ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

「館蔵ミニチュア展 小さなものの大きな魅力」(たばこと塩の博物館)に行ってきました!


たばこと塩の博物館の展示に注目し始めたのは最近のことなのですが、魅力的な展示がたくさんで悶えております。笑

今回は「ミニチュア展」

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ミニチュアと和小物大好きな私としては、夢のような展示でした。

***

その作りの精巧なことといったらないんですよ。
撮影OKだったのでいろいろ撮らせていただいたのですが、ほんの指先ほどのサイズ感にもかかわらず何の破綻もなく
写真にしてしまうとミニチュアなのかどうか分からなくなってしまうレベルです。

たとえば、この習字道具。

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箱にはうさぎが彫ってあり、筆の蓋も取れるという手の込みようなのですが、これ、人差し指の第2関節までくらいしかないのです。
手の小さな私の、ですから、相当小さい。

それから、この抽斗をよぉぉくご覧ください。

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中に小さな駒が入っているのです。

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ピンセットで開けるような小ささの抽斗ですから、駒がどれだけかというと、まぁとんでもないです。笑

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↑別の作品ですが、ピンセットのついた象牙の抽斗。ちゃんと全部開くんですよ…!
プレートのサイズから、この小ささが伝わるでしょうか。 

しかもこの駒、ちゃんと回るのだそうだからたまげる。

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↑もはや見えない。笑
でもちゃんと全部模様が違うんです…愛しい…

***

この恐るべき精巧なミニチュアを製作していたのが、小林礫斎(四代目礫斎)さんという方。
絵や彫金などは他の職人さんが手がけ、多方面の技術の結集のもとに出来上がった作品も少なくないとのことです。

このようなミニチュア作品が生まれる背景には、服装の洋風化やたばこ文化の変化などに伴う、根付やきせる筒、たばこ盆、袋物(たばこ入れや紙入れ)などの需要の減少があったようです。

職人さんの事情を考えると、必ずしも喜ばれるような背景ではないかもしれませんが、その衝撃的なほど高度な技術は、ミニチュア作品にいかんなく発揮されているなぁと思いました。

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着物好き的にたまらないのが「きれかがみ」の豆本でして、様々な布(海外からもたらされた染織品)の端切れが貼ってあるのですが、
このときめきの詰まった小さな世界は一体…!!!

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中身はもちろん、箱も表紙もちゃんと作り込んであり、ちゃんとかわいい。
この「きれかがみ」コーナーだけでも個人的満足度はかなり高いと言えます。 

どうでもいいですが、昔ランドセルに豆本のキーホルダー付けるの流行りましたよね。

***

ここまで見てきたのが「中田實コレクション」なのですが、もうひとつ「倉田コレクション」というのが展示されておりまして、こちらは可愛らしさが全面に出ているコレクションでした。

動物シリーズより、鳥。

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鮮やかな彩りとぽってりしたフォルムと小ささ!
お財布に入れておいたらお金が増えそう(妄想) 

お店やさんセット。

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今でもときどき、これに近いものは見かけますよね。
通りかかったおもちゃ売り場なんかにミニチュアのお店やさんがあると、いい大人ですがついつい足を止めてしまいます。

前方暗いですが、真ん中の箱の中にちいちゃな草履が見えますか…?!
かわいすぎませんこと?!

***

枕草子の「うつくしきもの」(=かわいらしいもの)という有名な章段に、「何も何も、ちひさきものはみなうつくし」という一文があります。
このころも今も、小さいものを愛しい、かわいいと思う気持ちは変わっていないんですね。

たっぷりの癒しを得て帰ってまいりました。
ありがとう、たばこと塩の博物館。


東京・墨田区で12月1日(日)までです。



「正倉院の世界—皇室がまもり伝えた美—」(東京国立博物館 平成館)に行ってきました!


東京国立博物館で開催された「正倉院の世界」展、前後期ともに行ってきました!

教科書や資料集で見たあんなものこんなもの。
想像をどれだけ働かせても到底描き切れないような昔の人たちの、実際に使っていたもの。

何ともロマンに溢れた展示でした…!

印象に残ったものをまとめてみました。
有名なものをたくさん見られたけれど、一番衝撃的だったのは最後の「塵芥」
ここまでの展示を見ることができるのが、決して当たり前ではないと思い知らされます。



*残欠


当時の衣服や敷物などの布の端切れ。
鮮やかに色が残るものや、模様が見えるものもあって、一気にその時代に近づいた気がします。

中でもぐっときたのが聖武天皇の袈裟の残欠で、本当にこれをお召しに…?!と思うとたまりません。
歴史が続いてきて、ものが大切に残されてきたことの物凄さを感じます。

儀式のときの舞に使われた衣装の残欠もときめきましたね。
どんな装束で、どんな舞を舞っていたのでしょう。


*鏡


螺鈿の細工がぎっしり施された「平螺鈿背円鏡(前期)/平螺鈿背八角鏡(後期)」と、片手では持てなそうなほど大きな「海磯鏡」と。
いずれもおそらく当時の最高技術だったんだろうなと思います。
一目見ただけで、これは相当な力がないと作らせることができないな、というのがど素人でも分かります。

これがかなり初っ端に登場するのです。
もう最初から衝撃。この先こんなものが続いていくのかと。圧倒されます。 

螺鈿細工の美しいこと!繊細な輝きに惚れ惚れ。 


*碁石


グッズでこの碁石を模したチョコレートが出ていましたが、とにかくグッズ映えするんです、この碁石。笑

ただの碁石と侮るなかれ、一つ一つに鳥の模様の彩飾が施してあって、可愛らしいことこの上ないのです。

磨耗の跡がほとんどなく、あまり使われていなかったと考えられる、という旨の説明書きがありました。
実際見てみると、確かにあんなかわいいのは使えない。笑
絵が磨り減ってしまうのがもったいない…。

それ以前に、絶対に碁石を眺めてしまって対局に集中できないだろうなぁというところです。笑


*螺鈿紫檀五弦琵琶


前期の目玉はこれでした。教科書・資料集でおなじみの「らでんしたんのごげんびわ」(言いたくなる日本語)。

現存しているのは、明治期に修理されたものとのことです。
こうして修理を重ねて、当時のものがまだそのまま残っているということに感動の鳥肌が立ちます。

これが凄いんです、あの螺鈿細工の贅沢なこと。
胴はもちろんのこと、糸巻から側面、裏側に至るまで余すところなく装飾が行き届いています。

これを演奏しているところに思いを馳せる。
電気のない、きっと今から見ればほの暗い空間なのではないかと思います。
そこに、あの螺鈿の輝きがぼうっと浮かぶのでしょうね。。
なんと幻想的であることか。

ちなみに①
この琵琶の近くに、象牙の琵琶撥が展示してあります。
この赤い撥も、細かく彩飾が施してあって、何が素敵かというと使った跡があるのです。
どんな服を着たどんな手が、どんな琵琶を演奏したんだろう。
妄想ふくらむ配置でしたね。。

ちなみに②
後期はこの琵琶に替わり、「紫檀木画槽琵琶」が展示されていました。
こちらは螺鈿のものよりも装飾が落ち着いているのですが、こっくりとした味わいがあり、裏面の絵もかわいらしかった。


*漆胡瓶


こちらは後期の目玉。こちらも教科書や資料集でおなじみの水差です。

これがまた素晴らしくて。何度も地道に人だかりの後方に並び直しては、心ゆくまで眺めました。

教科書で見るより、ちょっとずんぐりしている印象。
鳥の頭の形をした注ぎ口も、洗練されすぎていなくて愛らしい!
温かみのある色合いで、草木や動物の模様が全面に散りばめられています。

正直、教科書なんかで見る分には地味なんです。
「何でこれがそんなに大事にされたの…?」と思ってしまうほど。

でも実物は全然違う。とにかく愛しい。本物を見られて良かったです。。

ちなみに、この隣には「竜首水瓶」という、竜の頭の形の注ぎ口になっている水差が並んでいます。
こちらは銀色で、フォルムもしゅっとしていてかっこいい印象。
どちらも魅力的でした…!!


*伎楽面


前後期で異なる種類のお面が展示されていました。
お正月に時々やっているものかしら…?すみません、伎楽は詳しくないのでわからないのですが。。

当時のままのものと、復元されたものとが展示されていました。
今でも色が残っていますが、模造品を見ると色の鮮やかさが凄い。
さぞかし派手な芸能だったろうなぁと思います。

色が落ちたり破損したりしていますが、当時の人たちが実際に身につけていたと思われるものは、やはりインパクトがありますね。
大昔に誰かがこれをつけて舞っていたのかと思うと。何とも不思議です。


*塵芥


はい。読んで字のごとく。
さんざん宝物を見てきて、一番最後に、見たところはただの糸くずの集まりにしか見えないようなものが展示されているのです。

これを選り分けていく作業が、宝物の保存・復元につながるのです。

会場では、この塵芥についての特別映像が流れています。
映像の中に出てくる、「「ちりひとつ」も捨てず、宝物として残す」という精神に感動しました。

膨大な量の塵芥を、ピンセットで一つひとつ選り分けていく。
その分け方の細かさも尋常ではなく、材質(布かガラスか等)はもちろん繊維の種類(麻・絹など)や糸の組み方(?)、染めなのか織りなのか刺繍なのかなど、徹底して分けるのです。

こうして分けていく作業の中で、行方不明になっていた宝物の一部が見つかったりもするのだとか。

気の遠くなる作業です。
それでも、その精神を貫く姿勢がとても尊かった。

一連の展示を見てきて、最後にこの塵芥を持ってくる、というのがまた凄いと思うのです。
こういう努力があって、初めてこれらの宝物は現代まで残っているのだなぁと。

感動的なラストです。


*最後に…森鷗外の歌


展示を回ってきますと撮影コーナーがございまして、模造の琵琶や正倉院の扉などが撮影できます(混んでたので撮影は諦め)。

で、この撮影コーナーに掲げられた森鷗外の歌。
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「夢の国 燃ゆべきものの 燃えぬ国 木の校倉の とはに立つ国」

展示を見てきた後、さらに塵芥の驚くほど細かい作業を目にした後だと、この歌の重みが増すというものです。
残っていること、それが見られることに、純粋に感謝したくなります。

***

「正倉院の世界」展、大大大満足でした。
奈良まで出向くのがなかなか大変なので、東京でこの展示をしてくれたことが本当にありがたい!

気が早いですが、来年は「出雲と大和」という展示があるようで、出雲と奈良の愛すべき名宝たちが東京で見られるとのこと…!!

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嬉しいです。嬉しすぎます。

今からスケジュールを立てておこうと思います。


 

物知らずが行く歌舞伎#16〜十二月大歌舞伎(歌舞伎座)今の知識と演目選び

この企画は、知識が足りないゆえに
歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方
の背中を押すべく、
歌舞伎歴2年の初心者が何を知っていて、何を目的に、
どのチケットを買うのか
をさらけ出す企画です。
初心者の無知っぷりと、この2年でちょっと学んだことを、
背伸びせず、恥ずかしがらずにお伝えできればと思っています。


早いもので師走がやってまいります。
今年も「こんなはずじゃなかった」という思いと「でもまぁそこそこ頑張ったよな」という思いとで、総合的には例年通りの年末を迎えそうな気配です。

そんな12月の公演、相変わらず公式より遅くなりましたがチェックしていきたいと思います!
 
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■歌舞伎座 十二月大歌舞伎の演目は?


12月の歌舞伎座。
演目は以下の通りです。

【昼の部】
*Aプロ
一.たぬき
二.村松風二人汐汲(むらのまつかぜ ににんしおくみ)
三.壇浦兜軍記(だんのうら かぶとぐんき)
 阿古屋(あこや)
*Bプロ
一.たぬき
二.保名(やすな)
三.壇浦兜軍記(だんのうら かぶとぐんき)
 阿古屋(あこや)

【夜の部】
一.神霊矢口渡(しんれい やぐちのわたし)
 頓兵衛住家の場
二.本朝白雪姫譚話(ほんちょう しらゆきひめものがたり)

それほど読みにくい演目がない上に、 「たぬき」やら「白雪姫」やらが混ざり込み、
ポスターのぱっと見で「よく分かんないけど歌舞伎ってそれほど難しくなさそう!」というのが伝わるのはありがたいポイントかと思います。

白雪姫…??


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


【昼の部】


「阿古屋」は去年、玉三郎さんで観ました。文楽でも観ています。

舞踊の演目「二人汐汲」と「保名」ですが、一応どちらも(「保名」は映像ですが)観たことがあります。
ただ「汐汲」で馴染みがあるのは一人で踊るものなので、今回の「二人汐汲」が自分の知っているものなのかは、定かでありません。。
踊りは割と演出の自由度が高いようにも思っています。 

「たぬき」は初めましての演目ですね…。

【夜の部】

「神霊矢口渡」は観てはいないのですが、最近よく上演されているようで、名前はよく聞きます。

で、「白雪姫」ですよね。笑
新作とのことです。どんな演出になるのでしょう。

*現時点で知っていることは?


◇阿古屋


以前に観たときの感想はこちらです↓
 
【歌舞伎】
 

【文楽】


傾城・阿古屋の絢爛たる衣装、実際に役者さんが琴・三味線・胡弓(=「三曲」)を演奏するという点など、見どころの多い演目だと思います。

感想にも書いていますが、演奏はもちろんのこと、私は阿古屋の台詞が大好きなんです。

景清との馴初めを語る台詞。
だんだん仲が深まっていく様子を、二人のさりげない触れ合いを並べて表現していくのです。
ピュアでさりげなくて、少女漫画のようだなぁと思います。

***

ざっくり把握していればいいのは、

【重忠・岩永】vs【阿古屋・景清】

という構図。
重忠たちは、平家の武将・景清の行方を何とかして阿古屋に吐かせようとします。
「知らない」と答える阿古屋に対し、重忠が用意した拷問が「琴・三味線・胡弓を演奏させる」というもの
「もし嘘をついていれば、演奏が乱れるはず」という意図での拷問でした。 

こんなことを思いつくくらいなので、重忠は聡明で情趣も理解する、器の大きな人物です。
対して岩永は、見た目からも分かりますが頑固で強引で嫌な感じ。笑

この岩永、 「人形振り」といって、文楽の人形を模した動きで演じられます。
嫌なやつではありますが、舞台の隅で愛嬌たっぷりなので、ぜひご注目を。笑
 

◇村松風二人汐汲

能「松風」が元になって作られた舞踊です。

都から須磨に流された在原行平と恋仲になった海女の姉妹・松風と村雨が、その形見の烏帽子と水干に思いを託しつつ、恋しく思いながら舞う、という話の流れだったはず(ざっくり)。

一人で踊る「汐汲」は、その辺のストーリーよりも踊りそのものを楽しむ感じだと思うのですが、私の観た「二人汐汲」はどちらかというと物語性が強かった気がします。
どんな演目になるのか楽しみです。


◇保名

恋に狂った安倍保名の踊り、というくらいしか把握していないのですが。。薄い。。
玉三郎さんの保名、静かな時間が流れそうです。

ちなみに踊りとは直接関係ありませんが、安倍保名は陰陽師で有名な安倍晴明のお父さん、とされています。


■観てみたい演目と気になるポイント


まず「阿古屋」のどの回を観るかですよね。
 
というのも、去年に引き続き阿古屋は坂東玉三郎さん、中村梅枝さん、中村児太郎さんが交替で演じられるのです。
本来であればそれぞれ観るのが一番なのですが、なかなか余裕がないので…。

去年玉三郎さんを観ているので、今年は若手のお二人かしら。

「保名」は絶対に観たい。
玉三郎さんは女方でいらっしゃいますが、保名は男性なわけです。
私はまだ玉三郎さんの男の踊りを観られていないので、貴重な機会なのです。

「村松風二人汐汲」も気になりますね! 
演出としてもそうですし、同じ梅枝さんと児太郎さんという組み合わせで踊られた去年の「二人藤娘」がとても良かったので。感想はこの記事です。

「神霊矢口渡」は、何だかんだ観られていないのでぜひ観ておきたい。
ちなみにこの作者の「福内鬼外」、なんと平賀源内のことなんだそうですよ。多才にもほどがある。 

「たぬき」、市川中車さんがご出演となると、一気に人情味が増しそうな気がしております。勝手に。笑
どんな話か全く知らないのですが、幕開けにふわっとしたものがくると、通しで観るときは特にありがたいなぁと思います。
初っ端から重いとなかなかその後が引きずってしまって…笑

さて、「白雪姫」。
新作歌舞伎との向き合い方は、毎度迷うところです。
純粋に楽しみな気持ちもあり、観ながら頭でっかちになってしまうところもあり。
ひとまずあまり考え込まずに観てみようかなぁと思っております。


■まとめ


総じて12月は「女方祭り」といった印象です。
玉三郎さんから若手のお二人への継承、というのが配役から伝わってきます。

一方で白雪姫、どんな新作になるのでしょうね。
以前「俳優祭」でも何度か白雪姫をやっているようですが、これとは全く別のものになるとのことです。

正直、12月の歌舞伎は「ナウシカ」が話題をかっさらうと思うのです。
ですが私は「ナウシカ」のチケットが取れなかったので。笑

国立劇場でも、松本白鸚さんが「盛綱陣屋」を、松本幸四郎さんがチャップリン(!)をやっていらっしゃいます。
私の12月は、ナウシカの感想を読み漁りつつ、歌舞伎座と国立劇場になる予定です。


プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇2年目、毎月何度か劇場に通う日々。
◆着物好きの友人の影響で、着物でのお出かけが増えてきた今日この頃。

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