ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

2019年03月

「盛綱陣屋」初心者はこう楽しんだ!〜三月大歌舞伎(歌舞伎座) 夜の部感想


今月絶対に逃したくなかった演目、「盛綱陣屋」

中日を過ぎてやっと観にいくことができました〜!

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今月のポスター、左から2枚目が盛綱片岡仁左衛門さん)。びしり。




■初心者でも楽しめるのか?


先月の「熊谷陣屋」この記事と同じく、内容が少し理解しにくいかもしれません。
というのも、鎌倉方・京方という対立構図に兄弟・親子が絡み、人間関係の把握が一筋縄ではいかないのです。

そのため、「盛綱陣屋」を初めて観る、歌舞伎をあまり観慣れていない、という場合は大まかでもいいので筋を予習しておくと良いと思います。
私は筋書を買って、あらすじに目を通してから観劇しました。

正直分からない、聞き取れないところもたくさんありましたが、それでも何だか涙が止まりませんでした。。

歌舞伎に興味があるならば、観ておいてこれっぽっちの損もない一幕だと思います。 

***

一番の見せ場である首実検のところは、無言でいろいろなことが進みますが、
最低限、高綱の策略(=
我が子・小四郎を犠牲に、敵には自分が死んだと見せかけておいて油断させるという作戦)が分かれば大丈夫かと。

つまり「高綱の首」とされている舞台上の切り首は、もちろん贋物
しかし
これを本物と思わせるために、小四郎(=高綱の息子)はこの首に「ととさま」と呼びかけ、自らも腹を切るのです。 


■私はこう見た!ここが好き!


上述の通り、「盛綱陣屋」において一番有名かつ見どころとなるのは「首実検」の場面だと思います。
盛綱片岡仁左衛門さん)がセリフを一切言わずに、表情だけで自分の胸の内を表現していきます。

「討死した」とされている高綱(※超重要人物ですがこの場面には登場しませんは、京方の武士であり、鎌倉方の盛綱からすれば敵です。
しかし同時に高綱は、盛綱の大切な実弟でもあります。

智略に優れた武将であるために、この高綱を落とせば鎌倉方は勢いづくというもの。
当然ながら狙われやすい高綱には、影武者も多いわけです。
鎌倉方の実験を握る北条時政中村歌六さん)は、高綱の顔をよく知る盛綱に、この首が本物であるかどうかを確かめさせます。

本当は弟の首など見たくない盛綱。丁寧に首を扱う様子、表情にも哀しみが滲みます。

盛綱が首桶を開けた瞬間、「ととさまか、口惜しかろ」と声を上げ、自分も後に続こうと走り出て、止める間もなく切腹する高綱の息子・小四郎中村勘太郎くん)。

しかし先述の通り、盛綱が確かめたこの首、実は高綱のものではない贋首なのです。

弟が死んでいないと分かり、盛綱はひとまず大きく安堵の様子。敵とはいえ、やっぱり弟に無駄死にしてほしくはありませんよね。

しかし、ここで盛綱は気付く。
隣で腹を切っている小四郎はどういうことだ、と。

小四郎、この盛綱の首実検の様子を、腹に刀を立てたままずっと見つめているのです。
贋首であることは、最初から小四郎には分かっているはず。
どうかこれを贋首と言わないでほしい、高綱と言ってほしいと、必死に目で訴えるのです。

状況を考え合わせて、全てを理解した盛綱。
声には出さないけれど、小四郎としっかり目を合わせます
「全部分かった、よくやった」とでも言うように。

この場面、二人は叔父と甥でも、敵味方でもなく、年齢その他を超越して、武士と武士の関係なのではないかと思います。
そう思わせるような緊張感と必死さがありました。

一連の胸の内、二人の間のやり取り、セリフがないにも関わらず手に取るように届いてきます。
文字通り命をかけた小四郎の計略が盛綱に伝わった瞬間は、どうにも涙がこらえられませんでした。
劇場には音一つなく、誰もが息を詰めて、この場面の二人の心情を追っているようでした。

そして、盛綱は「高綱の首に相違ない、相違ない」と、自らの立場が危うくなるにも関わらず、贋首を本物と偽るのです。

盛綱が首を前にして過ごす時間、偽りを本物と言おうと決心するまでの過程、とても丁寧できめ細かい。
一人の人間の人生を背負う、歌舞伎というものの重みを感じました。

***

この首実検の前に、小四郎が一度、死ぬことを拒む場面があります。
祖母にあたる微妙片岡秀太郎さん)が、盛綱から「小四郎を討ってほしい」と頼まれ、小四郎に切腹を勧める場面です。
(これ、盛綱が悪意を持ってそんなことを言っているのではなく、弟・高綱を武士として立たせるために、致し方なく言っているのです。)

微妙ははじめ、そんなことはおくびにも出さず、怯える小四郎に「(自分は)そなたの婆じゃ」と声をかけます。

このセリフがとても優しくて、きっとそれは微妙の本心に違いないのですが、これから愛する孫を死に向かわせなければならない、ということが分かって聞くと胸が痛みます。

この場面の最後、死ぬ前にせめて母に会いたいとせがむ小四郎と、本当は小四郎を殺したくない微妙は、抱き合って泣く
戦乱の世の中で一家の中に敵味方がいるのは、なんて辛いのでしょう。
何もなければただの祖母と孫であったはずなのに。
小四郎だって、こんなに命の淵に立たされなくても良かったはずなのに。

この時代に生きる人々の、少しずつ重ねてきた無理が、この抱き合って泣く場面で一気に崩れてしまうようで、本当に切なかった。

***

上の場面で、縛られている小四郎が逃げようとしているのではないかと微妙が一度疑ったことを受けて、
小四郎は死に際、微妙に向かって「(自分は)縛られても卑怯じゃない」と言うのです。

その健気さに、どうしようもなく泣けてしまう。
そうだよ、あなたはこれ以上ないくらい立派だったよ。。

瀕死の小四郎に駆け寄って泣きに泣く母・篝火中村雀右衛門さん)にも胸が痛みました。

篝火は、割と早い段階から、一部始終をずっと近くで聞いています。
近くにいながら、何もできない。我が子の置かれた危機的状況を、自分ではどうすることもできないのです。

全てが終わったあとで、我が子の一番近くにいてあげることしかできない。

上手く言えないのですが、私はこの芝居の中で、一番この篝火という女性が好きだったかもしれません。

***

ずっと誰かの策略が動いている張り詰めた芝居の中で、唯一肩の力を抜けるのが注進の場面。
信楽太郎中村錦之助さん)と伊吹藤太市川猿弥さん)という二人の注進が、花道から駆け込んできます。
この二人、とってもキャラが濃いのです。笑

信楽太郎は「暴れの注進」と言われる、とは錦之助さんのお話(筋書p.55下段)
「暴れ」の名に違わず、とにかくびしびし動きます!
キレが良くて、観ていて気持ちが良かったです。

一方 伊吹藤太の方は、三枚目的なキャラクター。
丸っこい雰囲気の拵えで、汗を拭きふき語り出します。
しかしこちらもめちゃくちゃ身軽に動くんですよ、観ていてとても楽しいのです。
最後に陣笠を忘れてしまうあたりも軽妙で、ちょっとこういう場面が挟まれると何だか安心しますね。

***

最後に、印象に残っている細かいところをぽつぽつと。

盛綱の裃を直す仕草とか、膝詰めで相手ににじり寄ってきりっと睨むところとか、一つ一つの動作が美しくて格好よくて、目に焼き付いています。
2年前の年末に観た別の演目でも、仁左衛門さんの袴のさばき方に惚れ惚れしたのを思い出しました。

小四郎、最初に出てきて周りを窺うところ、縛られた状態での階段の上り下り、微妙の刃を避けるところなど…形がとてもきれいだったのが印象的です。
勘九郎さんと連獅子をやる日もそう遠くないのでは!と勝手に期待しております。笑

寺嶋眞秀くん小三郎、立派でした!
きっとあの衣装は重いと思うのですが、大人たちに混じって長い間微動だにせず、花道を一人で引っ込む歩き方もしっかりした足取り。
来月は全然違う役ですが(「実盛物語」の太郎吉。四月の物知らずはこちら、あの小三郎が今度はどんな太郎吉になるのか、とても楽しみです。

■まとめ


初めて「盛綱陣屋」を観たのは、何年か前。
地上波の何かの番組で、仁左衛門さんがこの演目を語っていらっしゃったのでした。

そのころはまだ歌舞伎にさほど興味があったわけでもなく、へぇ、と思って観ていたのですが、それでも表情だけで演じていく首実検の場面は印象に残っています。

それを、少し歌舞伎を観るようになって、改めて同じ仁左衛門さんの盛綱で観られたのはとても幸運なことと思います。

正直、武士の価値観は私からすれば分からないことだらけ。
いかにいい死に方をするかとか、そのために必要な犠牲とか…何か他の方法でどうにかならないものか、とどうしても思ってしまう。

「我が子への想いゆえに、高綱がみっともない死に方をするようなことがあってはならない」と、甥を犠牲にしようとする盛綱の考え方も、いまいち理解できないところです。

しかし、そういうことを一切抜きにして、ストレートに刺さる部分がとても多かった
冒頭にも書きましたが、本当に「何だか」泣けてきてしまう、という感じだったように思います。

この芝居をちゃんと観ておけて良かった、と心から思っています。
 

「雷船頭」(奇数日)観てきました!〜三月大歌舞伎(歌舞伎座)夜の部 初心者の感想


偶数日に観てきた「雷船頭」ですが、とても面白かったので奇数日にも行ってみました!

市川猿之助さんの女船頭に、市川弘太郎さんの雷。
偶数日とは演出も雰囲気も違い、興味深かったです!

【関連記事】「雷船頭」(偶数日)初心者はこう楽しんだ!〜三月大歌舞伎(歌舞伎座) 夜の部感想

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劇場横のポスター。残念ながら「雷船頭」の写真はないのですが。笑

真っ暗な舞台がパッと明るくなり、真っ先に船頭が目に飛び込んでくるのは、偶数日の方と同じですが、
女船頭市川猿之助さん)は裾を引き、足元は裸足。ずるっとした着方がどこかあだっぽい雰囲気です。

女船頭の一人踊りの後は、市川弘太郎さん)の登場。

弘太郎さんの雷は、芝居っ気が強くて楽しかったです!

体の動きにわくわくするような愛嬌を感じるのが鷹之資さんの雷だとしたら、
ちょっとした動作や表情に見える役の雰囲気が、愛らしさに満ちているという印象でした。
どちらも明るい気持ちになれて、とても好きです!

雲から落ちたあとの「あれ?あれ??」みたいな表情、雲がないことに気付いた「あっ!!!」みたいな表情…
「?」「!」が溢れる雷でした。笑 
雲を取り戻そうとして跳ぶところ、より高く!という気持ちが足のばたつき具合に表れているようで、思わずにんまり。
 
男の船頭の方で、おかめのお面をかぶって女の振りでやったところは、こちらはストレートに女船頭が女性らしく。
口説かれて一緒にしなしなしていた雷も面白かったし、女船頭に文字通り尻に敷かれるところも笑いが起きていました。
女船頭が手酌をするところ、座った時の崩れた角度が妙に色っぽい。

偶数日は雷と船頭が連れ立って吉原に行きましたが、奇数日はまさかの、雷が舟を乗っ取ります。笑
置いていかれる女船頭。そんな…

そして!ラストは澤潟屋色に染まります!!

男の船頭と最も違うのが、この最後の場面。
女船頭の方は、若い者との絡みがあります。

裾をからげた若い者たちが、ぽんぽんと身軽にとんぼを切っていくだけでも観ていて爽快なのですが、
そのあとに一斉に広げられる傘には「おもだかや」の文字が!
たくさんの「おもだかや」傘がくるくると回る景色、とても華やかでした!

女船頭は若い者たちをばったばったと転がし、きまるところはきりりと。
花道では酔いを残しつつ、「いい姉さん」な風情で帰っていくのでした。

このとき女船頭がちょっと見せる着物の裏、あれはもしかして澤潟屋の柄なのでしょうか…?

***

同じ曲でも、演出と役者さんによって、がらりと味わいが変わりますね!
どちらも観られて良かったです。

そもそも日本舞踊は、流派ごとどころか、同じ流派の中でもお師匠さんによって全然振りが違うということがままあるようです。
知っている曲、観たことのある演目でも、いろんなものを楽しむ機会がある、というのはありがたいことですね。
 

にっぽん文楽「小鍛冶」初心者はこう楽しんだ!〜にっぽん文楽in明治神宮 感想

にっぽん文楽、二度目の鑑賞!
千穐楽の最終公演です。
夜の森に浮かび上がる舞台。

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今回は何と、何と、一番前の席が取れました!!!

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この!この距離感!!!
檜の香りがします…!!!

どうしよう、私なんぞが勘十郎さんをこんなに近くで拝見してしまって良いのだろうか、とよく分からない緊張感の中で幕を開けた、千穐楽の「小鍛冶(こかじ)の様子をレポートします。

 



1.「小鍛冶」初心者でも楽しめたのか?


楽しめました!

とは言え、想像のつきにくい神秘的な話だし、舞踊の要素が強いので、筋を耳だけで理解するのは厳しいかもしれません。
(ちなみにですが、床本はこちらから見られます。) 

剣を打て、という勅令が下ったが、良き相鎚(あいづち、鉄を一緒に鍛える相方)がいないという宗近の神頼みを受けて、稲荷明神が狐の姿で現れて相鎚を務め、無事に立派な剣を献上できた、という話。

この狐の動きが胸の透くようで爽快でした。
後述しますが、鉄を打つところの音も楽しかった!


2.「小鍛冶」感想


最初に出てくるのは宗近(人形:吉田玉助さん、太夫:豊竹希太夫さん)。
能が元になっているからか、きっちりと歩いて出てきてきっちりと正面を向き、名乗ります。
 
剣を打つよう勅命を受けたが、腕のあるいい相鎚がいないという宗近。
どうしたものか、と氏神である稲荷明神へ神頼みしたところへ、老翁(人形:桐竹勘十郎さん、太夫:豊竹呂太夫さん)が出てきます。

これは実は、稲荷明神。
剣というものの由来を語ると、宗近に「壇を飾って待てば、力添えをする」と告げるのでした。 

この老翁、語り始める前に左右の襟元をなぞって整える仕草がとても格好いい
最後にぐぐっと力が入るのです。
一番前なので、このあたりの細かい力の入りようがよく見えて感動ものです! 
語りが盛り上がるところも、勢いがありました。

さて、老翁の言う通りに首尾を調え、「力を合せてたび給へ」と懸命に祈願する宗近。

一心不乱に祈る姿、何だか「夜の神社」というシチュエーションに絶妙に合いますね!
屋外でやる楽しみを味わいました。

そして!ここに登場するのが狐姿の稲荷明神。
「春興鏡獅子」のような、白のふさふさの毛を付けています。

参考:いらすとやの「連獅子」イラスト→renjishi_white
 
手はちゃんと狐手になっていました!人形の狐手、小さくてなんだかかわいい!!
(狐手については、一瞬だけこの記事に出てきます。指先を丸めて手首を反らせる独特の手なのです。) 

この狐の踊り、とにかくダイナミックで凄い迫力でした!
舞台に巻き起こっている風がこっちにも流れてきそうなほど。
 
舞台狭しと大きく動き、力を遺憾なく発揮する狐姿の稲荷明神。
細かい首の動きのキレとか、歌舞伎の女形さながらに反るところとか、見所たっぷり!!
踏ん張ったり飛んだり、足の表情もおもしろかったです!
人形遣いさんたちもすごい運動量…! 

そして狐は、宗近の相鎚を務め、一緒に刀を鍛えていきます。

この場面、本当に人形が鉄を打つ音を出しているようです。 
鎚で叩くカンカンという音に、鼓の音が重なります。
小気味良く、軽快なリズムで響く音が楽しい!
一人で観ていたら体を揺らしてノリノリになってしまったに違いない。笑

囃子は中で演奏しているため、屋外だと響きづらいのですが、今回は舞台にとても近い席だったので、よくよく音を味わえました。

一度剣を鍛えたあとに、でき具合をじっくり眺めて、「まだまだ!」と首を振る狐の様子もなんだかかわいい。笑

こうして無事に立派な剣が出来上がり、狐が雲に飛び移る様子を見せて幕になります。

とにかく狐が動きに動く!
筋があまり分からなくても、この狐を観ているだけでも十分に楽しめそうなくらいです。


3.まとめ


このブログでも何度も書いていますが、私が初めて観た文楽で衝撃を受けたのが、勘十郎さんの遣っていらっしゃった人形でした。この記事

その勘十郎さんを、こんなに近くで拝見できる喜びたるや。
立ち見でも十分な近さではありましたが、チケットを取ってよかったと心から思っています。

***

今回一番感じたのは、「人形ってこんなに踊るのか!」というところ。

これまでも人形が踊るのは観ているのですが(「団子売」「三番叟」など)、今回一番「踊る体」を感じたように思います。 
リアルだったかと言われれば必ずしもそうではないのですが、体の動きの面白さ、舞台の空気をいっぱいに動かす力を見た気がします。 

撮影可能の公演でしたが、一瞬でも目を離すのがもったいなくて、とてもカメラなど構えられたものではありませんでしたよ…!

やっとの思いで撮ったカーテンコールは、光の関係で色が飛んでしまって何が何やら。笑

「太夫さん三味線さんです、どうぞ!」の稲荷明神(右端の人形)。左手にご注目。

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皆様お揃いで。

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最後は手を振ってくださいました。
人形も手を振ってくれました…
欲を言えば女の子の人形にも手を振ってもらいたかった

***

花粉の季節であり、寒いのか暖かいのか予測もつかず、雨の心配もあって、屋外の公演はなかなか障壁が多いと思います。

しかし、飲食が自由だったり、周りの空気も含めて物語を味わえたりと、屋外だからこその楽しみ方もありました。
チケット1,000円、無料の立ち見席あり、という料金設定も素晴らしくありがたい。

「にっぽん文楽」は今回が第7回とのこと。
ぜひこれからも続けていっていただきたいです。
次は友人にも声をかけたい!

にっぽん文楽「日高川入相花王」初心者はこう楽しんだ!〜にっぽん文楽in明治神宮 感想

始まりました、にっぽん文楽in明治神宮!!

過去何度かやっていたのを行き損ねていたので、楽しみにしておりました。

まずは一発目、「日高川入会花王(ひだかがわいりあいざくら) 渡し場の段」から。
会場への行き方や雰囲気も含めてレポートします!



1.にっぽん文楽・会場の様子


原宿駅・表参道口または明治神宮駅を出て、道沿いに右に回り込みます。
すぐに見えてくる「神宮橋」をそのまま渡れば、もう会場です!

こちらは神宮橋のあたりから撮った一枚。

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数日でこの舞台を完成させるのはすごいですよね!

さて、有料の座席は、3人がけのベンチが3つ横に連なったのが、左右2ブロック。確か前後は7列程度だったかと思います。
今日座ったのは前から4列目くらい。舞台も床もとっても近いです!

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よく見ると、舞台の上には「にっぽん文楽」の文字が!

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右手奥には、明治神宮の鳥居が見えます。

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み、見えますか…??笑

お土産やさんやお酒売り場は、床の右側
今回は覗きませんでしたが、お酒を飲みながらの観劇の方もたくさんいらっしゃいました。
寒い日は温かい甘酒なんかいいですね~。

***

お手洗いは会場外です。
再入場には半券が必須なので、なくさないようにお気を付けください!

このお手洗いが地味に遠くてですね、私は鳥居の右の通りをまっすぐ行った左側のところを使ったのですが、急いで歩いて片道5分、普通に行けば8分くらい。

劇場のように「直前に行けばいいや」ができません!ご注意を!

***

客席に屋根はありません。
冬だからとうっかりしていたのですが、晴れの日は焼けます
そして、晴れの日は舞台を見るのが眩しいです!!


2.「日高川入相花王」初心者でも楽しめたのか?


楽しめます!

この場面だけであれば物語はいたってシンプルで、
「好きな男を追ってきた女が、男に拒まれ、嫉妬のあまり鬼形の蛇体となって川を渡り、男をさらに追っていく」
ということが分かっていれば大丈夫かと思います。

男に「追ってくる女を舟に乗せないように」と言い含められた船頭が、女・清姫を渡すのを拒む。
間接的に男に拒まれた清姫は嫉妬に狂い、蛇になってまで後を追う、という話。

「ガブ」といって姫の顔が一瞬で鬼の顔になる演出が見せ場で、視覚的にとてもインパクトが強く、通りすがりの立ち見でも「おぉっ!」となると思います。


3.「日高川入相花王」感想


「安珍さまいのう」という清姫(人形:吉田勘彌さん、太夫:豊竹呂勢太夫さん)の、初っ端の詞。
このときの清姫にはまだ、一人の恋する女の子、という雰囲気が感じられます。
「男(安珍)を追ってくる」という時点でかなり重くて危なっかしい女ではありますが、その中に純粋な恋心があるように思えるのです。

しかし船頭(人形:吉田簑紫郎さん、太夫:豊竹睦太夫さん)の話す内容をじっと聞いたあと、だんだん言動に怒りと恨みが滲み始めます。
肩脱(かたぬぎ、片方の袖を脱いで「役の性格や心理の変化を表す」演出(「歌舞伎事典」昭和58年、平凡社))になって、足元を流れる川を覗きこんだあたりから、どんどん不穏な気配が漂い始めます。
 
それもそのはず、覗きこんだ川面に映る姿はもう蛇になっているのです。 

満月の夜、川面に映った自分の姿が蛇になっている…なんと不気味な。
そしてそれほど動じない清姫がまた恐ろしい。

「取り殺さいでおかうか」(取り殺さないでおかれようか) という清姫の詞、あぁもう彼女は完全にあちらの世界に行ってしまった…と。

清姫が川に飛びこんだあたりから、いよいよ見せ場です。
日高川の波がざんぶざんぶと荒れます。
その波間に見え隠れする清姫…

かと思いきや、また波に隠されてからぱっと見えた姿が蛇体の鬼になっているのです!

川を渡り終え、向こう岸に上がるときは清姫の姿。
よろついて柳の木に掴まり、ラストはまたガツンと鬼の形相になって終わります。

怖ぁ。。

公演が始まる前の解説で、豊竹咲寿太夫さんが「ダークファンタジー」とおっしゃっていましたが、全くもってその通りですね。。


4.まとめ


「山の端にさし昇る隈なき夜半の月影」「足元の明(あか)い内とっとと去(い)ね」というのが聞こえてきたので、まだ明るさの残っている日暮れ時が舞台なのでしょう。(床本はこちらで見られます。 )
せっかく屋外での公演なので、設定と時間帯を合わせて観てみると、また雰囲気が出ていいのかなぁと思いました。

夜の闇が迫り、だんだんと暗くなっていく中で浮かび上がる鬼の顔…

文楽を見慣れてくると、お人形を見て「かわいい!」としか思えなくなるのですが、子供の頃ってあのお人形、少し怖かったと思うのです。
その人形の持つ独特の不気味さというのが、夜だと浮かび上がってきそう。

劇場の音空間の中で味わうのも大好きですが、屋外でどこまでも広がっていく音もまたかっこいいですね。
晴天の下の浄瑠璃、何だか爽やかで、しゃんとしました。

青空文楽、楽しいです!
 

「雷船頭」(偶数日)初心者はこう楽しんだ!〜三月大歌舞伎(歌舞伎座) 夜の部感想


今月最初の観劇は、夜の部の舞踊「雷船頭」

18:45から19:03の、約20分。幕見は600円。
会社帰りにふらりと立ち寄れる喜び!

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今月のポスター!…まぁ、「雷船頭」の写真は使われてないんですけどね。雰囲気です雰囲気。




■初心者でも楽しめるのか?


楽しめますよ!
 
見て分かりやすいのが踊りのいいところの一つ。もちろんそうでないものもありますが(笑)
この踊りは、衣装やお化粧も「船頭」と「雷」でとても分かりやすいので、よりぱっと見で理解しやすいと思います。

近くで観ていた海外の方が、声を出して笑っていらっしゃったくらい!
 
雷のユーモラスな表情と、船頭の粋でいなせな雰囲気に、頬を緩めて観劇いたしました。笑


■私はこう見た!ここが好き!


まず曲がいい

一番最初に聞こえるのは太鼓の音。
私はこの時点でテンションが上がってしまうのです。笑
そこからも終始、明るくて楽しい雰囲気。音に合わせて思わず体が動いてしまいます。

特に船頭の、お酒が入ってからの一人踊り(団扇を持って踊るあたり)が大好きでした! 

常磐津の踊りです。
まだまだ音楽を聞き分けられないのですが、何となく芝居っぽいものが多いのかなぁ、という印象。
台詞が入るものもよくある気がします。

***

舞台が明るくなって、パッと目に入るのは、裾をからげて猪牙舟を漕ぐ船頭松本幸四郎さん)の姿。
白地に波模様の浴衣が粋ですね~!目に爽やかです。

そこに中村鷹之資さん)が落ちてきます。

この雷、おそらく落ちようと思って落ちたのではなく、うっかり落ちちゃったんでしょうね。
雲の上での「おっとっと」みたいな仕草や、落ちてからの「あれれ?」みたいな表情、
そして乗ってきた雲を取り返そうとしてぴょんぴょん跳ぶところ…

見た目は鬼ですが、何だか憎めない。かわいい!笑

思わぬ鉢合わせに驚いた船頭が焚いた煙に、思わずくしゃみしてしまうところなんかも、全然「怖い雷さま」という感じではなく、むしろゆるい。

もうとにかくとにかく、雷が愛嬌抜群なんです!

予期せぬ出会いの船頭と雷ですが、曲中の二人のやり取りは、動きだけでもとっても分かりやすいです。
台詞なしでも全然問題なく伝わります。 

途中に挟まれる、船頭が雷を口説くところ。
忘れ物のおかめのお面をつけ、男でありながら女の振りで踊ります。 
雷と船頭とで、つれないのを怒ったり怒られたり。おもしろかったです。

最後は二人で舟に乗り込んで、何と一緒に吉原を目指すという!笑
雷、なかなか充実した地上体験ですね!落ちてみるもんです。笑

幸四郎さんの船頭は、分かりやすく江戸のいい男、という風情。
商売繁盛しそうですね!

鷹之資さんの雷はさすがのおもしろさ。足が軽快で素敵だなぁ、と思います。
かわいらしくて愛嬌があって、この雷なら仲良くなれそう、という感じ。笑

20分間、ずっと楽しい時間が続きました! 


■まとめ


今月は、偶数日と奇数日で配役が変わります。
今回観劇したのは偶数日。
奇数日は市川猿之助さん女船頭に、市川弘太郎さんで、踊りの内容も少し変わります。

迷わずどちらも通えてしまう時間と値段設定が憎いですね。笑

【関連記事】「雷船頭」(奇数日)観てきました!〜三月大歌舞伎(歌舞伎座)夜の部 初心者の感想

日本舞踊を始めたばかりの頃に、一度公演で観ている演目なのですが、こんなに楽しいならもっと内容を覚えていてもいいものを全然覚えておらず、逆に新鮮でしたよ。。
でも雷が面白かったのは覚えているので、 それで十分なのかもしれませんね。

「踊りっていいな」と思える、気持ちの良い一幕でした!
 
プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇5年目。このご時世でなかなか劇場に通えず悶々とする日々。
◆着物好きの友人と踊りの師匠のおかげで、気軽に着物を着られるようになってきた今日この頃。

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