この企画は、知識が足りないゆえに
歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方
の背中を押すべく、
歌舞伎歴1年半の初心者が何を知っていて、何を目的に、
どのチケットを買うのか
をさらけ出す企画です。
初心者の無知っぷりと、この1年半でちょっと学んだことを、
背伸びせず、恥ずかしがらずにお伝えできればと思っています。

物知らずシリーズ第9段は團菊祭!

去年の團菊祭は、まだ人生5回目くらいの歌舞伎観劇でした。
こういう名前のついた公演が巡ってくると、自分の観劇経験が少しずつ積み重なっているのが分かって何だか嬉しい。

そして!注目すべきは七代目尾上丑之助初舞台」!!
尾上菊之助さんのご子息、寺嶋和史くん(5)が「尾上丑之助(うしのすけ)」を襲名します!

和史くん改め丑之助くんは、おじいさまに尾上菊五郎さんと中村吉右衛門さんを持つという、とんでもなく豪華な家系図。
将来が楽しみですね!

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■歌舞伎座 團菊祭五月大歌舞伎の演目は?


5月の歌舞伎座。
演目は以下の通りです。

【昼の部】
一.寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
二.歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
三.神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)
 め組の喧嘩
 品川島崎楼から神明末社裏まで

【夜の部】
一.鶴寿千歳(かくじゅせんざい)
二.絵本牛若丸 (えほんうしわかまる)
 七代目尾上丑之助初舞台
三.京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)
 道行より鐘入りまで
四.曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
 御所五郎蔵


「神明恵和合取組」も読めませんが、ベストオブ読めないは「曽我綉俠御所染」に進呈したいと思います。
この辺り、別に「昔の人は読めた」とかそういう話ではないのではないだろうか。。 


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


【昼の部】

「寿曽我対面」は、お正月から度々やっている「曽我物」の一つですね!
観たことはないのですが耳馴染みは非常にあります。
 
「勧進帳」もとっても有名ですよね。同じく「名前は何度も耳にしながら、実際には観たことがない」といういつものパターンです。
 
「め組の喧嘩」も同じく名前のみ。確か以前シネマ歌舞伎になっていたので、予告編を観たのだと思います。

【夜の部】

「京鹿子娘道成寺」が出るんですね!!
言わずと知れた舞踊の大曲、という印象ですが、通しでちゃんと観たことはなかったのではないだろうか。
 
そして他のは全く知らないという。そういうこともある(そういうことの方が多い)


*現時点で知っていることは?


◇寿曽我対面

「曽我十郎・五郎の兄弟が、小林朝比奈の手引きで親の敵・工藤祐経と対面する」という場面だと認識しています。←この1年で得た知識

この曽我兄弟の敵討ちの話はいろんな演目にアレンジされているようで、昨年10月にも上演された「助六」もそうなんですね!(感想はこの記事
舞踊の振りにもしばしば入っている気がします。
知っておくと、他の物を観るときにも楽しさが増しそうです。

◇勧進帳

これも有名な演目ですよね。非常にうろ覚えですが…

「頼朝勢から逃げる義経と弁慶一行」vs「安宅の関を守る富樫」との、関を通すか通さぬかの攻防で、
弁慶がこの富樫を突破するために、その場のアドリブで勧進帳を読み上げたり、主である義経を打擲したりするのではなかったか。。

富樫はこれが義経と弁慶であることを分かっていつつ、その弁慶の気迫に負けて、ついに関を通す、という流れだった、はず、です。笑

弁慶が花道を「飛び六方」で捌けていくのを昔テレビで観たことがあって、「これぞ歌舞伎!」という印象でした。

『窓際のトットちゃん』にも出てきます。プチ情報。

◇め組の喧嘩

ちゃんとは知らないのですがあれですよね、
鳶vs力士で大喧嘩になるやつですよね(ざっくり)。

杉浦日向子さんの『一日江戸人』(新潮文庫、平成17年)によれば、江戸時代において、力士はモテる職業だったとか。

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「火事と喧嘩は江戸の花」という言葉もあるし、もう江戸っ子のためにある芝居としか思えません。笑

め組の親分は尾上菊五郎さん
菊五郎さんの江戸っ子が大好きです。さっぱりしていて、張りがあって。
何だかこう、頼りたくなっちゃうというか。

◇京鹿子娘道成寺

もうこれは名前だけならずっと知っていたレベルで有名なやつです。

確か、女人禁制の道成寺に白拍子花子(実は清姫の亡霊)がやってきて、舞を舞いながら、所化(僧)たちの隙を突いて鐘の中に飛び込み、恋に狂った蛇体となって現れるという流れ。

僧・安珍(あんちん)に恋をした娘・清姫(きよひめ)が、安珍に裏切られた恨みから彼を追い、安珍が逃げ込んだ道成寺の鐘に蛇体となって巻き付いて焼き殺してしまうという、非常に物騒な伝説に由来しています。

「京鹿子娘道成寺」はこの後日譚で、道成寺に鐘が再興されるというところに白拍子花子がやってきて、鐘を拝ませてほしいと頼むところから始まるのではなかったか。 
この花子が実は清姫の亡霊で、舞い踊るうちに徐々にその本性を顕していくのだったはず(いつもながらうろ覚え)

長い曲なので、様々な場面があります。
しっとりと女心を表すところがあったり、
華やかな三段重ねの傘(振り出し笠)を持って踊るくだりがあったり、
振り鼓(鈴太鼓)というなかなか素敵な音が出る小道具が出てきたり(振り鼓についてはここで語ってます)

一度ちゃんと観ておきたかった舞踊です。


■観てみたい演目は?


今月個人的に絶対に外したくないのは、「め組の喧嘩」「絵本牛若丸」「京鹿子娘道成寺」でしょうか。

何たって「絵本牛若丸」は、丑之助くん初舞台襲名披露です。
吉右衛門さんも菊五郎さんもご出演とあれば、行かない理由がない!

そして「め組の喧嘩」は、とにかく菊五郎さんの江戸っ子を観たい一心です。笑
他にも、過去に観てきてとても印象に残っている役者さんが揃っていて、楽しみ。

菊之助さんの踊りは、まっすぐ芯が通っている感じがして好きなのです。
道成寺はどんな感じでしょう。今からわくわくしています。

市川海老蔵さんが弁慶をなさる「勧進帳」もとても興味深いです。お家芸ですもんね!
迫力があるだろうなぁ。。 


■どのチケットを買う?


演目を選んで幕見かなぁと思っていましたが、特に夜の部は混みそうでもあるし、三等席を押さえることも検討しております。
「道成寺」は花道での踊りも割と長かったと思うので、本当は花道がちゃんと見えるところを取りたい…!

ただ気がかりなのは、5月、国立劇場の文楽公演が豪華なんですよね…
「妹背山婦女庭訓」の通し上演。昼夜分けての上演なので、どちらも取るしかないという。。

何かを求めれば何かを失うのですね。
(娯楽を求めればお金を失うのですね。 )


■まとめ


ゆくゆくはご自身も受け継いでいくであろう「菊」の字が入った公演で、襲名披露ができる丑之助くん。
「絵本牛若丸」のご出演陣、さすが豪華ですね!
「菊五郎劇団出演」という言葉も、頼もしく背中を支えてくれそうな響きです。

素敵な舞台になるだろうことに胸を高鳴らせつつ、
息子さん初舞台の演目の直後に大曲が待っているという菊之助さんにも大注目の5月です。笑