ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

2018年11月

日本舞踊*物語る踊り

多分これは、洋舞の世界も全く同じだと思うのですが。。

凄い方の踊りを見ていると、踊りは言語だな、と感じます。
体の動きが、まるで語っているよう。おしゃべりのときもあれば、腰を据えて物語るときもあり。
ともすれば、言葉では補いきれないところまで伝わることだってあるのではないかと思います。

***

エピソードを2つ。

まずは分かりやすい話で、以前この記事にも少しだけ書いたのですが、

海外の舞踊家と日本舞踊家とが一緒に舞台を作ったとき、
何も言わなくてもお互いが何をしているのか分かった、という話がとても印象に残っています。

日頃から踊りを通して「語って」いる方々同士だからこそ、
「言語」を介さなくてもコミュニケーションが取れたんですよね。

その意味で、踊りはお互いの考え方や文化を否定することなしに交わることができる、貴重な交流の手段の一つなのではないかと思います。

***

もう一つは、私が踊りの物語世界に完全に入り込んでしまったときの話です。

とある舞踊会にて。
踊りの内容は、ある武将が忠義を貫くために、まだ年端もいかない我が子にすべてを託し、負け戦と分かっている戦いに向かっていく、というもので、
この我が子との別れ、圧倒的不利な中での怒濤の戦いぶりが見どころとなるのですが(これを一人で踊ります)、

私は途中から、踊っている方が物語の主人公である武将にしか見えなくなってしまったのでした。

我が子と別れる辛さを必死に抑える、一人の人間としての弱さと強さ、
自らの最期が近いと分かりながら、戦いに立ち向かっていく覚悟、
「これが己の人生だ」というのが物凄い圧をもって伝わってきたのです。

舞踊の公演でも大向うの声がかかります。
その声に違和感を覚えてしまうくらい「本物」でした。
今踊っているのはこの人じゃなくて、主人公本人に違いないのに、
なんでこの人の名前が聞こえてくるんだろう、という感じ。

それくらい真に迫るものがあったし、終わったあとはしばらく呆然としてしまいました。
これ以上何も見たくない、この感情に何も上書きしたくない、と思うくらい圧倒されて、何日も余韻に浸りました。

言葉で語らずとも、これだけ雄弁に、踊りは物語ることができる。

そこに性別も年齢も関係ないのです。

***

「言葉」の限界や無力さに悔しくなることもある中で、踊りに出会えたことは一つ幸せだな、と思います。

自分にとって踊りが言語になり得るのは、まだまだ気が遠くなるほど先の話です。
それでも一つの表現の可能性を、大事に育てていければと思います。


平成中村座に行ってみた!昼の部 観劇の感想編2018

前回の「劇場レポート編」に続いて、今度は観劇の感想編です。
もう千穐楽直前ではありますが…^^;

今回は思い切って筋書を買いませんでした。
なぜならば、お金がなかったからです。 かなしい。
「実盛物語」が複雑そうだったので、劇場に向かう電車の中でちょちょっと予習してから臨みました。

***

今回の演目は「実盛物語」「近江のお兼」「狐狸狐狸ばなし」の3つ。
観劇前のそれぞれの知識については、物知らずシリーズのこの記事で綴っております。

 



■初心者が楽しめた演目は?


すべて楽しめました!

ただ「実盛物語」に関しては台詞がやや難しく、
源平の争いの中で「源氏方」「平家方」も途中から複雑になってくるので、
予習をしたり筋書を読んだりした方が楽しめるかもしれません。 

「近江のお兼」は舞踊。演出も派手で見応えがあるので、踊り好きでなくとも楽しめると思います!

「狐狸狐狸ばなし」は騙し騙されということで、頭の回転の遅い自分がついていけるか大変心細かったのですが、
始まってみれば何のことはない!杞憂でした!!!
今回一番笑った演目でした。小さな会場だからこそ面白い部分もあり。
選んだ席も非常に良かったです。 


■私はこう見た!ここが好き!


*実盛物語


これはもう、いい話なんですよ…
ネタバレになってしまうかもしれませんが、この場面に本当に悪い人は一人しかいないんです。
あとは男も女も、忠義と思いやりに溢れているんです。

特に瀬尾十郎片岡亀蔵さん)の変わりようにぐっときました。
見た目からしてかっこいい実盛と異なり、瀬尾は見るからに敵。
源氏方の葵御前坂東新悟さん)への難癖の付け方も徹底していて、同じ平家方の実盛にたしなめられるような人物です。
そこからの、太郎吉中村長三郎くん)との関係性の中で見せる本心が凄い。瀬尾はなんという運命を抱えていたのか…

死に際のとんぼ平馬返りというらしい)、見せ場ですね!
舞台との距離が近かったこともあって、迫力がありました。

それから、実盛中村勘九郎さん)が小万中村児太郎さん)の最期を語るところ。
(「実盛の物語」だと思っていたのですが、「実盛が物語る」話なので「実盛物語」なんですね。笑)
語りに合わせた動きの一つ一つがぴしりぴしりときまり、本当に清々しくてかっこよかった。

このあと、告げ口しようとする輩・仁惣太中村いてうさん(=この場面唯一の悪者)を手裏剣で討つのですが、その手裏剣を投げた格好もまたきりっと素敵でした。

と、いろいろ見せ場はあるのですが、

このお芝居で沸かせたのは、やっぱり何と言っても太郎吉長三郎くん)ですね。
ドキュメンタリーの影響力も少なからずあるようで、長台詞の前には近くに座っていた方が「頑張れ!」とつぶやいていらっしゃいました。笑 

葵御前出産の場面でどうしても興味が抑えられず、何度もお産の部屋を覗こうとして毎回実盛に連れ戻されるところとか、
綿繰り機を馬に見立ててまたがって、実盛に「親の仇」と立ち向かってみせた割にその相手に鼻を拭いてもらうあたりとか、
実盛の馬に乗らせてもらって、実盛に頭をなでられながら大いにご満悦の様子とか。

実盛の温かさと大きさに、太郎吉の無邪気な愛嬌が加わって、いい場面だらけでした。

後半、「太郎吉が成人したら自分を討つように」と実盛が言い聞かせる場面、
登場人物たちが竹本のリズムに合わせて台詞を言っていくのが聞いていて面白かった。

そして最後、実盛が馬に乗って引っ込む花道。

馬が見せますね!!
実盛がせっかくかっこよく指示を出しているのに、少しも言うことを聞かない馬がとぼけていてかわいかったです。
実盛の怪訝そうな顔も良かった。

 

*近江のお兼


馬で花道に引っ込んだ実盛のあとは、
馬が暴れながら花道から登場する舞踊「近江のお兼」です。 笑

この舞踊、とにかく馬がすごいんです!!
構造としては、馬の中に二人入って、前足と後ろ足を担当しているのですが、途中で馬が二本の足で立つところがある。
つまり、後ろ足の人が前足の人を抱え上げているということですよね!
馬だけでも結構な重量がありそうな中で、これをやっているなんて…!
最後まで存在感を発揮し続ける馬、会場も大いに沸いていました。

お兼中村七之助さん
手踊りと手ぬぐいの踊りのところ、娘だけれども他の娘とはまた少し違って、どこかにたくましさというか、芯の太さみたいなものを感じる娘でした。
そりゃあ怪力のお兼さんのことですもの。

そして最後の晒のところは、やっぱり見せ場ですよね!
晒がはためく音はさすがに聞こえなかったのですが、あのスピードで美しく晒を振るのは見ごたえがありました。
しかも下駄履き!!!
動きにくい下駄で大きく細かく晒を振ったあと、すっと座って一度きまるのですが、あれだけ動いたのにその座った姿勢の美しいことと言ったら。
踊る人としては当たり前のことなのかもしれませんが、「さすが」と思った瞬間でした。

それからもう一つ。
勘三郎さんの踊りは映像でしか見たことがなく、踊りの知識もないままに言うのは失礼も甚だしいとは思いつつ。。
ちょっとした足の運びがすごく似ていらっしゃるな、と思ったのです。
「あっ、この形!」と思う瞬間があったのを、忘れたくなくてここに記しておきます。
 

*狐狸狐狸ばなし


これはお楽しみな演目でしたね!
時代物、舞踊ときて、最後に現代語で分かりやすく面白い演目がくる構成、初心者には大変ありがたかったです。

もう千秋楽間近ですが、これは絶対にネタバレしない方が楽しめるので、あらすじには極力触れないように印象に残っているところをば。

まず主人公・おきわ七之助さん) の旦那である伊之助中村扇雀さん)には、度々笑わされました!
ちょっと洗濯物を干すときのアクの強い動きとか、倒れる間際の音楽に乗った軽快な動きとか、要所要所で絶妙でした。

何よりも笑ったのが、化けて出るところ。
大真面目に凄みを出しながらおもしろいので、そのギャップがおかしくて一人でしばらくツボにはまってしまった。笑

雇人又市中村虎之助さん)とのシーンも面白かったです。
お二方が親子でいらっしゃるのを知ってから見ると、台詞の些細なところに笑いどころがあっていいですね!
又市、キャラが掴めないと思っていたらすっかりしてやられましたよ…。

芝居の中で最も怖かったのがおきわですね。
旦那のさばき方の淡々とした感じ、打って変わって浮気相手の法印中村芝翫さん)へのしつこいほどのからみ、うわべの取り繕い方、、
世に言う女性の怖さを凝縮した感じでした。ラストが特に秀逸。

キャラとして恐ろしすぎたのは、牛娘片岡亀蔵さん)です。勢いと圧が凄い!笑

展開を読むのが苦手な私でも、無理なくついていけたし楽しめました。
何しろ自分の席の間近が舞台になる感動…!!!
平成中村座だからこそできた体験だったな、とありがたく感じます。


■まとめ


2回にわたってレポートしてきました、2018年の平成中村座 昼の部。
「平成中村座」という体験ができたことを嬉しく思います。
見にくかったり、椅子が固かったりといろいろありますが、全部総合してあの空気だったからいいや!と思えます。笑

強いて言うなら、夜の部も見たかった。。

次に平成中村座が浅草に来るのはいつになるのでしょう。早くも楽しみです。
そのときには今よりもっと思うことが増えるのだろうな、と思います。 

何はともあれ、

今年の私が歌舞伎好きで、この機会を得られて本当に良かった! 
 

平成中村座に行ってみた!劇場レポート編 2018

待ちに待った!平成中村座!!
ドキュメンタリーやシネマ歌舞伎の雰囲気を見るにつけ、
何て楽しそうな場所だろう、と心待ちにしていたのです。

とはいえ正直チケットは高かったし、座席のことも中の雰囲気もよく分からないし、
そもそも方向音痴が無事に会場までたどり着けるのかというところも含めてドキドキでした。

そんな平成中村座、
いやもう、行って本当に良かったです。ものすごく贅沢なエンターテインメントでした。 
 
まずは劇場についてレポートします!(感想編はこちら

 



1.劇場までの道のり


2018年の平成中村座、浅草駅からのアクセスです。
(年によって場所が変わるとか…また同じ場所に芝居小屋ができたときに役に立つことを信じて。)

私が今回使ったのは、観音通りを行って本堂の左から平成中村座に回り込むルート。
もちろんまともに仲見世通りからも行けますが、休日の仲見世の混雑はなかなかえぐいので。笑
でも仲見世を通ると「浅草に来た!」という実感がわいて、それはそれで好きです。

まずは浅草駅の雷門近くの出口を出て、
仲見世通り(雷門をくぐってまっすぐ歩く通り)の一本右、観音通りに入ります。

観音通り

こちらが観音通り。
途中にリサイクル着物の「たんす屋」さんやら「福服」さんやらがあるのですが、
浪費の誘惑を振り切ってまっすぐ歩きます。

左手に浅草寺が見えたら適当な場所から浅草寺境内に入って、浅草寺の諸々の建物を左に見ながら歩きます。

平成中村座_浅草寺横

平成中村座は浅草寺境内にあります。私はうっかり浅草寺の外をさまよってしまい、時間をロスしました。。

少し歩き、本堂が見えたら左から裏手に回り込みます
すると右手に幟のはためいているのが見え、何やら音楽も聞こえてきます。

幟を右手、本堂を左手に見ながら歩いていくと…

平成中村座_入り口

ありましたー!平成中村座の入り口です!うっかり見落としそう!
この右が当日券売り場のようです。

この小さな入り口を入って道なりに進むと、芝居小屋の入り口です。

IMG_20181124_152643

いいですねぇ!いよいよです。わくわくします。

ちなみにこの風景から後ろを振り返ると、
お弁当の売店、お土産物の売店、遠景に浅草花やしきの絶叫マシンが見えます。


2.座席について【1階竹席の場合】


※座ったことがあるのが竹席のみなので、限定的な話になってしまいます。ご了承ください。

劇場に着いたら、まず靴を脱ぎます
お茶子さん(スタッフのお姉さんたち)が配っているビニール袋に入れて、自席まで持っていきます。
竹席は椅子の下に、靴を入れられるスペースがありました。

靴を脱いで階段をのぼり、客席に足を踏み入れると…

DSC_0636

天井には中村座の大きな提灯!誇らしげで、堂々たる雰囲気です。

さて、一階竹席は長椅子です。椅子の面が畳になっていて、ふかふかの座布団が敷いてあります。
(私は大丈夫でしたが、終演後に「お尻が痛い!」という声がかなり聞こえました

床はカーペット敷きです。
11月だとかなり底冷えします
私は冷えると体のそこかしこが痛くなってしまうので、レッグウォーマーを持っていきました😅

通路は狭く、前に人が通るときは荷物をどかしたり、立ってあげたりしないと難しいかと思います。
座席自体も、お隣との距離は近めです。 

傾斜はついていますが、席によってはかなり見にくいと心した方が良いかと思います。
前の人がかぶって見えづらいから、と体を横に傾けてしまうと、
後ろの方の視界をかなりふさいでしまいます。(後ろの方がもっと傾くことになります。笑)
小さな会場なので、その辺はお互い様で!思いやりの心、広い心を忘れずに行くべきだなぁと感じました。

でも、舞台がとても近い
花道も、出から入りまで見やすい
客席からの舞台の見え方はこんな感じです。

平成中村座_見え方

花道・七三の方を向いてみるとこんな感じ。

平成中村座客席全景

下の方はちょっぴり遮られますが、十分によく見えると言えます。
日頃 歌舞伎座の幕見だの三階だのから見ている身としては、揚幕からの出入りが見られるだけで万々歳なので、
それをこの距離で見られるなどと言ったらこの上ない幸せなのです。

そして場所によっては、間近を役者さんが通ります!!!
私の座った席(竹席右側後方)は、真横の通路が役者さんの通り道でした。
何て嬉しい体験なんでしょう…!私なんぞがこんな場所に座って良かったのかとすら思います…!笑

オペラグラスを持って来ている方もいました。
あると細かい表情など、よく見えるかと思います。

しかし「江戸の芝居小屋」ならばそのようなものはないだろう、という考えから、
私は今回あえてオペラグラスなしで観劇してみました。笑
後方の席でしたが、問題なく見えましたよ! 

お弁当は基本的に、この座席で食べます。
途中で筋書やグッズの販売、ごみの回収が回ってきてくれます。至れり尽くせりです。


3.服装について


着物の方も、洋服の方もいらっしゃいました。
 
着物は、紬から柔らかい小紋まで様々だった様子。
落ち着いた色味をお召しの方が多かったのは、季節柄でしょうか。

洋服の方も、本当に様々です。
スーツの方もいらっしゃいましたが、カジュアルなスタイルの方も多かった印象です。
私はシンプルなワンピースで行きました。 

雰囲気としては和服がとても似合うので、ぜひお着物で行きたいところですが、
先ほど書いた通り通路が狭いので、洋服の動きやすさがいいのかもしれませんね。

いずれにしろ防寒対策はしっかりと

特に足元の冷えが厳しいので 、タイツに靴下を重ねるなり、レッグウォーマーを持っていくなり、
何かしら対策を練って臨んだ方が良いかと思います!


4.トイレについて


休憩時間は、特に女性用トイレが大変に混みます。
しかし数は十分なので、回転が早いです。

何しろ、霞番さん(かすみばん、トイレの誘導係)の捌きが素晴らしい!

どこが何人分空いているのかを流れるように誘導しながら、調子の良いトークで行列を和ませてくれます。
気の利いたアナウンスに何度も微笑んでしまいました。

「このトイレも、中村座名物でございます!」(by 霞番のお姉さん) 

なんと誇り高きお手洗いであることか!笑

トイレは屋内にあり、洋式です
個室一つ一つにスリッパが用意されていました。 

ちなみに霞番とは、 「トイレで流す=消える」というところから名付けられたとのこと(この記事)。
こんなところにも、江戸っぽい粋な心遣いを感じますね。 


5.平成中村座で買えるもの


確認できたのはこんな感じです↓

・お弁当何種類か
・お土産(含・中村座限定グッズ)
・筋書(プログラム) 1,500円
・イヤホンガイド

筋書は歌舞伎座よりもややお高めですね。
サイズはB6でしょうか、歌舞伎座や国立劇場より一回り小さかったですが、厚みがありました。
今回は買わなかったので、情報が薄いです…。

お弁当とお土産は、劇場を出てすぐの屋外スペースにて販売。
筋書については、外でも買えますが、幕間にお茶子さんが客席まで売りにきてくれます。


6.まとめ


今回は平成中村座の劇場についてまとめてみました。
一度行っただけなので、情報も薄いし不足も多くて大変恐縮ですが、少しでもご参考になれば幸いです。 

大きな劇場でしか歌舞伎を見たことがなかったので、この大きさの芝居小屋はとても新鮮でした。 
江戸時代は椅子ではなくて直に座っていたのだと思うけれど、
こういう空気感で芝居を見ていたんだなと思うと、歌舞伎の歴史に近づけたようで何だか嬉しい。

近くのお客さんの話し声はとても大きく聞こえてしまうのですが、
それもまぁご愛嬌で、江戸時代もそんなものだったのだろうな、と。笑
(最低限のマナーはもちろんありますが、、笑)

劇場内にはいろんなところに写真やイラストが飾ってあり、
その一つ一つに芝居愛、中村屋愛を感じました。
 
初めて歌舞伎座で歌舞伎を見たときに、その「歌舞伎のためにある場所」の雰囲気に圧倒され、感動したのですが、
平成中村座にはそれとはまた違った感動がありました。

***

右も左もわからず緊張とともに赴いた平成中村座での初観劇。
感想編に続きます!


「隅田川続俤(法界坊)」初心者はこう楽しんだ!〜吉例顔見世大歌舞伎 夜の部感想

11月の歌舞伎座、吉例顔見世大歌舞伎の感想と見どころです。

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今回は「隅田川続俤(法界坊)」

笑ってばかりの3時間でした!

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左端が法界坊の市川猿之助さん。躍動感。



■初心者でも楽しめるのか?


楽しめますとも!

登場人物が多くて、まともに理解しようとすると私はこんがらがるのですが、
家宝の取り合いと恋の行方にしぼって考えて
あとはその場その場を楽しく見ました。

「歌舞伎ってこんなに笑えるのか!」と驚く演目だと思います  

舞踊「双面(ふたおもて)」は、台詞もあって展開が分かりやすい。
何しろこの舞踊、後述しますが
踊りはもちろん音楽も興味深いのです✨


■私はこう見た!ここが好き!


とにかく猿之助さん演じる法界坊の動きが楽しい楽しい
 
恥をかかされてその場を逃れようとする場面の奇妙な動きとか、
花道から引っ込む場面の踊りの 足の軽さとか、
穴を掘る場面の軽妙さとか、
たまらなかったです。

恋文を差し替えられる場面では、会話のテンポが良くてずっと笑っていました!

それから川縁での甚三中村歌六さん)との斬り合いの場面、
きまるところがとても印象に残っています。
場所の高低や奥行きなど、大道具の面白さも感じられるような位置できれいにきまるのです。
舞台全体の絵面というか構図が素敵でした! 

法界坊は圧倒的に汚らしい拵えなのですが、
「ここまで汚い扮装は歌舞伎では初めて」とは筋書の猿之助さんのお言葉)
ときどき絶妙にいい男に見えることがあります。笑
あれは何だったのか…法界坊の人間としての余裕みたいなものなんですかね… 

そして舞踊「双面」、
音楽が常盤津(左側)と竹本(右上)の掛け合いになります。
「野分姫と法界坊の合体した霊」として踊るのですが、
この男女の違い、そしておどろおどろしさを出すのに、音楽がとても効果的でした!

常磐津に合わせて娘役で踊っていたかと思うと、
法界坊としての一面を不気味に覗かせて、太い音の竹本が聞こえます。

別の種類の音楽が、舞台を挟んで上手と下手に分かれているってすごいです。
古くから続く、ものすごく贅沢なステレオです。
それぞれの音楽の特徴をもっと掴めてきたら、
今よりもぐっと深い世界が広がるのだろうなと思います。

そして話題の宙乗りですが、
相当無理がかかりそうな体勢で吊られるので驚きました!
幽霊感がすごい!!笑

最後になってしまいましたが、尾上右近さん演じるおくみ、とても可憐でかわいらしいです。
それから最初の方に出てくる、お茶屋の娘のおなみ市川笑猿さん)も、
おくみとはまた違った娘感があってかわいらしかった。

 

■これさえ押さえれば楽しめます


以下に挙げるのは、観劇してみて
「初めてでもこれが分かっていれば楽しめそうだな」
「これを知っていればもっと楽しかっただろうな」
というのをまとめてみたものです。

★大体見せ場の前には、
「待ってました!」という掛け声がかかります。
この声を頼りに、舞台にぐぐっと注目!

冒頭にも書きましたが、
登場人物をまともに理解しようとすると分からなくなります!笑
特に私は顔覚えと複雑な筋の理解が苦手なので😭

そこで!

この記事にも書きましたが、
とりあえず最低限、
「家宝・鯉魚の一軸」と、娘・おくみをめぐる男たちの争い、
野分姫の恋の行方
だけにしぼって観劇しても何とかなるかと思います!

法界坊の悪巧みを懲らしめるのは、いつも甚三の役回りなのですが、
甚三というのが以前吉田家に奉公していた人間
つまり、要助=吉田松若丸とは(直接的かどうかは分かりませんが)主従関係にあたるわけです。
そこが分かると、途中で突然登場するこの甚三という男が
なぜここまで活躍するのか、というのが腑に落ちるかと思います。

基本的には、登場人物たちの楽しいやり取りに笑ったり、
亡霊となってからの一変した空気を味わったりと、
肩の力を抜いて見られる演目です!


■まとめ


中村座のハチャメチャなシネマ歌舞伎から入ってしまったので、
「普通の法界坊はこれか!」という感じでした。笑

いや、でも大変に面白かった!

夜の部は「楼門五三桐」の圧倒的な存在感と大きさに始まりますが、
インパクトは全然負けていないです。

途中で猿之助さんの骨折ネタが挟まれましたが、
ご快復なさって本当に良かった。
軽快な動き、とても楽しかったです!

頑張れば仕事帰りに滑り込める時間帯なので、
千穐楽の前にもう一度見に行けたら嬉しいです。
 

「十六夜清心」初心者はこう楽しんだ!~吉例顔見世大歌舞伎 昼の部感想

11月の歌舞伎座、吉例顔見世大歌舞伎の感想と見どころです。

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今回は昼の部・三幕目の「十六夜清心」

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一番右が清心・尾上菊五郎さん
最初にこのポスターを見たとき、美しさにうっとりしてしまいました。
いや、今もうっとりしています。この形…




■初心者でも楽しめるのか?


正直な話をすれば、
最初の方は眠かった!笑

というのは、
清元が心地いいのですよ…

澄んだ声でこぶしをまわしてゆったり流れるような音楽(語り)で、
そのリズムに身を任せるとつい眠くなるのです。

でも船が出てきたあたりから、後半は本当におもしろかった。 
 
川に落ちる場面の舞台の仕掛けなどは
「どうなっているんだろう?」と思いながら見ていました。 


■私はこう見た!ここが好き!


まず出だし、細かいところなのですが、
一人で出てきた遊女・十六夜中村時蔵さん)の草履の鼻緒が切れてしまう場面、
そのときに手慣れた様子でその場をしのぐ、
一連の所作がとても美しくて見入ってしまいました
十六夜一人がしゃがんだままのお芝居ですが、ぐっときました。

それから、何せ江戸っ子口調がかっこいい
中村吉右衛門さん演じる俳諧師白蓮(実は大盗賊)、
余裕しゃくしゃくで、ふくよかな感じというか。
只者じゃない感じが漂っていました。笑
十六夜にもたれかかられて、「悪くねぇなぁ!」という台詞が圧巻。

そしていちいち絵になるんですよ…

これまた細かいのですが、
最後の方で船頭を蹴飛ばす清心(菊五郎さん)の足に見とれた
何なのですかね、切れ味というか何というか…

***

清心はたぶん、本当はとっても弱いんだと思うのです。
そりゃぁお坊さんなのに色で追放されているんだから、推して知るべし。
泳ぎに長けていたせいで身投げには失敗するし、その後も度々死に切れない。 
(このあたりの清心、哀しいけれど可笑しい) 

小姓のお金を取るところまでは、(お金をとる時点で十分に悪いですが)完全に悪者になり切れていなかったはず。
それは、弾みで殺してしまった小姓の姿をちゃんと整えてあげる辺りから伺えます。

ところが、「しかし待てよ」という台詞から、声質もしゃべるテンポもがらりと変わる。
完全に腹をくくったのが分かります。

そこから先、清心の勢いはただただかっこいいです。
歌舞伎の悪はかっこいいんです。。 

最後のだんまりで、せっかくお互いに生きていたのに
決して十六夜と交わることができない終わり方が哀しいですね。
清心はもう十六夜の好いた清心じゃない。
十六夜も、もう清心のものではない。
この場面のだんまりは、そんな関係性がよく見える手法なんだな、と思いました。

 

■これさえ押さえれば楽しめます


以下に挙げるのは、観劇してみて
「初めてでもこれが分かっていれば楽しめそうだな」
「これを知っていればもっと楽しかっただろうな」
というのをまとめてみたものです。

★大体見せ場の前には、
「待ってました!」という掛け声がかかります。
この声を頼りに、舞台にぐぐっと注目!

物語は、愛し合う二人がともに心中に失敗し、
お互いそれを知らぬまま 全く別の道を歩くことになってしまう、
ということが分かれば問題ないかと思います。

先述しましたが、清心の「しかし待てよ」からの台詞が聞きどころ。
ここから清心、一気に性格を変えます
「待ってました!」が聞こえます
これは三人吉三のときにもほんの少しだけ触れましたが(この記事)、
河竹黙阿弥の作品とあって台詞のリズムも耳に心地よかった。

そして最後、清心が花道から去り、白蓮が舞台に残るところは
大向こうのかけ声がすごかったです。

(本当は最初の、十六夜と清心だけの場面の清元が聞きどころなのですが、
特に今回は歌舞伎俳優の尾上右近さんが
清元栄寿太夫さんとしてお目見え
だったので尚のことなのですが、
どうしてもこのあたりの音が気持ちよくて別世界に誘われてしまったので
私はもう何も申し上げることができないのでございます…)
 


■まとめ


夜の部は「楼門五三桐」、昼の部は「十六夜清心」で
吉右衛門さんと菊五郎さんという素晴らしいお二人が見られ、
11月はなんとも贅沢だなぁと思います。

「十六夜清心」は、とにかく細部まで美しかったな、という印象です。
ふとした瞬間の形にはっとすることが多かった。

全く知らないお芝居だったのですが、また一つ好きなものが増えました
 
プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇2年目、毎月何度か劇場に通う日々。
◆着物好きの友人の影響で、着物でのお出かけが増えてきた今日この頃。

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