ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

『平成の藝談 歌舞伎の真髄にふれる』(犬丸治)感想〜初心者の観劇の指針にもなる一冊


きっかけは何だったか忘れたのですが、確かTwitterで知った本だったと思います。

犬丸治さんの、『平成の藝談 歌舞伎の真髄にふれる(岩波新書、2018年)。 

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平成の終わりも終わりに歌舞伎にはまった者としては、果たして背伸びにならないだろうかという不安もありましたが、

めちゃくちゃ面白かった。

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この本に出てくるのは、私にとっては生の舞台を拝見することができなかった方々ばかりです。

他の本を読んだり、過去の映像を観たりする中で、ほんの少し家系図や芸の伝承の流れが分かってきたからこそ理解できる部分が大きく、
「これから歌舞伎を観よう」という方にとっては正直何が何やらかもしれません

たぶん去年の自分じゃ分からないことだらけだったと思いますし、この先もっと歌舞伎を知ってから読んだら全然満足度が違うと思います。

でも、じゃあ初心者は読まない方がいいかというと、決してそういうわけではないと思う。

むしろ「これからずっぷり歌舞伎沼に浸かるぞ!」という勢いの初心者こそ、現状を掴むためにも読んでおくべき一冊な気がします。

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平成の間に出版された芸談(原則的に)を引用しながら、歌舞伎のあり方を見つめていく本です。

役者の一つの言葉を元に、その背景や、それにまつわるエピソードなどをまとめたエッセイが続く構成になっており、その数は43にもわたります。
エッセイ中に別の本から関連する発言が引かれたりもするので、実際に取り上げられている「芸談」の数は、この倍以上ではないでしょうか。 

芸談そのものの興味深さはもちろんのこと、膨大な冊数から言葉が引かれているので、初心者としては「歌舞伎をより深く知るためにどんな本があるのか」というガイドにもなると思います。

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芸談の貴重さは、私がここで語るべきことではありません。ただ読むべし!

矜恃と厳しさとがありありと浮かんでくる言葉やエピソードの数々には、ひたすら頭が下がります。

もちろんそれは、主になる役者さんだけではありません。
脇を固める方々のお話も、ものすごく深い。
やっぱり最初は主ばかりを観てしまいがちですが、見方が変わります。
主に注目できる、その上で感動できるのはなぜなのか、という話ですよね。


個人的に面白かったのは、一見何の関わりもないものの鑑賞が、「すべて芝居に通じて」(p.26)いるということ。

それは八代目三津五郎さんの多岐にわたる趣味であり、十代目三津五郎さんのお城であり、四代目猿之助さんの骨董であるわけなのですが、その形や有り様が、すべて芸に繋がっているのです。

それが「芸のためにああしようこうしよう」ではなく、ごく自然にそこから会得してしまうのがすごい。 

ちなみに私、前日見た浮世絵の人の形がものすごくきまっていて、あぁ踊りってこれだよなぁと勝手に思ったのですが、
もちろんここで語られるのはそういう即物的な話じゃないんですよ。笑

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ビデオの技術が発達し、歌舞伎の興業そのものが増え、芸の伝承のあり方は随分と変わったようです。

それを憂えるのはそれこそ私のすることじゃない。

ただ、芸とは何なのか、これからどういう風に歌舞伎を楽しんでいけばいいのかという一つの指針を、この本から得られたなぁと思うのは確かです。



平成の藝談 歌舞伎の真髄にふれる [ 犬丸 治 ]

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「め組の喧嘩」初心者はこう楽しんだ!〜團菊祭五月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想


楽しみにしていた團菊祭の中でも、一番楽しみだったと言っても過言ではない演目「め組の喧嘩」
め組の頭・辰五郎を尾上菊五郎さんがやると知り、観たことのない演目ながらいても立ってもいられなかったのです。

なぜならば!
菊五郎さんの江戸っ子はかっこいい!!!

大勢の鳶の者たちがわあっと盛り上がる映像は以前観たことがあったので、それを菊五郎さんが率いるのだと思うと、早く観たくてたまりませんでした。

そして!
案の定!

大変に気持ちの良い一幕でした!!!!


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鳶の装束が粋ですねぇ。写り込む友人と私。




■初心者でも楽しめるのか?


楽しめます!

細かい筋にこだわらずに、その場の空気を楽しめば大丈夫です。

江戸っ子たちの威勢の良さ、身軽さ、立廻りの華やかさに、観ている方もスカッとすること間違いなしです。

何せ菊五郎さんがかっこいい!

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筋としては、力士たちvsめ組の鳶の者たちの喧嘩である、ということだけでとりあえず大丈夫だと思います。
鳶としての誇りを懸けた喧嘩です。 

そしてこの喧嘩に至るまでに、辰五郎が見せる家族愛も素敵です。


■私はこう見た!ここが好き!


最初の舞台は遊郭・島崎楼。 

人気力士・四ツ車市川左團次さん)を中心に据えての、お偉方たちのどんちゃん騒ぎにぶちギレて、隣の部屋からめ組の鳶が乗り込んでくるところから喧嘩が勃発します。

この飛び込んでくるめ組の鳶・藤松尾上菊之助さん)の爽やかさ!
活きのいい若ぇの、という感じで、座っている形もかっこよかった。藤松は終始爽やかです。 

便乗してくる、同じくめ組の亀右衛門河原崎権十郎さん)と長次郎坂東亀蔵さん)も、またキレキレで素敵!

その喧嘩を、め組の頭・辰五郎菊五郎さん)が止めに入ります。
今後のことを考え、若ぇのたちを一声で黙らせて、大人の対応でその場を収めるのです。

この圧倒的風格と余裕。
少しも気張らないにも関わらず、溢れる強さ大きさ
すでにこの時点で、だいぶ辰五郎に心を奪われます。

しかし、ここで辰五郎は、鳶の誇りが傷つく言葉を掛けられる。
辰五郎はあくまで抑えた口調で応じますが、部屋を出ていくときの襖の閉め方に全てが込められていました。

ぴしゃり、と。

それまでの落ち着いて抑えている辰五郎の、心の内はこうだったんだ、というのが分かる音がして閉まるのです。

かっこいい。。

***

そんなことがあった後日の、芝居前(芝居小屋の前のことをこういうんですね、というのが最近やっと身につきました)

辰五郎の女房・お仲中村時蔵さん)とお供の文次坂東彦三郎さん)に連れられて、辰五郎の倅・又八坂東亀三郎くん)がやってくるのですが、

(いろいろ話をすっ飛ばしますが)この又八の捌け際、たまらなくかわいいのです…!
文次に肩車されて、芝居の看板か何かを指差して帰るのですが、
特に台詞があるわけでもなくてさりげない一瞬なのですが、このちょっとした指差しがとてもリアルで微笑ましかった!

さて、ここでも力士たちに対する鬱憤を募らせるめ組の鳶たち。

亀右衛門と長次郎をけしかける辰五郎の「やっちまいな」というひと言、全然力みがなくて、それが却って余裕を醸し出していました

ほんとに辰五郎、とんでもなくかっこいい。

***

その翌日の、辰五郎内(誰かの家の中の場面を「〇〇内(うち)」というのも、最近やっと身につきました)

先だっての芝居前での出来事の後、辰五郎は一向に仕返しの気配を見せず。
あろうことか、慣れぬお酒に酔っぱらって帰ってくる始末。

情けない夫を奮い立たせようと、お仲は辰五郎に離縁を迫り、又八を連れて出ていこうとします。

この場面、夫を説得しようとして威勢良く上着を脱ぐお仲がかっこいい! 
そして母に手を引かれた又八が「嫌だ嫌だ、ちゃん(辰五郎)と一緒がいい」とごねるのも、微笑ましくてかわいい。

この辰五郎内の場、もう又八が大活躍です。
かわいすぎます。

口の聞き方やら座り方やら、すっかりいっぱしの江戸っ子!

座るときにいちいち、着物の裾をバサッと勢いよく払って胡座をかくんですよ。
もう絶対やりたいだけなんですよ。笑

きっとお父さん(又八は父親のことを「ちゃん」と呼びます)のことがかっこよくて仕方なくて、真似ばっかりしてるんでしょうね

大人たちが大事な話をしている間、又八はおとなしく一人遊びをしてるのですが、この遊び道具がまたかわいい
ちっちゃい纏とか、梯子とか、鳶口とか。
そうか、鳶頭の子はこういうので遊んで大きくなるのか、と。笑

で、思うのですが、
何も言わない間にこういうものを適当にいじりながら自分の台詞を待つって、実はとても難しいんじゃないかと。
それをさらっとやってる亀三郎くん。


さて、この場面で又八、本人知らず知らずのうちに大きなことをしでかしているのです。

酔っ払った辰五郎は、水を一口飲み、お仲に「お前ぇもどうだ」と勧めます。
しかし言い合いの真っ只中なので、お仲は意地で断る。
そこで辰五郎、今度は又八に水を勧め、又八は「俺ぁ水は大好きだ!」と素直に飲む(かわいい)。
そして「お前ぇもどうだ」とまたいっぱしな口調で(笑)、母親であるお仲に勧めるわけです(かわいい)。

お仲、息子に言われると無下に撥ね付けることもできず、お水を一口。
すかさず辰五郎は、「お仲、お前ぇも飲んだな」と。

これ、黙っていたけど辰五郎は、別れの水盃のつもりだったんですよね。
本当は命を懸けて、力士たちに仕返しをしに行くつもりだったんです。

かっこいい。手の内をさらさないままに事を進めていく感じがたまらなく渋い。
辰五郎、酔ってなんかいないんですよ。 

命を懸ける覚悟だったから、辰五郎の方でも離縁状を用意していたんですよね。
結局その離縁状は、又八が気持ち良く破きます。笑


さぁ、いよいよ時が来ます。
辰五郎の指示に、お仲も又八も「あいよ!」と返事をして、てきぱきと辰五郎の出陣の準備を整えていきます。

大きなことが始まる前の、この血が騒ぐ感じ。

この時点で観客としてはだいぶめ組に寄り添った気持ちに持っていかれているので、「さぁ行くぞ!行くぞ!!」みたいな気持ちになってきます。笑

出掛ける父親に、「俺も一緒に行こうよぅ」とすがる又八。
そうね、一緒に行きたいんだよね。大好きなちゃんの、大事なときだもんね。
又八がどこまで分かっているのか分かりませんが、ともかく健気な倅に、思わず頬を寄せる辰五郎。
ぐっときてしまいます。。 

しかし、そこに聞こえてくるのは相撲の打ち出しの音。
相撲の興行が終わった時が、喧嘩の始まりなのです。
辰五郎、一気に駆け出していきます。

あぁ、この子のためにも無事でいてくれ。。

***

舞台は変わって、幕が開くとめ組が舞台上に勢揃い。
ここは本当に壮観です!!

下手から徐々に舞台が現れ、揃いの姿の鳶の者たちがだんだんと見えてくるにつけ、まだいる、こんなにいる!と弥が上にも興奮が高まります

その大人数で揃える声の音の厚み!!

逸る若い者たちの中にやってくる辰五郎。
きたきた!きましたよ!!

め組は全員で水盃を交わします。
それを見届け、辰五郎自らも水を含み、全員の意志に相違がないことを確認する。

そしてめ組は、角力小屋に向かって一斉に駆け出していきます。

もうここからは、完全にお祭りのような騒ぎです。
まさしく「火事と喧嘩は江戸の華」
鮮やかで見所たっぷりな立廻りは、さすがの一言!!!

個人的に大注目だったのは、片岡亀蔵さん尾上左近さんとの絡み。
左近くんの動きが軽いなぁ!2月に踊ったのを観られなかったので、ご活躍が嬉しいです。

圧巻は屋根の場面ですね!
纏を片手に梯子を駆け上がり、屋根に上る藤松(菊之助さん)。それに続く面々。
後半は梯子なしで、上にいる仲間の腕だけを頼りにどんどん屋根に飛び乗っていくのです。

すごい勢い!

そして屋根から瓦を投げるという、鳶ならではの荒業!!

もうめちゃくちゃです!!!笑


押しつ押されつの喧嘩は、喜三郎中村歌六さん)の仲裁で、ひとまず落ち着きます。
あれだけ激しいはちゃめちゃな喧嘩だったのに、こうやってサッと引けるものなのか。
潔く、気持ちが良いですね。

筋書の歌六さんのコメントに「実は高い所は苦手で…」(p.64)とあったので、梯子に上るところで勝手にハラハラしてしまいました。笑


最後に。

何度でも言いますが、菊五郎さんの辰五郎がかっこよすぎるんですよ。
カラッとした台詞回し、気負いのない風格。
「江戸っ子」「頭」と言われて思い浮かぶ理想の形はこれだろうと思います。


■まとめ


正直「あれだけのきっかけで命を懸けた喧嘩に出るものかしら…?」と思えなくもない展開なのですが、それは当時の価値観だったんでしょうね。
江戸っ子は喧嘩っ早い。 

観ている方も細けぇことは抜きにして、「江戸の華」たる喧嘩を楽しめばいいと思います。
梯子や屋根を駆使して、大勢の役者さんたちの盛り上がりと共に繰り広げられる立廻りは圧巻です。

***

今回、周りのお客さんが結構賑やかだったんです。
「おぉ!」とか「えぇ?!」とか「菊五郎さんかっこいいなぁー!!」とか。笑

でも、何だかそれが嫌じゃない空気だったというか。
もちろん静かにしていたい方もいらっしゃったとは思うのですが、私は勝手に一緒に観ている感じがして嬉しかった
心の中で「ですよねー!!!」と何度思ったことでしょう。笑 

あのようなぐわっと盛り上がるお芝居は、歓声が上がっても悪くないんじゃないかと思います。

***

いやぁ、気持ちがいいな。
爽快な一幕でした。

お祭り好きには特におすすめしたい!!!


初夏の着物に悩む。


今日は暑かったー!
今年初めて半袖で外に出ました。

その年の「半袖初め」、好きなんです。
そういえばこんな感じで袖から風が通るんだったなぁ、とか、半袖ってこういう軽さだったよなぁ、とか。

同じ感じではだし初めとか、サンダル初めとかも好きです。
これから来る季節にわくわくします。

要は単純なんですよね。笑

***

さて、この時期何が困るって、どの着物を着ればいいのか分からないということなんです。

本来であれば、5月は袷の時期。

しかし全面に裏地のついている袷は、正直言って重いし暑いのです。
20度を超えたらもう、着物の中が蒸されるようで。

気軽なお出かけであれば、何を着たっていいかなぁとも思うんですよ。
現に先日は5月でも気温が高かったので、かなり透け感のあるサマーウールで出かけましたし、早くも夏物をお召しの方もいらっしゃいました。
去年なんかは4月末の時点でかなり暑かったので、夏物を着ていた友人もいましたし。 

ちなみにこの「サマーウール」というのも曲者で、透ける生地のくせにウールなので決して涼しくはなく、いつが最適なのか迷う着物の筆頭です。笑

ですが、たとえば踊りのちょっとかしこまった舞台を観に行くとき(日本舞踊の公演の全てがかしこまっているわけではないので悪しからず!)

行った先には、普段から着物を着ている、いわば着物のプロたちがいらっしゃるわけです。
そして友達との気楽なお出かけではなく、「かしこまった場」です。

そういうところで「いやぁだって袷じゃ暑いじゃないですか~」が通じるのかどうか…
実際、皆さん袷にきっちりお太鼓を締めていらっしゃいましたし。。

どうやって耐えているのでしょうか、
中の襦袢をこっそり夏物にして、半襟だけ袷のものにして、何とかしてたりするのでしょうか。
私は単衣の着物でも襦袢は夏物じゃないともうすでに暑い。 


ともかく!
暑さに弱くてとても汗っかきな私としては、この時期に袷は困難!!
自ら熱中症への道を選んで、一歩一歩踏みしめながら歩いていくようなものです。 

結局改まった場には、洋服を着ていくことになるんですよね。
着物を着たいのに…

洋服だったら、特に気兼ねせずに好きなタイミングで半袖を着始めるのにな。
着物は「季節感」と密接に関わっていて、そこがおもしろいところでもあるのですが、それゆえにどうしても思い切ったことがしにくい気がします。

私がおろおろしているだけで、着ちゃえば意外とすんなり受け入れてもらえるものなんだろうか。

さすがにもろ「夏!」という生地のものは着ないまでも、単衣の透けないもので、かつ柄が夏っぽくないもので、そこそこ改まった場でも何とか切り抜けられないものか。。

ちゃんと分かった上で、自分の考えのもとに「ルール」を崩すのと、よく分からないままにおっかなびっくりやってみるのでは、着たときの安心感が違います。
自分はまだ後者なので、この時期の「ちゃんとした場」での着物は足踏みしてしまうんです。


いろんな場面で着物の人を観察しつつ、着物で無理なく一年を過ごせる方法を探っていければと思います。
 
プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇2年目、毎月何度か劇場に通う日々。
◆着物好きの友人の影響で、着物でのお出かけが増えてきた今日この頃。

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