出す前に気付けてよかった。。


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


正直なんだかどれも耳馴染みのある演目ばかりな気がしたのです。
しかしあくまで「気がした」だけでした。。

【昼の部】

「舌出三番叟」は、踊りを始めたばかりのころ見たことがあったと思います。
 
「吉例寿曽我」は浅草の新春公演(この記事)でやる「寿曽我対面」と同じものかと思ったら、登場人物が全然違うので、近寄れたと思いましたが後ずさりました。
 
「廓文章」「一條大蔵譚」は名前を聞いたことがあるのみで、内容は全く想像できておりませんが、
先日の中村屋さんのドキュメンタリーにて、中村七之助さんが「廓文章」の夕霧に抜擢された、というお話が出てきましたね。 


【夜の部】

「絵本太閤記」「勢獅子」も名前のみ。

「勢獅子」なんてしょっちゅう舞踊公演にかかるのに、何故だかいつもタイミングを逃して見られていないんです…
でも、よく体の動く方々が踊るような見ごたえのある踊りだと認識しております。笑

「松竹梅湯島掛額」は、横に小さく「伊達娘恋緋鹿子」の文字。
これは今月文楽で見に行くものでは…?!(この記事参照)
登場人物にも「お七」がいますね!


*現時点で知っていることは?


◇舌出三番叟


「三番叟」は、能に起源を発するご祝儀舞踊。お正月の幕開けにはぴったりなのだと思います。
「舌出」とある通り、三番叟役が途中でぺろっと舌を出すのです。

舞台で見たことがあるわけではないので、舌を出すのがちゃんと見えるのか分かりませんが、多分舌を赤く塗るのではないでしょうか。いずれにしても面白そうです!

確か曲も楽しかった記憶があります(自分もいつかやりたいと思ったので笑)。


◇松竹梅湯島掛額


「伊達娘恋緋鹿子」についてはこの記事で恥をさらしています。
恋する男のために娘が放火する、という話を元にした物語です。
12月に文楽で見るので、そうしたら詳細が分かるはず!

ただ題名が全然違うので、どこまでこれと同じなのかが分かりません。

***

これしか知らなかった…見たことがあるような名前の演目ばかりだったのに…


■観てみたい演目は?


演目というわけではないのですが、
「吉例寿曽我」に中村福助さんのお名前があるのです。
 
福助さんといえば、9月に「金閣寺」の慶寿院尼役で、5年ぶりに舞台復帰されたばかり。
ご病気をされる前の舞台は映像でしか見たことがありませんが、9月の舞台でお声の美しさと品の良さに感動し、初心者ながらご復帰が心から嬉しかった。
「吉例寿曽我」、幕見でもいいので見に行きたいですね。

昼の部は他に、踊り好きとしてやっぱり「舌出三番叟」は興味があるし、
私でも名前を聞いたことがある(=有名に違いない)お話を見ておきたい気もしています。

しかし夜の部も大変魅力的で、
2018年の公演だけでも何度も歌舞伎の魅力に気付かせていただいた中村吉右衛門さん
「名高大岡越前裁」での知性と気品にあふれた名奉行ぶりが忘れられない中村梅玉さん
「法界坊」での愛嬌とリズム感、後半の舞踊にやられた市川猿之助さんが、
各演目の主要な役で出演されるようです。
これはもう、私の個人的な歌舞伎一年目の総集編として素晴らしい三演目なのです…!

「松竹梅湯島掛額」、中村七之助さんの「お七」、見たいですねぇ…。

ちなみに先ほどからよく登場する12月の文楽「伊達娘恋緋鹿子」ですが、 
文楽と歌舞伎とで、同じ演目を同じ時期に見られるって面白いのです。
「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」がいい例で、6月に歌舞伎、9月に文楽で見た(この記事)のですが、
ちょっとずつ出てくる文化が違ったり、それぞれの良さが改めて分かったりして、とても勉強になるのです。

そして、舞踊公演でニアミスし続けている「勢獅子」!笑

 『日本舞踊ハンドブック改訂版』(藤田洋、三省堂、2001年)によれば、
「祭礼舞踊のエッセンスを存分に盛り込んだ、賑やかな一幕」とのこと。 

日本舞踊ハンドブック改訂版 [ 藤田洋 ]

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そんなことを言われたら、今度こそ見逃したくないと思うに決まっているのです。笑


■どのチケットを買う?


夜の部は、3等でもなんでもともかく全て見たいと思っています。
昼は厳選して幕見の予定。

なにせ1月は浅草も行くし、国立劇場の方も面白いと聞いているのです。
本当は全て見られたらいいのですが、働く庶民には厳しい話。
いつかはそんな贅沢ができるようになりたいものですね…

(ちなみに国立劇場の公演の「物知らず」をやらないのは、基本的に毎回知らない演目をやっているからです。笑)


■まとめ


新年から歌舞伎を見にいくようになるとは、数年前には考えてもみませんでした。
歌舞伎好きとして迎える2019年が楽しみです。

しかし、歌舞伎の公演って本当に多いですね…!
とてもじゃないけれど追いきれない。
追いきれないからこそ、どれもこれも魅力的に見えてしまう。

来年は「選ぶ力」を養う一年にしたいですね。。
 
プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇5年目。このご時世でなかなか劇場に通えず悶々とする日々。
◆着物好きの友人と踊りの師匠のおかげで、気軽に着物を着られるようになってきた今日この頃。

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