本日11/10(土)より上映スタートの
シネマ歌舞伎「ふるあめりかに袖はぬらさじ」
早速 観にいってまいりました! 

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【シネマ歌舞伎についてはこちらをご参照ください】
シネマ歌舞伎公式サイト
初めての歌舞伎に「シネマ歌舞伎」をおすすめしたい理由3つ 

★初心者でも下調べなしで、お近くの映画館で歌舞伎を楽しめます!
 





■あらすじ


以下、公式サイトより引用します。
シネマ歌舞伎「ふるあめりかに袖はぬらさじ」公式サイト

時は幕末、開港まもない横浜の遊郭「岩亀楼(がんきろう)」で、ひとりの遊女が自ら命を絶ちます。おりから吹き荒れる尊王攘夷の嵐の中、「攘夷女郎」の伝説にいやおうなしに一役買っていくお園 ...。

この命を絶つ遊女・亀遊(きゆう)中村七之助さん

その第一発見者であり、彼女の良き理解者であり、
にもかかわらず彼女の伝説化の流れに
誰よりも積極的にならざるを得なかった
芸者・お園坂東玉三郎さんが演じていらっしゃいます。

七之助さんの亀遊、
消えてしまいそうなほど儚い美しさでした…!


***

亀遊は何のために絶命したのか。

まことしやかな遺書が見つかったことで
「攘夷のために自らの意志を貫いた女郎」という見方が
世間の大きな流れになってしまい、

遊郭のためにもその流れに乗ることが必要だった。

そのうちにだんだんと引っ込みがつかなくなってしまい、
もともとが芸達者のお園、嘘を真と語るのが
どんどんエスカレートしていってしまうのです。
(このお園の語りの名調子たるや。笑)

けれど、そこにあったのは
早くからこの世界で働かざるを得なかった亀遊の
一人の女性としての切ない想い。

亀遊と付き合いの長いお園だけが、
それを分かっているのです。


■感想


*坂東玉三郎さんのお園のこと


この芝居のうちのほとんどは
お園のセリフなのではないか
、というくらい
お園さん、よぉくしゃべるのです。笑

のっけから強烈なキャラクター。
怒涛のセリフの勢いに、何度も笑いました。

そして、芸者としてのお園はかっこいい

ちょっと三味線を調弦(というのでしょうか?)して
何気なく歌いながら弾き始める感じや、
後半、亀遊の死に際を語る一連の動きの淀みなさ。
あぁ、お園は芸に生きてきたんだ、というのが
よくわかるほどの自然さに、ぞくぞくしました。

歌舞伎歴が浅い自分としては、
玉三郎さんは豪華絢爛な傾城や姫君、
愛らしい娘の役をなさっているイメージが強く、
お園のようなコミカルな役をやっていらっしゃるのを
あまり観たことがなかったのです。

お園にすっかり心を鷲掴みにされた164分でした。


*情報のしょうもなさと罪深さ


このお話、後半の亀遊亡きあとがメインだと思うのですが、
その後半のきっかけになるのが亀遊の遺書です。

この遺書、出所が分からない
内容も、第一発見者であるお園が見たものとは違うし、
遺書に表れる人間像もお園の知っている亀遊ではない。

にもかかわらず、
この遺書のおかげで亀遊はすっかり
「攘夷女郎」に祭り上げられてしまう


愛し合っていたはずの男さえ、
亀遊を亡くした罪悪感からなのか何なのか、
この遺書の内容を心の支えにしてしまうのです。

あとはもう、情報の流れる勢いほど
止めようのないものはない。
語り継がれるうちに尾ひれがついて、
「嘘」はどんどん「真」になっていく。

そうなったら、本当の亀遊を
誰が分かってくれるんだろう


お園が偽りの亀遊の最後を
どんどん立派に語るようになるのを観ているうちに、
私は大笑いしながらも、それが哀しくなってきてしまったのです。

自分の手に負えないところで、
誤った自分の情報が流れてしまうって、
何て哀しいことなんだろう、と。

あの遺書で亀遊は確かに
語り継がれる偉大な遊女になったかもしれないけれど、
彼女の一人の女性としての人生は
なかったことのようになってしまった
のです。

でも ここにはちゃんと救いがあって、
お園はやっぱり、亀遊の気持ちが分かっていました。
長くともに時間を過ごした彼女の生き様を、忘れていませんでした。

これがどれだけ救いか。

そんなことを考えながらの
最後のお園の一人芝居、
じんわりと泣けてしまいました。


*どうでもいいけど気になったこと


この遊郭、唐人口といって
外国人向けの遊女が別にいて、
彼女たちの化粧と服装が毒々しいほどなのです笑
動きにも品がなくてはちゃめちゃなのですが、
(それがまた楽しい笑)

攘夷の流れが強くなって
彼女たちも普通の遊女の格好をするようになり、
見慣れた日本の遊女の拵えになった途端に
美しく出てきて美しく座る。

何のことはない一場面なのですが、
和風に戻った遊女たちの一連の動きに
「さすが歌舞伎役者だなぁ」と思ったのでした。笑


■まとめ


「ふるあめりかに袖はぬらさじ」、大好きな一本となりました。

謎も残ったままで終わるのですが、
そこもまた世間の流れのすべなさだよな、と感じます。

というか、
伝説とか武勇伝とか逸話とかって
みんなこういう風にできていくのだろうな
、と。笑

有吉佐和子さんによる戯曲が、文庫版で手に入るようです。
こちらだとそれぞれの心情を丁寧に追えそう。

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シネマ歌舞伎「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は
11/10(土)から11/16(金)までの予定です。