ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

初めて

【歌舞伎初心者向け】ざっくり予習する「熊谷陣屋」

2019年2月の歌舞伎座で上演中の「熊谷陣屋」。
素晴らしかったのでいろんな人に勧めたいと思いつつ、
何せ話が分かりにくくて、「歌舞伎は初めて!」という方にはなかなかハードルが高いようにも思えます。

そんなわけで、今回こんな記事を書いてみました。

目的はあくまで「初めて歌舞伎を見るような方がざっくり予習できる」というところなので、
芝居好きの方からしたら「熊谷陣屋を汚すな!」というレベルかもしれませんが、悪しからずご了承ください。

(歌舞伎公式サイト「歌舞伎美人」こちらに、今月熊谷を演じていらっしゃる中村吉右衛門さんのインタビューがあります。とても興味深いお話なので、もっと深いところを知りたい方はぜひ。)



1.何が起きる芝居?


源氏方の武将・熊谷次郎直実が、「平敦盛を討った」と見せかけて、実は我が子を身替りにして敦盛を救っていた、という話。

戦乱の世の中、16歳の我が子を手にかけねばならなかった熊谷の、無常を悟りながらも抱える深い悲しみが胸を打ちます。

2019年2月の歌舞伎座公演では、上演時間は約1時間25分です。 

★『平家物語』の「敦盛最期」とは違う展開なので注意です!敦盛生きてます! 

2.お話の前提


この場面を最も分かりにくくしているのが、誰も真実を口外できないところ。
誰のセリフにも出てこない「討たれたとされている平敦盛は生きていて、熊谷の一子・小次郎がその身替りとなった」という事実が、最も重要なところです。

敦盛は後白河院の御落胤であるため、絶対に殺してはならない存在なのです。

それからもう一点、源平合戦の時代が舞台であること分かっていると良いかと思います。
源氏が優勢、平家は滅亡まっしぐらです。  

主人公の熊谷や、途中で出てくる源義経をはじめ、舞台上にいるほとんどの人物は源氏方

途中でいそいそとやってくる謎のおっちゃん・弥陀六(実は平宗清)は、平家方です。


3.注目すべきもの


【最初から舞台にあるもの】

■制札(せいさつ、桜の横にある立て札)

書かれているのは「一枝(いっし)を伐(き)らば一指(いっし)を剪(き)るべし」という言葉。

「枝を一本切るならばその指を一本切る」というのが表面上の意味ですが、
その真意は「花の枝(=平敦盛)を切らずに自分の指(=熊谷の息子・小次郎)を切れ」、つまり「自分の一子を身替りにして平敦盛を救え」というもの。
これは源義経による命令です。
救う敦盛は平家ではありますが、先述の通り後白河法皇の子供であるため、絶対に殺してはならない存在なのです。

【途中で出てきたら注目!】

■首桶(くびおけ)

熊谷が義経に持ってくる円柱型のもので、中には切り首が入っています。

これは敦盛の首と見せかけた小次郎の首

中身を見た女性陣(敦盛の母と小次郎の母)は、敦盛が討たれたと信じきっていたのに中から小次郎の首が出てきたので動転してしまいます。

しかし、あくまでこの首は「敦盛の首」としなければならない。
偽首だと他の人に知られてしまったら大変ですから、最後まで「小次郎」という名前は出ず、この首のことは全員が「敦盛」と呼び続けます

だから分かりにくいのです。。

■鎧櫃(よろいびつ)

義経が弥陀六(途中で出てくるおっちゃん)に渡す黒い箱。
弥陀六が背負って帰ります。

中に入っているのは、なんと無事だった敦盛その人
しかし敦盛が生きていると他の人に知られてしまってはならないので、この中身もひた隠しにされます。

だから分かりにくいのです。。


4.注目すべき人物


◼熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)

袴姿で花道から登場、一度引っ込んでから出陣のための装束で再登場し、最後は出家のための墨染の衣装です。
舞台では、主に陣屋の中の真ん中か、向かって左側にいます。

この物語の主人公で、
敦盛を救うために我が子・小次郎を討ち、その首を義経に示します。

■相模(さがみ) 

舞台向かって左側にいる女性。
熊谷の妻であり、殺された小次郎の母です。
我が子の無事をずっと祈っているのですが、予測しない事態で息子を亡くし、動揺が隠せません。

■藤の方(ふじのかた)

舞台向かって右側にいる女性。
討たれたと思わせておいて実は助かっていた敦盛の母です。
我が子が死んだと思っていたところからの生存確認ですから、相模と対照的な運命ですね。。

熊谷・相模夫婦は過去、この藤の方に窮地を救ってもらったという恩があります。

◼弥陀六(みだろく)実は弥平兵衛宗清(やへいびょうえ むねきよ)

途中で舞台右手からいそいそ出てくるおっちゃん、に見せかけて実は平家方の武将・平宗清。

以前幼い頼朝・義経兄弟を助けたことがあり、そのせいで平家が衰退してしまった、と悔やんでも悔やみきれない思いがあります。
しかしこの恩を忘れていない義経が、敦盛を彼に引き渡します

◼源義経

途中で出てきて、舞台右手で椅子みたいなものにどっかと座る人。

上述の制札で「小次郎を犠牲に敦盛を救え」と熊谷に暗示した人物です。

5.見どころ


いろいろとあると思うのですが、熊谷が旅立っていく最後の花道が最大の見どころだと思います。

出家の支度を整えて一人花道に立った熊谷の、「十六年は一昔。夢だ、夢だ」というセリフが有名です。 
16年というのは、小次郎の生きた年月。熊谷が小次郎と一緒にいた年月です。

深い悲しみを抱え、世の中の無常を悟り、笠でそんな世の中から自分をシャットアウトするかのように去って行く熊谷の姿は、胸に刺さるものがあります。

個人的には、首実検の場面で義経に首を見せ、迫る熊谷に一番心打たれました。


6.まとめ


「熊谷陣屋」が分かりにくいのは、何と言っても「推し量る」ことの多さだと思います。
大事な事実はこの場面では誰も口外してはいけないため、セリフから状況を判断することができないのです。 

理解の助けになってくれそうな竹本(舞台右手で語っている)も、なかなか聞き取りにくい。
そして内容も現代からすると想像がつきにくい。 

これをまとめている私自身も、理解し切れていないところがたくさんあるのだと思います。

でも、深い人間模様が描かれた、胸に刺さるお話です。
主要な登場人物全員がそれぞれの思いを抱え、このどうしようもない世の中を生きています。

ほんの少しでも「熊谷陣屋」の理解の助けになることができれば、これ以上の喜びはありません…!


関連記事▶︎「熊谷陣屋」観てきました!~二月大歌舞伎 夜の部 初心者の感想 
 

初めて日舞★日本舞踊の公演を楽しむ方法③舞踊公演はどんな雰囲気?


この企画は、日本舞踊歴7年弱の初心者の目線で
踊りをやっていなくても踊りの会を楽しめるであろう初心者的・日本舞踊公演の楽しみ方」を提案する企画です。

【第一弾】初めて日舞★日本舞踊の公演を楽しむ方法①音の楽しみ 
【第二弾】初めて日舞★日本舞踊の公演を楽しむ方法②知らなくても楽しめる演目は?

さて、第二弾までやってみて、初歩的なことを忘れていることに気が付きました。

初めて出かける日本舞踊の公演。
雰囲気ってどんな感じなの?というのを書いておりませんでした!

今日は「日舞の公演の雰囲気」についてまとめてみます。

※ここでまとめるのは、いわゆる「五大流派」中心の古典の公演についてです。
流派によっては全然違う雰囲気のものもあるかもしれませんが、あしからずご了承ください。




1.時間はどのくらい?


*一曲あたりの時間


一曲あたり、大体15〜30分と見積もれば良いかと思います。
中にはもっと長い曲もありますが、概ねこのくらいの幅です。

にしても一曲が長いですよね…始めたばかりの頃は驚きました。

*公演全体の時間


これは公演によりまちまちです。
たとえば毎年国立劇場で行われる「日本舞踊協会公演」は昼夜二部制なので、一公演がせいぜい3〜4時間程度。
しかし、ほぼ丸一日かけて行われる公演もたくさんあります。(むしろ舞踊協会の二部制の方が珍しいと思います)

先日行った舞踊公演は、11時開演・19時半ごろ終演。
途中で出たり入ったりしましたが、やはり腰にきますね…!


2.途中入退場はできるの?


*演目の途中での入退場


もちろん望ましくはないのですが、舞踊の公演では意外とみなさん演目の途中で出入りなさいます。
もちろん望ましくはないのですが、黙認されていることが多いです。
もちろん望ましくはないのですが、私も割とやってしまうことが多かったりします。
なぜならば、短い休み時間でお手洗いからの戻りが間に合わなかったり、観たい演目の途中で会場に到着したり、いろいろあるからです。

もちろん望ましくはないのですがね。


*公演の途中入退場・再入場


再入場に関してはまちまちかと思いますが、私が行った限りでは、チケットの半券があれば途中抜けOKの公演が多かったと思います。

公演自体の途中入退場は、全く問題ありません
むしろ先述したように、公演自体が8時間近くあることもざらなので、
あらかじめ観たい演目をしぼって適当な時間に行ったり、適当なところで帰ったりすべきだと思います。笑

一曲あたりが15〜30分ほどなので、歌舞伎の幕見などよりも細かく時間を刻んで行動できます。


3.どんな服で行けばいいの?


洋服で全く問題ありません
繰り返しで恐縮ですが、とにかく公演が長いので、体に負担がない方が良いかと思います。
デニムやスウェットはさすがに見ませんが、オフィスカジュアルのような感じであればちょうど良いのではないでしょうか。

和服の場合は、紬ならばざっくりとしているものをお召しの方はあまり見かけません。
詳しくないので分からないのですが、つるつるつやつやしている紬の方はいらっしゃいます。

もっとも多いのは小紋の方でしょうか。
やわらかいもの、ポリでも上品な柄のものをお召しの方が多い印象です。

紋付の色無地を着ている方も多くいらっしゃいますが、大体は出演者の関係者です。

とはいえ、気軽な公演(地元の子供達が出る、出演者から「あまり格式張っていない」と聞いている、など)ではかわいらしいウールの着物を着ている方もいたので、これも公演によるのかもしれません。

ただし半幅帯はさすがに見ないので、お太鼓か二重太鼓がいいかと思います。

踊りの公演にどんな着物を着ていくのがベストかは、私自身まだまだ探り途中です…。


4.その他の注意ポイント!


*アナウンスがない!


公演によっては、次の演目がどれなのか、プログラムを読み上げてくれない場合があります。
「次ってこれだよね…?」というのが非常に心もとない。。

対策法としては、時間表を見ることが挙げられます。

舞踊公演では、(私が行った公演は今のところ)必ず演目ごとの時間が書かれた表が、会場に貼られています。
この表がかなり綿密で、一曲ごとの開始・終了時刻と所要時間が1分単位で記載されているのです。

今上演しているのがどの演目か分からないときは、まず時計を見つつこの表を確認して、「時間的にはこの曲っぽいな」という目安をつけます。

あとはプログラムを見て、踊っている人数や内容から類推します。笑

アナウンスがある公演もあるのですが、ないことが多かった気がします。初めての公演で、今何をやっているか分からない心細さたるや。。

*長めの休み時間はない!


歌舞伎や文楽の公演ならば、途中に30分くらいの長めの休憩が入り、その間にご飯を食べたり歩き回って腰をほぐしたりできるようになっています。

しかし、長時間の舞踊の公演だと、そのような休み時間がない場合も少なくありません。

そのかわり、演目と演目の間に5〜10分ほどのインターバルがあります。
各演目ごとに大道具を入れ替えるため、このくらいの舞台転換の時間が必要なのです。

この間にお手洗いに行ったり、飲み物を飲んだりしています。
ご飯を食べたいときは、いくつかの演目を犠牲にして会場を抜け、ロビーなり外なりで食べます。


5.まとめ〜日舞は意外と気軽に観られますよ!


「日本舞踊」と聞くと「高尚」「敷居が高い」「難しそう」「想像がつかない」とどんどんハードルが上がってしまうのですが、

行ってみると全然そんなことはありません!

上述の通り意外と出入りもゆるく、長時間抜けても何も気まずいことはなく、ふらりと行ってふらりと帰れる雰囲気です。

「歌舞伎を観に行こう」「コンサートに行こう」と同じような感覚で、ぜひ踊りも観てみてください。

ときどきとんでもない感動に出会えたりしますから。

※ちなみに、おすすめはこちらです→日本舞踊協会公演
(2019年は2/16(土)・17(日)、昼夜二部制で4回全く別の公演です。)

NHK Eテレで放送中の「にっぽんの芸能」でも、舞踊の回はよくこの公演の映像を使っています。

三等席ならば2,000円で観られます

【関連記事】初めて日舞★日本舞踊の公演を楽しむ方法④公演の探し方

イヤホンガイドと筋書、どっちがいいの?歌舞伎歴1年の初心者が比較してみた

今更ですが、
イヤホンガイドデビューしました!笑

ずっと筋書を買っていたので、イヤホンガイドなしでも問題なく理解できていたのですが、今月は回数行かないこともあり、イヤホンガイドを試すにはうってつけだったのです。

どちらも使ってみて、それぞれの良し悪しが分かり、自分なりに「こちらが好き」というのが掴めたので記事にしてみました。




1.概要と価格


■イヤホンガイドとは


【価格】
利用料500円+保証金1,000円 計1,500円
※保証金1,000円は利用後に返金されるので、実質500円です。

その名のとおりイヤホンのついた小さな端末で、
舞台の進行に合わせて見どころや配役を同時解説してくれるものです。
台詞の大意を、適切なタイミングで挟んでくれます。

イヤホンは片耳だけで、ちゃんと舞台の音も聞こえますのでご安心を!
 
ちなみに開演前から、あらすじや物語の背景、舞台となる場所、モデルとなった人物などの解説が始まっているので、要チェックです。

■筋書とは


【価格】
劇場、公演にもよりますが1,000円前後〜1,500円くらいです。 

「筋書」とは、いわゆる公演プログラムのこと。
 
詳細なあらすじや細かな配役、見どころに加え、著名人によるエッセイや歌舞伎にまつわる方のお話、江戸文化のコラム、出演俳優のコメントなど、読み物としても楽しめるボリューム感です。

サイズはB5が主ですが、まれにA4の場合があります(以前観た新春浅草歌舞伎はA4でした)。 



2.メリットとデメリット


■イヤホンガイドのメリット


時間をかけて予習をする手間なしに、あらすじを理解しながら観劇することができます。

また、主役を見ていてうっかり見逃しがちな脇役の動きに注目させてくれたり、衣装の柄や細かな所作などを解説してくれたりするのは同時解説ならでは。

初めての観劇でも隅々まで楽しめる工夫がいっぱいです!
 

■イヤホンガイドのデメリット


音楽や舞台の空気感を全力で楽しみたい方は、少々欲求不満かもしれません。
 
役者さんの台詞に極力かからないようにしているためか、どうしても音楽(語り)のときに解説が入ってしまいます
また、柝が鳴って幕が開いて「いよいよ始まるぞ!」というときにも耳元で解説が聞こえているので、あのわくわく感がややそがれてしまう気がしました。 
 
当たり前といえば当たり前ですが、片耳がずっとイヤホンなので、音を100%楽しみきれない感じはありました


■筋書のメリット


あらかじめ読んでおけば、あとは舞台に集中して楽しめます。
 
また、イヤホンガイドでは解説しきれない細かい配役が書いてあるので、気になった役がどの役者さんだったのかを見直すことができます

見直すという点で言えば、舞台を見ただけで理解しきれなかったことを再確認できるのも便利なところ。
 
読み物としても非常に情報量が多く、公演が終わった後も読み返すことができるのも、筋書の楽しみの一つです。

■筋書のデメリット


大前提として、そもそも読むのに時間と頭を使います
登場人物が多かったり、話の筋が複雑だったりすると、一読しただけでは分かりにくいこともあります。

また、上演中に舞台が暗くなってしまうと手元が確認できないため、舞台と並行して内容を確認するにはやや不便かもしれません。

さらに、筋書は場所をとります。観劇当日には荷物になりますし、毎月通って買い溜めていくと片付けも厄介です。


3.私が選んだのは「筋書」でした


これだけデメリットの多い筋書ですが、
やっぱり私は筋書派だということに気付きました!笑

というのも、私は何よりも舞台全体の音と空気をまるごと楽しみたいという思いが強く、そうなると片耳が常にガイド、となるとほんのちょっと感興をそがれてしまうのです…

また、家に帰って読み直せるというのもポイント。
何度も歌舞伎を見に行くうちに、「あのときのあの役はどなただったんだろう」「あの場面ってどういう流れだったかな?」と振り返ることが多くなりました。
そのときに手元に残るものがあると、すぐに調べられて非常に便利なのです。
文楽の場合は筋書を買うと床本(台本のようなもの)がついてくるので、読み返しながら再び感動に浸ることができます。 

場所は取りますが、筋書が好きです。 


4.まとめ


私は筋書に落ち着きましたが、一緒に行った友人(歌舞伎2回目)は「イヤホンガイドの方が分かりやすかった」とのことで、好みやニーズは本当に人それぞれだと思います。

私とてイヤホンガイドが面白かったのはもちろんのことで、同時解説でなければ気付けないことや、筋書では読み落としてしまうであろう豆知識に出会うことができました。

いずれにせよ、初心者の観劇にはどちらもとてもためになるし、より楽しむためには重要なアイテムです。
ぜひ活用して、観劇をより一層充実したものにしましょう!!!
 

『歌舞伎に行こう!手とり足とり、初めから』(船曳建夫)感想〜気楽かつ深い一冊

ただ歌舞伎のハードルを下げるだけでなく、
「つまらない」と思ってしまった人への言葉、
観劇中の退屈をしのぐ方法、
果ては「伝統」とはどういうものなのか、というところまで、

とことん「歌舞伎初心者」の心情に
寄り添ってくださった一冊
です。 

東京大学名誉教授・文化人類学者の
船曳建夫先生によるこの本、

歌舞伎に行こう! 手とり足とり、初めから [ 船曳建夫 ]

価格:1,620円
(2018/10/23 00:47時点)



『歌舞伎に行こう! 手とり足とり、初めから(船曳建夫、海竜社、2017年) 

前半はとにかく、本当に初心者を安心させてくれる内容。

後半の「伝統とは」というあたりは
「なんで歌舞伎とか残す必要があるの?」という方にも、
そういう質問をぶつけられてうまく答えられなかった方にも、
ぜひ読んでいただきたいです…!




1.きっかけから観劇終了までフォロー!


この本がすごいのは、

「歌舞伎を見に行くきっかけ」から
チケットの選び方・買い方、
当日着て行く服や食べるもの、
前日までに必要な準備、
幕間の過ごし方、
観劇中の退屈撃退法、
観劇終了後の感想の持ちようまで、

本当に一つの公演を見に行く最初から最後まで
丁寧に追ってあるところです。

そしてこれらの情報の前に、
歌舞伎の歴史解説、みたいな堅苦しいお話が
一切入っていない
ところ。

伝統芸能が「敷居が高い」と言われてしまうのは、
「伝統芸能」という構えさせるような言葉が良くないのでは、と私は思っていて、

この本ではその「伝統」の部分を
最初ではなく最後に持ってきているので、

入り口で跳ね返されないですむところが
とてもありがたいです。


2.歌舞伎で退屈した人にもやさしい


「退屈してしまった人」にも
目を向けてくれる入門書って、
そんなに多くない
のではないでしょうか。

どうして退屈だと思ってしまったのか、
退屈なときにどうやって時間をやり過ごせばいいのか、
というところにも踏み込んであって、

それが先日ブログに書いたことにも通じることだったので、
ちょっと引用させていただきます。

「まず、なめてかかること。
古典芸能、なんて思って尊敬したりはしないこと。
「へー、こんなことするんだ」とぼんやり見る。
懸命に集中して分かろうなどとしない。」
(p.122 )

これ、まさしく先日書いた、
あのとき歌舞伎にはまらなかった理由。」だと思うのです。

初めての歌舞伎で、私は
ものすごく身構えてかかってしまって、
どの瞬間も理解しようと必死だったために
歌舞伎を純粋に楽しむことができなかった。

退屈とまでは行かないまでも、
今ほど「おもしろい」とは思えなかった。

先にこの本を読んでいたら!と思います。笑


3.伝統が守られるべき理由に納得


「どうして伝統を守らなければならないのか?」
という問いに対して、
「伝統芸能」を好きになったにもかかわらず
うまく答えることができずに、
ずっともどかしい思いをしておりました。

それを書いてくださったのが
とても嬉しかったです。

今の文化の礎であること、
この伝統芸能を含めて「芸能の生態系」が成り立っていること。
現代の文化の根底にある「伝統芸能」に
今現在でも触れられること。

だから残さなきゃいけないのだ、と。

このあたり、ちょっと抽象的で
ちゃんと理解できているか不安なのですが、

私なりの解釈と、考えたことはこんな感じ↓

---

伝統芸能は、意識的にも無意識的にも
現代の芸術・文化に影響を与えているわけです。

(この本に挙げられているのは映画やマンガですが、
文学やデザイン、音楽などの発展にも
大きく寄与していると私は思います。)

何百年も続く芸能から、新しい流行や文化まで、
全部引っくるめてお互いに影響し合いながら
「日本の文化」という総体ができあがっている
のだ、
というのが、この本で言われている
「芸能の生態系」 ということだと解釈しています。

では、この生態系の根幹にある「伝統芸能」が
もしなくなってしまったらどうなるか。

それをもとに育ってきた新しい「日本の文化」は、
もとを辿れなくなり、地盤が頼りなくなり、

発展や創造の選択肢も減り、
文化全体が縮小してしまうのではないかというのが、
この本を読んで自分なりにまとめてみた答えです。

(古典という、あらゆる文化の「源流、本物」に
今でも触れられることの重要性については、
p.218で触れられています。) 

というわけで、
現代の日本文化全体のために、
たとえどんなに斜陽であっても、
伝統芸能を絶やしてはならないのだ、というのが
最終的に行き着いた結論です。

---

…全然違ったら本当に申し訳ない。笑

何にせよ、「伝統って何で必要なの?」の問いに対して
自分なりの方向性を見つけられたことにおいて、
この本に心から感謝です。


4.まとめ〜このブログの存続意義


この本、鬼に金棒だと思うのです。

もともと歌舞伎について
相当なご経験と知識をお持ちでありながら、

こんなに初心者の気持ちに寄り添える。

どちらの軸もあるのは最強です。

そのため、読み終わったときは

「このブログ、いらないんじゃない…?」

という気持ちになりました。笑

よく考えると、そう思うことすらおこがましいです。笑


初心者が「分からない」「でも好き」を発信しているだけなので、
そこに知識や経験の裏付けはないわけですよ。

まぁでも、

情報を更新していけるところがネットの強みであり、

蓄積していけるところがブログの強みであり、

本当にものを知らないところが初心者の強みであるので。笑

一年前の、今よりもっとものを知らない自分が
「えぇっこんなに分かってないのに観に行くの?!」
と呆れつつもちょっと安心して、時々頼りにくるような、
そんなブログを作っていければと思います。
 

歌舞伎に行こう! 手とり足とり、初めから [ 船曳建夫 ]

価格:1,620円
(2018/10/23 00:47時点)

あのとき歌舞伎にはまらなかった理由。


こんばんは、わこです。
最近歌舞伎関連の記事が増えていますが、
 
今日は私が
歌舞伎にはまらなかったときの話
をしようと思います。

***

以前このブログで、初めての歌舞伎の話をしましたが、

(以下の記事参照↓

実はこれは3回目の歌舞伎で、
初めて「自分で調べて」「自分一人で」観に行ったときの話です。

つまり、能動的に観に行った最初の歌舞伎体験ですね。

では最初の2回はどうだったかというと、
実はそれほどはまらなかったんです。

面白くなかったわけではなく、
それなりに楽しみはしたのですが、
「また行こう!」「来月も行こう!」とはならなかった。

それはなぜだったのでしょうか。

***

私がはまらなかった2回はこんな感じ↓

①大学の研修で鑑賞。
予習の講義もばっちりで、解説付きの上演。
観劇の後はレポート提出あり。

大学の友人たちと誘い合って観に行った。演目を失念。

もう②は演目忘れてる時点でだめですね笑


それぞれ思い出してみると、どちらにも共通しているのは
「分かろうとしすぎた」ことだった気がします。

レポート提出があるから。
日本文学を専攻する友達と一緒だから。

観ながら何とか理解してやるぞ!という
気負いがあったんですね。

それに加えて、②は条件もよくなかった気がします。
会場内が、不用意に笑いすぎた。

本来なら不気味さを表すはずのカラスの鳴き声や、
悲しさを表すはずの赤子の泣く声に、
場内から笑い声が起きていたのです。

もしかすると笑っていい場面だったのかもしれないのですが、
私は素直に「何だか不吉」「どうやら悲しい」と思って観ていただけに
笑い声で一気に冷めてしまったというか、
入り込めなかった部分はあります。

ただまぁ、これは仕方がないですね。
捉え方はそれぞれですもんね。

いずれにせよ、歌舞伎の空気そのものを楽しむよりも、

話の筋を理解しなくては!
良さを見つけなくては!

頭でっかちになっていたような気がします。

何ですかね、 

学生なのに歌舞伎を観に来ているインテリな自分✨ 

という像を作り上げすぎたのかな。笑

***

一方で、以前記事にした『霊験亀山鉾』はどうだったかというと、

あれはとにかく「仁左衛門さんの当たり役を観ておきたい!」だった。

筋を理解するよりも何よりも、
とにかく見て、聞いて、感じるために行ったのです。

だから、逆説的ですが、
筋書はあらかじめ熟読しました。
観劇中、理解するのでいっぱいいっぱいにならないように、
ただひたすら舞台に集中できるように、
準備して臨んだのです。

そして、見事にやられた。

冷徹に笑いながらあっけなく人を斬り、
刀を拭う立ち姿の凄みに、
ガーンと衝撃を受けた。

今はそういう瞬間に出会うのが嬉しくて、
歌舞伎を観にいっているのかな、と。

***

というわけで、

歌舞伎に興味を持ったなら、
無理に観ながら理解しようとしない方がいいかもしれない。

予習をした方がいい、筋書があるといい、と
このブログで何度も書いているのは、
とにかく芝居の空気だけに集中できるようにするためなんです。

観劇しながら理解しようとすると、
少なくとも私は、純粋に芝居そのものを楽しめなくなってしまいます。

あらかじめざっくり分かっておいて、
あとは舞台の空気を楽しむ。

これが今のところ、ベストな楽しみ方です。

***

以上、歌舞伎にはまらなかったときの話でした。
結局はあの名言に落ち着きますね。

考えるな、感じろ。

何だか言葉を尽くして説明した甲斐が
なかった気がしてきましたよ… 
 
プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇3年目、毎月何度か劇場に通う日々。
◆着物好きの友人の影響で、着物でのお出かけが増えてきた今日この頃。

読者登録
LINE読者登録QRコード