ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

2019年06月

【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる③紅葉の橋


日本舞踊を始めてから今までに習った曲を、習った順に振り返ってみる企画の第3回です。

第1回はこちら▶︎ 【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる①初稽古〜京の四季

***

3曲目は「紅葉の橋」。

多分、踊ったのは紅葉の季節だったんでしょうね。
季節に合わせた曲のセレクトができるのも、日本舞踊の楽しいところです。

今までの2曲よりも少しテンポが早く、明るい印象の曲です。
先生が私の踊り口を見て、「あなたはこういう曲が合うと思う」と選んでくださった曲でした。 

たった2曲しか踊っていないのに、個性がもう出てくるんですね。
それを活かして曲を選んでくださる先生の、引き出しの多さに今更ながら驚き、尊敬の念を新たにするのです。 

***

この曲、自分の中では「やっとん祭り」でした。笑

やっとん、というのは何かというと、踏むリズムとでも言えば良いのでしょうかね、

やっとん、やっとん、やっとんとん

というリズムが、日本舞踊には非常によく出てくるのです。
「やっ」のところは溜めて、「とん」で踏みます。
溜めて、と書きましたが、ここでお扇子を打ったり、手を打ったり、膝を打ったりしてリズムを取ることが多いです。
 
確か「梅にも春」にも出てきたと思うのですが、「紅葉の橋」には特にたくさん出てきました。

これ、できるようになると何だか楽しいんです!
自分でリズムが取れている、音に乗って踊れている、という気持ちよさ
何せ音が聞き取れないところからのスタートだったので。笑

踏むところ、お扇子を打つところ、とにかく音に合わせて踊る楽しさを実感した一曲です。

***

歌詞はこんな感じ↓

紅葉の橋の たもとから
袖を垣根の 言伝に
ちょっと耳をば かささぎの
霜もいつしか 白々と
積もるほどなほ 深くなる
雪をめぐらす 舞の手や
ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤサ


縁語、掛詞が多用されているのがお分かりいただけると思います!

橋の袂と、袖の袂。
「袖を垣根の」は「袖をかき合わせる」からの流れでしょうか。
「耳をばかささぎの」は「耳を貸す」からの「かささぎの」ですね。

そんな歌詞の楽しみ。
そうです。
この頃には歌詞が聞き取れるようになっているんです! 

少しずつではありますが、やっと邦楽に耳が慣れてきた。
音が聞き取れるということは、覚えやすさにも、踊る楽しさにも繋がってくると思います。


かささぎって何で出てくるんだろう、と思って調べてみたら、
七夕にはかささぎが、天の川に橋を渡すという伝説があるようで。

さらに言えば、紅葉の橋も「古今和歌集」(秋上)に有名な歌があったんですね。

天の川 紅葉を橋に わたせばや 七夕つめの 秋をしも待つ (よみ人知らず)

そしてやはりこちらも七夕の歌です。
こういうちょっとした知識が、歌詞を通して増えていくのもまた嬉しい。

七夕の季節感で始まった歌ですが、季節が移ろい、冬で終わります。
これも3分くらいの短い曲ですが、風情があるなぁと思いました。

***

振りは、さっきの「やっとん」に加え、
かささぎの橋のところで波を表現する振りがついていたり、
雪が積もるところで手を重ねていくような振りがついていたり、
いろんな方法で歌詞を表現できるんだな、というのが改めて感じられた曲でした。

あとね、細かい話なのですが、
この曲、初めて「奥から走って出てくる」振りだったんです。

今まではどうかというと、
例えばお辞儀をしたところから始まったり、後ろを向いているところから始まったりと、
すでにその場にいるところから踊り始めるパターンでした(幕が開いたときに舞台にいることを「板付(いたつき)」といいます)

曲が始まってから出ていく、という踊りは初めてだったんです。

たかだかこれだけでも、ちょっと進歩した気分になれるというか(別に関係ないとは思うのですが笑)、
また新鮮な気持ちで踊ることができます。

こういう少しずつの変化や、新しいこととの出会いが、どんどん私を日本舞踊にはまらせていったわけです。笑



下駄の鼻緒をすげ替えました!


初めて!
初めて下駄の鼻緒をすげ替えました!!

「すげ替える」っていう言葉、何だか素敵な響きじゃないですか?素敵ですよね?!(嬉しくてテンションが異常) 

*** 

浴衣の季節です。

浴衣と言えば下駄。

私が唯一持っている下駄は、友人にもらった大事な一足なのですが、残念なことに靴擦れがとてもひどいのです。
「靴擦れしない方法で歩く」とかそういう問題ではなく。履いた瞬間から靴擦れの予感がするレベル。
 
そんなこんなでお出かけがちょっと憂鬱だったので、これはもう鼻緒を何とかした方が良いだろうということで、思い切って下駄屋さんに行ってみました。

(※ちなみになるべく足の先の方で鼻緒を挟んで、足裏全体を下駄につけるようにして歩くと靴擦れしにくいようですよ。)

***

伺ったのは、品川の丸屋履物店さん。
 
最寄りは京急の新馬場駅とのことですが、私は品川駅から歩きました。
高輪口から、迷わず行ければ15分ほど。
京急線を見失わずに歩くのがポイントでした。

途中で通る橋がレトロで気になる。

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※どちらも帰り道での撮影なので、行きは違う景色です。あしからず。

北品川駅前の商店街も、昔ながらな感じで良かったです。

***

さて、まずは鼻緒を選ぶところから。

これがまた大変にときめく時間!
一人だったので興奮を必死にこらえていたのですが、
下駄屋さんに並ぶ色柄豊富な鼻緒たちにもう釘付け。心がとろけそう。
 
どれもこれもほしくなってしまいます。

すべての鼻緒が私に訴えかけてくるようです。

たくさんのものから、ベストのものを、自分のために選ぶ時間は幸せ!


結局、こんな鼻緒にしました。

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薄紫の、とんぼ柄。
渋めの色合いがとても好きです。その渋さの中に、前坪(まえつぼ)の濃い赤が効いているなぁと。

ちなみにとんぼは前にしか進まないことから、縁起物とされています。 

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ちゃんとサイズに合わせてもらった下駄は、足裏に吸い付くようにフィットしてくれて気持ちがいい。
一日履いて歩いてみましたが、靴擦れもなく、快適でした!

今回は鼻緒が2,500円、すげ代が1,000円の合計3,500円。
思った以上に手ごろに、好みの雰囲気の歩きやすい下駄を手に入れられるんですね!

***

今回は鼻緒のすげ替えだけで、下駄そのものは新調しませんでしたが、すげていただいている途中でお店の前を、カラコロと下駄を鳴らして通る音がしたんですよね。

あれはたぶん、駒下駄じゃないかしら。
二枚歯の、いわゆる「下駄」と聞いて真っ先に思い浮かぶ形のものです。

私の下駄は、裏にゴムの貼ってある「右近」というタイプのもので、あの軽快な音は出ません。

いいなぁ。
下駄の音、気分が良くて大好きです。

最後まで迷った鼻緒がいくつかあるので、その鼻緒でいつか駒下駄を誂えたいな。


何はともあれ、これで心置きなくお出掛けできますね✨
盆踊りもいいな。この下駄ならば踊れそう!

これからいろんな浴衣や着物に合わせるのが楽しみです。
 

おすすめ日舞公演!未来座=彩(SAI)=「檜男(ぴのきお)」「春夏秋冬」観てきました!


毎年行きたいと思っていた未来座さんの公演、やっと行けましたー!

古典の舞踊技法をもとに、新たな日本舞踊作品を発表している未来座の公演。
今回が3回目の公演ですが、日本舞踊協会としては50年以上、こうした活動をしているそうです。

今年の演目は「檜男(ぴのきお)「春夏秋冬」の二本立て。
※「檜男」は、檜の字に☆で濁点がついています。

感想をまとめます!

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パンフかわいい…! 




*「檜☆男」


ほし組・つき組とキャストが分かれたうちの、ほし組公演を観てきました。
つき組はまた全然違う雰囲気なんだろうなぁ。

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お馴染みのあのピノキオのお話を、日本舞踊で。
語りには、歌舞伎役者の坂東巳之助さん

これがとっても良くて、くすっと笑いつつ、最後はぽろぽろ泣いてしまいました
知っている話なのに。泣くと思ってなかった。笑

***

開演前からコオロギの声がしているの、物語に自然に入り込めていいですね!

舞台の大道具は、まるで絵本のよう。わくわくします。

おじいさんが大事に作ったお人形たちは、もちろん日本寄りの人形が多いんですが(笑)、
それぞれ動き方が全然違って、観ているうちにどの人形にも愛着がわいてきます!

女の子らしくかわいらしく動く「かりん」(もうこれが本当にかわいくて愛しい!)
名前から想像できるいかにもな雰囲気が楽しい「おふく」、
途中見事な人形振りを堪能できる「ちゅうべえ」と「うめがわ」(!)、
小ネタ満載で片時も目が離せない「うば」、
派手な衣装で物語を動かしていく「ぎんのじ」と「でび」。
頭に灯篭を乗っけた「竹人形」たちもきれい!

途中にはちゃんと、それぞれの人形の見せ場が用意されているのですが、
この人形が出てくるときに、日本人形が入っているような、背景が金のガラスケースありますよね、あれに入って出てくるのです。
演出が細かい!笑 

お話を語ってくれるのは、最初からずっと鳴いていたあのコオロギです(「こおろぎ安」というお名前。声は巳之助さん)。
こおろぎ安、会場を巻き込みつつお話を展開していってくれます。

そんなキャラクターたちに囲まれて、物語の中で成長して行く「檜男」。
最初はカタカタの頼りない動きだったのに、、と思うとラストが本当に素敵です。

一挙手一投足が愛しい、愛嬌たっぷりの檜男。
かりんとの淡い恋模様もまた微笑ましい!

国立小劇場は、舞台の方々の表情も見やすいサイズ感なのも嬉しいところです。

***

演出も楽しくて、親しみやすかったです。
絵本の世界のような大道具、客席の使い方、多様な音楽…飽きさせません。

何せ!踊りを!!踊りを観て!!!
全く堅苦しくないので!むしろ親しみと愛嬌の塊なので!!!

関係ありませんが梅川と忠兵衛、場面は違えどわざと歌舞伎座と当てたのか…?


*「春夏秋冬」


25分の休憩を挟んで、「春夏秋冬」が始まります。
美しい映像を使いつつ、決してそれが邪魔になることはなく、世界観を作り上げているなぁと思いました。

先ほどの舞踊劇とは違うアプローチで、日本舞踊の魅力や可能性がぎゅっと詰まった演目でした!


【春】
 
これはまずもって、着物がとにかくきれい!
女性舞踊家13人が美しく振袖で踊るのですが、全員違う振袖なんです!!

一列に並んだところなんか、雑誌かファッションショーを眺めているよう
日本舞踊を始めた理由に「着物が着たいから」 は一大勢力なのですが(笑)、こんな素敵なものを観たら、より一層その熱が高まると思います!

加えて踊りはもう、「これぞ日本舞踊」というような華やかさと柔らかさがありました。
「日本舞踊」と言われてイメージする世界はこんな感じなのかな、と。

踊りっていいなぁ。。 

【夏】

打って変わって、男性舞踊家10人の群舞。
袴の衣擦れの音っていいですねぇ。。それだけでそわそわしちゃう。

それでですね、男性舞踊家の群舞、かっこよくないわけないんですよ!!

この部分のテーマは夏祭り。
舞台の熱量がどんどん上がり、そのスピード感と大きさと迫力に、観ている方もどきどきしてきます。 
 
日本舞踊の「かっこいい要素」を集めたらこうなるなぁという感じ。
最後の締め方がまたたまらない!!!

【秋】

そんな勢い溢れる舞台の空気をがらっと変えるのは、井上八千代さん

ただひたすら、その舞の作り出す空気に浸れる喜び…
振りの意味が分からなくても、無駄の全くない美しさに、呼吸すら忘れて見入ってしまいます

背景に浮かんだ大きな月。
広々とした舞台は、音楽とも相まって物寂しさがあります。

その中で、一人舞うお姿が尊くて。

決して力が入っているわけではないのに会場全体がぴんと張りつめるようで、
振りが多いわけではないのに密度が高い。

抽象的な言い方になってしまいますが、八千代さんの京舞の、その空気感がとても好きです。

【冬】

最後は、春と夏に登場した舞踊家たちが一堂に会しての踊り。

独特な響きの音楽に合わせ(なんとこれが鶴澤清治さんの作曲だったんですね!)、冬を生き抜く鳥たちが力強く踊ります。

これだけの人数で、あの大きさの舞台で踊るのは本当に壮観です。

最後は静かに、作品が閉じられます。


*まとめ


近くにある芸能、たとえば歌舞伎とか、あるいはダンスとかバレエとか、そういうものに比べて、
日本舞踊って「この公演を観てみようか」となりにくいジャンルだと思うのです。

でも、ちゃんと日本舞踊でもできるんですよね。
こんなにエンターテインメント性の高いことだって、古典の日本舞踊を使ってできる。 

だから、何だかこの公演は日本舞踊好きとしては嬉しかったし、一人でも多くの方に観ていただきたいな、と思いました。まわし者じゃないですよ!笑

6/22(土)・6/23(日)、残り5公演。当日券もあるようですよ!
お時間ある方はぜひ(^^)

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※23日(日)のみ、第三部がないようです。 


物知らずが行く歌舞伎#11〜七月大歌舞伎(歌舞伎座)今の知識と演目選び

この企画は、知識が足りないゆえに
歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方
の背中を押すべく、
歌舞伎歴1年半の初心者が何を知っていて、何を目的に、
どのチケットを買うのか
をさらけ出す企画です。
初心者の無知っぷりと、この1年半でちょっと学んだことを、
背伸びせず、恥ずかしがらずにお伝えできればと思っています。


物知らずシリーズ、大変に遅くなりましたが7月分です。もう6月終わる。。
(いや、でもこの記事などなくても7月は情報に溢れるはずだと確信しております。なぜなら、)

7月の歌舞伎座は海老蔵さん祭りです。
ご子息の勸玄くんもご出演とあって、6月20日時点ですでに昼の部は全日程売切れ
夜の部も3階席はA席、B席ともに満席です。ひえぇ 

そんな七月大歌舞伎、きっと初めて歌舞伎をご覧になる方も、いつもより多くいらっしゃるのではないでしょうか。

全演目の見どころなどは、すでに公式サイトに掲載されていますのでそちらをご参照いただき、
「歌舞伎公式総合サイト 歌舞伎美人」七月大歌舞伎の情報はこちら)(当方完全なる出遅れ)
ここでは「歌舞伎初心者、こんな感じの予備知識で観に行きますよ!」というのを晒します!




■歌舞伎座 七月大歌舞伎の演目は?


7月の歌舞伎座。
演目は以下の通りです。

【昼の部】
一.新歌舞伎十八番の内
 高時(たかとき)
二.西郷と豚姫(さいごうとぶたひめ)
三.新歌舞伎十八番の内
 素襖落(すおうおとし)
四.歌舞伎十八番の内
 外郎売(ういろううり)

【夜の部】
通し狂言
星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん)
 成田千本桜


今月は比較的読みやすい演目名が並びますね!
それだけでちょっぴり安心感があります。


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


【昼の部】

「素襖落」は、昨年11月に歌舞伎座で観ました!
尾上松緑さんの太郎冠者でした。楽しく観た記憶。
同じ演目、結構ちょこちょこ出るんですね。 
 
「外郎売」、こちらは演劇をかじっていた時代に馴染んだもの。
歌舞伎としては完全なる初めましてです。むしろよく本物知らずにやってたな。
 
あとは残念ながら、存じ上げませんね…。
名前すら知らなかった演目2つです。

【夜の部】

何も分かりませんっ!(簡潔)
でも場面の名前を見る限り、「義経千本桜」が元になっているのかしら…?


*現時点で知っていることは?


◇素襖落


狂言がもとになった、気軽で楽しい演目だったと記憶しています。

遣いに行った先で、散々酒を振舞われた上に、褒美に素襖(すおう、武士の礼服の一つらしいです)までもらった太郎冠者(たろうかじゃ)

せっかくもらった素襖を主人に取られまいと、必死に隠し通そうとするのですが、
いかんせん太郎冠者はすっかり酔っ払っているわけです。 

千鳥足で頭もいまいち鈍くなっている太郎冠者と、その主人との間の素襖攻防戦が笑いを誘います。


◇外郎売

「外郎売」と言えば、早口言葉の長ゼリフが有名なのではないでしょうか?

かく言う私も演劇部時代、一生懸命練習しました!
歌舞伎がもととは知っていましたが、当時は歌舞伎が何かを知らなかったので、ただ闇雲でしたよね…。
当然知らない言葉ばかり出てくるので、なかば呪文のように覚えた記憶があります。笑 

この早口に至る流れは全く知らないのですが、ぜひ本物を聞いてみたいものです。


◇成田千本桜

この演目自体は知らないのですが、元になっているであろう「義経千本桜」は浄瑠璃の三大名作の一つで、とても有名な演目です。

通しではなかなか上演されませんが、「渡海屋」「大物浦」「鮨屋」「吉野山」なんかは単独でよく出ているようで、テレビ放映も多く、いずれもどこかしらで観たことがあります。
(「鮨屋」を今年2月に観たときの感想はこちら

私が観劇を始めたこの短い間に観ることができているのだから、相当頻繁にやっていると思っていいのではないかと。笑

全編通すと主人公がどんどん変わってしまうので、その辺がどのようになるのか分からないのですが、きっと見どころ盛りだくさんの舞台になるのでしょう!

各場面の主人公的な役を、全て海老蔵さんが早替りでなさいます。
宙乗りもあるようです。凄そう。


■観てみたい演目は?


やはり知っている演目として、「素襖落」「外郎売」は気になりますね~。

特に「外郎売」は、海老蔵さんのご子息・堀越勸玄くんが、早口の長ゼリフを勤めるようですよ!
市川新之助襲名を来年に控えた勸玄くん、ご活躍が楽しみです。

夜の部は、先述しましたが海老蔵さんが13役の早替り!
4時間ほどの長丁場を、これだけ替わりながら勤めあげる物凄さ。

どれを観ても、きっと見ごたえがあるんだろうなぁ。


■どのチケットを買う?


7月も幕見になりそうですね…何せチケット買えないので…

でも幕見席も相当混雑するのではないかと。
5月の團菊祭、海老蔵さんの出る幕はとても並んでいたと聞いています。

今回もみなさん早くから通しの切符を買いに並ぶんじゃないかなぁ、と私は踏んでおります。
途中から観ようとすると立ち見になりそうな気が。。

Twitterで「歌舞伎座幕見」と検索すると、幕見の混み具合情報を多くの方が提供してくださっているので、行く前に状況を見ておいた方がいいかもしれません。

それにしても海老蔵さん&勸玄くん恐るべしです。さすがです。


■まとめ


海老蔵さん、実はそれほど観たことがあるわけではないのです。
昨年の團菊祭で観たくらい。あとはシネマ歌舞伎で拝見したのが一回でしょうか。
今年の5月も見損ねているので

でも、その少ない機会でも、やっぱりとても印象に残っています。存在感がすごい。
ぜひまたしっかり拝見したい!

夏本番の7月、幕見席の切符売り場に長時間並ぶのはなかなかしんどそうですが、水分と塩分を欠かさぬように気を付けつつ頑張りたいと思います!笑

 

「封印切」初心者はこう楽しんだ!〜六月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部感想


6月の歌舞伎座、昼の部の締めは「恋飛脚大和往来(こいびきゃく やまとおうらい)「封印切(ふういんぎり)と呼ばれる場面です。

上方の香りがしてくる一幕。

楽しく観ていたら、知らず知らずのうちに取り返しのつかないことになっていて、見事に引き込まれました。

片岡仁左衛門さん亀屋忠兵衛
ふんわりとしていて、間違いなくいい男なんだけど憎めなくて、最後のおそろしい緊張感にやられました。。

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今月の絵看板。上から主人公・忠兵衛、恋仲の傾城・梅川、恋敵・八右衛門。




■初心者でも楽しめるのか?


楽しめます!
聞き取りやすい、現代とそう変わらない言葉で進むので、ストーリーも掴めると思います。

笑いどころ多く、テンポも良く。おすすめしたい一幕です!!

封印を切るに至る心理、何だか分からなくもないな…と思わせる説得力。 

***

総じて分かりやすいですが、強いて言うならざっと以下のことが分かっていると良いかもしれません↓
 
・主人公・忠兵衛は飛脚問屋。荷物やお金を運ぶのがお仕事。
・大切な荷物の封には印が押してあって、これを勝手に破るのは超重罪。 
・傾城・梅川の身請をめぐり、八右衛門と忠兵衛が張り合っている。(梅川は圧倒的に忠兵衛が好き。)


■私はこう見た!ここが好き!


いやもう、何せテンポがいいので初っ端から引き込まれてしまうんですよ。 

忠兵衛仁左衛門さん)のいい男ぶりはもう花道から匂い立つよう。
「いい男」といっても強そうでは全くなくて、むしろ頼りなさそうな、憎めないかわいらしさがあるというか、「ほっとけない」感じでしょうか。

それを迎える女将のおえん片岡秀太郎さん)の軽口も楽しい!
ふわっとしていて、手慣れた感じで、そっと笑わせてくれます。
下駄の音も心地よいです! 

おえんと忠兵衛のやりとり、いいですねぇ。
忠兵衛も来慣れているのがよく分かるくらい、二人の間のぽんぽん投げ合う会話が調子良くて好きです。


梅川片岡孝太郎さん)との二人の逢瀬の場面、これもまた二人の間に流れる空気がとても良くて、わざと冷たくする忠兵衛もかわいらしい。

そんな楽しい場面なのですが、きまって形を見せるところは美しいのです。こりゃ惚れるわ。。


八右衛門片岡愛之助さん)とのやり合い、これは口だけでいったら八右衛門が強い!
勢いに飲まれます。まくし立てる八右衛門、見事に嫌なやつ!笑

でも周りはみんな忠兵衛推し。
だから別に忠さん、無茶しなくても良かったのに…と思ってしまいます。

いや、でもここ、本当にすごいなと思ったんですよ。

八右衛門と忠兵衛のやりとり、本当に他愛もないものなんです。
八右衛門の難癖なんて正直「子供か!」という感じだし、それにむきになる忠兵衛もまた「こいつもやっぱり頼り切れないんだよな~」と思わせてしまう。

そんな大人げないやりとりだったのに、気付くと忠兵衛が、どうしようもないところに追い込まれている


顔面蒼白の忠兵衛の手元からばらばらと零れ落ちる金貨の輝き…えぐいです。。

***

細かいところですが、忠兵衛が店を訪ねるとき、中で梅川が「畳算(たたみざん)」をしているんですね。
かんざしをとって、畳の上に落として、落ちたところから縁までの畳の目の数で占うものなんですが、
この振り、踊りに非常に良く出てくるのです。
実際にかんざしでやっているのを初めて見て、「これか!」となりました。

やっぱり歌舞伎を観ると、踊りへの理解が深まって嬉しい!
なくなってしまった風俗的なものを見られるのも、歌舞伎の好きなところです。



■まとめ


筋書で、仁左衛門さんが「悲劇の場合、前半を明るくして、後半の悲劇を際立たせる」とおっしゃっています。(p.63)
そのお言葉通りの舞台でした。

前半に力を抜いて観ていた分、忠兵衛が封印を切ってしまって血の気を失うところ、こちらも緊張で指先が冷たくなりました。笑

上方ならではであろう言葉のやり取りの面白みや勢い、柔らかさを存分に味わえるのも魅力です。

「石切梶原」で思いっきり時代物を堪能したあとにこれが待っているという、今月の昼の部の満足感たるや。
筋書にはこの二つの演目を比較した葛西聖司さんの文章も載っていて、とても興味深かったので、そちらもおすすめです!

 
プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇5年目。このご時世でなかなか劇場に通えず悶々とする日々。
◆着物好きの友人と踊りの師匠のおかげで、気軽に着物を着られるようになってきた今日この頃。

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