※この記事は2018年のものです。
歌舞伎座・十二月大歌舞伎、幕見の感想です。
まずは「阿古屋(Aプロ)」。
■初心者でも楽しめるのか?
いやもう、楽しめるとかそういった言葉で語っていいのかという感じなのですが…
楽しむ演目というより、「味わう」演目とでもいいましょうか、、
笑いどころもあるんです!
阿古屋に注目しているとつい見落としがちな、舞台右端に座る岩永。
情趣を理解できないので、阿古屋の演奏中についうとうとしたり、胡弓の演奏に合わせて調子に乗ってしまったり。笑
その様子を、「人形振り」(文楽の人形のような動き)で演じるので、悪役なのですが憎みきれず、どこかおかしみがあります。
しかし、眼目はやはり阿古屋。
終演後は唸りました。。笑
楽しむ演目というより、「味わう」演目とでもいいましょうか、、
笑いどころもあるんです!
阿古屋に注目しているとつい見落としがちな、舞台右端に座る岩永。
情趣を理解できないので、阿古屋の演奏中についうとうとしたり、胡弓の演奏に合わせて調子に乗ってしまったり。笑
その様子を、「人形振り」(文楽の人形のような動き)で演じるので、悪役なのですが憎みきれず、どこかおかしみがあります。
しかし、眼目はやはり阿古屋。
終演後は唸りました。。笑
■私はこう見た!ここが好き!
花道から出てきて、一度キッときまる阿古屋(坂東玉三郎さん)。
その目と形に強い意志が見えますが、これから何をされるか分からず、愛する人の居場所も分からない心中はいかばかりか。。
そういう内面を思うと、このきまるところだけでもぐっときてしまうのです。
内面を隠して気丈に振る舞う姿に弱いんです…(トトロのサツキちゃんに毎回泣かされる)
阿古屋を問いただすのは、知性に優れた重忠(坂東彦三郎さん)と、感情的になりがちな岩永(尾上松緑さん)。
落ち着いた声色で、余裕をもって阿古屋に接する重忠、人としての大きさを感じました。彦三郎さん、いいお声ですよね…。
対して岩永は、先述の通り集中力がなく、分かりやすく器が小さい。笑
人形の動きを人間がやると、大げさでぎこちなく見えて、この場面における岩永の滑稽さが出るなぁ、と思いました。
阿古屋が弾きこなすのは、琴・三味線・胡弓という3つの楽器。
琴のときには竹本(で合っているのでしょうか…)、三味線のときには長唄との合奏になります。
拍子をとって間を合わせているのが分かり、面白かったです!
琴の演奏中に、阿古屋がだんだんと音楽に没頭していくのが分かりました。
おそらく最初は、自分がなぜ楽器を演奏させられるのか理解しきれていないのだと思います。
三味線を弾け、と言われたときもとまどう様子を見せるのですが、
最後に胡弓を命じられた際、阿古屋は「あい」と素直に請けます。
ここまで演奏してきて、自分が演奏を通して求められていること、それが重忠に伝わっていることが分かってくるのかな、と思います。
この素直な返事に、「いよいよ阿古屋が全ての思いを伝え切るのだ」と感じました。
胡弓の演奏中、曲の特性上、劇場内が全くの無音になる瞬間が何度かあります。
音が少ない状態って、演奏する音楽に自信がないと怖いと思うのです。
それでもさすが、ご自身の間で、余裕を持って演奏される玉三郎さん。
本当に阿古屋なんだな、と思いました。
さて、見どころはこの演奏シーンなのですが、
実は私が好きだったのは演奏シーンよりも、阿古屋が愛する景清との馴れ初めを語るところで。
所作の美しさはもちろんのこと、こぼれるような声で切々と語る様子が胸に迫りました。
その台詞がまたいいんですよ…
「終わりなければ始めもない」本当に何気ない出会い、ちょっとした触れ合い。普通の恋なんです。
こんな源平の争いなんて、そこには何も関係ないんです。
これから初めて観る方には、ぜひこの台詞を味わっていただきたいです!!!
■これさえ押さえれば楽しめます
以下に挙げるのは、観劇してみて
「初めてでもこれが分かっていれば楽しめそうだな」
「これを知っていればもっと楽しかっただろうな」
というのをまとめてみたものです。
★大体見せ場の前には、
「待ってました!」という掛け声がかかります。
この声を頼りに、舞台にぐぐっと注目!
↑今回はそういう雰囲気の演目ではないので「待ってました」はかかりませんでしたが、
楽器が来たら見せ場、と思えばほぼ間違いないです。
基本設定は、
【重忠・岩永】vs【阿古屋(景清)】
というところが分かれば問題ないかと思います。
ものすごくざっくりとあらすじをまとめれば、
愛する景清の行方を敵方に問いただされた阿古屋が、知らないと貫き通す話です。
三曲を通して阿古屋がうたうのは、琴・三味線・胡弓の順にそれぞれ「景清の行方を知らないこと」「愛しい人に会えない辛さ」「恋の終わり」。
以上を頭に入れておけば、あとは阿古屋の傾城としての腹の括りようや、徐々に明らかになる切ない思い、それを三曲の調べにのせて表現するところを堪能するのみです。
重忠の男ぶりと、舞台端の岩永の動きにも忘れずに注目を!笑
■まとめ
正直「阿古屋」は結構重い演目だと思うのです。
初めて見る歌舞伎がこれだったら、果たして自分は歌舞伎にはまるかな、というとそうでもない気がします。
ですが、間違いなくこれから見続けたい演目です。
もっと理解を深めたくなる演目です。
何度も見るうちに、もっと味わい深くなってくるのだろうな、と思います。
今回、Bプロでは阿古屋を中村梅枝さん、中村児太郎さんが交替で演じられます。
Aプロを観て、お二方の「阿古屋」を見たい思いがますます強まりました。
12月は歌舞伎に割かないと決めたはずだったのですが…やっぱり厳しいものがありましたね…笑