9月の文楽公演を観に行くにあたり、
文楽まわりのことをもっと知りたいな、と思って
この本を手に取りました。

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『人間、やっぱり情でんなぁ』


平成26年に大夫を引退され、今年4月に亡くなった
“文楽の鬼”こと竹本住大夫さんが、
文楽人生を語ったのを、聞き書きでまとめた本です。

住大夫さんの長い文楽人生には
ぐっとくる言葉がたくさんありました。

人間、やっぱり情でんなぁ (文春文庫) [ 竹本 住大夫 ]

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■三味線、人形への信頼と絆


印象に残った言葉↓
 
「六十八年、人形たちは私のつたない語りで、
泣いたり笑ったり、生きたり死んだり……
いつでも頑張ってよう動いてくれました。」(p.28)

「大夫にとって三味線は道案内役です。
へばってきたら鞭を入れ、
行き急いだときはブレーキを掛ける。
そうして暗がりを懐中電灯で照らすように、
『ここに来なはれ、ここに来なはれ』と少し先を弾きます。」(p.167)

大夫、三味線、人形の三業の絆というか、
切っても切れない関係というか、
とにかく文楽の舞台を創っていく方々のかっこよさを感じた部分でした。

人形がいて、三味線がいて、大夫がいて、
初めて文楽は成り立つ、という一見当たり前のようなことを
大切に、感謝して、「当たり前」で終わらせない

人間国宝でいらっしゃいながらなんと謙虚な、とも思いますが、

長年やっていらっしゃったからこそ
出てくるお言葉なのかもしれません。

 

■引退に際して〜周りの反応


長年苦楽を共にしてきた、三味線さんや人形さん。
引退を伝えたときには、皆さん泣いてしまったそうです。

「淋しい」と三度言ったきり、
電話口で泣き出してしまった吉田簑助さん

泣いて体調を崩して、
あくる日の公演を休んでしまった鶴澤寛治さん

先ほどの「三業の絆」みたいなものを感じたあとだと
なおさらこの話は泣けてきてしまいます。


■68年間、基本に忠実に。


小さい頃から文楽に親しみ、
小学四年生からお父様(六世住大夫さん)に
文楽を習い始めたとのことですが、

なまじ早くからやっていたために
プロを目指しての正式な入門のあとに言われたという言葉は痛烈でした。

「あんたの浄瑠璃は汚れた半紙や」

中途半端に知っているために、
まっさらな状態から学ぶことが難しいし、
教える方も教えにくい。

つまり「墨を落としても染まらない」という意味で
言われた言葉だそうです。(p.68〜70)

なんか…私のような砂つぶほどの人間にも刺さる

それから68年間、
「とにかく基本に忠実に、素直に語ること」
ずっと心がけていらしたとのこと。

それは若い世代へ向けた
「ヘタが上手ぶってやるな、素直にやれ」(p.192)
という言葉にも通じるものがあります。 

なんか…刺さる…(2回目)
何のお稽古でも同じですね、
すぐ調子に乗る私自身のことを言われているようでどっきりしました。

「永遠の素人」精神はいつまでも忘れないようにしたい。


■現代の稽古について


これは以前ご紹介した『舞うひと』(⇒この記事)でも触れていましたが、
やはりここ15年くらいで
若者たちのハングリー精神が欠けてきたそうです。

浄瑠璃が好きじゃないのか。
好きなら好きで、もっと好きに、もっと必死になれないのか。

住大夫さんのもどかしさが、
いたるところに語られていました。

経済的な余裕、便利なツールの普及…

稽古に対して甘くなってきてしまう理由なら
いくらでも挙げられます。

生活が便利になる一方で、文化が育たなくなってしまう。

恐ろしいことですね。。

自分自身が「現代っ子」であるがゆえに、
自分でも気づかないまま甘えていることも
山ほどあるのだと思います。

私のお稽古は趣味レベルですが、
それでも真剣に取り組みたい。
できる限り自分を律していこうと思いました。


■何度も読み返したい一冊でした。


長々と語ってしまいましたが…

全編にわたって、住大夫さんの大阪弁が心地よい
くすっとくるようなお話もたくさんありました。

(海外公演の話なんかは特に。
「醜女(=ぶさいく)」の人形を
アメリカでは「チャーミング」と捉えられてしまい、
話が通じなかったので翌日からは人形を変えた話とか大好き)

まだまだ文楽に詳しくない状態で読んでしまいましたが
芸事を学ぶ端くれの端くれとして
はっとさせられることも多々。

もっともっと文楽を知りたい。
文楽を観に行きたい。

今よりも文楽の知識を増やしてから
何度でも再読したい一冊です。


…きっと読むたびに、
住大夫さんの浄瑠璃を生で聴けなかったのを
悔やむ気持ちが強まるんだろうなぁ。

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