これは歌舞伎を知らなくても、何の予備知識もなく観に行って楽しめる演目だと思います!
現代の言葉で展開するお芝居。
歌舞伎2回目の友人が「普通の演劇みたいだね!」と言っていたのは本当にその通りです。

そんなわけで、いつもは「最低限これさえ分かれば」とか「見どころ」なんかを綴っているのですが、
今回はその必要がないので、とりとめもなく思ったことを。

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左上が「あんまと泥棒」のお二人ですね暗くなってしまった…

あらすじとしては、その名の通り、
あんま市川中車さん=香川照之さん)とその家に入り込んだ泥棒尾上松緑さん)との会話劇です。

そもそもなぜこのあんまの家が狙われたのかというと、彼はあんまという仕事の他に高利貸しをやっていたから。
どうも江戸時代は、保護の目的で盲人の高利貸しを認めていたようです(イヤホンガイドによる知識)。

しかしあんまは、そんな金はないと言い張り、自分の生活の苦しさを切々と語ります。

それにだんだんほだされていく泥棒。

徐々に「あれ?」と思う展開になっていき…
最後はとりあえず泥棒の今後を応援したい気持ちでいっぱいになります。笑

あんまの外面の良さと、会話をどんどん自分の言いたいことに持っていってしまう勢い、そしてところどころに垣間見える汚さが秀逸!
強気で入ってきた割に、良いようにあんまのペースに乗せられてしまう泥棒もまたおかしいです

泥棒の花道の去り際、泥棒のくせになんだか非常に清々しく爽やかでした。笑

基本的にはこのあんまの部屋の中でお話が進み、華やかな見せ場などがあるわけではありません。
でも最後まで全く飽きることなく楽しめて、「観にきてよかった!」と思える一幕でした

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このお芝居、舞台が凝っているなぁと思いました。
(きっと今まで見てきたものもそうだったに違いないのですが、この舞台で急に大道具のおもしろさに気付きました。)

たとえば冒頭の、あんまが仕事を終えて家に帰ってくる場面。
舞台を少しずつ回しながら、家までの帰路を表現するのですが、
一瞬しか通らない場所もあるのにとても作り込まれていて
 
上述のとおり、最悪あんまの家のセットだけがあれば何とかなるお芝居だと思うんです。
 
大道具の方はすごいな、と思いました。

そして、あんまの家の中も興味深い!

いろんな襖や引き出しがちゃんと開き、中にはちゃんといろいろな小道具が入っていて、時にはそれが雪崩を起こし、意外な場所が開く。

どこかにあの部屋のセットを展示していただいて、残らずいろいろ開けてみたい衝動に駆られました。笑

それから、効果音もこのお芝居のおもしろさを増していると思います。
思えば音は、主人公であるあんまにとって、状況を判断したり時間を把握したりするための大事な要素なんですよね。
一つひとつ楽しいので、これから観るという方にはぜひ耳を澄ませていただきたいです!!

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以上、歌舞伎初心者が語る「あんまと泥棒」の感想でした。

上演時間が18:20〜19:05なので、お仕事を早く上がれた日にちょっと幕見で立ち寄って、楽しい気分になってから帰る、なんていう過ごし方もいいなぁ、と思います。