ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

「女車引」初心者はこう楽しんだ!〜六月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想


昼の部二幕目、「女車引(おんなくるまびき)

来月の国立劇場で出る「車引」を女に替えて仕立てた舞踊だそうです。
元になっている「菅原伝授手習鑑」には全然詳しくないのですが、それはそれとして楽しんできました!
それはそれとして、十分楽しめます。笑

女方三人が舞台に並んで踊ると、華やかで素敵ですね。
衣装にも注目です!!

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今月の絵看板、手前から千代、春、八重。
それぞれの旦那さんのお名前(松王丸、梅王丸、桜丸)にちなんだ衣装です。





■初心者でも楽しめるのか?


楽しめるのではないかと思います!

一応、三人の背景は知っておいて損はないかもしれません。
私自身が全く詳しくないので何とも言えませんが、ささやかな予備知識としては、

・登場する三人の女性は、「菅原伝授手習鑑」の主人公三兄弟の妻たち
・三兄弟(松王丸、梅王丸、桜丸)のうち、松王丸だけ立場が違うので対立している
・旦那はそうだけど、妻たちの間の溝はそこまででもない(「菅原伝授手習鑑」の「賀の祝」という段を観る限り) 
・この踊りの元ネタ(?)は、「車引」という、三兄弟が対面する場面(※観たことはない)

くらいの感じで行きました。

***

三人の女性の見分け方としては、衣装が一番分かりやすいかと思います!

千代(松王丸の妻)
松の柄の着物。

八重(桜丸の妻)
桜の柄の着物。
一人だけ年齢が若いので帯が長く、振袖。この帯がかわいいんですよ…!

(梅王丸の妻)
当然梅の柄の着物。

それぞれ夫婦の名前が「千代の松」「八重の桜」「梅の春」という組み合わせになっていて覚えやすいですね!

■私はこう見た!ここが好き!


一つ前の幕の「寿式三番叟」から続けて観ると感じるのですが、清元(音楽)がいいですね!

男四人の三番叟は、太棹のびしっとかっこいい竹本の演奏。
その直後に女三人のこの曲が始まると、清元の柔らかさが際立つ気がします。

***

出の花道、中村雀右衛門さん)と八重中村児太郎さん)が連れ立ってやってきます。
若くてかわいらしい八重と、柔らかくてあたたかみのある春。
ほのぼのとした花道です。

この二人はこの後も、 実の姉妹のように頼り頼られの雰囲気が出ていて素敵!

一方、千代中村魁春さん)は本舞台上手(舞台向かって右側)から登場。
どこか凛とした風情があるように感じました。

女三人の間にはそれほど深い溝はないのですが、やっぱり千代とはちょっと距離がある感じがしますね。。

***

一番好きだったのは、三兄弟の父・白太夫の古稀のお祝いの支度をする場面です。

最初はそれぞれ別の方向を向いて、別の支度をしているのですが、若い八重はやっぱりいろいろ手馴れていなくて、うまくいかない。
八重は春に頼るのですが、そんな八重を横から千代がちゃっちゃか手伝ってあげるのです。
千代さんさすが頼もしい!

そして何かこう、何か切ないけど嬉しいけど切ない(語彙力)

***

それぞれの一人踊りがあって、最後は三人で華やかに踊って幕です。
三人できまる一番最後のところ、附け打ちがバタバタと鳴るのが気持ちいいですね!

ただただかわいらしい八重、
ふわっと柔らかくて優しげな春、
強さも兼ね備えている千代。

それぞれ身にまとう空気や立場、年齢が違うので、踊りの雰囲気も全然違います
一つの踊りの中で、こういう風にはっきりとキャラの違う女性を三人も楽しめるのはなかなかないのではないでしょうか?
私が知らないだけでたくさんあるのかしら。。

ともあれ、女方の藝を堪能できる一幕だと思います! 


■まとめ


全体を通して、筋書には「仲良く」「楽しく陽気に」とあるもののやっぱり春・八重/千代という二対一の構図が随所にあるなぁと思いました。

とは言えストーリーは置いておいても、華やかで楽しい一幕です!
女方の踊り、指先まで本当に美しくて、首の傾げ方なんかにもそれぞれの役の性格が出て、踊り好きとしては嬉しい時間でした。
何も考えずに舞台の雰囲気に身を委ねていられる幸せ。

*** 

ちなみに今月の幕見、この前の幕の「寿式三番叟」から「女車引」までの二幕で約1時間、合計1,000円です。 
1時間1,000円というのは、なかなか手頃なのではないでしょうか。

正直、昼の部のプログラムを最初に見たときには「踊りと芝居と交互にしてほしいなぁ…」と思ってしまったりもしたのですが、観てみてからだとこの「1時間1,000円」が実現できたのは大きかったと思います。
私自身もスケジュールの都合をつけて手軽に行けたのでありがたかったです! 

歌舞伎座座席レビュー【3階席後方 編】

実際に座ってみた歌舞伎座の座席を
場所ごとにレビューしてみよう!という企画です。

観劇は決して安いお金じゃないから、
なるたけ見やすく、楽しめる席がいい。

しかしどこがどんな様子か
さっぱり見当がつかない!

そんな気持ちから、なかば自分のために始めてみた企画です。笑

徐々に更新していく予定。
少しでもお役に立てれば幸いです。

*** 

第5回は、【3階席後方】
チケットで言えば「三等B席」、4,000円のお席です。

あくまで個人的な意見ですが、歌舞伎初心者、歌舞伎座は初めて、みたいな方には割とおすすめです。

・幕見のように、チケット購入に煩わしさがない
・幕見よりも落ち着いて観られる
・歌舞伎座の中ではもっとも手頃な値段
・お土産やさんも近い

と、他の席と比較したときのメリットは結構あるのです。

ちなみに、4,000円は幕見席を通しで観たときと全く同じお値段。
一つ前のブロックに当たる「三等A席」は6,000円です。

前方の席(三等A席)、幕見席とも比較しながら、詳しく見ていきます!

【関連記事】
▶︎歌舞伎座座席レビュー【3階席前方 編】
▶︎歌舞伎座座席レビュー【幕見席 編】





■歌舞伎座三階席後方からの見え方


三階の後ろからは、こんな風に舞台が見えます↓

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今回は三等席の最後列、かなり舞台下手(向かって左、西側)寄りのお席。
 
花道は、七三がぎりぎり見える程度で、この位置で踊ったりきまったりするのは比較的よく見えました
何人も並ばれると後方の役者さんはほぼ見えませんが、前から二人くらいならば何をしているかちゃんと見えます。 

ちなみに、同じく下手寄りの三階前方席から(三等A席)の見え方はこんな感じ↓

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三階は傾斜がきついので、同じ「三等席」でもかなり見え方が違います
A席、写真で比較してみるとやっぱり舞台に近いです。
A席とB席の間にある2,000円の差はそれなりに大きい…!

同じく比較として、幕見席からだとこんな感じで見えます↓

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これは上手寄りのお写真なのでちょっと比較が難しいのですが、それでもやっぱり、後方であっても三等席の方が舞台には近いですよね。

先述した通り三階と幕見席は傾斜がきつく、一列違うだけで座ったときの目線の高さが随分と変わるのです。
三等席は空きが少ないのですが、可能な限り前の方の席を取ることをおすすめします!

実感としても、幕見席からたかだか2列ほど前に出ただけなのに、役者さんたちの表情の見え方が違いました。

***

舞台は全体が見渡せる位置
大道具によっては上の方が見えにくいこともありましたが、概ね問題ありません。
舞台上方に吊ってある花なんかも、ちゃんと見えましたよ! 

そしてこれは三階に限った話ではありませんが、花道をよく見たい場合は各ブロックの花道寄りの座席を確保するのがおすすめ! 
みなさん花道を見ようとして結構身を乗り出すので、自分よりも花道寄りに人が少ない方が、視界を遮られることが少なく見やすく観劇できるかと思います。 

三階席後方は、オペラグラスがあった方が絶対に楽しめます!
視力が1.0くらいあれば、役者さんのお顔も一応見えます。しかし小道具や衣装、より繊細な役者さんたちの表情を目に焼き付けておきたい、という場合はオペラグラス必須です。
倍率は3倍程度でも十分ですが、6倍あるとより細かいところまで確認できます。 

※これより下、三階前方席の情報とほぼ変わりません。
 

■歌舞伎座三階席後方の音響


個人的に音響は、三階がベストです!

セリフも問題なく聞こえる、
すべての音が上の階の座席に遮られることなく響く、
そして大向こうのかけ声が近い。

劇場全体の音をサラウンドで聞くことができる、楽しい席です。

四階の音も好きなのですが、ほんの少しセリフが聞き取りづらいことがあります。

 

■三階席の服装(洋服・着物)


日によるのかもしれませんが、私が行った日は洋服の方が多かった印象です。
お着物の方は、新春公演は小紋に二重太鼓の方をよく見かけましたが、普通の日はざっくりしたの方も。
でも紬って私は全然理解できていないので、もしかしてものすごく高級なものだったのかもしれません…!

男性のお着物の方もいらっしゃいました。粋ですね!素敵です。

それから女性の方で、半幅帯をお洒落に結んでいらっしゃる方も。「格」に凝り固まらなくてもいいのかもしれません。

注意したいのは、座席の前が狭めなこと。
前を人が通るときには、一度立ち上がる必要があります。
荷物は少なめ、立ち座りが簡単な服装が望ましいかと思います!
(ちなみに、ロッカーは劇場地下一階と三階にあります。) 

私はかなりカジュアル寄りのオフィスカジュアルで行きました。 


■三階席のいいところ


観やすさと音の良さは先述の通りで、これに加えて重要なおすすめポイントがあります。

三階席は、めでたい焼を買うのに最も適した席なのです。

週末は売り切れ続出のめでたい焼。
中に紅白の白玉が入った、ボリュームたっぷりの鯛焼です。
幕間に合わせて焼いているので、焼きたてのほやほや、サクサクの状態で購入することができます。
 
これ、三階でしか売っていないのです。

三階に降り立った瞬間、幕間に扉が開いた瞬間、鼻腔をくすぐるあの甘く温かく香ばしい香り。
あれを嗅いだらもう、買わずにはいられない。

三階席なら、すぐに売場にアクセスできます。買いたければ、幕間になったら速攻で並びましょう。
売り場は三階西側席(舞台向かって左側)の方向です。「西扉」が最も近いです。
数量限定ですが、5個以上なら予約もできるようです。 

この他にも三階廊下にはお土産やさんが並び、観劇以外のところでも大いに楽しめます
お菓子から雑貨まで、充実のラインナップです。 


■まとめ


三階の後方、三等B席のレビューでした。

私自身、初めての歌舞伎座はたぶんこの席だったと思います。
オペラグラスも知識も何も持たずに丸腰で臨みましたが、歌舞伎の音が聞こえて、そう遠くない目の前で役者さんたちが芝居をしている、その興奮は忘れられません。

そういう記憶があるので、
初めて観たときは「思ったよりも舞台が近い」と感じたのだと思います。 

***

今後この席を買うとしたら、私ならこんなときかなぁと思います。

・全幕通しで観たいとき
・幕見で観て良かったので、腰を据えてもう一回観たいとき

一般的なOLなので、それほど観劇にお金をかける余裕はないのです。
そのため基本的にはいつも幕見なのですが、いかんせん幕見は、 自分の席があらかじめ決まっていないのでなかなか落ち着かない。
自由席なので、確保した座席にちゃんと荷物を置いておかないと、休憩時間にうかうか席も離れられず。笑 

三等B席は早くに売り切れてしまうことが多いお席ですが、幕見と同じくらい気軽に、幕見よりゆったりした気持ちで観られる、貴重な席だと思っています。
 

【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる②梅にも春


日本舞踊を始めてから習った曲を、習った順に振り返ってみる企画の第2回です。

第1回はこちら▶︎ 【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる①初稽古〜京の四季

始めてから確か2ヶ月くらい。
2曲目に教えていただいたのは、「梅にも春」という、こちらも3分ほどの曲です。

「京の四季」もそうだったのですが、この曲も畳1枚の中で踊れます。
基本的には踊り始めた位置で踊り終わる日本舞踊。
今思い返せば、元の位置から大きく動かない踊りから始めることで、その基本を知らず知らずのうちに教えていただいていたのではないかな、と思います。

※ひとつお断りしておくと、流派によって、どころでなく同じ流派でも先生によって、振付は全く異なります。あくまで、私が習った振りでのお話です。
 
***

これもいろんな風物が出てきて、お扇子も大活躍で、ますます日本舞踊がおもしろくなった一曲でした。


たとえば裾をちょっと押さえて、袂を帯に挟んで、井戸の水を汲む振り。

生活の中で着物を汚さないように、あるいは動きやすいようにするにはこうやっていたんだ、というのが分かる振りですよね。
ちょっとしたこの仕草がまた、なんだかしっとりお上品に感じられたりするのです。

井戸だって触ったことがあるのは人生に2回ほど。
実際に井戸が見えるように踊るのは、まだ2曲目では難しかった
でも、そう見せようと工夫するのがまたおもしろい!


それから、煙管に草を詰めて、火をつけて吸ったり、笠をかぶったり、駕籠に揺られたり…
浮世絵で見るような光景は、こんな風に動いていたのかな、と。

今まで知らなかった昔の暮らしの一片が、踊りを通して立ち上がってくるのです。

***

踊りの面で言えば、この曲を始める少し前に初めて舞踊の公演を観に行き、「自分がやっているのはこういうことなのか!」というのがほんの少しだけ見えたのは大きかったと思います。

「首を振る」って、「おすべり」って、「踏む」ってこういうことか、と。

そんなわけで、この曲あたりから首を意識的に動かすようになりました。
まだちゃんと触れるレベルではなく、あとから映像を見直すとただひたすらにぐにゃんぐにゃんです。
いいんです。ここからです。笑

▶︎【日本舞踊】首振り三年?
 
***

「踊りって楽しい!」と思い始めたのは、この曲からだったと思います。
もちろん1曲目も楽しかったに違いないのですが、まだまだ頭の中が未分化で、自分が何をしているのかが掴みきれていなかった。
それを、「踊り」として認識して踊れるようになったのはここからだった気がします。

教えていただいた曲はどれもこれも大好きだし思い入れがありますが、その意味において「梅にも春」は、とても大切で思い出深い曲です。


プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇2年目、毎月何度か劇場に通う日々。
◆着物好きの友人の影響で、着物でのお出かけが増えてきた今日この頃。

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