ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

2018年12月

「団子売」「菅原伝授手習鑑」(文楽鑑賞教室@国立劇場)観てきました!


今月一番楽しみにしていた予定かもしれない。笑

国立劇場の「文楽鑑賞教室」に行ってきました!

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プログラム表紙は「菅原伝授手習鑑」の松王丸です。 松のお着物。
 
とってもとっても楽しくて素晴らしい時間だったので、
順を追って感想を語ります!!
 
その前に…

◆文楽鑑賞教室とは◆


太夫・三味線・人形それぞれの魅力を実演を交えて紹介する「解説 文楽の魅力」と、文楽を代表する名作を合わせて観ることができる企画です。
基本は初心者向けですが、文楽好きの方も結構いらしているようでした。
以下、ちょっとした情報をまとめておきます。

■公演プログラム
無料でいただけます!そして内容も十分充実しています!!
あらすじと配役はもちろんのこと、使う首(かしら、人形の顔の部分)、床本(台本)まで記載。さらに太夫・三味線・人形の解説も載っています!

■イヤホンガイド
450円+保証金1,000円で利用できます。(この1,000円は利用後に返金)

■字幕
舞台上方中央に一箇所、字幕が出ます。観劇の助けになります。

■服装
洋服の方もたくさんいらっしゃいましたし、着物の方は紬や小紋、アンティーク調の方まで比較的自由だった印象です。
 






1.団子売


私はとにかくこの曲が好きなんですー!
もう幕が開く前から一人でテンションが上がってしまって、
曲が始まるとまたつい体が動きそうになってしまって。笑

楽しく始まり、伸びやかな部分を挟んで、華やかに楽しく終わる、舞踊中心の演目です。

その名の通り、町中で団子を搗きながら売り歩く夫婦・杵造お臼(名前も面白い)が、おめでたい歌詞に合わせて踊ります。 

太夫四人、三味線四人という編成。
太棹三味線のあの独特な音がこれだけの厚みをもって届くと、体まで響いてわくわくしますね!

最初は夫婦が二人で餅つきの様子を見せ、
男(杵造)の一人踊り、女(お臼)の一人踊り、と続いて、
最後は二人で一緒に引っ込んで幕です。

この一人踊りがそれぞれ良いんですよ!

まず杵造の方は、ゆったりとした音楽。
途中でひょうきんな格好で止まったりして楽しい

ここの太夫さんは基本一人で歌う(でいいのでしょうか?これもやはり「語る」?)のですが、合いの手(「とこせ、とこせ」というところ)は全員です。
良い声が四人揃うと圧巻です。

そしてお臼の一人踊り、ここから曲調ががらりと変わります。
囃子が入り、歌も三味線も全員参加で、テンポも上がって、本当に華やか!
私がこの曲で一番好きなところです✨ 観ている方もつい音楽に乗ってしまいます。

そして、この楽しい気分のまま二人が引っ込み、幕となります。

この曲を生で聴ける嬉しさに、数日前からうきうきしておりました。笑


2.文楽の魅力(解説)


冒頭にまとめましたが、ここでは<太夫><三味線><人形>の方が、それぞれ実演を交えながら解説してくださいます。
Bプロのご担当は、豊竹靖太夫さん(太夫)、鶴澤友之助さん(三味線)、吉田玉翔さん(人形)。

どこをとっても非常に興味深いお話だったのですが、特に印象に残っていることを二つ。

まず、三味線の役柄による弾き分けのお話。

女性の登場によく使われる旋律があるのですが、その女性が娘なのか姫なのかによって、弾き方を変えるそうです。
娘なら、小走りに待ち合わせに向かうような感じ。
姫だと着物を引きずっているのでそうもいかず、自然と弾き方もゆっくり、高貴な感じになります。
知ってから文楽を観ると、一層楽しめそうです。

それから、人形を遣うときのサインのお話。

一体の人形を三人で遣うのですが、動きを合わせるのに声で合図を出すわけにはいきません。
そのため、主遣い(かしらと右手を遣う人)が、人形の首と肩、それからご自身の腰で、左遣い・足遣いにサインを出すのだそうです。

実際、その場で玉翔さんがやったどの動きにも、お二方が完璧に合わせていらして感激でした!

その他の場面においても、とにかく人形さんたちの息ぴったり具合がさすがの一言。笑

全体を通してみなさまとてもお話上手で、笑いどころがたくさんでした!
貴重なお話をこんな気軽な雰囲気で聴けるのは、何ともありがたいことですね😁


3.菅原伝授手習鑑(寺入り・寺子屋の段)


文楽といえば!というくらい有名な演目。文楽三大名作のひとつです(他二つは「仮名手本忠臣蔵」「義経千本桜」)
テレビで観る機会も比較的多いのではないかと思います。

忠義と親心との間で思いを語る松王丸・千代夫婦にぼろ泣きでした…

ものすごくざっくりと筋をたどりながら感想を。
松王丸については思いが強すぎるので、別枠で語りますね。笑

***

※途中 現代語にしてある台詞は、筆者の意訳です。 

武部源蔵夫妻が営む寺子屋に、小太郎という男の子が入門してくるところから始まります。

この場面、手習子(寺子屋の生徒)たちがいたずら盛りでじっとしている瞬間がほぼなく(笑)、微笑ましいです。

さてこの小太郎、母親・千代に連れられてやってきます。
自分をひとり、寺子屋に残して出掛けようとする千代に、小太郎はすがる。
そして千代がそれを叱りつけるという、現代でも幼稚園なんかでよく見る光景なのですが、

後から考えるとここだけで泣けるくらい辛い場面なんですよね。。

この家に匿われている菅秀才菅丞相の息子)が敵方である藤原時平に追われているため、
菅秀才の身代わりとして、この小太郎の首が差し出されるのです。

そのことを心に決めた源蔵夫婦の元に、時平方の春藤玄蕃松王丸がやってきます。
菅秀才の首を出せ、というのです。 

この玄蕃登場時、三味線の迫力に「ついに玄蕃が来てしまった…!」とこちらまで冷や汗。笑 

まずは寺子たちの中に菅秀才が混ざっていないか、手習子たちが一人ひとり顔を確認されます。
このシーン、手習子たちの見せ場ですね~!
一人ひとりとても愛くるしい。一人だけ年長者の「よだれくり」も楽しいです。笑

手習子全員の確認が終わると、いよいよ菅秀才の首を差し出さなければならない場面。

実際に殺されるのは菅秀才ではなく、先ほど入門したばかりの小太郎です。

この場面は、とにかく音が凄い。緊迫感が凄い。
語りと三味線が怒涛の勢いで、思わず体に力が入ってしまいます。舞台上の緊張が伝染します。

そして松王丸の前に差し出される、小太郎の首。
菅秀才の顔を見知っている松王丸のこと、身代わりで違う首を出したとばれたら、源蔵夫婦は一巻の終わりです。

一か八かの源蔵夫婦。

しかしどうしたことか、松王丸は「菅秀才の首に間違いない」と言い渡すのです。

差し迫った危機はひとまず脱した源蔵夫婦でしたが、
ここでまた新たな試練が訪れます。

小太郎の母、千代が帰ってきてしまったのです。

「息子を迎えに来ました、やんちゃしてご迷惑をかけてるんじゃないかしら」
と、どこにでもあるような母親のひと言。

全てが終わってしまったあとに聞くと、何と切ないんでしょうね。

事が露見しては大変と、千代をも切りつけようとする源蔵。
しかし、ここからまた事態は急展開を見せます。

実はこの千代、はじめから息子を菅秀才の身代わりにさせるために寺入りさせたのです。

再びこの家にやってきた松王丸も、実は千代の夫であり、小太郎の父。
時平に仕えてはいますが、菅丞相に受けた恩に報いたい一心で、我が子を身代わりに立てたのです。

ここから先、もう床本を読んだだけでも泣いてしまう…

先ほどの寺入りの場面についての千代の、

「いつにない後追うたを、叱つた時の、叱つた時の、その悲しさ」

という台詞、 

我が子・小太郎が身代わりとして最期を迎えたとき、笑って潔く首を差し出した、という様子を源蔵から聞いた松王丸の、

「アノにつこりと笑ひましたか、(中略)出かしおりました。利口な奴、立派な奴、健気な八つや九つで、親に代はつて恩送り」

という台詞。 

松王丸は、「息子が笑顔で身代わりとなった」と聞いて、一人、しばらく笑うんです。
笑うしかないんです。じゃないと絶対、大きな声で泣いてしまうに違いない。
しばらく笑ったあと、涙を拭うのです。 

このあたりがもう、もう……。

最後の最後、息子である小太郎の野辺送りのときの詞章は「いろは送り」といって、いろは歌になぞらえて亡き子への思いが語られます
寺子屋の場面に合わせたものですが、寺子屋に一日といることができなかった小太郎を思うと、悲しいですね。

***

【松王丸のこと】


私はこの公演、桐竹勘十郎さんの松王丸が観たくてチケットを取ったようなものでして。
歌舞伎にしても文楽にしても、極力フラットに観ようとは心がけているのですが、勘十郎さんはちょっと避けられません。笑 

やっぱり観てよかった。

松王丸の登場の場面、病みついているという設定もあって、首くらいしか動かさないのですが、
もうそれだけで周りの登場人物たちを圧倒するんです。

手と、首と、胸の動きの確かさというか説得力というか…
安易に言葉にしたくないくらいですよね。

どの場面だったか、小太郎が自分の息子であるのを明かしたあと、その場にいない我が子をいとおしむ表情とか、
「アノにつこりと、、」のあたりでの笑い泣きとか、
どうしようもなかったです。

初めて観た文楽で勘十郎さんの人形に受けた衝撃は、やっぱり間違っていなかったな、と毎回思います。 
この記事で「知盛」を遣っていらっしゃった方です。)


4.まとめ


「鑑賞教室」は初心者向けですが、最初の文楽にこんな豪華なものを観ることができたら最高です。

楽しい舞踊と気さくで分かりやすい解説、重厚で濃密な名作。
一度でこんなに楽しめる公演はなかなかないと思います。

文楽に興味があるけれどまだ行ったことがない、という方は特にぜひ!ぜひ行ってみていただきたい公演でした!!

「あんまと泥棒」観てきました!(歌舞伎座十二月大歌舞伎)〜あらすじと感想


これは歌舞伎を知らなくても、何の予備知識もなく観に行って楽しめる演目だと思います!
現代の言葉で展開するお芝居。
歌舞伎2回目の友人が「普通の演劇みたいだね!」と言っていたのは本当にその通りです。

そんなわけで、いつもは「最低限これさえ分かれば」とか「見どころ」なんかを綴っているのですが、
今回はその必要がないので、とりとめもなく思ったことを。

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左上が「あんまと泥棒」のお二人ですね暗くなってしまった…

あらすじとしては、その名の通り、
あんま市川中車さん=香川照之さん)とその家に入り込んだ泥棒尾上松緑さん)との会話劇です。

そもそもなぜこのあんまの家が狙われたのかというと、彼はあんまという仕事の他に高利貸しをやっていたから。
どうも江戸時代は、保護の目的で盲人の高利貸しを認めていたようです(イヤホンガイドによる知識)。

しかしあんまは、そんな金はないと言い張り、自分の生活の苦しさを切々と語ります。

それにだんだんほだされていく泥棒。

徐々に「あれ?」と思う展開になっていき…
最後はとりあえず泥棒の今後を応援したい気持ちでいっぱいになります。笑

あんまの外面の良さと、会話をどんどん自分の言いたいことに持っていってしまう勢い、そしてところどころに垣間見える汚さが秀逸!
強気で入ってきた割に、良いようにあんまのペースに乗せられてしまう泥棒もまたおかしいです

泥棒の花道の去り際、泥棒のくせになんだか非常に清々しく爽やかでした。笑

基本的にはこのあんまの部屋の中でお話が進み、華やかな見せ場などがあるわけではありません。
でも最後まで全く飽きることなく楽しめて、「観にきてよかった!」と思える一幕でした

***

このお芝居、舞台が凝っているなぁと思いました。
(きっと今まで見てきたものもそうだったに違いないのですが、この舞台で急に大道具のおもしろさに気付きました。)

たとえば冒頭の、あんまが仕事を終えて家に帰ってくる場面。
舞台を少しずつ回しながら、家までの帰路を表現するのですが、
一瞬しか通らない場所もあるのにとても作り込まれていて
 
上述のとおり、最悪あんまの家のセットだけがあれば何とかなるお芝居だと思うんです。
 
大道具の方はすごいな、と思いました。

そして、あんまの家の中も興味深い!

いろんな襖や引き出しがちゃんと開き、中にはちゃんといろいろな小道具が入っていて、時にはそれが雪崩を起こし、意外な場所が開く。

どこかにあの部屋のセットを展示していただいて、残らずいろいろ開けてみたい衝動に駆られました。笑

それから、効果音もこのお芝居のおもしろさを増していると思います。
思えば音は、主人公であるあんまにとって、状況を判断したり時間を把握したりするための大事な要素なんですよね。
一つひとつ楽しいので、これから観るという方にはぜひ耳を澄ませていただきたいです!!

***

以上、歌舞伎初心者が語る「あんまと泥棒」の感想でした。

上演時間が18:20〜19:05なので、お仕事を早く上がれた日にちょっと幕見で立ち寄って、楽しい気分になってから帰る、なんていう過ごし方もいいなぁ、と思います。
 

「阿古屋」(Aプロ)初心者はこう楽しんだ!〜十二月大歌舞伎 夜の部感想〜


※この記事は2018年のものです。

歌舞伎に興味を持ってからこんなに早く、玉三郎さんの阿古屋を見られる幸せ。

歌舞伎座・十二月大歌舞伎、幕見の感想です。

まずは「阿古屋(Aプロ)」

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ポスターの華やかさがすごいです。笑



■初心者でも楽しめるのか?


いやもう、楽しめるとかそういった言葉で語っていいのかという感じなのですが…
楽しむ演目というより、「味わう」演目とでもいいましょうか、、

笑いどころもあるんです!
阿古屋に注目しているとつい見落としがちな、舞台右端に座る岩永
情趣を理解できないので、阿古屋の演奏中についうとうとしたり、胡弓の演奏に合わせて調子に乗ってしまったり。笑
その様子を、「人形振り」(文楽の人形のような動き)で演じるので、悪役なのですが憎みきれず、どこかおかしみがあります

しかし、眼目はやはり阿古屋
終演後は唸りました。。笑


■私はこう見た!ここが好き!


花道から出てきて、一度キッときまる阿古屋坂東玉三郎さん)。
その目と形に強い意志が見えますが、これから何をされるか分からず、愛する人の居場所も分からない心中はいかばかりか。。
そういう内面を思うと、このきまるところだけでもぐっときてしまうのです。
内面を隠して気丈に振る舞う姿に弱いんです…(トトロのサツキちゃんに毎回泣かされる)

阿古屋を問いただすのは、知性に優れた重忠坂東彦三郎さん)と、感情的になりがちな岩永尾上松緑さん)。

落ち着いた声色で、余裕をもって阿古屋に接する重忠、人としての大きさを感じました。彦三郎さん、いいお声ですよね…。

対して岩永は、先述の通り集中力がなく、分かりやすく器が小さい。笑
人形の動きを人間がやると、大げさでぎこちなく見えて、この場面における岩永の滑稽さが出るなぁ、と思いました。

阿古屋が弾きこなすのは、琴・三味線・胡弓という3つの楽器。
琴のときには竹本(で合っているのでしょうか…)、三味線のときには長唄との合奏になります。
拍子をとって間を合わせているのが分かり、面白かったです!

琴の演奏中に、阿古屋がだんだんと音楽に没頭していくのが分かりました。

おそらく最初は、自分がなぜ楽器を演奏させられるのか理解しきれていないのだと思います。
三味線を弾け、と言われたときもとまどう様子を見せるのですが、

最後に胡弓を命じられた際、阿古屋は「あい」と素直に請けます。
ここまで演奏してきて、自分が演奏を通して求められていること、それが重忠に伝わっていることが分かってくるのかな、と思います。
この素直な返事に、「いよいよ阿古屋が全ての思いを伝え切るのだ」と感じました。

胡弓の演奏中、曲の特性上、劇場内が全くの無音になる瞬間が何度かあります。
音が少ない状態って、演奏する音楽に自信がないと怖いと思うのです。
それでもさすが、ご自身の間で、余裕を持って演奏される玉三郎さん。
本当に阿古屋なんだな、と思いました。

さて、見どころはこの演奏シーンなのですが、
実は私が好きだったのは演奏シーンよりも、阿古屋が愛する景清との馴れ初めを語るところで。

所作の美しさはもちろんのこと、こぼれるような声で切々と語る様子が胸に迫りました。

その台詞がまたいいんですよ…
「終わりなければ始めもない」本当に何気ない出会い、ちょっとした触れ合い。普通の恋なんです。
こんな源平の争いなんて、そこには何も関係ないんです。

これから初めて観る方には、ぜひこの台詞を味わっていただきたいです!!!

 

■これさえ押さえれば楽しめます


以下に挙げるのは、観劇してみて
「初めてでもこれが分かっていれば楽しめそうだな」
「これを知っていればもっと楽しかっただろうな」
というのをまとめてみたものです。

★大体見せ場の前には、
「待ってました!」という掛け声がかかります。
この声を頼りに、舞台にぐぐっと注目!

↑今回はそういう雰囲気の演目ではないので「待ってました」はかかりませんでしたが、
楽器が来たら見せ場、と思えばほぼ間違いないです。 

基本設定は、

【重忠・岩永】vs【阿古屋(景清)】

というところが分かれば問題ないかと思います。

ものすごくざっくりとあらすじをまとめれば、
愛する景清の行方を敵方に問いただされた阿古屋が、知らないと貫き通す話です。 

三曲を通して阿古屋がうたうのは、琴・三味線・胡弓の順にそれぞれ「景清の行方を知らないこと」「愛しい人に会えない辛さ」「恋の終わり」

以上を頭に入れておけば、あとは阿古屋の傾城としての腹の括りようや、徐々に明らかになる切ない思い、それを三曲の調べにのせて表現するところを堪能するのみです。

重忠の男ぶりと、舞台端の岩永の動きにも忘れずに注目を!笑


■まとめ


正直「阿古屋」は結構重い演目だと思うのです。
初めて見る歌舞伎がこれだったら、果たして自分は歌舞伎にはまるかな、というとそうでもない気がします。

ですが、間違いなくこれから見続けたい演目です。
もっと理解を深めたくなる演目です。
何度も見るうちに、もっと味わい深くなってくるのだろうな、と思います。

今回、Bプロでは阿古屋を中村梅枝さん中村児太郎さんが交替で演じられます。
Aプロを観て、お二方の「阿古屋」を見たい思いがますます強まりました。

12月は歌舞伎に割かないと決めたはずだったのですが…やっぱり厳しいものがありましたね…
 

イヤホンガイドと筋書、どっちがいいの?歌舞伎歴1年の初心者が比較してみた

今更ですが、
イヤホンガイドデビューしました!笑

ずっと筋書を買っていたので、イヤホンガイドなしでも問題なく理解できていたのですが、今月は回数行かないこともあり、イヤホンガイドを試すにはうってつけだったのです。

どちらも使ってみて、それぞれの良し悪しが分かり、自分なりに「こちらが好き」というのが掴めたので記事にしてみました。




1.概要と価格


■イヤホンガイドとは


【価格】
利用料500円+保証金1,000円 計1,500円
※保証金1,000円は利用後に返金されるので、実質500円です。

その名のとおりイヤホンのついた小さな端末で、
舞台の進行に合わせて見どころや配役を同時解説してくれるものです。
台詞の大意を、適切なタイミングで挟んでくれます。

イヤホンは片耳だけで、ちゃんと舞台の音も聞こえますのでご安心を!
 
ちなみに開演前から、あらすじや物語の背景、舞台となる場所、モデルとなった人物などの解説が始まっているので、要チェックです。

■筋書とは


【価格】
劇場、公演にもよりますが1,000円前後〜1,500円くらいです。 

「筋書」とは、いわゆる公演プログラムのこと。
 
詳細なあらすじや細かな配役、見どころに加え、著名人によるエッセイや歌舞伎にまつわる方のお話、江戸文化のコラム、出演俳優のコメントなど、読み物としても楽しめるボリューム感です。

サイズはB5が主ですが、まれにA4の場合があります(以前観た新春浅草歌舞伎はA4でした)。 



2.メリットとデメリット


■イヤホンガイドのメリット


時間をかけて予習をする手間なしに、あらすじを理解しながら観劇することができます。

また、主役を見ていてうっかり見逃しがちな脇役の動きに注目させてくれたり、衣装の柄や細かな所作などを解説してくれたりするのは同時解説ならでは。

初めての観劇でも隅々まで楽しめる工夫がいっぱいです!
 

■イヤホンガイドのデメリット


音楽や舞台の空気感を全力で楽しみたい方は、少々欲求不満かもしれません。
 
役者さんの台詞に極力かからないようにしているためか、どうしても音楽(語り)のときに解説が入ってしまいます
また、柝が鳴って幕が開いて「いよいよ始まるぞ!」というときにも耳元で解説が聞こえているので、あのわくわく感がややそがれてしまう気がしました。 
 
当たり前といえば当たり前ですが、片耳がずっとイヤホンなので、音を100%楽しみきれない感じはありました


■筋書のメリット


あらかじめ読んでおけば、あとは舞台に集中して楽しめます。
 
また、イヤホンガイドでは解説しきれない細かい配役が書いてあるので、気になった役がどの役者さんだったのかを見直すことができます

見直すという点で言えば、舞台を見ただけで理解しきれなかったことを再確認できるのも便利なところ。
 
読み物としても非常に情報量が多く、公演が終わった後も読み返すことができるのも、筋書の楽しみの一つです。

■筋書のデメリット


大前提として、そもそも読むのに時間と頭を使います
登場人物が多かったり、話の筋が複雑だったりすると、一読しただけでは分かりにくいこともあります。

また、上演中に舞台が暗くなってしまうと手元が確認できないため、舞台と並行して内容を確認するにはやや不便かもしれません。

さらに、筋書は場所をとります。観劇当日には荷物になりますし、毎月通って買い溜めていくと片付けも厄介です。


3.私が選んだのは「筋書」でした


これだけデメリットの多い筋書ですが、
やっぱり私は筋書派だということに気付きました!笑

というのも、私は何よりも舞台全体の音と空気をまるごと楽しみたいという思いが強く、そうなると片耳が常にガイド、となるとほんのちょっと感興をそがれてしまうのです…

また、家に帰って読み直せるというのもポイント。
何度も歌舞伎を見に行くうちに、「あのときのあの役はどなただったんだろう」「あの場面ってどういう流れだったかな?」と振り返ることが多くなりました。
そのときに手元に残るものがあると、すぐに調べられて非常に便利なのです。
文楽の場合は筋書を買うと床本(台本のようなもの)がついてくるので、読み返しながら再び感動に浸ることができます。 

場所は取りますが、筋書が好きです。 


4.まとめ


私は筋書に落ち着きましたが、一緒に行った友人(歌舞伎2回目)は「イヤホンガイドの方が分かりやすかった」とのことで、好みやニーズは本当に人それぞれだと思います。

私とてイヤホンガイドが面白かったのはもちろんのことで、同時解説でなければ気付けないことや、筋書では読み落としてしまうであろう豆知識に出会うことができました。

いずれにせよ、初心者の観劇にはどちらもとてもためになるし、より楽しむためには重要なアイテムです。
ぜひ活用して、観劇をより一層充実したものにしましょう!!!
 

歌舞伎座座席レビュー【2階席後方・右側 編】

実際に座ってみた歌舞伎座の座席を
場所ごとにレビューしてみよう!という企画です。

観劇は決して安いお金じゃないから、
なるたけ見やすく、楽しめる席がいい。

しかしどこがどんな様子か
さっぱり見当がつかない!

そんな気持ちから、なかば自分のために始めてみた企画です。笑

徐々に更新していく予定。
少しでもお役に立てれば幸いです。

*** 

第3回は、【2階席後方・右側】。二等席にあたります。
竹本が近かった!!





■歌舞伎座二階席後方からの見え方


見え方はこんな感じです↓

2階の見え方

舞台のてっぺんが、ちょうど三階席の端っこと重なるくらい。
つまり上の階の座席によって、舞台が遮られることはありませんでした。

役者さんもとても近くに見え、表情や細かい所作までよく分かります。

舞台上に高い建物が出現したときは、その上層階が真正面に来ます
このときは「楼門五三桐」を見ましたが、「絶景かな」の石川五右衛門は本当に真ん前でした!

一階と同様、傾斜は緩やか。
前の方が身を乗り出してしまうと、とても見にくくなってしまいます
特に花道はみなさん乗り出しがちだったので、隙間から辛うじて見える程度でした。

二階に限った話ではありませんが、花道をよく見たい場合は各ブロックの花道寄りの座席を確保した方が良さそうですね。 

それから大事なところ!
最初にも書きましたが、二階席は竹本の座る床が近く、よく見えます!
ちょうど座席と同じくらいの高さだったのかもしれません。
それを思うと、二階席は「音楽を担当する方たち」を見るにはとても良い場所なのではないかと思います(舞台自体の見え方も良いので、もちろん長唄・清元の見え方もばっちり)。

二階席でも、オペラグラスがあるとより一層楽しめます!
周りにも使っている方が多くいらっしゃいました。


■歌舞伎座二階席後方の音響


二階席は、どういう音の流れか分かりませんが黒御簾(舞台向かって左の、囃子や効果音等を演奏する場所)の音がよく聞こえました!
幕見席では聞こえなかった音がしたり、いつも聞いている音がもっとクリアだったり。
なぜなのでしょう…音響学の方に教えていただきたい… 

それから、もはや耳タコですが竹本が近いので、あの迫力が目でも耳でも楽しめます

三階席が上を覆っているので、確かに音はこもりがちではあるのですが、
一階後方席と比べると、高さがあるからかこちらの方が良かった気がします。

二階席で強く感じたのは、拍手の音がこもること。
会場全体の拍手が何だか遠くて、二階席の拍手が単体で聞こえてくる感じでした。
「二階席」という室内にいるような感覚になりました) 

劇場全体の盛り上がりを感じたいならば、もしかするとやや物足りないかもしれません。

 

■二階席の服装(洋服・着物)


日によるのかもしれませんが、私が行った日は洋服の方が多かった印象です。
一階席ほど気張ってはいませんが、気を配った服装という感じ。

もちろんお着物で行っても何ら問題はないかと思うのですが、
この日は和装の方が多くはいらっしゃらなかったので、格などの観察ができず…。
後日補足いたします。申し訳ございません。。

ちなみに私は「友達と週末にちょっとお出かけ」くらいの洋服で行きました。


■二階席のいいところ


花道が見えづらい、傾斜が少ない、など不便はあるのですが、
そうはいってもやはり役者さんがとても近く見えます! 
本舞台全体をちょうどよく俯瞰するにはベストなのかな、と思います。

同じ「役者さんが近い」でも、一階は振動を感じられたり衣擦れの音まで聞こえたり、という物理的な近さですが、
二階は感覚的な近さというか、舞台を絵として眺めるときに、一番うまく額縁に収まる距離感、といった感じです。


■まとめ


一階後方席と同様、傾斜の少なさや音のこもりはやや気になるのですが、
そのデメリットを「舞台全体の見え方」の面で補ってくれる席でした。

普段三階や幕見から、オペラグラスにすら目を凝らして見ている者としては、
やっぱり二階席もちょっとした贅沢なのです!

役者さんが正面できまるときの視線の高さがちょうど二階くらい、と聞いたことがあります。
今回は後方席でしたが、前の方に座ると他の階とはまた違った迫力を感じられそうですね!
いつか前の方に座ってみたいものです。

最後になりましたが、
二階に上がる階段の踊り場に川端龍子による「青獅子」の日本画が飾られています。
迫力のなかにどこか愛嬌があるこの獅子、ゆっくり眺められない踊り場にあるのはもったいないのですが、二階に上がる際はぜひ階段を!

プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇5年目。このご時世でなかなか劇場に通えず悶々とする日々。
◆着物好きの友人と踊りの師匠のおかげで、気軽に着物を着られるようになってきた今日この頃。

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