ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

2018年12月

物知らずが行く歌舞伎#6〜二月大歌舞伎(歌舞伎座)今の知識と演目選び

この企画は、知識が足りないゆえに
歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方
の背中を押すべく、
歌舞伎歴1年の初心者が何を知っていて、何を目的に、
どのチケットを買うのか
をさらけ出す企画です。
こんなに物を知らなくても歌舞伎を楽しんでいますよ
というのをお伝えできればと思っています。

物知らずシリーズ第6弾は、2019年2月。
年の瀬に恥を晒して終わる無粋をお許しください…

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■歌舞伎座 二月大歌舞伎の演目は?


来年2月の歌舞伎座。
演目は以下の通りです。

【昼の部】
一.義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
 すし屋
二.暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)
三.団子売(だんごうり)

【夜の部】
一.一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)
    熊谷陣屋(くまがいじんや)
二.當年祝春駒 (あたるとしいわうはるこま)
三.名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)


夜の部の「一谷嫩軍記」「當年祝春駒」あたりが読めないですね…
対して昼の部の読みやすさは安心します。笑 


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


【昼の部】

「すし屋」という言葉は何度も聞いたことがあるし、登場人物の「いがみの権太」という名前もとても耳馴染みがあるのです。
それだけ有名な演目ということなのですが、残念ながら「聞いたことがある」程度。
12/30(日)放送の『古典芸能への招待』(NHKEテレ)でやっていたようなので、録画したのを見たら情報更新します!

「団子売」はなんだかお馴染みになってきましたね!笑
文楽の方の「物知らず」や「感想」で何度か触れています。今月「文楽鑑賞教室」で上演されていたのです。
坂東三津五郎さんと中村勘三郎さんの踊った「団子売」の映像をよく観ています。大好きな舞踊です。

「暗闇の丑松」は聞いたことのない演目でした…。


【夜の部】

「熊谷陣屋」は一度、テレビで観たことがあるはず。
ただ当時はまだ歌舞伎をほとんど観たことがなかったので、いまいち覚えていないんですよね…。
でもものすごく有名、という印象です。 

あとは残念ながら初めましてでした…。


*現時点で知っていることは?


◇義経千本桜「すし屋」


先ほど触れたように、「いがみの権太」という登場人物は聞いたことがあるのです。
名前だけ見ると性格が悪そうですが、確か本当は良い人なのではなかったか…

多分、歌舞伎の入門書か何かでちらっと読んだのでしょうね。
曖昧な知識から入ってしまうので、実際に観てみないことにはすぐあやふやになってしまいます。


◇団子売


これは以前にも触れましたが、曲がとにかくいいのです…!太棹のドライブ感についつい乗ってしまう!

出だしは楽しい雰囲気の曲に合わせて、杵造・お臼の団子売夫婦が屋台を担いでやってきます。
その後、舞台の上で餅つきの様子を見せていくのですが、
この餅つきの前に臼と杵を準備するときの音楽もかっこいいので、ぜひ耳を傾けてみてください。

途中で一度伸びやかな曲調に変わり、踊りもゆったりと心地よくなります。
杵造の一人踊りから始まり、途中からお臼が加わります。

最後はおかめのお面を付けたお臼の一人踊りに、ひょっとこのお面の杵造が加わるのですが、
もうこのお面のところが本当に楽しい!
曲もテンポが上がり、どんちゃかどんちゃかしてわくわくします!!!

こちらの記事にて、文楽版の感想を語っております。


◇熊谷陣屋


首実検があったことと、最後に熊谷次郎直実が出家して一人花道を去っていくことしか覚えていない。
しかもこの前後に、別のテレビ番組で観ていた歌舞伎でも首実検があったので、ストーリーや登場人物がもはや脳内で混沌としております。 。

でもものすごく有名な演目だと認識しております(二回め)。


■観てみたい演目は?


『暗闇の丑松』尾上菊五郎さんなのですね…!
今年の印象的な舞台でことごとく格好良かった菊五郎さん、ぜひ観に行きたい。
『十六夜清心』(感想はこの記事と同じく、中村時蔵さんと組んでいらっしゃいます。素敵に違いない!

中村吉右衛門さんが熊谷をなさる『熊谷陣屋』も外せません。
「吉右衛門さんは絶対に観ておくべき」とは歌舞伎観劇大先輩からのお言葉なのですが(笑)、
ものすごく「歌舞伎」を感じるなぁ、というのが初心者の印象です。(そのくせ12月の国立は行けなかった不届き者です。笑)
名作を吉右衛門さんで観られる絶好の機会。絶対に観に行きたいところです。

『名月八幡祭』坂東玉三郎さんの芸者は素敵だろうなぁ…
片岡仁左衛門さんの船頭も粋でかっこいいに違いありません。 

あとは『団子売』ですよね!もう私これ好きすぎますよね!!笑
中村芝翫さん片岡孝太郎さん。大変失礼ながらお二方の踊りを拝見したことがないので、とても楽しみです。


■どのチケットを買う?


観たいものがあふれていますが、2月は気になるものを幕見になると思います。
というのも、

2月は国立劇場で文楽公演があるのです!

文楽があるときには、極力文楽を観に行きたい。
というのも、以前も書きましたが文楽は歌舞伎に比べて公演が少ないのです…。

というわけで、

スケジュールとお金の都合をつけつつ、観たい演目をちまちま観に行きます!


■まとめ


7月から始めたこのブログ。
つい最近のことですが、当時は「歌舞伎を観に行く」ことは日常ではなく、現に7月と8月は観劇回数ゼロだったのではないかと思います。
それがすっかり毎月の恒例となり、「観に行くのが当たり前」になってきつつあるここ数ヶ月。
はまる、というのはおそろしいものですね。笑

***

2018年、拙いブログにお付き合いくださり本当にありがとうございました。
経験も浅く、知識も足りず、意図せずイラっとさせてしまうことも多々あったのではないかと思います。
それでも読んでくださる方がいることに、日々心より感謝しております。

2019年も少しずつ知識を蓄え、自分なりの方法で「和もの好き」仲間を増やしていけたら嬉しく思います。
何卒宜しくお願いいたします! 

それでは、良いお年をお迎えくださいませ。
 

「二人藤娘」観てきました!〜十二月大歌舞伎 夜の部Aプロ感想〜

2018年ラスト観劇は、歌舞伎座・十二月大歌舞伎 夜の部Aプロの「二人藤娘」

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二人藤娘の写真がなかったよの巻

中村梅枝さん中村児太郎さんという、
Bプロの「阿古屋」を交代で演じていらっしゃる若手お二人による舞踊です。 

舞踊「藤娘」はもともと好きで、憧れの演目。
初めて見た日本舞踊は、サークルの先輩の「藤娘」のお稽古だったと思います。
こちらの記事で、その魅力にほんの一瞬だけ触れています。笑)

大まかに4つの場面で構成されているので(舞台中央の藤と松の裏に引っ込んだら場面転換です)、それぞれ振り返りつつ感想を語りたいと思います!


*出


真っ暗に照明が落とされ、「若紫に十返りの~」と長唄の声だけが響きます。
この暗さ、のちの華やかさをより際立たせる心憎い演出ですよね〜!
 
「松の藤浪~」でぱっと明かりがつくと、

本舞台と七三にそれぞれ美しい娘姿!!

塗笠をかぶり、花房のたっぷり下がった藤の枝を持って、綺麗な振袖の立ち姿。
それが一気に視界に飛び込んでくる、あの嬉しさといったら!
こちらのテンションも一気に上がります!!

ここからの曲も素敵で、視覚聴覚ともにとても満足な時間です。

この辺りすみません、見とれてしまった上にテンションの急上昇に頭が追いつかず、もはや覚えていません…。 
お二人ということで目も追いつかず。。
ひとまず雰囲気を大いに楽しんだ部分です。


*「男心の憎いのは~」


一度引っ込んだあと、衣装を替えて、今度は女心を表すしっとりした踊り。
女性らしさが全面に出てきて、お二方の美しさを堪能できるところでした。

指先の揃い具合とか、ちょっと首を傾げてお互いを見る感じとか、
細かいところが愛らしく、じっくり見入ってしまいます。

梅枝さんは「しっとりとした女性」な感じ、
児太郎さんは「かわいらしい娘」な感じ、という印象。
あくまで印象ですが。笑

***

ここからまた引っ込み、衣装を替えて次の「藤音頭」に続くのですが、
この舞台に誰もいない間の、三味線がとっても粋!
聴き惚れてしまいます。 

このように役者さんたちが準備をしている間の音楽は、準備の進み具合に合わせて長さを調節するのだそうです。
特に会話を交わすわけでもないのに、楽器の方みんな揃うのはどういうことなんだろう。掛け声とかが決まっているのでしょうか。

プロの技、かっこいいですよねぇ…


*藤音頭


ここの出だし、心から好きなんです!

軽快な三味線に合わせて、舞台中央の大きな松と藤の花の裏手から、
藤色の衣装に替えた娘が走り出てきて、舞台の上手と下手にご挨拶するんです。
もう素晴らしいサービスですよね!

二人だと、これが上手と下手に分かれてくれるので何だか嬉しい(笑)
「きたきたー!」とわくわくしてしまいます。

それぞれが上手と下手を入れ替わるとき、舞台中央で行き合いになる感じも「二人藤娘」ならではです。

お扇子もとても華やかでした!ぱっと開いたときに本当に綺麗。
赤と金のお扇子が藤色の衣装によく映えて、四階の幕見席からでも輝いて見えました。 

「藤音頭」は同じ節で二番まで歌詞があり、後半はお酒に酔って踊るところ。
「二人藤娘」では、ここがお互いにお酒を注ぎ合って酔う振りだったのですが、
 
お酒が入ると何でこう色気が出るんでしょうねぇ…
特にお扇子でうけて飲んだあと、「ふぅっ」という感じで酔う梅枝さんの美しさが忘れられない。

お二方とも結構酔いますが、酔いが深かったのは梅枝さんな印象でした。笑

それにしても児太郎さん、よく反りますねぇ…! 


*「松を植よなら〜」


ここから先がこの曲の中で最も好きなところ!
音楽が楽しくて華やかで、テンポもいいです。ぜひ耳を傾けてみてください。
日頃は洋楽しか聴かない人でもきっと好き。
お祭りでわくわくしてしまう人もきっと好き。 

ここは児太郎さんの一人踊りでした。
先の「藤音頭」で先に藤の裏に入っていたので、その間に衣装を替えているようです。
藤色の衣装の上半分を脱いで、赤い着物になっていました。
 
娘むすめしていて、よく動くこの部分の魅力がたっぷり!
 
「アア何としょうか、どしょかいな」という歌詞のところ、寝転がったまま手招きして人を呼ぶ振りだったのですが、ここがたまらなく可愛らしかったです。
自分が男で、あんな女性が近くにいたら、帰りがけでも「しょうがないなぁ」と言ってつい戻ってきてしまいそうです。笑
 

*最後


再び藤の枝を持ち、花道で少し踊ってから揚幕の方に引っ込みます。
 
ここで反ったまま回る振りがあるのですが、これが本当に美しかった…
児太郎さん、よく反りますねぇ…!(二回目)

***

当たり前ですがただ二人で藤娘を踊るのではなく、
二人の藤娘の絡みがあり、別の娘同士として踊る演目でした。

お二方それぞれの美しさ、可愛らしさが堪能できる20分だと思います! 

(欲を言えば、「松を植よなら〜」のところが本当に好きなので、あそこを二人で踊っていただきたかった…!)

踊り好きとしては、幸せでいっぱいです。
今年ラストの歌舞伎、この演目で締めくくれて何の悔いもありません。
(と言いつつ、映像ではまだあといくつか観る予定です。笑)

Aプロはあと二回、24日と26日です。
19:30からなので、お仕事終わりに幕見だけでもぜひ!
 

初めて日舞★日本舞踊の公演を楽しむ方法③舞踊公演はどんな雰囲気?


この企画は、日本舞踊歴7年弱の初心者の目線で
踊りをやっていなくても踊りの会を楽しめるであろう初心者的・日本舞踊公演の楽しみ方」を提案する企画です。

【第一弾】初めて日舞★日本舞踊の公演を楽しむ方法①音の楽しみ 
【第二弾】初めて日舞★日本舞踊の公演を楽しむ方法②知らなくても楽しめる演目は?

さて、第二弾までやってみて、初歩的なことを忘れていることに気が付きました。

初めて出かける日本舞踊の公演。
雰囲気ってどんな感じなの?というのを書いておりませんでした!

今日は「日舞の公演の雰囲気」についてまとめてみます。

※ここでまとめるのは、いわゆる「五大流派」中心の古典の公演についてです。
流派によっては全然違う雰囲気のものもあるかもしれませんが、あしからずご了承ください。




1.時間はどのくらい?


*一曲あたりの時間


一曲あたり、大体15〜30分と見積もれば良いかと思います。
中にはもっと長い曲もありますが、概ねこのくらいの幅です。

にしても一曲が長いですよね…始めたばかりの頃は驚きました。

*公演全体の時間


これは公演によりまちまちです。
たとえば毎年国立劇場で行われる「日本舞踊協会公演」は昼夜二部制なので、一公演がせいぜい3〜4時間程度。
しかし、ほぼ丸一日かけて行われる公演もたくさんあります。(むしろ舞踊協会の二部制の方が珍しいと思います)

先日行った舞踊公演は、11時開演・19時半ごろ終演。
途中で出たり入ったりしましたが、やはり腰にきますね…!


2.途中入退場はできるの?


*演目の途中での入退場


もちろん望ましくはないのですが、舞踊の公演では意外とみなさん演目の途中で出入りなさいます。
もちろん望ましくはないのですが、黙認されていることが多いです。
もちろん望ましくはないのですが、私も割とやってしまうことが多かったりします。
なぜならば、短い休み時間でお手洗いからの戻りが間に合わなかったり、観たい演目の途中で会場に到着したり、いろいろあるからです。

もちろん望ましくはないのですがね。


*公演の途中入退場・再入場


再入場に関してはまちまちかと思いますが、私が行った限りでは、チケットの半券があれば途中抜けOKの公演が多かったと思います。

公演自体の途中入退場は、全く問題ありません
むしろ先述したように、公演自体が8時間近くあることもざらなので、
あらかじめ観たい演目をしぼって適当な時間に行ったり、適当なところで帰ったりすべきだと思います。笑

一曲あたりが15〜30分ほどなので、歌舞伎の幕見などよりも細かく時間を刻んで行動できます。


3.どんな服で行けばいいの?


洋服で全く問題ありません
繰り返しで恐縮ですが、とにかく公演が長いので、体に負担がない方が良いかと思います。
デニムやスウェットはさすがに見ませんが、オフィスカジュアルのような感じであればちょうど良いのではないでしょうか。

和服の場合は、紬ならばざっくりとしているものをお召しの方はあまり見かけません。
詳しくないので分からないのですが、つるつるつやつやしている紬の方はいらっしゃいます。

もっとも多いのは小紋の方でしょうか。
やわらかいもの、ポリでも上品な柄のものをお召しの方が多い印象です。

紋付の色無地を着ている方も多くいらっしゃいますが、大体は出演者の関係者です。

とはいえ、気軽な公演(地元の子供達が出る、出演者から「あまり格式張っていない」と聞いている、など)ではかわいらしいウールの着物を着ている方もいたので、これも公演によるのかもしれません。

ただし半幅帯はさすがに見ないので、お太鼓か二重太鼓がいいかと思います。

踊りの公演にどんな着物を着ていくのがベストかは、私自身まだまだ探り途中です…。


4.その他の注意ポイント!


*アナウンスがない!


公演によっては、次の演目がどれなのか、プログラムを読み上げてくれない場合があります。
「次ってこれだよね…?」というのが非常に心もとない。。

対策法としては、時間表を見ることが挙げられます。

舞踊公演では、(私が行った公演は今のところ)必ず演目ごとの時間が書かれた表が、会場に貼られています。
この表がかなり綿密で、一曲ごとの開始・終了時刻と所要時間が1分単位で記載されているのです。

今上演しているのがどの演目か分からないときは、まず時計を見つつこの表を確認して、「時間的にはこの曲っぽいな」という目安をつけます。

あとはプログラムを見て、踊っている人数や内容から類推します。笑

アナウンスがある公演もあるのですが、ないことが多かった気がします。初めての公演で、今何をやっているか分からない心細さたるや。。

*長めの休み時間はない!


歌舞伎や文楽の公演ならば、途中に30分くらいの長めの休憩が入り、その間にご飯を食べたり歩き回って腰をほぐしたりできるようになっています。

しかし、長時間の舞踊の公演だと、そのような休み時間がない場合も少なくありません。

そのかわり、演目と演目の間に5〜10分ほどのインターバルがあります。
各演目ごとに大道具を入れ替えるため、このくらいの舞台転換の時間が必要なのです。

この間にお手洗いに行ったり、飲み物を飲んだりしています。
ご飯を食べたいときは、いくつかの演目を犠牲にして会場を抜け、ロビーなり外なりで食べます。


5.まとめ〜日舞は意外と気軽に観られますよ!


「日本舞踊」と聞くと「高尚」「敷居が高い」「難しそう」「想像がつかない」とどんどんハードルが上がってしまうのですが、

行ってみると全然そんなことはありません!

上述の通り意外と出入りもゆるく、長時間抜けても何も気まずいことはなく、ふらりと行ってふらりと帰れる雰囲気です。

「歌舞伎を観に行こう」「コンサートに行こう」と同じような感覚で、ぜひ踊りも観てみてください。

ときどきとんでもない感動に出会えたりしますから。

※ちなみに、おすすめはこちらです→日本舞踊協会公演
(2019年は2/16(土)・17(日)、昼夜二部制で4回全く別の公演です。)

NHK Eテレで放送中の「にっぽんの芸能」でも、舞踊の回はよくこの公演の映像を使っています。

三等席ならば2,000円で観られます

【関連記事】初めて日舞★日本舞踊の公演を楽しむ方法④公演の探し方

日本舞踊・始めたばかりのときはこんな感じでした


日本舞踊が大好きで、しばしばこのブログでも触れているのですが、
踊りとの出会いはわずか6年半前。

まだまだ知らないことの方がずっと多いのです😅

でも、始める前、始めたばかりの頃はもっと、本当に何にも知らなかった。
6年半後にこんなに日本舞踊が好きになるなんて、全く予想しておりませんでした。 

今日は、踊りに出会ったばかりの頃のことを思い出してみる企画です。

「日舞に興味があるけれど、知識がなくて…」という方がもしいれば、
全くのゼロからここまではまりこんでいる人間がいますよ!とお伝えしたいです。笑

***

そもそも私は、日舞をやりたかったから始めたわけではなく、
着物が着たかったわけでも歌舞伎に興味があったわけでもなく、
(詳細は割愛しますが)ちょっとしたうっかりミスにより偶然日本舞踊に出会ったのです。

そのため、下調べなどは一切なし

日舞といったらぼんやりと「舞妓さんとか芸妓さんとかみたいなやつ」としか認識しておらず、
何なら舞妓さんや芸妓さんがどういうものなのかすらよく分かっておらず。笑

歌舞伎と日本舞踊の関わりはおろか、歌舞伎がどういうものかすら、
「派手なお化粧のやつ」というレベルでしか知らなかったのです。

それぞれを括る適切な言葉も分からなくて、全部「やつ」とまとめてしまうくらい。笑

当然 浴衣の着方も知らなければ、畳むのだってもちろんできない。
初期は一度畳んでは先輩に全部広げられて「もう一回やってごらん^^」という流れでした。おかげさまでじきに覚えましたけどね…

そして何より、音が聞き取れない!

これはもう別記事にして語りたいくらいです。
最初は本当に、「歌詞が聞こえない」とかいうレベルではなく、音が取れない。
何が鳴っているのかが分からない。

ずっと西洋の音楽の中で生きてきたので、拍子が決まっているものしか理解できず、
カウントで動くことのない日本の音楽にまず悪戦苦闘でした。

音楽に合わせて動けるようになったのは、一曲目が上がってからのこと。
始めてから2ヶ月くらいは経っていたのではないかと思います。

「扇子を使うなぁ」というイメージはあったものの、普通の扇子と舞扇が違うことも知らなかった。
そしてお扇子を開けることすらできなかった。笑

こうやって思い返すと、本当にないものだらけですね…

かろうじてあったものと言えば、
幼い頃からの「踊るのが好き」という気持ちと、日本文学への興味でしょうか。

***

これぐらい何もない状態で始めたのですが、
日本舞踊が楽しくなるのにそう時間はかかりませんでした。

思うに、日本舞踊は「踊り」の要素だけじゃなかったからではないでしょうか。

そこには「演劇」の要素、「文学」の要素、初めて聴く邦楽という「音楽」の要素、いろんなことが詰まっていて、そのどれもが面白かった。

それに、新しいことを始めると純粋にわくわくします。
できること、分かることが増えていくのが嬉しい。

そんな日々を経て、「お稽古の日を楽しみに日々を過ごす」というのが日常となっていったのでした。

というわけで、

初心者が日々偉そうに語ってますが、
ほんの数年前はこんな感じだったのですよ、という話です。お恥ずかしや。

だからこのブログもあんまり肩肘張らずに、
「たまたま電車でふたつ隣に座った人の頭の中」くらいの距離感でお読みいただければと思います。笑

「鎌倉三代記」「伊達娘恋緋鹿子」(含.幕開き三番叟)観てきました!〜国立劇場文楽12月公演 初心者の感想~

国立劇場の12月文楽公演、観てきました!

今回は「鎌倉三代記」と「伊達娘恋緋鹿子」の二本立て。
この公演については、こちらの記事で無知を晒しております。

順を追って感想を綴りたいと思います!
あらすじが複雑で(特に鎌倉三代記)まとめるのを断念いたしました…かたじけない…




0.幕開き三番叟


これ、ずっと観たかったんです。

三浦しをんさんのエッセイ『あやつられ文楽鑑賞』(双葉文庫、2011年)で、日々の公演前に「幕開き三番叟」なるものを上演すると知り、
そのような儀式が現代にも残っていることに、とても感銘を受けたのです。

あやつられ文楽鑑賞 (双葉文庫) [ 三浦しをん ]

価格:648円
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しかし一体どのタイミングでやっているのか、そもそも本当にやっているのか、一般人でも観られるものなのか…などなど、分からないことだらけ。

そんななか、Twitterにて「幕明け三番叟は、本公演『鎌倉三代記』の開演15分前に行います」との情報を入手!

おお!三番叟、本当にやってる…!!!

というわけで、開演15分前に座席についてみました。

ぴったり開演15分前。何やら幕が開き、浅葱幕の前に三番叟の人形が登場!
床には誰も座りませんが、舞台下手の御簾から「たっ ぽぽっぽ」と鼓の音が鳴り始めました。

幕開き三番叟の人形は、二人で遣うようです。
「おおさえおおさえ〜」という台詞を言っていたのは人形の方かしら?
最後まで床に人が出てくることはなく、演奏は全て御簾の中から聞こえていました。

素朴で、何となく愛嬌がある三番叟。

おめでたいこの演目を、毎日開演前に、特に大きく広報もせずに続けているのですね。

粛々と続いてきたものに触れられたのが嬉しかったです。

ちなみにこの三番叟、5分弱で終わります
開演前にお手洗いを済ませたい場合は、このあとでも何とかなるかと思います。
(ただし国立小劇場のお手洗いはとても混みます)


1.鎌倉三代記


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見てください、この三浦之助の憂い。時姫の色気。
筋書(今回は600円)に載っている、河原久雄さんによるお写真なのですが、表情の変わらない人形にも関わらず、これだけ表情が出るのです…!


時姫の実の父親・時政と、時姫が愛する三浦之助は、戦乱の世の中で敵同士。
この狭間で葛藤する時姫が不憫でした。

というか、

三浦之助がひどい。。

時姫が敵方の娘であるために、疑いを持ってしまうのは分かるのですが、
それにしても時姫の疑いを晴らす条件として出すのが「実の父である時政を討つこと」だなんて。。

いくらなんでもそれはどうなの!と思ってしまいました

三浦之助が、立場上自分のことを疑わざるを得ないのを、時姫も分かっています。
そして、三浦之助が討死をする覚悟であること、もう会えないであろうことも、分かっているのです。

この時姫が、つれない三浦之助に縋る場面、台詞も良く、時姫の動きも情感たっぷりで、一番印象に残っています。

(※討死の覚悟を)なぜあからさまに打ち明けて、この世の縁はこれ限り、未来で夫婦になつてやろ、と一言言うては下さんせぬ」

という時姫の、三浦之助への台詞。恋心が真っ直ぐすぎて切ない。。

このあたり、時姫と三浦之助の二人だけの場面なのですが、
時姫が三浦之助を見上げる角度がものすごく色っぽいのです。
舞踊に出てくるような動きをするところもあり、台詞に加えて一連の時姫の動きからも目が離せません
文楽のお芝居でもこんなに動くんだ!というほど、語りながら時姫、結構動きます。

時姫はとにかく真っ直ぐで一途なんです。

その純情具合はときに方向を間違っていて(笑)、
姫育ちでありながら必死に町人の言葉を覚えようと頑張ったり、
経験のない家事を何とかしようとしたり(その上で結局何もできなかったり)、という様子はちょっと滑稽なくらい。

でもこのただひたすらな「三浦之助の妻でありたい」という気持ちが、最終的に時姫に重大な判断を下させるのですよね。
これで周りも大きく動き出すわけです。

今回この演目を観るにあたって、「赤姫とは何か」というのを少しでも掴みたい、という気持ちがありました。
(「赤姫」については「歌舞伎美人」の解説(こちら)が分かりやすい。
私個人の「赤姫について知りたい」という話はこの記事です。)

姫様育ちで常識はいろいろ足りない、それでもこれだけの思いと実行力とを持って、愛する男へ尽くすことができる。
そういう性格が、「赤姫」というものの一つの特徴なのかな、と思います。

話は逸れますが、前半に出てくる近所のおばちゃん的な役・おらちが結構好きです。笑

時姫とは正反対も正反対、さっぱりしていてだいぶ図々しい。笑
(時姫とおらちの会話の噛まなさが愉快です)

でも何だかんだで、時姫に家事を教えてあげたりして、面倒見がいいんですよ。
近所にいたら話題が絶えなそうなおらちさんです。


2.伊達娘恋緋鹿子


この記事で、お七は放火をするのか?しないのか?と気を揉んでおりましたが(※そこまででもない)
結論。放火しません。

そのかわり、「火事ではないのに火の見櫓の鐘を鳴らす」という重罪を犯します。やっぱり悲恋だった…

前半、お七が意にそぐわぬ結婚を両親から説得される場面。
愛しい吉三郎のことを思い、母にすがりついて泣くお七が何とも悲しくて、それでいてかわいい
本当に一人の娘です。後々あんなことになるなんて、このときお七は考えてもいないんだろうなぁ。

お杉という下女が、また頼もしい人なんですよ。
お七もためらいなく頼ります。
出先から戻ったお杉に駆け寄って嘆くお七がまたかわいい

このお杉、お七の思いを受けて、丁稚の弥作と共に吉三郎を救おうと一肌脱ぐのですが、
弥作の登場がなかなかに楽しいので注目です(笑) なぜそこにいた…。
弥作&お杉は、最後まで安心して見ていられるナイスコンビでした✨

さて、このお話では途中に舞台転換があります。
かの有名な火の見櫓の場面の前です。

この火の見櫓のセット、直前まで浅葱幕で隠されていて、
幕がぱっと振り落とされると一気に舞台が見えるようになっているのです。

浅葱幕、以前も書きましたが(この記事)本当に凄い演出ですよね。
「一気に見える」というところ、スピード感と驚きを生むにはとても重要だと思います。

この火の見櫓が、お七の人生を大きく狂わせることになるんですよね…

火事でもないのにこの鐘を鳴らすと、火炙りの刑になってしまうのだそうです。

一心不乱に櫓に向かうお七に、心の中で「お七!戻っておいで!!」と願わずにはいられなかった…

この櫓に上る演出、凄いんですよ。
人形浄瑠璃で観るのは初めてだったのですが、

本当に人形が登ります!!

人形を遣う人は、櫓の後ろから動かしているようで、
舞台上に見えているのは櫓に上がっていくお七だけなんです。

凄かった。

最後は舞台がぱっと明るくなり、登場人物が舞台上にずらりと並んで幕になります。

壮絶だなぁ。。
とにかく演出が凝っていて、文楽における工夫に改めて驚いた演目でした。


3.まとめ


今回も充実した時間を過ごすことができました!
床の近くの席だったこともあり、音圧にも圧倒されました。

以前「夏祭浪花鑑」を歌舞伎で観たときに、「これを文楽で観てみたい」と思ったという話は過去にも書いたのですが、
今回は逆に「鎌倉三代記」を歌舞伎でも観てみたいな、と思いました。

時姫の見せ場、どんな感じなんだろう。
あの時姫の台詞を聞きたい。

お七の方は幸せなことに、1月の歌舞伎座で観ることができますね✨
(1月歌舞伎座の「物知らず」はこちら

同じ演目を文楽と歌舞伎とで比較してみると、それぞれの特徴や良さがあってとても面白いのです。

そういう楽しみ方ができるくらいに、どちらの文化も現在進行形で残っているのが、本当にありがたい限りです。

★2018.12.13追記★
 1月歌舞伎座の「松竹梅湯島掛額」は、これとはだいぶ展開が異なるようです!
とはいえラストは「人形振り」とあるから、やはりこの場面が観られるのでしょうか…?
何にせよ、関連する演目が直近で観られるのは嬉しいです^^
(公式サイト「歌舞伎美人」の該当ページはこちら )


***

今回もイヤホンガイドは借りずに筋書だけで臨みましたが、
笑いどころなどをちゃんと理解するにはイヤホンガイドが良かったのかもしれません。
多くの方が笑っている場面で笑い損ねたところがいくつかありました(単なる理解力のなさも大いにありますが)。

もし「理解に自信がないけれども筋書派」という方がいましたら、先に児玉竜一さんの「上演作品への招待」(p.16-17)に目を通しておくと雰囲気が分かりやすくて良いかもしれません。

プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇5年目。このご時世でなかなか劇場に通えず悶々とする日々。
◆着物好きの友人と踊りの師匠のおかげで、気軽に着物を着られるようになってきた今日この頃。

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