今月の歌舞伎座、「芸術祭十月大歌舞伎」の
幕見に行って参りました!

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(どうでもいいですが、歌舞伎座全体を撮影したい場合は
通りを渡って撮る方が断然よいです。)


名前は聞いたことがあるけれど観たことのなかった
「三人吉三」「大江山酒呑童子」

本日は歌舞伎初めての友人と一緒です✨
幕見のチケットの長い列も、
おしゃべり相手がいれば怖くない!!




■初心者が楽しめた演目は?


どちらかというと、
酒呑童子の方が分かりやすく楽しめた印象です。
 
なぜならば、このお話は
「勧善懲悪」の構図が分かりやすいから。
酒呑童子(悪)をみんなで倒す!
という大きな構図があって、
その中でそれぞれの役の踊りを見ることができたので、
初めての友人も楽しめたようです💡

三人吉三は、この幕だけだと
ストーリーというストーリーがないので、
あらかじめ「ここが見どころ」「ここが聴きどころ」というのが
分かっていた方が楽しめそうですね。

これについては後述します!


■私はこう見た!ここが好き!


*三人吉三


作者の河竹黙阿弥は、七五調のセリフが特徴だと
何かで習ったか読んだかした記憶があります。
確かに、日本語に親しみのある7・5のリズムは
耳に心地よかった
です! 

今回印象的だったのは、
中村七之助さん演じるお嬢吉三

女装をして相手を油断させる、という手口の盗賊で、
美しい振袖姿で登場します。

そして都合よく娘と男を使い分けるのです。

周りに誰もいないと思って、
男の声で内情をさんざっぱら白状した挙げ句、
お坊吉三に声をかけられて、
すぐに何も知らないみたいな顔をして娘に戻るところは
ちゃっかりしていておもしろかった。

芝居の中盤以降、男であることを明かしてからの、
可憐な振袖の裾から除く
完全に男性の歩き方が妙にかっこいい!

そして、お嬢が拾った百両を
最終的に和尚吉三が都合よくせしめるのも
なんだかおかしかったです。

*酒呑童子


いやもうこれは観て本当に良かった。
舞踊ものは ともすれば眠くなりがちですが、
これはずっと楽しかったです。

中村勘九郎さん演じる酒呑童子が、
鬼神でありながら何とも憎めない、
かわいらしい存在でした。 

音も興味深くて、印象に残っています。
特に「濯ぎ女」(が何なのかよく分からないのですが)の3人が
それぞれ踊る場面の音楽は、華やかだった印象があります。
 
そして酒呑童子にお酒を注ぐところ、3回鼓が鳴るのですが、
これが「お酒を注ぐ音」に聞こえるのです。
 
とく、と注ぎ始め、
途中でとぷん、と波立つ音がして、
最後はなみなみと注がれて とっぷん、と鳴る。
そんな風に聞こえてきて、
お酒を注がれるたびに鼓に耳を傾けていました。笑
 
大好きなお酒を注がれて、
にたぁ、と笑って飲み干す酒呑童子。
このときはまだ「童子(子供)」姿なので、
しゃべり方も動きもそこはかとなくかわいらしい。

「酒がある」と聞いて
花道からそそくさと本舞台にくる単純さ、
途中から他人の話に全く耳を傾けずに
空になった盃を手持ち無沙汰に見つめる様子、

「本当にこれが鬼なのか…?」
というほど愛嬌たっぷり
でした。

そしてそこからスピード感あふれる踊りになるところの
切り替えの鮮やかさといったら!
動きのキレが凄まじくて、踏む音も調子よく、
何せ跳ぶ跳ぶ
一瞬たりとも飽きなかったです。 

鬼神の姿になってからも、
初っぱなから酔ってるし、
花道までの足取りもよろよろだしで、
やはりどこか抜けていてかわいい。 

最後の倒れ方まで、どこまでも愛嬌のある酒呑童子でした。 

 

■これさえ押さえれば楽しめます


以下に挙げるのは、今日観てきて
「初めてでもこれが分かっていれば楽しめそうだな」
「これを知っていればもっと楽しかっただろうな」
というのをまとめてみたものです。

★大体見せ場の前には、
「待ってました!」という大向こうがかかります。
この声を頼りに、舞台にぐぐっと注目!

*三人吉三


★名ゼリフを楽しむ!
★三人の吉三の「きまる」瞬間を楽しむ! 

有名な台詞が多いのが
このお芝居の特徴ではないでしょうか。

「こいつぁ春から縁起がいいわえ」

というお嬢吉三の台詞は、
先日ご紹介した『恋歌』(朝井まかて)この記事にも出てきましたし、
その前から何となく台詞に耳馴染みはありました。

余談ですが、大瀧詠一さん「三文ソング」という歌にも
「こいつぁ春から三文ソング」という歌詞があります。
(その後に「飛んで火に入る」「いづこも同じ」「雪の降る夜も」と
歌詞に怒涛の季節感をぶっこんでくる感じが大好きです。)

脱線が長くなりましたが、

「月も朧に白魚の、篝火(かがり)も霞む春の空」

から始まるお嬢吉三のセリフが
聴きどころのようです!

そしてもう一つ、
三人が同時に一瞬動きを止めて、
絵のように美しい形で「きまる」瞬間も見所の一つ。

以上の耳と目の楽しみが分かれば、
(今回上演する「大川端庚申塚の場」に関して言えば)十分に楽しめると思います!

*酒呑童子 


これに関しては、
「酒呑童子を倒そうとする者たち」vs酒呑童子
という構図が分かれば問題ありません!

あとは酒呑童子が、それと知らずにうきうきと毒酒を飲み、
酔っぱらいつつ楽しく踊るのを
こちらも楽しく観ればいい!


■まとめ


あっという間の1時間45分でした。
もう一度行きたいくらい。

何せ筋書を熟読しなくても
筋がわかりやすい
のがいいですね。

二幕目までで2,000円と、
気軽に観に行ける価格設定もありがたいです。 

友人も「また行きたい!」と言ってくれたので、
大変に嬉しい日になりました