毎年行きたいと思っていた未来座さんの公演、やっと行けましたー!
古典の舞踊技法をもとに、新たな日本舞踊作品を発表している未来座の公演。
今回が3回目の公演ですが、日本舞踊協会としては50年以上、こうした活動をしているそうです。
今年の演目は「檜男(ぴのきお)」と「春夏秋冬」の二本立て。
※「檜男」は、檜の字に☆で濁点がついています。
*「檜☆男」
お馴染みのあのピノキオのお話を、日本舞踊で。
語りには、歌舞伎役者の坂東巳之助さん!
これがとっても良くて、くすっと笑いつつ、最後はぽろぽろ泣いてしまいました。
知っている話なのに。泣くと思ってなかった。笑
***
開演前からコオロギの声がしているの、物語に自然に入り込めていいですね!
舞台の大道具は、まるで絵本のよう。わくわくします。
おじいさんが大事に作ったお人形たちは、もちろん日本寄りの人形が多いんですが(笑)、
それぞれ動き方が全然違って、観ているうちにどの人形にも愛着がわいてきます!
女の子らしくかわいらしく動く「かりん」(もうこれが本当にかわいくて愛しい!)、
名前から想像できるいかにもな雰囲気が楽しい「おふく」、
途中見事な人形振りを堪能できる「ちゅうべえ」と「うめがわ」(!)、
小ネタ満載で片時も目が離せない「うば」、
派手な衣装で物語を動かしていく「ぎんのじ」と「でび」。
頭に灯篭を乗っけた「竹人形」たちもきれい!
途中にはちゃんと、それぞれの人形の見せ場が用意されているのですが、
この人形が出てくるときに、日本人形が入っているような、背景が金のガラスケースありますよね、あれに入って出てくるのです。
演出が細かい!笑
お話を語ってくれるのは、最初からずっと鳴いていたあのコオロギです(「こおろぎ安」というお名前。声は巳之助さん)。
こおろぎ安、会場を巻き込みつつお話を展開していってくれます。
そんなキャラクターたちに囲まれて、物語の中で成長して行く「檜男」。
最初はカタカタの頼りない動きだったのに、、と思うとラストが本当に素敵です。
一挙手一投足が愛しい、愛嬌たっぷりの檜男。
かりんとの淡い恋模様もまた微笑ましい!
国立小劇場は、舞台の方々の表情も見やすいサイズ感なのも嬉しいところです。
***
演出も楽しくて、親しみやすかったです。
絵本の世界のような大道具、客席の使い方、多様な音楽…飽きさせません。
何せ!踊りを!!踊りを観て!!!
全く堅苦しくないので!むしろ親しみと愛嬌の塊なので!!!
関係ありませんが梅川と忠兵衛、場面は違えどわざと歌舞伎座と当てたのか…?
*「春夏秋冬」
25分の休憩を挟んで、「春夏秋冬」が始まります。
美しい映像を使いつつ、決してそれが邪魔になることはなく、世界観を作り上げているなぁと思いました。
先ほどの舞踊劇とは違うアプローチで、日本舞踊の魅力や可能性がぎゅっと詰まった演目でした!
【春】
これはまずもって、着物がとにかくきれい!
女性舞踊家13人が美しく振袖で踊るのですが、全員違う振袖なんです!!
一列に並んだところなんか、雑誌かファッションショーを眺めているよう。
日本舞踊を始めた理由に「着物が着たいから」 は一大勢力なのですが(笑)、こんな素敵なものを観たら、より一層その熱が高まると思います!
加えて踊りはもう、「これぞ日本舞踊」というような華やかさと柔らかさがありました。
「日本舞踊」と言われてイメージする世界はこんな感じなのかな、と。
踊りっていいなぁ。。
「日本舞踊」と言われてイメージする世界はこんな感じなのかな、と。
踊りっていいなぁ。。
【夏】
打って変わって、男性舞踊家10人の群舞。
袴の衣擦れの音っていいですねぇ。。それだけでそわそわしちゃう。
袴の衣擦れの音っていいですねぇ。。それだけでそわそわしちゃう。
それでですね、男性舞踊家の群舞、かっこよくないわけないんですよ!!
この部分のテーマは夏祭り。
舞台の熱量がどんどん上がり、そのスピード感と大きさと迫力に、観ている方もどきどきしてきます。
この部分のテーマは夏祭り。
舞台の熱量がどんどん上がり、そのスピード感と大きさと迫力に、観ている方もどきどきしてきます。
日本舞踊の「かっこいい要素」を集めたらこうなるなぁという感じ。
最後の締め方がまたたまらない!!!
【秋】
そんな勢い溢れる舞台の空気をがらっと変えるのは、井上八千代さん。
ただひたすら、その舞の作り出す空気に浸れる喜び…
振りの意味が分からなくても、無駄の全くない美しさに、呼吸すら忘れて見入ってしまいます。
背景に浮かんだ大きな月。
広々とした舞台は、音楽とも相まって物寂しさがあります。
その中で、一人舞うお姿が尊くて。
決して力が入っているわけではないのに会場全体がぴんと張りつめるようで、
振りが多いわけではないのに密度が高い。
抽象的な言い方になってしまいますが、八千代さんの京舞の、その空気感がとても好きです。
【冬】
最後は、春と夏に登場した舞踊家たちが一堂に会しての踊り。
独特な響きの音楽に合わせ(なんとこれが鶴澤清治さんの作曲だったんですね!)、冬を生き抜く鳥たちが力強く踊ります。
これだけの人数で、あの大きさの舞台で踊るのは本当に壮観です。
最後は静かに、作品が閉じられます。
*まとめ
近くにある芸能、たとえば歌舞伎とか、あるいはダンスとかバレエとか、そういうものに比べて、
日本舞踊って「この公演を観てみようか」となりにくいジャンルだと思うのです。
でも、ちゃんと日本舞踊でもできるんですよね。
こんなにエンターテインメント性の高いことだって、古典の日本舞踊を使ってできる。 だから、何だかこの公演は日本舞踊好きとしては嬉しかったし、一人でも多くの方に観ていただきたいな、と思いました。まわし者じゃないですよ!笑