ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

2019年05月

日舞サークル時代の些細な遊び


大学の日舞サークル時代、ちょっと手が空いたときにやってみた遊びがありまして、
それがとても難しくて楽しかったのでご紹介します。

その名も、

「日本舞踊・イントロドン」!

これ、踊りを始めたばかりのときほど楽しいです!!笑

何せそもそも曲の知識がない上に、どの曲も同じように聞こえるし、歌詞も聞き取れないわけですこの記事参照)
実際そっくりな出だしの曲はとても多く、すごく自信を持って答えても全然違うこともしばしば。

「分かった!『春雨』!!」
「残念!『香に迷う』でした~」

みたいな。笑(※どちらも出だしが鴬の鳴き声)

いや、でもこれなかなか笑い話だけではなくて、曲の出だしの音が聞き分けられずに苦労したこともあるのです。

例えば、本番で先輩方の音源を流す係をやったとき。
音が分からず、正しい曲を流せているのか自分で判断できないために、違う曲を流してしまっても気付かないのです。。

一度下ざらい(リハーサル)でそのミスをやってしまい、ただでさえ緊張感のある空気が必要以上に張り詰めましたね…。
今でもあの冷や汗ものの空気感は忘れられません 
本番直前まで、手汗かきながら音源の確認をしたあの日。
結局あんまりよく分からずじまいだった、一年目の本番です。

***

そんなわけで、

遊びと見せかけて大事な場面に役立つ(?)日本舞踊イントロドン、
機会があればぜひやってみてください。笑

下駄で踊ること。

先日、こんな記事を書きました。


常日頃から着物で生活していないと身に付かない、ほんのちょっとした動き方。
そういうものが自然に出てくるようになりたいから、極力着物で生活したい、という話。

それに関連して、初めて下駄で踊ったときの話です。

***

私は和服を着始めたのも最近のことで、下駄で出掛けたことなどほんの数回しかありません。

外で下駄を履くときは、どんな形であれ歩ければとりあえず目的は果たせるので、その数回では特に何も意識しなかったのですが、これが踊りとなると全くの別問題でして。

私は元々、足首がとても固くこの記事、それをごまかすために体の変な位置に重心を置いて踊ってしまっていました。

これが、下駄を履くとごまかせなくなるんです。

底が固い、屈曲性のかけらもない履物なので、ちゃんと真ん中に重心が乗らないと、前後にぱったんぱったん傾いてしまうんですよね。
 
そうすると、思った形で止まろうと思ったときに、下駄がきちんと止まってくれずにバランスを崩す。

それから、日本舞踊の振りには「おすべり」といって、左右の足を交互に後ろに滑らせる振りがあるのですが、
当たり前ですが下駄は足袋のようには滑らないわけですよ。 

足袋でしか踊ったことがない私としては、一体どうしたものやらという感じで。

しかも本番のときは、完全なる善意で下駄の裏に滑り止めをしていただいたので、あとで自分の踊った映像を確認したらロボットのように滑っておりました。 笑

…というかそれ以前に、以前にも書きましたがこちら

下駄を履いて走れない!!

お出掛けのときに歩くのと違って、踊りの体裁を保ちながら、尚且つ走る。
こんなに自由が利かないとは…
これほどまでにできないものかと結構へこみました。。

本番ですらちゃんとできなかったですもんね。もう一回本番やりたい。。

***

さて、話がどこに繋がるかと言いますと、

下駄を日常的に履いていた世代の方は、それほど下駄での踊りに苦労することはないらしいのです。

あとはもちろん、履き慣れている人ですね。

やっぱり、日常的に身に付けていることで、踊りの可能性が広がるらしい。

下駄はそんなに日常的に履く機会があるわけでなく、特に踊りで使うような下駄はなかなか日常では履かないのではないかと思うのですが、
どんなものでも体に馴染んでいるか否かというのはとても大事なのだな、と思った次第です。

 

物知らずが行く歌舞伎#10〜六月大歌舞伎(歌舞伎座)今の知識と演目選び

この企画は、知識が足りないゆえに
歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方
の背中を押すべく、
歌舞伎歴1年半の初心者が何を知っていて、何を目的に、
どのチケットを買うのか
をさらけ出す企画です。
初心者の無知っぷりと、この1年半でちょっと学んだことを、
背伸びせず、恥ずかしがらずにお伝えできればと思っています。

※2019.06.02 「寿式三番叟」の内容に誤りがあり、該当箇所に追記いたしました。


物知らずシリーズ、ついに10本目を数える運びと相成りました。やったー。

6月の歌舞伎座です。夜は新作ですね!
本日も元気よく、知識不足を晒そうと思います。

ソレソレ晒せ さら〜せ〜♪(長唄「多摩川」より)(※関係ない)

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■歌舞伎座 六月大歌舞伎の演目は?


6月の歌舞伎座。
演目は以下の通りです。

【昼の部】
一.寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)
二.女車引(おんなくるまびき)
三.梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)
 鶴ヶ岡八幡社頭の場
四.恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい)
 封印切

【夜の部】
三谷かぶき
月光露針路日本 (つきあかりめざすふるさと)
 風雲児たち


そういえば全然意識していなかったのですが、歌舞伎の外題は字数が奇数なのだとか。

そしてやっぱり読めない。「梶原平三誉石切」はぎりぎり読めそうで絶妙に読めない。
新作は絶対読めない。笑 


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


【昼の部】

「寿式三番叟」は、大好きな踊りです。
映像でも度々観ますし、お稽古に居合わせることもあり、舞踊の会でも出るので、比較的親しみ深い気がしています。
 
「女車引」「車引」というのが7月の歌舞伎鑑賞教室(国立劇場)で出るのですよ。
いえ、そちらも観たことはないのですが、その関連かなぁと薄ぼんやり。。
 
「石切梶原」「封印切」は、いずれも名前のみ聞いたことがあるといういつものパターンです。

【夜の部】

新作なので知りようがないと言えばないのですが、原作も存じ上げず…かたじけない…。


*現時点で知っていることは?


◇寿式三番叟


※2019.06.02追記※
ここに書いてある「鈴の段」の、片方がサボるのをもう片方がどうにかするくだりはありませんでした!
確かにこれがあるものを何度も観ているのですが、様々あるようです。訂正してお詫び申し上げます。
なお、「あれ、こんな演目じゃなかったっけ?」というのは初心者のやりがちなミスではないかと思うので、あえて間違っている原文を残しておきます。混乱を生んでしまい申し訳ございません。


五穀豊穣、天下泰平を祈る舞踊ですが、いつもその辺は深く考えずに、ひたすら後半の「鈴の段」(二人の三番叟が鈴を鳴らしながら踊るところ)を楽しみに観てしまっています。笑

「寿・式三番叟」と分けます。「寿式・三番叟」ではないのがミソです。
以前、文楽の竹本織太夫さんが「サクマ式ドロップスみたいに言わないでください」とおっしゃっていたのが、私に強烈な印象を残しております。

さて、半蔵門駅の発車メロディーにもなっているこの曲。
前半はしっかりした雰囲気ですが、後半、二人の三番叟の踊りになると、前述の通り軽快でちょっとユーモラスな展開になっていきます。

片方の三番叟が途中でサボり始めるのを、もう一方が何とかして踊らせようとするくだりなんかがあって、思わず頰が緩んでしまいます
これ、文楽版はもちろん人形がやるのですが、疲れてしまってズル休みを始めるお人形、めちゃくちゃかわいいですよ!!!

ここで使われる鈴の音が大好きなんです!この記事で語っています)
華やかに繰り返される音楽の中に鈴のしゃんしゃんという音が混じり、心踊ります。

ちなみに半蔵門駅で使われているのは、この繰り返される旋律の中の一部分です。
同じ合の手(三味線のメロディー)が何度も何度も聞こえてくるので、終わってしばらくは音楽が頭から離れなくなること請け合いです。笑


◇女車引

「車引」は、「義経千本桜」の松王丸・梅王丸・桜丸が出てくるものだというところまでは分かっているのですが、こちらも実際に観たことはなく。

ただ「女車引」の登場人物 千代・春・八重はいずれも松王丸・梅王丸・桜丸の妻なので、同じ構図で女版に趣向を変えているのかな?と想像しております。

すみません、少しも予備知識ではないですね。笑


◇封印切

あれですよね、

馴染みの傾城を身請けするために、預かりものの絶対に手をつけてはいけないお金を使ってしまう話ですよね(ざっくり)。

細かいことは全く分かっていません。

でも梅川と忠兵衛といえば、このあとに続く場面である「新口村」は、一昨年歌舞伎座で観ているし、女流義太夫をテレビでやっていたのも聴きました(竹本駒之助さんの語りがもう素晴らしくて…テレビの前でぼろ泣き)

逃げて行く恋仲の二人が、忠兵衛の実父・孫右衛門と別れの挨拶をする「新口村」。
二人が逃げていた理由がここで分かるはず!笑


◇月光露針路日本 風雲児たち

原作を知らなかったのですが、みなもと太郎さん原作の長編歴史ギャグ漫画とのことです。
 

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三谷幸喜さんが作・演出を担当していらっしゃいます。
すでに2018年に、三谷さん脚本でドラマ化していたんですね。

登場人物を見る限り、学校で習うような歴史ではなくてちょっとコアな感じがしますね…!
どんな感じになるのでしょう。楽しみです。


■観てみたい演目は?


昼の部はどれも惹かれます!
踊り好きとしては三番叟、
それから7月に観る予定の「車引」の前に「女車引」。

中村吉右衛門さんの「石切梶原」と、
片岡仁左衛門さんの「封印切」は、
いずれも何度もやっている様子。

何度も出すということは、それだけ当たり役なのかなぁと。詳しくは分かりませんが。
初めて観る演目だからこそ、そういう配役で観られるのは嬉しかったりするわけです。

そして、夜の部の新作も気になっています。

新作を舞台でちゃんと観るのは、自分にとって初めてだったと思います。
これまでもいろいろ新作歌舞伎は出てきていたはずなのに、何だか一歩を踏み出せなかったんですよね。
 
でも、例えばシネマ歌舞伎の『桜の森の満開の下』なんかを観て、あるいは江戸の芝居を舞台にした小説を読んで、
「新しいものが生まれる瞬間に立ち会えるって、ものすごくエキサイティングなのではないか」ということに思い至ったわけです。

これからは新作にも足を運んでみようと。


■どのチケットを買う?


昼夜ともに通しで幕見か、3階席かですかね!

昼の部は、できれば本当は3等A席以上の席で観たい気持ちはあるのですが…
6月は未来座の日本舞踊公演も観に行くので、観劇予算がちょっとあれなんですよね
(舞踊公演についてはこの記事が分かりやすいかと思います。ぜひ!)

***

余談ですが、
この項の一発目に「通しで幕見」という選択肢が出てきてしまうのが、申し訳ないのですが全然一般的じゃないよなぁと我ながら思うのです。

幕見はやっぱり幕ごとに観るのが最大の目的でしょうし、席も長時間向きではない(狭さ、出入りの多さ、チケットを幕ごとに確認しなければいけない煩雑さ等)。
しかも、通しで買うと結局3等B席とお値段変わりませんし。

ただ、3等席は買おうにもなかなか手に入らないのです。
売り切れるのがとにかく早い。

「松竹歌舞伎会」に入れば先行で買えますが、年会費を払って毎月通しで観に行ける自信もなく(結局大半は観てますが!笑)。

そんな訳で、ご参考になれずに申し訳ないのですが、一庶民の気楽な観劇生活というところで一つ。。


■まとめ


まとめというか、個人的な感慨なのですが。笑
 
6月といえば2年前、私が歌舞伎を好きになるきっかけになった公演があった月なのです。
歌舞伎座ではなく国立劇場なのですが、仁左衛門さん主演の「霊験亀山鉾」ですね(この記事、あとこの記事で触れています)
仁左衛門さんの悪の華っぷりに、すっかりやられてしまったのでした。

しかしそこから、今のように頻繁に観に行くようになるまでにはやや間が空きまして。
なので「歌舞伎歴」というところをどう換算するか、いつも迷うんですよね。。

何にせよ、正直ここまで歌舞伎を好きになると思っていなかったので、人生面白いものです。

そんな思い入れのある6月に、今度は初めて新作を観に行かむという。
私の歌舞伎との関わりには、何やら6月というのが絡んでくるようです。


【関連記事】
「寿式三番叟」初心者はこう楽しんだ!〜六月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想
「女車引」初心者はこう楽しんだ!〜六月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想
「石切梶原」初心者はこう楽しんだ!〜六月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想
「封印切」初心者はこう楽しんだ!〜六月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想
三谷かぶき「月光露針路日本 風雲児たち」観てきました!〜六月大歌舞伎(歌舞伎座) 夜の部感想

 

「浅草今昔きもの大市」に行ってまいりました!


ずっと行きたい行きたいと思いつつ、なかなかタイミングが合わなかった「今昔きもの大市」。

今回は幸いにも連休をいただいていることもあり、かつ浅草という行き慣れた場所だったので、やっと参加することができました!うれしい〜!

想像以上にとても楽しいイベントだったので、早速レポートします!




■開催概要


★詳しくは「台東館」のイベント情報もしくは公式サイトへ!

日程:5月3日(金)〜5月5日(日)
時間:10:00〜17:00 ※最終日は16:00まで
会場:東京都立産業貿易センター 台東館 4階南側

※入場無料です。

仲見世通りから雷門向かって一本右の「観音通り」を直進すると、左手に浅草寺の「二天門」が現れます。
そこを右折して通りを渡ると、真正面が「東京都立産業貿易センター 台東館」です。

もしくは、神谷バーの角を回り込んだ「馬道通り」沿いに歩くのも(むしろこっちの方が)分かりやすいかと。「台東館」はこの大通り沿いにあります。


■会場の様子


*何を売っている?


着物にまつわる様々なものを売っていました!

これからの季節にぴったりの夏物や夏用の襦袢、浴衣、単衣はもちろんのこと、
袷のお着物もたくさんありましたし、振袖なんかも結構見かけました。

帯も袋帯から名古屋帯(夏物もたくさん)、半幅帯まで品揃え豊富。

帯締め、帯揚げ、羽織紐にアクセサリーと、小物も充実!

羽織もありましたが、夏用は少なかったように思います。

*価格帯は?


まちまちです。

500円前後の小物や、1,000円着物・帯のコーナーを設けているところもあれば、本当に良いものを扱っているところもあり。

普段いただきものかリサイクルでやりくりしている私としては、手の届きやすい価格帯のものがかなり多く、悪魔の囁きが何度も聞こえました。

*試着はできる?


もちろんできます!

お店の方に断るのはもちろん必須だと思いますが、会場内に何箇所も茣蓙のようなものが敷いてあり、そこで実際に羽織ってみることができます

着物も洋服もそうですが、実際に着てみないと分からないことって結構あると思うのです。
サイズ感、色味、顔映り、リサイクルのものだと目立つ位置にシミがないか、などなど。。

多くの方が入れ替わり立ち替わり試着をしていたので、臆せずに着てみた方が良いですね!

と、過去の自分への自戒を込めて。笑

*何店舗くらいあるの?


今回は22店舗のようです。
写真を撮るのを完全に失念してしまいましたが、会場ぐるりが着物だらけで眼福ですよ…!!

*所要時間はどのくらい?


私の場合を申し上げますと、二人で参加したのですが、
全店舗回り、あれこれ迷い、好きなお店の大量の帯を全て見て…と楽しんだ結果、

2時間半はあっという間に経っておりました。
もうちょっといられた。

目当てのお店がある、一人でさくっと見て帰る、などであれば如何様にも短縮できると思いますが、楽しもうと思えばいくらでも楽しめる場所です。笑


■本日の戦利品


ちゃっかり買ってしまいましたよ。
そりゃあ無理ですよ、あんなにかわいいものに囲まれた空間で。。

まずは「開好堂」さんにて、夏用の博多!

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手持ちの夏着物と浴衣に合わせやすい色かなぁと思いまして。
会場にある着物で、手持ちのものに近い色のものにあれこれ合わせてみて決めました。

購入前、シミがあったので、会場の試着スペースで軽く試させていただくことに。
(撮影者の写真の腕の問題で色味が全然違いますが、上の写真が正しいです。。)

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このシミがどうしても正面に来てしまい、うーんやっぱり諦めようか…と思っていたのですが、
ふとこの部分を裏返してみると、

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シミがない。

もしかして、

関西巻きなら使えるのでは?!

「関西巻き」は、帯を時計回りに巻いていく締め方で、私はいつも反時計回りで締めているので逆巻きにはなるのです。
でも、リサイクルで出てくる名古屋帯だとこの「関西巻き」の折り目がついているものもあったりする。
いずれどっち回りにも巻けた方が便利に違いないので、関西巻きを習得する良い機会にもなるなぁと

そんなわけで1,000円にてお家に来てもらうこととなりました。これからよろしくね。

***

それから同じく「開好堂」さんにて、紬の単衣。3,000円。

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かわいい〜さわやか〜!!

裄も身幅も十分だったので、お稽古でも着られるなぁと思いつつ、
汗まみれにしてしまうのももったいないので、まずはお出かけで気軽に着ようかなと思います。

さっきの帯とも相性抜群。

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単衣は何だか時期が難しいんですよね。。
でもこの記事に書いた半衿付きのスリップも今年は強力な味方となってくれるはずなので、
単衣の時期もガンガン着られたら嬉しいなぁと思います。

***

最後は「まる福」さんの、絽の半衿!500円!

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やわらかいお花柄。
見えるのはほんのちょっぴりですが、浴衣にしろ夏着物にしろ、あの繊細な生地からちょこん、とこの色が覗くと思うと、何やらわくわくしてしまいます。

絽の半衿、他にもたくさんあって迷いに迷いました。。
迷う時間もまた幸せ。笑

■感想


今回出店されていたお店は、普段行ったことがないところばかりで、何だかどこも雰囲気が目新しくてテンションが上がってしまいました!

会場にいらしている方の着こなしもおしゃれで、すれ違う方のお着物を見ては「今の方のかわいい!」「素敵な着方…!」 と感動しておりました。笑

このような着物イベントに初めて足を運んだのですが、何かしら目的を持っていかないと危険ですね。
「うっかり買ってしまう」という最も避けたい事態が容易に起きる、充実の着物空間でした。

またお財布の紐をゆるめられそうな時期が来たら、是非とも参加したいイベントです


 

「新版歌祭文」(座間社•野崎村)観てきました!〜四月大歌舞伎(歌舞伎座)昼の部 初心者の感想

はい、
明日的な今日から團菊祭ですね。滑り込み感満載で先月の感想です。笑
昼の部の「新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)

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今回は有名な「野崎村」に加えて、その前の場面の「座間社」が上演されました。
「座間社」から出るのは珍しいそうです。


「座間社」は、久松中村錦之助さん)がどういう経緯で久作中村歌六さん)の家に帰ってきたのか、どうしてお染中村雀右衛門さん)が久松を追ってきたのかが分かる場面。

ひたすら小助中村又五郎さん)が、小賢しくて悪いやつながらもずっと楽しかったです!
最後の小躍りするところ、軽さがとても好きでした。 

それから、お染と久松をそっとしといてやろうとする、下女のおせん中村京蔵さん)。
もう絶対うきうきしているに違いない!というのがよく分かります。笑
他人の恋を横から見てるのって楽しくなっちゃいますよね(当人からすれば最も鬱陶しいやつ)

そんなおせんを送り出す、お染の台詞もいかにもで好きです。
「随分ゆるりとしてだんないぞえ」みたいなセリフだったと思うのですが、「ゆるりとしてだんない」ってかわいいですよね!!
ゆっくりしてて大丈夫よ、みたいな意味だと理解しているのですが、もう言葉の響きからしてかわいい。

ところで、この場面の舞台に私はちょっとテンションが上がってしまったのでした。
座間社付近の風景なのですが、手水鉢の上にちゃんと手拭いがかかっていたり、奥の方に芝居の幟が立っていたり、細かいところにわくわく

舞台って決して小さいわけではないと思うのですが、大道具・小道具にときめく心理はミニチュアのジオラマを好きだと思う気持ちに非常に近いと思っています。
あの舞台のサイズ感の中にこれだけの風景が作り込まれている…!という感動ですよね

***

さて、今回どうしても観たかったのは、野崎村のお光ちゃん(中村時蔵さん)。
詳細はこの記事で語っていますが、要はお光ちゃんが出てくる踊りをいつかやりたいので、その前に観ておきたかったという流れです。 

そしてですね…

だめですあの話は…ああいう、自分じゃどうにもならないものに、何の過失もないのに巻き込まれてしまう、どうしようもない娘に弱いのです…。
最後、舞台の真ん中で泣きに泣くお光ちゃんに、こちらもこらえきれずぼろ泣きでした。


とにかくお光ちゃん、かわいいのです。
お染ちゃんの、華やかに育ったおっとりしたかわいさとは違った意味で。

たぶん、立場として近いのは、少なくとも私にとってはお光ちゃんの方です。田舎育ちで、自分のことは自分でするような。 
だから感情移入してしまうし、江戸の初演のときも、きっと観客はお光に肩入れしたでしょう。

お光は、決して美しいわけではない。
お染に向かってはお行儀悪く「いーっ」とするところもあるし、動きもしゃなしゃなしてるわけではなくて、むしろ比較的おてんばな感じが見え隠れしていて、本当に「そこら辺の娘」なんですよね。

でもやっぱり、恋する女の子はかわいいんです。
 
久松(錦之助さん)と祝言を挙げると聞いて、テンションが上がりきってしまって抑えられない感じもしかり。
全然必要ないのにいそいそ鏡を持ってきて、大根切りながら嬉しそうに自分の姿を見るあたりなんか、たまらなく「女の子」。
かわいいですよね、全然いま見なくていいのに。大根切りながらって。
(この大根を切る時蔵さんの手さばきが見事です。料理下手としては見習いたい。あの大根、その後どうしてるんだろう。スタッフの皆様がおいしく召し上がってるんだろうか。)

対するお染ちゃん(雀右衛門さん)、彼女もまた強いなぁと思います。
一歩も引きませんもんね。
何せ、お光ちゃんの家の中で久松に甘えますもんね。。

いや、決してお染ちゃんが悪いわけではないと思うんです。
ただおっとりと育ったがゆえに、思ったままに行動してしまうだけであって、それはそれでお染ちゃんの毒のなさなんだと思います。
お染ちゃんなりにお光ちゃんに気を遣ったところもあるのですが…この場面でお光ちゃんに、その気持ちが届くはずもなく。
それはお染ちゃんにとっても、苦しいことなのでしょう。 

間に挟まれた久松、抜群にかっこよくありながら、いかにもこういうことをしでかしそうな佇まい。 

事情を知ったお光パパ・久作(歌六さん)は、お染と久松を説教するわけなのですが、娘としては色恋沙汰にパパに出てきてほしくないなぁ。。

いくら娘を思っての行動だったとて、やはりちょっとずつ感覚が違うと思うんですよね。機微が分かり切らないところが絶対あると思うんですよね。。

説教された二人が「思い切った」と言うのを聞いて、久作は「できた、できた!」と大喜びなんですが、
久作さん。そういうところですよ。
 
他の女のことを「思い切った」直後の男との祝言、嬉しいと思うか?

久作、ほんとに娘思いだし、実子ではない久松のことも心から思いやっているんですよ。
どの場面だったか忘れましたが、泣いているお染の肩を抱いてあげるところもあって。

けど、惜しい。やっぱり決定的なところを分かっていない。。

その辺、お光は全部分かっています。
この二人の「思い切った」は、この場を切り抜けるための方便。
今自分が意地を通したら、 二人は心中に向かうだろうと、お光は自らの髪を下ろすのです。 

舞踊「お光狂乱」の歌詞に、「在所生まれの私でも 許嫁すりゃ女房ぢゃもの」というところがあります。
「野崎村」を観ながら、ここの歌詞がものすごく突き刺さってきました。
 
女房になれなかったんだもの。すんでのところで。
「嬉しかったはたった半刻…」というお光の台詞が切ない。

お光ちゃん、えらかったよ。あなたは何も悪くないよ。

ここの竹本の詞章に「浮かぶ涙は水晶の玉より清き…」というのが聞こえてきて、その美しさがより一層哀しさを増すなぁと思いました。 

最後、両花道を去っていくお染と久松を見送るお光と久作。
手を合わせて詫び、感謝する二人に、お光は笑顔で首を振ってみせる

もう、お光は「久松っつぁん」とは呼びません。
久松に呼び掛けるのは、「兄(あに)さん」という言葉
「兄さん、おまめで」というセリフ。これだけで、自分はもう身を引いたのだ、というお光の覚悟が分かります。なんと気丈な…

でも二人が見えなくなったところから、お光の本音が見えてくる。

久松の行く方向から目を離せないまま、持っていた数珠をふっと取り落とすお光。
落としたことにも気付かず、遠ざかっていく久松の方をじっと見続ける。
落とした音に気付いて、久作が振り返る。数珠を拾って、娘に握らせる。

お光、ここでこらえていた思いが溢れます。
父にすがり付いて、「ととさん、ととさん…」と涙にくれるのです。

もうここがたまらない。。

久松もお染も、このお光の涙を知ってほしい。
二人に最後に見せた笑顔は、お光の無理なんだよ。

いや、逆かもしれませんね。

こういう涙を知られたくないから、笑顔で見送ったのかもしれませんよね。

***

さて、舞踊「お光狂乱」は、この「新版歌祭文」そのものというより、これを元にしてできた「お染久松色読販(おそめひさまつ うきなのよみうり)《お染の七役》」 から独立したもののようです。

しかし、やはり元を辿ればこのお話だと思うので、知っておけたのは良かった。

そしてどことなく「妹背山」のお三輪ちゃんに通ずるところがあるなぁと思っていたら、同じ近松半二の作なんですね。
どうも半二さんの作り出す女の子にまんまと惹かれてしまうようです。笑

最後に話はちょっとずれますが、
近松半二が主人公の小説『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び(大島真寿美、文藝春秋、2019)、芝居が生まれる興奮と、登場人物が生き続けていく喜びに溢れた一冊でした。
今月は国立小劇場で文楽の『妹背山婦女庭訓』通し上演もあることですし、良い時に良い本に出会えました

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び [ 大島 真寿美 ]

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プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇5年目。このご時世でなかなか劇場に通えず悶々とする日々。
◆着物好きの友人と踊りの師匠のおかげで、気軽に着物を着られるようになってきた今日この頃。

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