ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

国立劇場

「姫路城音菊礎石」(国立劇場初春歌舞伎公演)観てきました!~初心者の感想~

国立劇場の初春公演!
尾上菊五郎さんを中心とした、いわゆる「菊五郎劇団」による公演が新年の定番となっているようですが、私は今年が初めてです。

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劇場のいたるところがおめでたい雰囲気。

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客席をぐるりと囲む提灯のところにも、繭玉がたくさん下がっていましたよ。

今回はあらすじをまとめるのを断念
印象に残ったこと、見どころなどをいくつかピックアップして語ります!

※あらすじはまとめられませんが、疑わしきを疑い続ければ筋は理解できるかと思います。
印南内膳(菊五郎さん)はどんなに忠臣に見えても悪者です!笑
そして死んだ者は死んでいます。もし生きているかのように見えたら、それはあの生き物の仕業です。)

***

今回まず何よりも嬉しかったのは、所作事(踊り)の時間がたっぷりあったこと!
三幕目「姫路城天守の場」。
尾上菊之助さんの振付だそうです(筋書情報)
弓矢太郎の菊之助さんと、お菊中村梅枝さんとの踊りが堪能できます。

以前テレビで観た、品良く素晴らしい三番叟が忘れられない菊之助さんと、
昨年末の藤娘で美しさをたっぷり味わった梅枝さん。
この時間のために今回のチケット代を費やしても、自分は後悔しないと思います(笑)。

この場面では長唄の方が舞台後方で演奏しているのですが、この方が凝っているんです。
石垣の中で演奏しているかのよう。姫路城の石垣がちゃんと見えながら、その向こうの長唄の方々も見えるのですが、あれは一体どうなっていたのでしょう…?三階から見るには限界が。。

ちなみに菊之助さん・梅枝さんのお二人は3月に国立小劇場で上演される『積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)でも共演なさるようです! 楽しみ!!とにかく楽しみ!!!
小劇場なんて、どの席から見てもめちゃくちゃ演者が近いですよ…なんと贅沢な…!
(国立劇場公式ページはこちら) 

*** 

双子の兄弟を演じる梅枝さん、小佐壁主水・与九郎狐・加古川三平の三役を演じる尾上松緑さんはじめ、
一人何役かで出ていらっしゃる方も多いので、そこも見どころの一つかと思います。
(筋書に書いてある役の初め2行がどちらも梅枝さんでちょっと面白かった)

特に菊之助さんは大活躍で、四幕目ではお辰から(人間の格好の)小女郎狐、(狐の格好の)小女郎狐からお辰、とだいぶタイトな時間で変わっていきます。
小女郎狐の登場、結構な迫力です!どこから出てくるか分かっていても「おぉっ!」と呟いてしまった。笑
詳細を言ってしまうと面白くないので、これから見る方はぜひお見逃しなく!! 下町●ケットは飛びませんが、狐は飛びます。

***

このというのが面白くて、まず衣装が気になります。
今月の筋書では、くろごちゃんが(?)衣装についてリポートしているのですが、
真っ白でふさふさの毛が全面に覆っているこの狐の衣装、製作にもお手入れにもとても手がかかるそうです(詳細はぜひ筋書を読んでみてください!衣装さんのお仕事、素晴らしいです)
舞台から遠く離れた三階席でも分かるふさふさ具合。役者さんが動くたびに、ふさふさにそっと触れてみたくなります。笑

そして、小女郎狐のしゃべり方も面白いのです狐詞(きつねことば)というらしい)
最初を伸ばして最後が早口になる独特なリズムやイントネーション、途中に入る鳴き声のような音。
どういうきっかけで狐の演出はこうなったのでしょう。

与九郎狐(松緑さん) との狐夫婦、狐の通力が見られる演出も楽しい!
狐手という指先を丸めた形の手で、人智を超えた力を見せてくれます。(特に与九郎狐の方は、扉を動かす人と息を合わせるのが難しそう!)

*** 

そして和史くん眞秀くんの子役お二人のかわいいこと…

特に、やんちゃ盛りの福寿狐(眞秀くん)が自由な行動に出た挙句、犬に追われてお家に逃げ込んでくる一連の流れに思わずこちらもにこにこ。
福寿と遊びたいという平吉(和史くん)が、母・お辰に促されて福寿と二人で歌う場面、あれはあざといくらいかわいい。笑 けんけんどんどん…

お二人とも三階までしっかり声が届いていて立派でした!これからどんどん大きくなっていくのでしょうね…楽しみです!! 

*** 

極め付けは印南内膳尾上菊五郎さん)。
この人は悪いですね~!笑
本当に悪い人は、善人面をするのがうまい。最初にも書きましたが、芝居中にどんなにいい人っぽく見えても、絶対に騙されないでくださいね!!
忠臣ぶりを誉められた内膳が、一人になったときのほくそ笑んだ感じ、悪いですね~。(2回目)

***

大道具も面白いです!
先述しましたが狐がなかなかトリッキーなところから登場したり、思わぬところに引っ込んだり、石垣が透けたりと、わくわくするポイントが満載でした。

この一年ちょっと歌舞伎を見てきて、この役者さんの声が好きだな、この役者さんをもっと見たいな、と思っていた方もたくさん出ていて幸せ。
通し狂言ということもあり、4時間弱の長丁場ですが、全く飽きずに楽しめました!

初っ端から楽しい演出もあり。笑
歌舞伎座でも取り入れられていた小ネタですが、音楽を巻き込み、分量も長く、こちらの方が本気で挑みにきた感じでした 
(そもそもあれは去年そんなに流行っていたのか。。) 

最後の手拭い撒きでは、坂東彦三郎さんの肩の強さに驚嘆!ああいうのってせいぜい一階の真ん中くらいまで届けば良い方だと思い込んでいましたよ…!

手拭い撒き以外にも、最初の一週間ほどは種々の新春イベントを行なっているようなので、いつかぜひ足を運んでみたいと思います。

とりとめもない感想になってしまいましたが、とにかく充実した4時間でした。
来年以降も国立劇場の初春公演は外せないものになりそうです!

 

「名高大岡越前裁」(国立劇場十一月歌舞伎公演)観てきました!〜あらすじと感想

今月どれだけ歌舞伎に行くのかという話ですが、、

大変失礼ながら、実は全然マークしていなかった国立劇場の公演。
名高大岡越前裁(なもたかしおおおかさばき)

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「歌舞伎が好きならば是非!」という声を方々で聞き、
これは行ってみねばと思い、急遽チケットを取ることに。

国立劇場は2等席でも2,700円と求めやすい価格なのがありがたい! 

さてこれがですね、
とても渋くて良かったのです。 

国立劇場は、初心者には耳馴染みのない演目を通しで上演することが多く、
歌舞伎座のようなめくるめくエンターテインメント性には欠けるのではないかと思います。

しかし、じっくりと腰を据えて味わいながら観る余裕があります。
(私が歌舞伎にはまったのは、歌舞伎座ではなく国立劇場がきっかけでした。)

長くなってしまいましたが、各場面を振り返りつつ感想をしたためてみました。
大いにネタバレを含んでおりますので、これから観る方はご注意くださいませ。

***

今回のお芝居は、有名な「天一坊事件」をもとにしているものです。

…と言われても、時代劇に詳しくない自分には
さっぱりピンとこなかったのですが
要は
「将軍の御落胤と偽る天一坊 VS 大岡越前」
という構図。

ただしこの天一坊に、山内伊賀亮(やまのうちいがのすけ)という強力なブレーンがついてしまい、
加えて本物の御落胤の印まで手にしていたため(もちろん悪事を働いて手に入れたものなのですが)、
さすがの大岡越前もあわや切腹というところまで追い詰められてしまうのです。

伊賀亮、そんなに頭がいいのに
どうして無計画な悪事を始める法沢(ほうたく、のちの天一坊)についてしまったのだろう。

そもそも法沢も、おそらく出来心で始めたであろう壮大な犯罪を
どこまで本気で突き進めようとしていたのだろう。

前半は「むむむ?」と思うところが多かったというのが正直なところ。

しかし、大岡越前が出てきたあたりから
どんどん話が面白くなってきました!

***

この大岡中村梅玉さん)の登場。
花道から出てくる姿は、かの大岡越前にもかかわらずどこか疲れた風情です。 

それというのも、天一坊が御落胤でないなどというのは無礼だと、
将軍に袖にされてしまった後なのでした。

それに加え、大岡家の断絶までほのめかされ、
閉門(屋敷の出入りが禁じられる)の処分を受けてしまうのです。

それでも大岡の眼力、
やはり天一坊は絶対に将軍の御落胤ではないと分かっており、
閉門でありながら屋敷を脱出し、小石川の水戸徳川家へ
今一度 天一坊を調査したいと助力を頼みに行くのですが、

この脱出シーンがおもしろい!

閉門中でも唯一出入りできる とある場所から抜け出るのですが、
その計略に乗る家臣たちと、門番(嵐橘三郎さん)とのやりとりが軽妙。 

さらにこの場面、廻り舞台で次の場に切り替わるのですが、
舞台が廻りきるぎりぎりまで前の場の登場人物たちがわいわいしているので
ずっと舞台から目が離せませんでした。笑 

さて、この次の、水戸徳川家のシーンが私はとても好きだった
徳川綱條(つなえだ)坂東楽善さん) と大岡梅玉さん)とのやりとりの場面です。

天一坊の悪計を見抜いているにも関わらず、
思いのままに調査ができない状況に陥った大岡。
綱條は大岡をとても信用していて、大岡のために良いように取り計らうのです。

ここが渋くて温かくて本当に良い場面だった…!

綱條の、病をおして危急の時に力になってくれるかっこよさ、
不利に立たされた大岡に「名奉行」と声をかける強さ、 
しみじみと良かったです。。ここだけでももう一度観たい。

綱條の助力を得て、大岡は天一坊(市川右團次さん)を奉行所に召喚し、取り調べを行います。
この取り調べに臨むときの大岡、気を引き締めるように着衣をぴしりと整えるのですが、
この所作がなんともかっこよかった。

しかしここで出てくるのが、手強いブレーン・山内伊賀亮坂東彌十郎さん)。 
大岡の訊問に対して淀みなく答え、大岡を黙らせてしまうのです。

この場面の伊賀亮、圧巻でした
「網代問答」という有名な場面らしい。

自信たっぷりに、半ば威圧的に答える伊賀亮。
最初は「なんで天一坊方についちゃうの?」とキャラが掴めなかったのに
どんどんその難敵ぶりに惹き込まれてしまいました

しかしこの問答の最後、天一坊がぽろりと口を滑らせます。
伊賀亮が取り繕いますが、そこは大岡、聞き逃しません。

このあとの伊賀亮の引っ込み、七三で立ち止まるときの心中はどんなだろう。
頭のいい伊賀亮のことだから、100%言い負かしたとは思っていないはず。
この悪計の行く末を、どこかしら悟っているのかもしれないな、と思います。

さて、伊賀亮にやり込められてしまった大岡は
天一坊の失言を頼りにさらに調査を進めているのですが、
時間ばかりが経ち、調査にやった家臣・平石と吉田からは音沙汰がありません。

ついに大岡は、切腹を決意します。

この切腹の場面、浅葱幕と竹本の演出効果が凄かった
ぱっと幕が落とされると、大岡とその妻、幼い息子の忠右衛門が白装束で三人並んでいるのです。
もう覚悟をしなければならない。
竹本の語りが、哀しさを倍増させます。 

子供ながらに切腹の手順を完璧に身につけている忠右衛門市川右近くん)。
その身のこなしがとてもきれいで、それもまた切ない。 

介錯を頼まれた家臣・池田大助坂東彦三郎さん)は、
ただただ狼狽し、 平石と吉田の帰りを待つ。
この場面、 誰もが池田の気持ちになると思います。
二人の戻りの遅さに焦り、なんとかして主人を切腹から救いたい池田に、
思わずほろりとしてしまいました。

いよいよ刀を手に取る大岡と忠右衛門。

そこに、

帰ってきました!平石坂東秀調さんと吉田市川男女蔵さん!!
間に合った!!!

いや、展開上そうなることは分かってたけど! 

「天一坊が御落胤ではない」という証拠とともに帰ってきた二人を、
大岡は感謝とともに迎えるのです。

このときの忠右衛門が、泣き笑いを誘います。
「もう切腹はいたしませぬか?」
という、なんともかわいいセリフ。
完全に状況を理解はできていないのだろうし、
切腹の覚悟を決めるのは、幼いながらにとても無理をしていたことでしょう。
よかったね、と素直に思いました。。

さぁ、ここからは大詰・大岡裁き。
天一坊に決定的な証拠を突きつけ、天一坊がお縄となって幕です。 

***

一気に語ってしまいましたが、

お芝居として濃密で、4時間なんてあっという間でした。
周りの言葉を信じて観にきてみてよかった。 

ご出演の役者さんたちの声がとても好きで、
惚れ惚れしながら聞きました。 

いぶし銀の魅力というのでしょうか、とにかく渋かっこよかったです。 

分かりやすく「うわぁー!」となれるような演目ではありませんが、
初心者の私でも味わい深いと思える舞台でした。

もう一回観たい…
 

はじめて文楽★思い出しルポ~『義経千本桜』を観に行く

先日この記事その次の記事で、
私の初めて見に行った(実際は3回目くらいの)歌舞伎の話をいたしました。

今度は文楽
 
9月は東京の国立小劇場で文楽公演もあることですし、
初めての文楽鑑賞がどんな感じだったか、
きっかけから当日の様子、感想まで一気にいきます!!
 


■きっかけ



初めて文楽を観に行ったのは、
大学時代の友達と何人かで。
2016年のことです。 

近世文学の授業をとっていた仲間内ということもあり、
軽ーいノリで「行ってみよう!」ということになりました。

文楽は歌舞伎より安いので
(国立小劇場一等席でも7,000円くらい)
若造にはありがたかったです。


■演目選び~『義経千本桜』に決定!



みんなの都合的に、夜の公演が良かったんですよね。

それで、そのときの第三部にやっていた
『義経千本桜』を観に行くことになりました。

有名な演目なので、内容はともかく
名前にはなんとなく親しみがありました。

私としては、唯一存じ上げていた人形遣いの
桐竹勘十郎さんが出ていらしたのもポイントでした。

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■国立劇場での過ごし方


1.筋書は買わなかった…買ったほうが楽しめます


初めてだったし当時すかんぴんだったので、
筋書は買わずにチラシの知識だけで臨みました。

あらかじめネットであらすじを調べたり
休憩時間に友人同士で筋を確認したりして、
なんとか話の筋は理解できました。

が、

余裕があるなら筋書きは買ったほうが絶対に楽!笑
2回目は迷わず購入しました。


2.何を言ってるのか聞き取れる?


はい、字幕が出ます

国立小劇場の場合は、舞台の上手と下手の両側
縦に字幕が流れます。

そのため何を言っているのかはわかりますし、
筋書きを買えば、「床本」という
文楽の台本みたいなものもついてくるので、
純粋にセリフを聞く分には問題ありません。

ただ、当然ながらすべて「古文」ですので
やっぱり自分で内容を理解していないと
聞くだけで見当をつけていくのはなかなか難しそうです。。


3.休み時間にお夕飯を食べる


休み時間に、みんなでお夕飯を食しました。
 
劇場内にも手軽なお弁当を販売するほか、
永田町から国立劇場に歩く間に
セブンイレブンやナチュラルローソンがあるので
食べ物には困らないと思います。

ただし、1階ロビーはめちゃくちゃ混みます
休み時間になった瞬間に出るのが吉。お行儀悪いですが…


4.くろごちゃんに会えた!


開演前と休み時間には、
国立劇場の公式キャラクター・くろごちゃんがお目見え。

休み時間には、演目にちなんで
白い狐と一緒に出てきました。

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私は着ぐるみ恐怖症なので
遠巻きにしか見られませんでしたが、
なかなか写真慣れしていて、いい感じで写ってくれましたよ〜

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インスタ映えしますね。(?)

くろごちゃん登場スケジュールは
こちらでチェック!⇒くろごちゃん公式サイト


初めての文楽!感想は?


感動しました。

衝撃的でした。

すごいんです、
人形遣いさんたちの顔があんなに丸見えなのに、
舞台を思い出したときに浮かぶのは
人形たちの生き生きとした表情や動きばかり。

人形たちが当然のように、自分たちで動いていたような気がするんです。

それほど、舞台上で人形たちが生きていました。

自分の体にくくりつけた碇を海に落として自害するときの
知盛の武者震い、あの迫力。

ぞっとするほどかっこよくて、
すごいものを見てしまった、という気持ちになりました。

話の筋の理解は完璧じゃなくとも、
劇場内の空気感に圧倒されました。

うまく口では説明できないけれど、
「文楽ってすごい」と衝撃を受けた
初めての文楽体験です。


物語を味わうなら「文楽」がおすすめ!


人形は、人間のように
表現する技術や声色を変える技術は
それ自体には持っていません。

でも、だからこそできる体の形があるし、
かえって人間が表現しきれないところまで表現できたりする。

そこにまた三味線さんと太夫さんが
びしびしとすごい音圧であおってくるわけです。

物語そのものの感情の揺れ動きとか、
不気味さや迫力が、ストレートに伝わってくる感じがしました。

全く興味のなかった文楽ですが、
(受験で習った「無形文化遺産」みたいなことしか覚えてない)
この一回ですっかり考えを改めました。
 
好きです。文楽。



プロフィール

わこ

◆東京都在住╱地味目のOL (平成生まれ)。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇2年目、毎月何度か劇場に通う日々。
◆着物好きの友人の影響で、着物でのお出かけが増えてきた今日この頃。

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