今年は今のところ、小説じゃない本が圧倒的一位。
今年出た本ではないので恐縮ですが…

めちゃくちゃ面白くて勉強になったのが、この本↓

舞うひと 草刈民代×古典芸能のトップランナーたち [ 草刈民代 ]

価格:1,944円
(2018/8/12 21:57時点)



『舞うひと』


バレリーナ・女優の草刈民代さんが、
日本の古典伝統芸能の「舞うひと」たちを訪ね、
踊りについて、身体芸術について対談していくものです。

踊り大好きで、日本の芸能・芸術のことを
もっと知りたいと思っていた矢先に読んだので、
ためになること、感動することが山ほどありました。

写真も多く、対談形式も読みやすいので
ちょっと長くなりますがご紹介します!
 


■登場する「舞うひと」たち


【日本舞踊】
宗家藤間流八世 藤間勘十郎さん
三代目 花柳寿楽さん
京舞井上流五世家元 井上八千代さん

【能楽】
二十六世観世宗家 観世清和さん
二代 梅若玄祥さん

【琉球舞踊】
重踊流二世宗家 志田真木さん
【歌舞伎】
五代目 尾上菊之助さん
四代目 市川猿之助さん

【文楽人形遣い】
三代 桐竹勘十郎さん
【雅楽】
宮内庁楽部楽長 多忠輝さん
【狂言】
野村萬斎さん
【舞踏】
麿赤兒さん

…なんと豪華なことでしょう!!!
この一冊で、あらゆる日本の芸能に携わる方のお話が聞けるわけです。

目次の時点で購入決定しました。


■心に止まったこと


*歌舞伎役者の踊りと舞踊家の踊り


日本舞踊家の花柳寿楽さんのお話の中で、
歌舞伎役者の片岡仁左衛門さんに
舞踊「二人椀久」を教わったときのエピソードがありました。

歌詞に書かれていないところまで役の感情を考え抜き、
一つひとつの動きにこめていく「役者」のお稽古


舞踊家としては
激しく乱れると踊りとして美しくないのでは」と
ブレーキをかけてしまう部分もあるとのことで、
とても勉強になった、というお話でした。

一方、 歌舞伎役者の市川猿之助さんの章には、
役者は舞踊家じゃないんだから、役者の踊りを踊れ、とよく言われる」
というお話が出てきます。

舞踊家は正攻法できれいに踊るけれど、
役者は癖があってもそれを個性にできる。


だからいろんな役を演じて役の気持ちを学ぶことや、
踊りに出てくる景色や風俗を 知っておくことが大事なのだ、というお話。


以前Eテレの「にっぽんの芸能」という番組この記事で紹介)
坂東玉三郎さんが舞踊「京鹿子娘道成寺」を語る、
という企画をやっていた際に、

その踊りへの考察の深さがとても興味深く、
「あぁ、役者さんって凄いんだなぁ…」
と感動したことがあります。(今さら何を)

そのときのことを思い出しながら読んで、
やはり「役者の踊り」「舞踊家の踊り」という感覚があるのだ、と
とても納得がいった気がしました。


でも、自分が踊りをやっていて 一番おもしろいのは
「表現」に触れた瞬間。

まだまだ自分の個性や表現などと
ぬかせるような経験値は何もないのですが、

勉強して、いつかは自分なりに役を深めて、
その役を「踊り」として演じてみたいなと思うのです。


*現代の時間感覚


本に登場する「舞うひと」たちが 口を揃えておっしゃるのが、
「現代は時間感覚がせわしない」ということ。

たった数分の演目でも「長い」と言われ、
「手軽さ」「わかりやすさ」が重視されてしまう。

それが、「舞う」側からとてもよく分かるようです。

本当にもったいないことなのですが、
私も「せわしない」一人なのではないかと反省。

日本舞踊や、それに関連する歌舞伎や文楽は
ひと時も飽きずに見続けていられるのです。

でも日本舞踊を始める前はどうだった?
日本舞踊と関係のないようなものだったら?

やっぱりすぐ飽きてしまうのかもしれません。

それを思うと、現代の時間感覚の中では
日本の伝統芸能の行く先って
相当暗いんじゃないか…
と寂しくなってきます。

せめて自分は、日本の芸能を学ぶ端くれとして、
こういう芸能文化を積極的に学び、楽しもうと
思いを新たにいたしました。


*能は寝ていい?


すごいタイトルですが上記に関連して。笑

「能をご覧になって深い眠りにつくことも大事」

これはまさかの、
能楽観世宗家の観世清和さんのお言葉です。

能の囃子を聴くと体のリズムが一定になる、というのが
科学的に解明されている
とのこと。

眠くなってもいいから、能に気軽に接してほしいそうです。

恥ずかしながら私、能って全然わからないんです。

でも、この本で能楽の方が語っていらっしゃるのを読んで、
実は能って、現代においても
ものすごく大事な精神とか、想像力とか

そういうものが詰まっているんじゃないか
と思うようになりました。

(眠っていいとおっしゃるならば)一度行ってみようかなと思い始めたところです。


*稽古する側が甘すぎる!


これも観世清和さんのお言葉。

刺さりました…。

あまりに刺さったので、一部引用します↓


…今の人はインターネットとか文明の利器を駆使して、
教えていないことまで知っていたりする。
そのくせ勘が鈍い。
目の前で師匠が一回舞ったら、すぐにできなくてはだめ。
それが「あれ?」なんて、教わる側の努力が全然足りません。



普段のお稽古で、自分が何回「あれ?」と言っていることか…

この本に出会ってから、一回で覚えるように努力はしてみるものの、
いかんせん引き出しが少なすぎますね。
精進します。

*** 

他にも、付箋を貼ったページがたくさんありました。

雅楽の、神様へ捧げる踊りだからこその
日本舞踊との違いとか、継承の難しさ
とか。

狂言には「落ちるところを見せる」跳び方があるとか。

麿赤兒さんの、「「ダメ」をどう踊るか」というお話とか。
(これがすごいんです、
足が痛いなら足を引きずってリズミカルに歩けとか、
立てないなら這えとか、それも踊りにしちゃうんですね。)


文楽で、公演中にどうにも人形が動いてくれない日がある話とか。
(桐竹勘十郎さんとの対談で
「バレエと似てる!」とテンションの上がる草刈さんも素敵です。笑)


琉球の古典舞踊は、基本的に表情を変えず、
まばたきさえも控えて踊る
、という話とか。

「もっと知りたい!」 「もっと頑張りたい!」
モチベーションが上がり、とても刺激を受けた一冊でした。


■踊り好き・伝統芸能好きにぴったりの一冊


この本のいいところは、
一冊でたくさんの芸能に触れられるところ。

そして、プロフェッショナルたちの言葉は
重みがあり、襟を正したくなる。

写真もとても多く、
「舞う」ときの きりりとしまった真剣な表情が
素晴らしくかっこいいです。
(人形もめちゃくちゃ美しいですよ!)

私のような初心者・踊り好きはもちろんのこと、
すでに詳しい方も絶対に楽しめる一冊
だと思います。

友人との待ち合わせ前に立ち寄った本屋さんで
たまたま見つけた本だったのですが、
大当たりでした。買ってよかった!

舞うひと 草刈民代×古典芸能のトップランナーたち [ 草刈民代 ]

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