ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

歌舞伎・文楽

初めての素浄瑠璃!女流義太夫Special Live『艶容女舞衣 酒屋の段』に行ってきました!


初めての女流義太夫・素浄瑠璃!行ってきました!

素浄瑠璃とは
「人形を遣わず、または立方の踊なしで、語りと三味線のみで演奏される浄瑠璃。」(広辞苑第五版)

つまり、人形浄瑠璃(文楽)や歌舞伎の「語り」だけを聴きに行くわけです。
舞台の真ん中に太夫さんと三味線さんが並び、 視覚情報なしで、耳だけで物語を味わいます

***

素浄瑠璃を聴きに行こうと思ったきっかけは、2018年末にNHKで放送していた『古典芸能鑑賞会』でした。

演目は『傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく) 新口村(にのくちむら)の段』。 

自らの犯した罪のためにお尋ね者となった忠兵衛と梅川が、もはや逃げきれないと悟り、父親に最後の別れをしにくる場面です。
忠兵衛の父・孫右衛門の、息子を想う心情が胸を打ちます。

が、

これ、歌舞伎座でやったときに笑いが起きたんです。

私はそれが初めての「新口村」だったこともあり、違和感を持ちながらも何となく一緒に笑ってしまったのですが、
「あそこは果たして笑うような場面だっただろうか…」とずっともやもやが残っていました。

その同じ演目を女流義太夫でやったのを、年末に放送していたのです。
語りは竹本駒之助さん。三味線は鶴澤津賀寿さん。 

あの日笑いが起きた場面。

私は家で一人で聴きながら、声を出して泣きました。

大罪を犯した息子のことが、それでも愛しくて仕方がなくて、何とかしてやりたいと思う孫右衛門の苦しさ切なさ。
その言葉がまっすぐに届いてくるのです。

テレビを通していながら、語りの力に衝撃を受けた体験でした。

それ以来、素浄瑠璃をちゃんと聴いてみたい、特に駒之助さんを生で拝聴したいと思い始めたのです。 

***

前置きがとんでもなく長くなってしまいましたが、この度その駒之助さんの語りを都内で聴くことができるとのことで、これは絶対に行かねば!!と足を運んだのでした。

三味線は鶴澤津賀花さん。
この「女流義太夫Special Live」という会を、2013年から開いていらっしゃるそうです。

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会場は神楽坂のライブホール・TheGLEE。
こじんまりとしていて、おしゃれで、落ち着きのある店内でした。

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***

今回上演する「酒屋の段」のざっくりあらすじはこんな感じ。

大阪で酒屋を営む半七は、お園という妻がありながら幼馴染の芸者・三勝といい仲で、子までもうけてしまいます。
これに激怒した半七の父・半兵衛は息子を勘当、お園の父・宗岸(そうがん)も怒り心頭で、娘を連れ戻します。(ここまではこの段の前提)
しかし嘆き悲しむ娘の姿に耐えかね、宗岸は「娘をもう一度嫁として迎えてほしい」と再び半兵衛のもとへ。
つれなくあしらう半兵衛。しかし、そこに隠されていたのは、半七が人を殺めてしまったという事実でした。
今お園を迎えたら、彼女が若くして後家となってしまうことを思い、半兵衛はわざとつれなくしていたのです。
お互いの親心に感じ入り、和解する宗岸と半兵衛。
落ち着かないのはお園です。お尋ね者となった半七を思いやり、いっそ自分がいなければ…と嘆くのです。
(このお園のセリフ「今頃は半七様、どこにどうしてござろうぞ」が大変に有名、らしいです。知らなかった)
お園、そして宗岸と半兵衛、半兵衛の女房がそれぞれ半七と三勝に想いを馳せる中、陰でその様子を聞いていた二人は、名残を惜しみつつ、心中へと向かっていくのでした。 

***

生で聴いてみて、やはり素敵でした。感動。
男親二人の切ない、子を想う心に打たれます。


前半、宗岸が娘・お園を再び半七の家に連れてきたとき。
宗岸の詞の中で、娘のことを「可愛い、可愛い…」と繰り返すのですが、この場面、宗岸としてはものすごくバツが悪いはずなんです。
一旦連れ戻した娘を、再びもとの家に嫁にやろうというのですから。

でも、それでも娘をかわいいと口に出してしまうほど、宗岸としては思うところがあったのですよね。 

この場面で娘を「可愛い」と言うことについて、宗岸は迷ったんじゃないかな、と思います。
でも一度認めてしまったらもう気持ちが溢れてしまって止まらない、という感じがしてとても切なかった。
一人の娘として心打たれました。


一方 半兵衛は、前半はひたすらお園のことを想ってくれるのです。血が繋がっていないにも拘わらず。
それもまた情に溢れている素敵な場面なのですが、私が半兵衛の詞で刺さったのは、後半の半七の書き置きが見つかった場面です。

それまで半兵衛は、息子への想いをあまり口に出していません。
しかしここにきて、息子が善右衛門という人間を殺してしまったことについて

「あのまた善右衛門といういふ奴が、大抵やおゝかた悪い奴ぢゃわいの。あんな悪者でも喧嘩両成敗。わが子の命を解死人にとらるゝと、思へば╱╲宗岸殿。おりゃ口惜しい、アヽ口惜しいわい、エヽ惜しいわいの」

と感情を露わにするのです。

やっぱり本音はここだよね、と。
息子の代わりに縄にかかるくらいなんだから、息子のことを強く想っていないわけがないのです。


お園ちゃんの有名な台詞、「今頃は半七っつぁん、どこにどうしてござろうぞ…」。

大罪を犯し、お尋ね者になっている半七。
三勝と通じ、妻である自分のもとに帰ってきてくれない半七。

半七はろくでもないけれど、お園は本当に純粋に、半七を恋い慕っています。
去年病気したときに、あのまま私が死んでいたら、きっと子どもに免じて三勝を家に迎えることになっただろう、こんなことにはならなかったかもしれないのに…と嘆く。

いや、違うんだよお園ちゃん、そんなに思い詰めないでおくれ。。

半七の書き置きの「未来は夫婦」という言葉を素直に信じ、喜ぶお園。
気が優しすぎるのよ…そこは「せめてマア一日なりとこの世で女夫にしてやりたいわい」という宗岸の詞が、お園としても本心じゃないのかな、と思います。

代弁してくれる人がいて良かったね、と。


この書き置き、半七と三勝がなした子・お通の守り袋に入っていたのですが、
そのお通にかける、半兵衛女房(=半七の母)の詞が忘れられません。

「コリヤ孫よ、モウ父も母もないほどに今夜からこの婆と一緒に寝いよ」

何とも温もりがあるではないですか。

こういう温かい台詞、あの語りで聴くと本当にしみじみといいです。
優しく赤子を抱き寄せているのが目に見えるようでした。

***

義太夫の何が好きかって、この語りで十分に感情を揺さぶられている上に、三味線が大いに煽るところなんですよ。

今回も後半特に、三味線が生み出す空気の震えみたいなものが伝わってきて、はっとしました。
小さな会場だったからこそ味わえた迫力もあったのかもしれません。

いわゆる「曲(唄)」ではないから、どんな風に三味線が鳴るのか予測がつきにくく、それではっとさせられるところもあるのかもしれませんね。

*** 

視覚情報がなくても、それぞれの登場人物の心情が浮き上がってくる。
どんな表情をしていたか、どんなに胸が痛んでいるか、聴き慣れない言葉遣いながらもちゃんと伝わってくる

逆に、視覚情報がないのがいいのかもしれない。
その分、語られる言葉を聴きとって、自分の中で物語を作っていこうと積極的になれる

そんな素浄瑠璃の良さを満喫した会でした。


文章そのものが文学、文芸としてあるのだから、なぜわざわざ語り聴きに行くの?と思うかもしれません。

しかし、語りはその文章に、物語として命を吹き込むための大事な存在です。

確かに文章は、そのままでも面白い。大好きな言葉がたくさんあります。
しかしそれが語られることで、より深く味わい、より深い文学世界に浸ることができるのです。

また行きたい。

なかなか勇気が出なくて一歩を踏み出せませんでしたが、行ってみてよかった。
好きな芸能が、また一つ増えました。

 

物知らずが行く歌舞伎#12〜八月納涼歌舞伎(歌舞伎座)今の知識と演目選び

この企画は、知識が足りないゆえに
歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方
の背中を押すべく、
歌舞伎歴1年半の初心者が何を知っていて、何を目的に、
どのチケットを買うのか
をさらけ出す企画です。
初心者の無知っぷりと、この1年半でちょっと学んだことを、
背伸びせず、恥ずかしがらずにお伝えできればと思っています。


物知らずシリーズ、更新速度がどんどん遅くなってまいりました。初日は目の前です。わたくし、お尻に火がついております。

さて、八月納涼歌舞伎は三部制。
各部が少しずつ短い分、いつもよりちょっぴりお安いお値段で観ることができます
一番手軽な3階B席3,000円です。

※ご参考までに、3階B席からの見え方はこちら↓




全演目の見どころなどは、すでに公式サイトに掲載されていますのでそちらをご参照いただき、
「歌舞伎公式総合サイト 歌舞伎美人」八月納涼歌舞伎の情報はこちら)(当方またもや完全なる出遅れ)
ここでは「歌舞伎初心者、こんな感じの予備知識で観に行きますよ!」というのを晒します!

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■歌舞伎座 八月納涼歌舞伎の演目は?


8月の歌舞伎座。
演目は以下の通りです。

【第一部】
一.伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
 御殿/床下
二.闇梅百物語(やみのうめひゃくものがたり)

【第二部】
東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)

【第三部】
新版 雪之丞変化(しんぱん ゆきのじょうへんげ)


「伽羅先代萩」を「めいぼく〜」と読むのを知ったときには、知識人の遊び心に驚きもしたし、半ば呆れもしました。笑
伽羅(きゃら)って、名木の誉れ高い香木ですよね。 だからって。。

ちなみに私、学生時代に一瞬だけ香道の講座に通いました。
伽羅の香も度々聞かせていただいたはずですが、 他の香木との違いがいまいち掴めていない。。
とりあえず、少しスパイシーさのある、甘い香りだったことは何となく記憶しております。(※多分他のものもそう) 


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


【第一部】

「伽羅先代萩」は、NHKEテレ「にっぽんの芸能」で、いつだったか坂東玉三郎さんが語っていらっしゃったのを覚えています。
核となる女方の役・政岡の演技について。
お芝居として観たことはありませんが、名前とうっすらとした展開は分かる…気がしております。 
 
「闇梅百物語」は、映像でちらりと…。
おばけがいろいろ出てきて踊るやつ、というぼんやりとした知識です。笑 


【第二部】

松本幸四郎さん・市川猿之助さんのタッグでシリーズでやっているものですよね。
どれも観たことがないのですが、十返舎一九の原作をもとに、いつも楽しそうな舞台が展開されていることだけは存じております
 

【第三部】

これは「新版」とあるように新たな演出でやるようなのですが。。
そもそもの「雪之丞変化」は、初めて聞く名前でした。


*現時点で知っていることは?


◇伽羅先代萩


先述の通り、テレビで玉三郎さんが語っていらしたのを観たくらいしか分かっていませんが。。

要はお家騒動もので、政岡(今回は中村七之助さん)は自らも一人の母でありながら、幼君・鶴千代中村長三郎くん)を守るために、未だ幼い自らの息子を犠牲にするのです。
政岡の一子・千松中村勘太郎くん)も、自分のすべき役目は分かっていて、進んで鶴千代の身代わりになります。

そして愛息が息絶えても、あくまでその家に仕える者として、すぐに素直に悲しみを表に出すことができない。

そんな一人の女性の心の内を、役者としてどのように表現しているかというのが、番組で語っていらした内容でした。

本当にね、当ブログでは何度も言っているのですが、歌舞伎に出てくる女性たちは強すぎる、無理をしすぎる。。

おそらくこの場面を含むお話かと思います。


◇闇梅百物語

本当にもう、先述の「おばけがいろいろ出てきて踊るやつ」というくらいしか知らないのですよ。笑

でも配役を見ているだけで、骸骨、傘一本足、河童…と何やらにぎやか。
夏にはぴったりの演目なのではないでしょうか!


ちなみに、百物語というのは「怖い話大会」のようなものだったようです。
何人かで集まり、行灯に百本の灯心を入れ、ひとつ怖い話が終わるごとに一本ずつ抜いていき、最後の一本が抜かれて真っ暗闇になったときに、化け物が現れるとされていたとのこと。

百物語って幽霊の話ばかりかと思っていたのですが、 江戸当時はどちらかというと不思議な話が中心だったようです。
「因果応報というような由来のはっきりするものでなく、説明のつかない怪異や不気味さが多く語られ」たそうです。『一日江戸人』杉浦日向子、平成17年、新潮文庫) 
 

一日江戸人 (新潮文庫) [ 杉浦日向子 ]

価格:561円
(2019/8/7 00:24時点)


***

はい、そして第二部と第三部の演目にいたっては何も知らないという。

元気いっぱい物知らず。 


■観てみたい演目は?


これはもう、私は何よりも「伽羅先代萩」でした。

七之助さんの政岡、玉三郎さんからどのように引き継がれていったのでしょう。
たかだかテレビでほんの一部を垣間見ただけですが、少しでも知ったあとだと観劇欲が高まります!
それから、三月の「盛綱陣屋」(感想はこちら)で堂々たる小四郎を演じていらした勘太郎くんの千松。
長十郎くんの成長ぶりも気になるところです 
パパが大河ドラマでご活躍の間に、ご兄弟は舞台で大活躍ですね!

そして「闇梅百物語」
やはり今の季節に楽しいものは楽しんでおきたいな、というのはありますね。笑

「東海道中膝栗毛」は、スピンオフの上映があったり、前作がシネマ歌舞伎になっていたりと、盛り上がっている様子。
私はいずれも観ていないのですが、先日の三谷かぶき(感想はこちら)を観るにつけても、幸四郎さんと猿之助さんのコンビは絶対楽しい
宙乗りもあるようです。

さて、ここまで全くと言っていいほど触れていない「新版 雪之丞変化」ですが、これは幕見もかなり並ぶのでは?と思っています。

何せ!玉三郎さんなので!!

「歌舞伎美人」内のこちらの記事に詳しいですが、映像を用いつつ、実演と織り交ぜて展開するようです。
どんな演出になるのでしょう…?納涼ならではの実験的作品になるのでしょうか。
その前にこの記事内のお写真の隙のなさを見て。


いずれにせよ、また絞れないひと月がやってくることは間違いありません。笑


■どのチケットを買う?


白状しますと、すでに一部はチケットを買いました。幕見で我慢できる気がしなかった。。
とはいえ決して「いいお席」ではありませんが。笑

二部と三部も幕見で観に行くのではないかと思います。 

さて、冒頭に「ちょっとお安く観られる」 ということを書きました。
確かに各部だけ抜き出して観れば、お安く観られるのは間違いありません。

しかし、二部制のときを考えると、全て幕見で通した場合、4,000円×2部で8,000円。
今回はおそらく幕見の通しが3,000円だと思うので、すべて通すと3,000円×3部で9,000円。

・・・。

商売上手めー!!!笑 


■まとめ


先月はいろいろと忙しくしておりまして、ブログの更新はおろか、歌舞伎は一度も観に行けず…
現在狂おしいほどに、劇場の空気と歌舞伎を求めております。笑 

そんな8月は、ハードルを感じずに気軽に観に行けそうな演目が揃っているなぁという印象です。 
「難しい!」と感じる可能性があるのは、先代萩くらいではないでしょうか。
あとは現代の感覚で楽しめるものなのではないかと踏んでいます。

いや、でもだからと言って、古典の演目を勧めないわけでは決してないのです。
むしろ古典に、よく分からなくても圧倒的な力を感じたりするよな、と日々思っています。 

…ちょっと話の方向性がずれてしまったのですが

8月は幸いお休みも多くいただけるので、先月分を取り返すように歌舞伎を観たい!!
歌舞伎座の空気に浸りたい!!!


夏の暑さの中で幕見席に並ぶ恐ろしさを、私はまだ知りません。
いらっしゃる方はどうぞお気をつけて…!

おすすめ日舞公演!未来座=彩(SAI)=「檜男(ぴのきお)」「春夏秋冬」観てきました!


毎年行きたいと思っていた未来座さんの公演、やっと行けましたー!

古典の舞踊技法をもとに、新たな日本舞踊作品を発表している未来座の公演。
今回が3回目の公演ですが、日本舞踊協会としては50年以上、こうした活動をしているそうです。

今年の演目は「檜男(ぴのきお)「春夏秋冬」の二本立て。
※「檜男」は、檜の字に☆で濁点がついています。

感想をまとめます!

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パンフかわいい…! 




*「檜☆男」


ほし組・つき組とキャストが分かれたうちの、ほし組公演を観てきました。
つき組はまた全然違う雰囲気なんだろうなぁ。

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お馴染みのあのピノキオのお話を、日本舞踊で。
語りには、歌舞伎役者の坂東巳之助さん

これがとっても良くて、くすっと笑いつつ、最後はぽろぽろ泣いてしまいました
知っている話なのに。泣くと思ってなかった。笑

***

開演前からコオロギの声がしているの、物語に自然に入り込めていいですね!

舞台の大道具は、まるで絵本のよう。わくわくします。

おじいさんが大事に作ったお人形たちは、もちろん日本寄りの人形が多いんですが(笑)、
それぞれ動き方が全然違って、観ているうちにどの人形にも愛着がわいてきます!

女の子らしくかわいらしく動く「かりん」(もうこれが本当にかわいくて愛しい!)
名前から想像できるいかにもな雰囲気が楽しい「おふく」、
途中見事な人形振りを堪能できる「ちゅうべえ」と「うめがわ」(!)、
小ネタ満載で片時も目が離せない「うば」、
派手な衣装で物語を動かしていく「ぎんのじ」と「でび」。
頭に灯篭を乗っけた「竹人形」たちもきれい!

途中にはちゃんと、それぞれの人形の見せ場が用意されているのですが、
この人形が出てくるときに、日本人形が入っているような、背景が金のガラスケースありますよね、あれに入って出てくるのです。
演出が細かい!笑 

お話を語ってくれるのは、最初からずっと鳴いていたあのコオロギです(「こおろぎ安」というお名前。声は巳之助さん)。
こおろぎ安、会場を巻き込みつつお話を展開していってくれます。

そんなキャラクターたちに囲まれて、物語の中で成長して行く「檜男」。
最初はカタカタの頼りない動きだったのに、、と思うとラストが本当に素敵です。

一挙手一投足が愛しい、愛嬌たっぷりの檜男。
かりんとの淡い恋模様もまた微笑ましい!

国立小劇場は、舞台の方々の表情も見やすいサイズ感なのも嬉しいところです。

***

演出も楽しくて、親しみやすかったです。
絵本の世界のような大道具、客席の使い方、多様な音楽…飽きさせません。

何せ!踊りを!!踊りを観て!!!
全く堅苦しくないので!むしろ親しみと愛嬌の塊なので!!!

関係ありませんが梅川と忠兵衛、場面は違えどわざと歌舞伎座と当てたのか…?


*「春夏秋冬」


25分の休憩を挟んで、「春夏秋冬」が始まります。
美しい映像を使いつつ、決してそれが邪魔になることはなく、世界観を作り上げているなぁと思いました。

先ほどの舞踊劇とは違うアプローチで、日本舞踊の魅力や可能性がぎゅっと詰まった演目でした!


【春】
 
これはまずもって、着物がとにかくきれい!
女性舞踊家13人が美しく振袖で踊るのですが、全員違う振袖なんです!!

一列に並んだところなんか、雑誌かファッションショーを眺めているよう
日本舞踊を始めた理由に「着物が着たいから」 は一大勢力なのですが(笑)、こんな素敵なものを観たら、より一層その熱が高まると思います!

加えて踊りはもう、「これぞ日本舞踊」というような華やかさと柔らかさがありました。
「日本舞踊」と言われてイメージする世界はこんな感じなのかな、と。

踊りっていいなぁ。。 

【夏】

打って変わって、男性舞踊家10人の群舞。
袴の衣擦れの音っていいですねぇ。。それだけでそわそわしちゃう。

それでですね、男性舞踊家の群舞、かっこよくないわけないんですよ!!

この部分のテーマは夏祭り。
舞台の熱量がどんどん上がり、そのスピード感と大きさと迫力に、観ている方もどきどきしてきます。 
 
日本舞踊の「かっこいい要素」を集めたらこうなるなぁという感じ。
最後の締め方がまたたまらない!!!

【秋】

そんな勢い溢れる舞台の空気をがらっと変えるのは、井上八千代さん

ただひたすら、その舞の作り出す空気に浸れる喜び…
振りの意味が分からなくても、無駄の全くない美しさに、呼吸すら忘れて見入ってしまいます

背景に浮かんだ大きな月。
広々とした舞台は、音楽とも相まって物寂しさがあります。

その中で、一人舞うお姿が尊くて。

決して力が入っているわけではないのに会場全体がぴんと張りつめるようで、
振りが多いわけではないのに密度が高い。

抽象的な言い方になってしまいますが、八千代さんの京舞の、その空気感がとても好きです。

【冬】

最後は、春と夏に登場した舞踊家たちが一堂に会しての踊り。

独特な響きの音楽に合わせ(なんとこれが鶴澤清治さんの作曲だったんですね!)、冬を生き抜く鳥たちが力強く踊ります。

これだけの人数で、あの大きさの舞台で踊るのは本当に壮観です。

最後は静かに、作品が閉じられます。


*まとめ


近くにある芸能、たとえば歌舞伎とか、あるいはダンスとかバレエとか、そういうものに比べて、
日本舞踊って「この公演を観てみようか」となりにくいジャンルだと思うのです。

でも、ちゃんと日本舞踊でもできるんですよね。
こんなにエンターテインメント性の高いことだって、古典の日本舞踊を使ってできる。 

だから、何だかこの公演は日本舞踊好きとしては嬉しかったし、一人でも多くの方に観ていただきたいな、と思いました。まわし者じゃないですよ!笑

6/22(土)・6/23(日)、残り5公演。当日券もあるようですよ!
お時間ある方はぜひ(^^)

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※23日(日)のみ、第三部がないようです。 


物知らずが行く歌舞伎#11〜七月大歌舞伎(歌舞伎座)今の知識と演目選び

この企画は、知識が足りないゆえに
歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方
の背中を押すべく、
歌舞伎歴1年半の初心者が何を知っていて、何を目的に、
どのチケットを買うのか
をさらけ出す企画です。
初心者の無知っぷりと、この1年半でちょっと学んだことを、
背伸びせず、恥ずかしがらずにお伝えできればと思っています。


物知らずシリーズ、大変に遅くなりましたが7月分です。もう6月終わる。。
(いや、でもこの記事などなくても7月は情報に溢れるはずだと確信しております。なぜなら、)

7月の歌舞伎座は海老蔵さん祭りです。
ご子息の勸玄くんもご出演とあって、6月20日時点ですでに昼の部は全日程売切れ
夜の部も3階席はA席、B席ともに満席です。ひえぇ 

そんな七月大歌舞伎、きっと初めて歌舞伎をご覧になる方も、いつもより多くいらっしゃるのではないでしょうか。

全演目の見どころなどは、すでに公式サイトに掲載されていますのでそちらをご参照いただき、
「歌舞伎公式総合サイト 歌舞伎美人」七月大歌舞伎の情報はこちら)(当方完全なる出遅れ)
ここでは「歌舞伎初心者、こんな感じの予備知識で観に行きますよ!」というのを晒します!




■歌舞伎座 七月大歌舞伎の演目は?


7月の歌舞伎座。
演目は以下の通りです。

【昼の部】
一.新歌舞伎十八番の内
 高時(たかとき)
二.西郷と豚姫(さいごうとぶたひめ)
三.新歌舞伎十八番の内
 素襖落(すおうおとし)
四.歌舞伎十八番の内
 外郎売(ういろううり)

【夜の部】
通し狂言
星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん)
 成田千本桜


今月は比較的読みやすい演目名が並びますね!
それだけでちょっぴり安心感があります。


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


【昼の部】

「素襖落」は、昨年11月に歌舞伎座で観ました!
尾上松緑さんの太郎冠者でした。楽しく観た記憶。
同じ演目、結構ちょこちょこ出るんですね。 
 
「外郎売」、こちらは演劇をかじっていた時代に馴染んだもの。
歌舞伎としては完全なる初めましてです。むしろよく本物知らずにやってたな。
 
あとは残念ながら、存じ上げませんね…。
名前すら知らなかった演目2つです。

【夜の部】

何も分かりませんっ!(簡潔)
でも場面の名前を見る限り、「義経千本桜」が元になっているのかしら…?


*現時点で知っていることは?


◇素襖落


狂言がもとになった、気軽で楽しい演目だったと記憶しています。

遣いに行った先で、散々酒を振舞われた上に、褒美に素襖(すおう、武士の礼服の一つらしいです)までもらった太郎冠者(たろうかじゃ)

せっかくもらった素襖を主人に取られまいと、必死に隠し通そうとするのですが、
いかんせん太郎冠者はすっかり酔っ払っているわけです。 

千鳥足で頭もいまいち鈍くなっている太郎冠者と、その主人との間の素襖攻防戦が笑いを誘います。


◇外郎売

「外郎売」と言えば、早口言葉の長ゼリフが有名なのではないでしょうか?

かく言う私も演劇部時代、一生懸命練習しました!
歌舞伎がもととは知っていましたが、当時は歌舞伎が何かを知らなかったので、ただ闇雲でしたよね…。
当然知らない言葉ばかり出てくるので、なかば呪文のように覚えた記憶があります。笑 

この早口に至る流れは全く知らないのですが、ぜひ本物を聞いてみたいものです。


◇成田千本桜

この演目自体は知らないのですが、元になっているであろう「義経千本桜」は浄瑠璃の三大名作の一つで、とても有名な演目です。

通しではなかなか上演されませんが、「渡海屋」「大物浦」「鮨屋」「吉野山」なんかは単独でよく出ているようで、テレビ放映も多く、いずれもどこかしらで観たことがあります。
(「鮨屋」を今年2月に観たときの感想はこちら

私が観劇を始めたこの短い間に観ることができているのだから、相当頻繁にやっていると思っていいのではないかと。笑

全編通すと主人公がどんどん変わってしまうので、その辺がどのようになるのか分からないのですが、きっと見どころ盛りだくさんの舞台になるのでしょう!

各場面の主人公的な役を、全て海老蔵さんが早替りでなさいます。
宙乗りもあるようです。凄そう。


■観てみたい演目は?


やはり知っている演目として、「素襖落」「外郎売」は気になりますね~。

特に「外郎売」は、海老蔵さんのご子息・堀越勸玄くんが、早口の長ゼリフを勤めるようですよ!
市川新之助襲名を来年に控えた勸玄くん、ご活躍が楽しみです。

夜の部は、先述しましたが海老蔵さんが13役の早替り!
4時間ほどの長丁場を、これだけ替わりながら勤めあげる物凄さ。

どれを観ても、きっと見ごたえがあるんだろうなぁ。


■どのチケットを買う?


7月も幕見になりそうですね…何せチケット買えないので…

でも幕見席も相当混雑するのではないかと。
5月の團菊祭、海老蔵さんの出る幕はとても並んでいたと聞いています。

今回もみなさん早くから通しの切符を買いに並ぶんじゃないかなぁ、と私は踏んでおります。
途中から観ようとすると立ち見になりそうな気が。。

Twitterで「歌舞伎座幕見」と検索すると、幕見の混み具合情報を多くの方が提供してくださっているので、行く前に状況を見ておいた方がいいかもしれません。

それにしても海老蔵さん&勸玄くん恐るべしです。さすがです。


■まとめ


海老蔵さん、実はそれほど観たことがあるわけではないのです。
昨年の團菊祭で観たくらい。あとはシネマ歌舞伎で拝見したのが一回でしょうか。
今年の5月も見損ねているので

でも、その少ない機会でも、やっぱりとても印象に残っています。存在感がすごい。
ぜひまたしっかり拝見したい!

夏本番の7月、幕見席の切符売り場に長時間並ぶのはなかなかしんどそうですが、水分と塩分を欠かさぬように気を付けつつ頑張りたいと思います!笑

 

「封印切」初心者はこう楽しんだ!〜六月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想


6月の歌舞伎座、昼の部の締めは「恋飛脚大和往来(こいびきゃく やまとおうらい)「封印切(ふういんぎり)と呼ばれる場面です。

上方の香りがしてくる一幕。

楽しく観ていたら、知らず知らずのうちに取り返しのつかないことになっていて、見事に引き込まれました。

片岡仁左衛門さん亀屋忠兵衛
ふんわりとしていて、間違いなくいい男なんだけど憎めなくて、最後のおそろしい緊張感にやられました。。

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今月の絵看板。上から主人公・忠兵衛、恋仲の傾城・梅川、恋敵・八右衛門。




■初心者でも楽しめるのか?


楽しめます!
聞き取りやすい、現代とそう変わらない言葉で進むので、ストーリーも掴めると思います。

笑いどころ多く、テンポも良く。おすすめしたい一幕です!!

封印を切るに至る心理、何だか分からなくもないな…と思わせる説得力。 

***

総じて分かりやすいですが、強いて言うならざっと以下のことが分かっていると良いかもしれません↓
 
・主人公・忠兵衛は飛脚問屋。荷物やお金を運ぶのがお仕事。
・大切な荷物の封には印が押してあって、これを勝手に破るのは超重罪。 
・傾城・梅川の身請をめぐり、八右衛門と忠兵衛が張り合っている。(梅川は圧倒的に忠兵衛が好き。)


■私はこう見た!ここが好き!


いやもう、何せテンポがいいので初っ端から引き込まれてしまうんですよ。 

忠兵衛仁左衛門さん)のいい男ぶりはもう花道から匂い立つよう。
「いい男」といっても強そうでは全くなくて、むしろ頼りなさそうな、憎めないかわいらしさがあるというか、「ほっとけない」感じでしょうか。

それを迎える女将のおえん片岡秀太郎さん)の軽口も楽しい!
ふわっとしていて、手慣れた感じで、そっと笑わせてくれます。
下駄の音も心地よいです! 

おえんと忠兵衛のやりとり、いいですねぇ。
忠兵衛も来慣れているのがよく分かるくらい、二人の間のぽんぽん投げ合う会話が調子良くて好きです。


梅川片岡孝太郎さん)との二人の逢瀬の場面、これもまた二人の間に流れる空気がとても良くて、わざと冷たくする忠兵衛もかわいらしい。

そんな楽しい場面なのですが、きまって形を見せるところは美しいのです。こりゃ惚れるわ。。


八右衛門片岡愛之助さん)とのやり合い、これは口だけでいったら八右衛門が強い!
勢いに飲まれます。まくし立てる八右衛門、見事に嫌なやつ!笑

でも周りはみんな忠兵衛推し。
だから別に忠さん、無茶しなくても良かったのに…と思ってしまいます。

いや、でもここ、本当にすごいなと思ったんですよ。

八右衛門と忠兵衛のやりとり、本当に他愛もないものなんです。
八右衛門の難癖なんて正直「子供か!」という感じだし、それにむきになる忠兵衛もまた「こいつもやっぱり頼り切れないんだよな~」と思わせてしまう。

そんな大人げないやりとりだったのに、気付くと忠兵衛が、どうしようもないところに追い込まれている


顔面蒼白の忠兵衛の手元からばらばらと零れ落ちる金貨の輝き…えぐいです。。

***

細かいところですが、忠兵衛が店を訪ねるとき、中で梅川が「畳算(たたみざん)」をしているんですね。
かんざしをとって、畳の上に落として、落ちたところから縁までの畳の目の数で占うものなんですが、
この振り、踊りに非常に良く出てくるのです。
実際にかんざしでやっているのを初めて見て、「これか!」となりました。

やっぱり歌舞伎を観ると、踊りへの理解が深まって嬉しい!
なくなってしまった風俗的なものを見られるのも、歌舞伎の好きなところです。



■まとめ


筋書で、仁左衛門さんが「悲劇の場合、前半を明るくして、後半の悲劇を際立たせる」とおっしゃっています。(p.63)
そのお言葉通りの舞台でした。

前半に力を抜いて観ていた分、忠兵衛が封印を切ってしまって血の気を失うところ、こちらも緊張で指先が冷たくなりました。笑

上方ならではであろう言葉のやり取りの面白みや勢い、柔らかさを存分に味わえるのも魅力です。

「石切梶原」で思いっきり時代物を堪能したあとにこれが待っているという、今月の昼の部の満足感たるや。
筋書にはこの二つの演目を比較した葛西聖司さんの文章も載っていて、とても興味深かったので、そちらもおすすめです!

 
プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇2年目、毎月何度か劇場に通う日々。
◆着物好きの友人の影響で、着物でのお出かけが増えてきた今日この頃。

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