ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

2020年01月

「連獅子」初心者はこう楽しんだ!〜壽 新春大歌舞伎(令和2年歌舞伎座) 夜の部感想


行ってまいりました、新年の歌舞伎座です。

劇場前は新春らしい雰囲気!

【修正済み】新春芝居前

気持ちが高まります。いいですね。

***

さて、新年の歌舞伎座。いろいろ観ましたが、今月はこれに極まるかもしれません。

夜の部二幕目、市川猿之助さんと團子さんの「連獅子(れんじし)

正直、連獅子で泣いたのは初めてです。
こんなにドラマティックな連獅子はなかなかないのではないでしょうか。

最近何かといろんな機会に目にすることが増えてきた連獅子。
ブログの更新は遅くなってしまったのですが、あまりに良かったので、この機会に何とか!と思い、あまり歌舞伎を観ない友人にも薦めまくりました。笑
 
千穐楽を過ぎてから言うのも憚られますが、普段歌舞伎を観ない方が初めて出会った連獅子が今月だったとしたら、きっといい出会いになられたのではないかと勝手に思っております…!(誰目線)
 

 
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今月のポスター。右下に連獅子が見えますね。
左(白)が市川猿之助さんの親獅子、右(紅)が市川團子さんの仔獅子です。


■初心者でも楽しめるのか?


楽しめると思います。

後半の毛振り(紅白の毛をぐるんぐるん振るところ)がよくクローズアップされるので、どうしても「毛振り待ち」みたいなところがある演目なのですが、
実は毛振りは後半も後半で、バランス的には毛を付けていない前半の踊りが長めなのです。

そのため前半で飽きてしまうこともあるかと思うのですが(私も話を知るまではそうでした)、特に今回の連獅子、前半がめちゃくちゃいい

後述しますが、親子の表情に連獅子の物語がぎゅぎゅっと詰まっていて、踊りもすごい迫力で、胸躍らせながら観ました。

★ストーリーと見どころはこの記事にざっとまとめてあります。 


■私はこう見た!ここが好き!


最初から格調高くてとても素敵なのですが、特にぐっときたのは、親獅子(市川猿之助さん)と仔獅子(市川團子さん)それぞれの一人踊りが終わったあたりからです。
※正式にはこの段階では、役名は親獅子と仔獅子ではなく、狂言師右近と左近なのですが、分かりやすさ・伝わりやすさ重視でこのまま行きます。

親は仔を谷底に突き落とし、登ってくることができた仔だけを育てる、という言い伝えを踊りで見せていくところなのですが、ここがとにかくものすごくエネルギッシュ

今回の連獅子は、澤瀉屋(猿之助さんの屋号)の振りがついていて、普段よく目にする連獅子よりも振りの手数が多いそうです。
確かに見ていて、足の細かい動きの多さ、動きの激しさに驚きました。
そういう演出面での違いというのは、もちろんあると思います。

しかし、それだけでない気迫というか、痺れるような緊張感があったような気がします。

私が衝撃を受けたのは、縋り付く仔を親獅子が振り払う手の強さです。
決して妥協はしない、という親の覚悟のようなものが、びしりと払う手先から感じられました。
舞台から最も遠い4階で観ていたにもかかわらず、自分が振り払われたかのような衝撃。
 
対する仔も必死です。
仔獅子はとにかく振りが多く、常に何かしら動いているのですが、忙しく見えないのはきちっとしていたからなのかなぁと思います。

そしてこの親子の激しいやりとりが、後の再会を引き立てるのです。

仔が一度谷に落ち(花道が谷底に見立てられます)、なかなか登ってこないのを心配する親。
ここの猿之助さんの表情。
「登り得ざるは臆せしか あら育てつる甲斐なやと」の歌詞が沁みます。

それぞれの位置から、谷を流れる川の水面をのぞきこむ親子。
水に映ったお互いの姿に気付き、親の姿を目にした仔は奮起、谷から駆け上がってくるのですが、

ここ!ここの仔獅子の!誇らしげな表情!!!親獅子の安堵の表情!!!!

もう二人が舞台中央で再会したときは、思わず全力の拍手をしておりました。
良かった、良かったよ…!!!

私は連獅子のここが一番好きなんです。いっちばん好きなんです。
その一番好きなところを、こんなに濃密に踊ってくださるのを観ることができて、歌舞伎を好きになって良かった、この舞台を観にきて良かったとひたすら感謝でした。

ここからの二人で踊るところ。
親子が再会できたこと、仔獅子は自らが成長できたこと、親獅子は我が子が逞しく頼もしく育っていることに対する喜びがあふれていて、観ているこちらも思わず笑顔になってしまいます。

何せ踊りのキレの良さがあるからこそ、表情にも注目できるんですよね。

「宗論」と呼ばれる楽しい部分を挟み、いよいよ毛振りです。
「連獅子は前半が大好き」と言ってはいますが、やはり毛振りは迫力があって、テンションが上がります
軽快な音楽にも心を煽られますね!ここの太鼓の音が最高に好き…

どっしり構えた猿之助さんの貫禄と、團子さんの勢いが、そのまま親獅子と仔獅子の役柄に表れているようで、見事でした。


■まとめ


連獅子は、何度も書いていますがとてもドラマのある舞踊で、曲も動と静のバランスが素晴らしく、太鼓・大皮・鼓の作り出す緊張感や盛り上がりも素敵なので、割とどの役者さん(舞踊家さん)がやってもそれなりに満足して観られてしまうところがあります。

しかし、今回の連獅子はちょっと凄かった。
何度も観たはずの舞踊なのに、ぐいぐい引き込まれてしまう強さがありました。

古典の歌舞伎や舞踊は、同じものを何度も何度も上演するわけですが、「あの演目は一度観たからいいや」とならない理由はここにあるな、と。
知っている演目でも、役者さんによって全然違うし、いつだって新たな発見や感動に出会える可能性があるんですよね。。


ちなみに今回の澤瀉屋の型は初めて観たのですが、見慣れた連獅子と大きく違うのでとても興味深かったです。
おそらく他の型もあると思うので(すでに習っている流派は振りが違う)、いろんなものを観ていきたいと思います。 
 

満足!!

 

「大浮世絵展」(@江戸東京博物館)に行ってきました!


喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳。

教科書で必ず習う有名な絵師5人を一気に見られる展覧会、江戸東京博物館の「大浮世絵展」

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チラシからしてこのわくわく感!

これは!べらぼうに面白かったです!!
今週末・1月19日(日)までなので、ご興味のある方はぜひ!何とかご都合をつけて!!いらしてみては!!!!
 
浮世絵初心者はもちろん、文化史の詰め込みにあっぷあっぷな受験生にもぜひ足を運んでみてほしい(無責任)
というか自分が受験生のときに行きたかった…!!

何が面白いって、この5人の特徴を、自らの目で感じることができるところなんです。
以下、つらつらと感想をば。

***

まず最初にやってくるのは喜多川歌麿ゾーン

描かれているのは女性のさりげない場面なのですが、どれもこれも「この場面ってそんなに美しかったっけ?!」という感じ。
うつむいたり振り返ったりする首の角度とか、体の傾き、手の表情…ちょっとしたところに見事に色気が出ます

かの有名な「当時三美人」が見られたのも大きな喜びですが、一番印象に残っているのは「青楼十二時」
吉原の遊女たちの様子を、一時ずつ時間の移ろいと共に描いたものです。
画面の細かいところに注目すると、いろいろ物語が見えてきて興味深い作品でした。

***

そこを抜けると、一気に雰囲気の変わる東洲斎写楽ゾーン
あの!謎だらけの写楽の作品が!イッキ見できちゃう!!!

写楽と言えば役者絵。
まだ観たことのない演目も多いのですが、知った名前があったり、「こんな雰囲気かな」とイメージできたりするとより面白い!
教科書や資料集で漫然と見ていたあの絵が、どれほど役者のリアルを描いたかというのが分かる気がします。

というのも、写楽の役者絵は表情がとても豊かなんです。
解説にどんな場面かちゃんと書いてくれてあるので、想像もつきやすかった。

写楽は役者の特徴を誇張して描いたために嫌がられた、みたいな話を聞いたことがありますが、必ずしも悪い誇張ばかりでもなかったのではないかと。

その役の、ここぞというところの心情が絵に表れていて、当時の人が見たら今よりもっと面白かっただろうなぁと思います。

***

楽しい写楽ゾーンを抜けると、目に飛び込んでくるのはベロ藍の鮮やかな青。

やって参りました、葛飾北斎ゾーンです。

北斎は「富嶽三十六景」と、花鳥図数点が中心でした。
(個人的には動物画とか晩年の大作とか欲しかったですがまぁそこは)

細かな描き込みと、構図の妙というのがやっぱり魅力的だし面白いところ。

割と見たことがあるものも多く、さらっとまわってしまったのですが、それほど大きくない絵でも波や滝の迫力を失わないのは凄いと毎度思います。

そして花鳥図の写実!生命力を感じます。特に百合の絵がお気に入りです。

***

北斎の「富嶽三十六景」といったら、次にこれを出さないわけには行かないでしょう。

そうです、歌川広重です。

広重ゾーンは「東海道五十三次」をはじめとする風景画が主になっています。

いやぁ繊細ですね~!
遠景の霞み、雪の濃淡…見入ってしまう作品がたくさんありました。

同じ風景画でも、北斎とは全然趣きが違う
続けて見ることができたからこそ、より違いがはっきりと感じられます。

中でも好きだったのが、「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」。ゴッホが模写したのでも知られる、有名な一枚です。
満開ではないからこそ一輪一輪が可愛らしい梅の花、加えてノスタルジックな色合い、遠景の様子、最前面にどーんと存在しながら主張しすぎない梅の枝のバランス…いいですよねぇ。

会場内は混んでいましたが、これは何としても近くで見ておかねばならないと(私にしては珍しく)粘りました。
そういう惹き寄せ方をしてくる作品でした。 

***

心落ち着く広茂の風景画の世界を抜けると、一気に眼前に広がる色鮮やかでマンガチックな世界。

はい、みんな大好き歌川国芳ゾーンです。

国芳作品はどれも文句なしに楽しいですね!

色鮮やかに、画面いっぱいに広がる迫力ある武者絵があるかと思えば、金魚やら猫やら雀やらが人間のように生活していて…
アイディアと遊び心とが溢れていました。

国芳と言えば猫と擬人化、と思っていたのですが、私は国芳のくの字も知らなかったと言っていいでしょう。
「水滸伝」や金太郎、大きな骸骨、相撲…
「目に飛び込んでくる」という表現がぴたりとはまる強烈なインパクト、その躍動感!
わくわくしてしまう絵の何と多いことか!!

これは現代人にも莫大な人気を誇る理由がよく分かります。

***

こうやって並べてみると、絵師それぞれの魅力が分かりやすくて嬉しいですね!
言葉では一口に「浮世絵」とまとめられてしまうけれど、その中身はこんなにもバラエティ豊かで、いろんな切り口があったんですね。 

「写楽は大首絵と言われる役者絵を…」とか「歌麿の美人画が…」とか、そういう知識の丸暗記では決して得られない体験。

浮世絵の美味しいところをぎゅぎゅっと詰め込んだような展覧会でした。楽しかった!!!

 
「大浮世絵展」は両国の江戸東京博物館・1階 特別展示室にて、1/19(日)までです。

休日に行ったところ、1階のチケット売り場はかなり混雑していました。3階にもチケット売り場がありましたので、そちらの方が空いているかもしれません。

また、会場内もとても混雑しています。順路にこだわらず、比較的空いているところから見た方が楽しめるかと思います。

日本舞踊好きが「日本舞踊が好き」と語るだけの記事


ここしばらく年末年始休みで踊れておらず、寂しさが募るばかりです。。
私はまだまだ基礎が固まっていないので、下手に自主練をして変な癖がついてしまっても良くないのです。。
早くお稽古始まってくれー!!!

というわけで!!!

想い溢れて日本舞踊が好きだということを語るだけの記事を書きました。笑

***

日本舞踊は、まず音楽がいいんですよ。

華やかな三味線があって、唄(語り)があって。そこにお囃子が入って。

私はお祭り的な音が好きなので、特に太鼓やら笛やら大皮やら鼓やらが聞こえるとうずうずします。
矢も楯もたまらなくなります。

お稽古で使うような録音された音源でもわくわくしてしまうので、生音だともうどうしようもありません。
公演を観に行けば客席で思わず笑顔になってしまうし、自分が踊るときは俄然テンションが上がります。

何なのでしょうかね、この血が騒ぐ感じはもはやDNAレベルのものなのか…家族は誰も踊らないんですけどね…。


で、さらに嬉しいのは、音楽がワンパターンで終わらないというところなんです。

西洋音楽でもA→B→A'→Cみたいな(適当です、すみません)曲の展開のパターンってあると思うのですが、
踊りに使われるような音楽が面白いのは、このAとかBとかが全く違う曲のようになっているところなんです。

つまり、一曲習う中で何曲も踊っているような気持ちで楽しめちゃうんですね!!


例えば、この記事で感想を語っている日本舞踊の代表曲「藤娘」

私が一番好きなのは、後半の 〽︎松を植よなら〜 というところで、ここは「踊り地」と言われる華やかな曲調のところなんです。
賑やかで、振りも比較的速いテンポで、かつ大きく踊っていく。
お扇子を持たずに、手踊り(素手の踊り)で調子よく踊ります。

ですが、同じ「藤娘」の中には 〽︎男心の憎いのは〜 という歌詞で始まる(いかにも大人の女性っぽい感じの)「クドキ」と呼ばれるところもあって、
ここは全然違うしっとりした曲調に合わせて、手ぬぐいを使いながらじっくりねっとり(?)踊るところなんです。

つまり一曲の中で、曲調も、それに伴って踊り方もがらっと変わるわけです。
それって楽しくないですか?!(唐突)

だって楽しい踊りも好きですが、自分のキャラじゃないようなしっとり女性らしい踊りも憧れるんです。
それを一度に楽しめちゃうなんてもう、最高じゃないですか。。(語彙力)

一曲踊る中で何度も「あぁ踊りが好きだなぁ」と感じられるっていうことですよ。最高ですよね。(語彙力)

***

日本舞踊のもう一つ好きなところは、この「いろんな曲調が楽しめる」ということにも通じていると思うのですが、とにかく何にでもなれるというところなんです。

女の踊り一つとっても大人の女性だけでなく、幼い女の子の踊りがあり、もう少し年齢が上がって思春期くらいの女の子の踊りがあり、さらにおばあさんを踊るときもあります(こちらは未体験ゾーン)。

職業で見ても、子守、物売り、お茶屋の娘、、いろいろ工夫ができるのです。


しかも、それが女に限りません。女性だって、男を踊れるのです。

私はこの男の踊りがめちゃくちゃ好きなのです。

初めて男の踊りを教えていただいたのは、3年目のころ。
先輩の踊る男を観てきて、全身を大きく伸びやかに使う男の踊りは何て気持ちが良さそうなんだろう、そして何てかっこいいんだろうと憧れていたのでした。

実際やってみると、女の踊り以上に太ももがきつくて、しんどい割に全然かっこよく踊れないのですが(笑)、やっぱり気持ちがいい。
大きく体を動かすと、何だか精神的にも解放されて、ストレス解消になっています。

かっちりとした品格ある踊りから、大らかでたくさん動く踊り、ちょっと芝居がかった遊びのある踊り、迫力あるかっこいい踊りなど、こちらも様々。

だから、観るのもやるのも楽しくて仕方ないのです。

***

そうなんです、観るのも大好きなんです。
お稽古場で他の方のお稽古を見るのも、舞踊家や歌舞伎役者の方々の踊りを舞台で観るのも。


他の方のお稽古を見るのは、「いつか自分もこれを踊りたい!」というのに出会える貴重な機会です。
好きな振付であったり、表現であったり、曲調であったり。

一方プロの方々の踊りは、もう純粋に気持ちが良い
「うわぁ何であんなに小気味好く体が動くんだろう」「今の一瞬の間にぞわっとしたなぁ…」と感動の連続。
音楽のライブと同じで、いい踊りのあとは拳を突き上げてぶんぶん振り回したいくらい熱くなります!!
(日本舞踊の公演でもそういうリアクションがあっても良いのでは。。笑)

音楽の楽しみに浸りたいからライブに行く。日常を忘れるくらい笑いたいからお笑いのライブに行く。
踊りを観に行くのは、そういうのと全く同じ感覚なんです。
スカッとした気持ちになれるから、私は踊りを観るのが好きなんです。


理由などいりません、踊りは楽しくて心が動けばそれでいい!

***

本当にただ語り散らかすだけの記事になりましたが、今日は踊りが大好きであることがお伝えできたら良かったので、この辺で筆を置きます。

他にももうちょっとましな日本舞踊関連の記事はありますので、ご参考までに…↓

▼▼日本舞踊関連の記事一覧▼▼






物知らずが行く歌舞伎#18〜新春浅草歌舞伎(令和2年浅草公会堂)今の知識と演目選び

この企画は、「知識が足りないから…」と歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方の背中を押すべく、
歌舞伎歴2年の初心者が何をどのくらい知っていて、何を目的に観に行くのかをさらけ出す企画です。
初心者の無知っぷりと、この2年でちょっと学んだことを、背伸びせず、恥ずかしがらずにお伝えできればと思っています。


年末年始休みにつき、全力で更新しております。笑

新年はとにかく、いつも以上に歌舞伎公演が多い!
まだ遠征はしないワタクシ、専ら都内でしか観劇しませんが、今年は歌舞伎座に加え、新春浅草歌舞伎、国立劇場新春歌舞伎公演に足を運ぶ予定です。
(新橋演舞場は諦め。本日時点で1等以外は売切でした。「鈴ヶ森」と「め組」は観たかったのですが…)

今回は浅草公会堂で行われる「新春浅草歌舞伎」について、「こんな感じで観にいきますよ〜」というのをお伝えできればと思います。

ちなみに新春浅草歌舞伎は、若手の役者さんたちが主になって行われる公演です。
公演前に日替わりで役者さんがご挨拶される「お年玉」という大きなお楽しみがあるのが嬉しい!

新春を迎えた浅草の雰囲気が味わえるのも良いところです。

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写真は去年の浅草公会堂の様子。華やかですね〜!



■浅草公会堂 新春浅草歌舞伎の演目は?


令和2年の新春浅草歌舞伎、演目は以下の通りです。

【昼の部】
一.花の蘭平(はなのらんぺい)
二.菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
 寺子屋
三.茶壺(ちゃつぼ)

【夜の部】
一.絵本太功記(えほんたいこうき)
 尼ヶ崎閑居の場
二.仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
 祇園一力茶屋の場


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


【昼の部】


「寺子屋」は何度も観ている演目です。
直近では昨年の秀山祭、中村吉右衛門さんの名演が記憶に新しいところ。(この記事

「茶壺」も、映像で何度か観ています。楽しい舞踊の演目です!

「花の蘭平」は、歌舞伎「蘭平物狂」が元だろうとは思うのですが、この「蘭平物狂」が分からないんですよね。笑
 

【夜の部】

「尼ヶ崎閑居」も去年、歌舞伎座でかかりました。ちょうど一年前になるのですね!(この記事

「祇園一力茶屋」は、名前ばかり知っていて、とても有名なのも分かっているのですが、残念ながら内容が分かっておりません。。


*現時点で知っていることは?


◇菅原伝授手習鑑(寺子屋)


以前大まかにまとめたものを再掲します↓

------ 

「忠義のために我が子の命を犠牲にする」という、浄瑠璃に非常によく見られるお話の流れです。

ものすごくざっくり書きますと、

舞台は藤原時平(しへい)vs菅丞相(かんしょうじょう)という時代にあります。
時平側は菅丞相の息子・菅秀才(かんしゅうさい)の命を狙っており、これを避けるために菅秀才は田舎の寺子屋に匿われています。(※この辺りの設定は、特に芝居の中では触れられないはず。)

しかし実はこの居場所がすでにバレており、寺子屋を営む武部源蔵(たけべげんぞう)夫婦は、菅秀才の首を差し出すように命令されているのです。

何としても菅秀才の命は守らねばならない源蔵。

折しも今日、この寺子屋に新たに入門してきた男の子がいました。
ちょっとこの辺りでは見ないような、品のある顔立ちをしています。

そうです。
「菅秀才」と偽ってもおかしくないような雰囲気をたたえているわけです。
 
源蔵夫婦、苦渋の決断でこの子を身代わりにして、首を差し出すのです。

首実検にやってきたのは、時平に仕える松王丸。
差し出された首を見て(この「首実検」が見せ場!!)、子細ありげな様子を見せながらも「相違ない」と、この首が菅秀才の首であることを認めます。

しかし、歌舞伎において首が本物であることなんてほぼなく。笑

さてこの首の正体とは、松王丸の隠している真実とは、というところに大きなドラマがあります。

最後の「いろは送り」と呼ばれる部分が名文なので、ぜひ浄瑠璃にも耳を傾けてみてください。

【関連記事】
「団子売」「菅原伝授手習鑑」(文楽鑑賞教室@国立劇場)観てきました!
 「寺子屋」初心者はこう楽しんだ!〜秀山祭九月大歌舞伎(歌舞伎座) 夜の部感想
 

◇茶壺

狂言が元になっている、楽しい舞踊です。

主人の命で茶の買い付けに行ってきた田舎者の麻胡六は、酒に酔っ払い、あろうことか道端で居眠りを始めてしまいます。
そこにやってきた盗人の熊鷹太郎、この麻胡六の茶壺を盗もうと目論見ますが、そこに目代(代官)が通りがかり、この二人の茶壺の取り合いを仲裁し始めて…という流れ。

この麻胡六と熊鷹太郎のやり合いが面白い!
特に、後半の二人の連舞いが大きな見せ場です。リズムの良い踊りに観ていて楽しくなること請け合いです。


◇絵本太功記(尼ヶ崎閑居)

主君を殺してしまった武智光秀(=明智光秀)と、その運命に巻き込まれる家族たち、光秀の苦悩が描かれる場面です。
光秀は途中からの登場ですが、この場面における主人公は、光秀と言っていいと思います。

事前にこのくらい分かっておいたら楽かなぁ、というのを以前ちょこっと書いていたので、ちょっと編集しつつ再掲します↓

------

まず物語の前提として、「武智光秀vs真柴久吉(=羽柴秀吉)という構図があり、
その原因となっているのは「光秀が主君である小田春永(=織田信長)を討った」ということ。
久吉は春永の仇を討つために、光秀を追っているのです。 

加えて最低限分かればいいのは、舞台に出てくる人々の人間関係かと思います。

皐月(母)
 |
光秀=操(妻)
  |
 十次郎(息子)=初菊(息子の許嫁)


という血縁関係です。

このうち、光秀以外の人が前半の物語を進めていきます。 

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織田信長と明智光秀、豊臣秀吉が名前を変えて登場するお芝居です(この場面に出てくるのは秀吉と光秀のみ)。
「直接名前を出せないのでちょっとひねりました」パターン、歌舞伎でよく見る気がします。

【関連記事】「絵本太功記」初心者はこう楽しんだ!~壽 新春大歌舞伎 夜の部感想


■観てみたい演目と気になるポイント


今年の大河ドラマは明智光秀とのこと、光秀が出てくる「絵本太功記」はタイムリーかもしれませんね!(先日「にっぽんの芸能」(番組についてはこの記事でも取り上げられていました。)

「忠臣蔵」も、有名な場面にも関わらず私は観たことがないので、本当は観ておきたいところ。

と言いつつ、
舞踊大好きな私がチケットを取ったのは昼の部でして。。

「茶壺」が楽しい舞踊だと知っていればもう、行かないわけにはいかないのです。笑
まして麻胡六と熊鷹太郎が中村歌昇さん坂東巳之助さんとあっては。巳之助さんの熊鷹太郎は特に楽しみです。

「花の蘭平」も舞踊とのこと。中村橋之助さんの踊り、じっくり拝見したことがなかったかと思うのでとても楽しみ。
橋之助さんは、今年の日本舞踊協会公演にもご出演ですね!(公式サイトはこちら

「寺子屋」は繰り返し観ていますが、何度も観て初めて役者さんの芸を味わえるようになっていくのかなぁと思います。
尾上松也さんの松王丸、きっと熱いんだろうなぁ。。


■まとめ


縁あって、浅草歌舞伎は歌舞伎に本格的にはまる前にも一度足を運んでいます。
まだ右も左も分からなかったのですが、役者さんの年始のご挨拶(「お年玉」)がとても面白く(その時のご担当は坂東巳之助さん)、演目も分かりやすく楽しくて、大満足で帰ってきたのでした。

そんなわけで、きっと新春浅草歌舞伎は親しみやすい公演なのではないかと思うのです。

年がら年中大混雑の浅草、年始はいつも以上にごった返していますが、それもまた風物詩の一つ。
なんとなくおめでたい気分になれるので不思議です。

と言って人混みは大の苦手なのですが。笑
今年も浅草の活気に身を委ねてこようと思います!



物知らずが行く歌舞伎#17〜壽 新春大歌舞伎(令和2年歌舞伎座)今の知識と演目選び

この企画は、「知識が足りないから…」と歌舞伎への第一歩を踏み出せずにいる方の背中を押すべく、
歌舞伎歴2年の初心者が何をどのくらい知っていて、何を目的に観に行くのかをさらけ出す企画です。
初心者の無知っぷりと、この2年でちょっと学んだことを、背伸びせず、恥ずかしがらずにお伝えできればと思っています。


明けましておめでとうございます!
本年も、みなさまにとって素晴らしい一年になりますようお祈り申し上げます。

さて!新年早々2日から、各所で初芝居の幕開けです。早いっ!!!

ぎりぎり幕が開く前に、新春一発目の物知らず更新です。(もはややる意味)
 
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■歌舞伎座 壽 新春大歌舞伎の演目は?


1月の歌舞伎座。
演目は以下の通りです。

【昼の部】
一.醍醐の花見(だいごのはなみ)
二.奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)
 袖萩祭文
三.新歌舞伎十八番の内 素襖落(すおうおとし)
四.河内山(こうちやま)
 松江邸広間より玄関先まで

【夜の部】
一.義経腰越状(よしつねこしごえじょう)
 五斗三番叟
二.澤瀉十種の内 連獅子(れんじし)
三.鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)

夜の部最後の「鰯賣戀曳網」、旧字ばかりでちょっと読みにくいですね。。
あとは「言われてみればまぁそう読めるよね」というものばかりではありますが、漢字が並ぶのでちょっとハードルが高いように見えます。
読んでしまえば「あぁそうだよね」となりますが(2回目)


■各演目について、現時点での知識


*そもそも知っている演目はあったのか?


【昼の部】


「素襖落」と「河内山」は、いずれも歌舞伎座で観ました!
が、まさかの感想がブログに上がっていない…よって過去の自分がどう捉えたかがいまいちはっきり思い出せない。笑

あとの二つは初めて見る名前だったはずです。
 

【夜の部】

「連獅子」以外は初めましてですね…。

***

新年早々なかなかの初心者感が出ていて誇らしい限りです。笑
筋書を買って、向こうで予習しつつ観劇する予定です。

 

*現時点で知っていることは?


◇素襖落


何だか割と最近これを書いた気がします…いつだったか…。
観たのは一昨年11月だったかと思います。尾上松緑さんの太郎冠者、ふふっと笑いました。

狂言が元になっている演目です。

主人から使いを頼まれた太郎冠者、使いの先で散々酒をふるまわれた挙句に素襖まで与えられ、上機嫌で帰宅。
大事の素襖を主人に取られまいと必死に隠すのですが、そこは酔っ払いのすることなので、もう先の知れたことですね。笑
酔っ払い具合が愛嬌とおかしみを生む、楽しい演目だったと記憶しております。
 

◇河内山

これ、観てはいるのですが筋をほとんど覚えていないんですよ。。
最後の河内山宗俊の捨て台詞「馬鹿め」があまりにも印象的ではあります。笑

確か河内山宗俊が、実際の身分とは違う偉い坊さんであると自らを偽って(半ば金目当ての)交渉に出向き、 見事に成功したかに見えた矢先に、黒子で正体がバレるという流れだった気がする(うろ覚え)

面白みを理解しないままあらすじだけ伝えることのつまらなさたるや。。作品殺しにもほどがありますね、申し訳ない。。 

初心者の観劇の記憶はこんなもんなんです、というところがお伝えできれば(逃げ腰) 


◇連獅子

最近よく出ている舞踊「連獅子」。
11月には松本幸四郎さん・市川染五郎さん親子の連獅子がかかりました。

以前ちらっとまとめてみたのを、ほぼそのまま引用させていただきます。

------ 

能「石橋(しゃっきょう)」が元になって作られた舞踊です。
とりあえず、次のストーリーが分かれば楽しめるはずです↓

●獅子を手に持って踊るところ

霊地・清涼山にあるとされる石橋の由来を語っていきます。

●獅子を置いてから

親獅子は、仔獅子を谷底に突き落とし、自力で登ってこられた仔だけを育てます

ここでは、

・無邪気に遊んでいた仔獅子が、親に突き落とされ、縋りつこうとするもやはり力尽きて谷底へ
・なかなか登ってこない仔に気を揉む親
・谷に流れる川の水面越しに、親子の目が合う!仔獅子、一念発起!!
・懸命に駆け上がってくる仔獅子と親獅子の感動の再会

というようなストーリーが展開されます。

「連獅子」といえば毛を振るところが有名ですが、私はここが一番ドラマティックだと思います。

●宗論

一旦二人が花道から引っ込み、新たに獅子の拵えで登場するまでの間を、狂言がつなぎます。
どっちの宗教の方が秀でているかを言い争う「宗論」 と呼ばれるところで、これは知らなくても聞き取れるのではないかと思います。楽しいところです。

で!ここから獅子が出てくるまでの音がかっこいいのでぜひ聴いてください!! 

●毛振り

何も考えずに観て楽めばよいと思います(ざっくり)

------

今回は「澤瀉十種の内」とあるので、見慣れたものとは演出が少し違うのかもしれません。それも含めて楽しみ。

個人的に踊りが好きな市川猿之助さんの親獅子と、市川中車さんのご子息・市川團子さんの仔獅子です。


■観てみたい演目と気になるポイント


まず「連獅子」は観ておきたい!
それはもう、連獅子が好きだし踊りが好きだし、猿之助さんがどう踊られるのかを観たいからです。

それから、中村勘九郎さんが久しぶりに歌舞伎座にご出演とあって、「醍醐の花見」「袖萩祭文」「鰯賣」は(少なくともどれかは必ず)観たい。
ちなみに「鰯賣」の禿役は、勘九郎さんのご子息・勘太郎くん長三郎くんが、それぞれ偶数日・奇数日にご登場。こちらも楽しみの一つです。

「醍醐の花見」はどのような演目か知らないのですが、歌舞伎総合公式サイト「歌舞伎美人」によれば舞踊劇とのことで、踊り好きとしてはたまらないですね。笑
「勢獅子」この記事や「お祭り」この記事で渋かっこいい踊りを堪能した中村梅玉さんはじめ、キレのある踊りが大好きな中村芝翫さん・勘九郎さん
最近ナウシカ歌舞伎のクシャナで巷を賑わわせた中村七之助さん、若手の踊り上手と言えば!な中村種之助さん・鷹之資さんなど、個人的に「この方が踊るなら観に行く!」という配役です。

「素襖落」中村吉右衛門さんの太郎冠者に中村又五郎さんの大名、中村雀右衛門さんの姫と豪華な布陣
「河内山」「五斗三番叟」松本白鸚さんが主演で、いずれも重厚感ある舞台になりそうだなぁとうずうずしております。


■まとめ


今月の歌舞伎座、何をいつどう観に行こうか決めきれないまま、先に「新春浅草歌舞伎」と国立劇場の「初春歌舞伎公演」のチケットを取ってしまっております。。
(※浅草の3等席は3,000円、国立にいたっては2等B席でも2,800円と気軽な値段設定なので、こちらもおすすめ!!!)

しかし!

歌舞伎座、やっぱり観たい演目だらけですっ!!!

新年早々スケジュール調整に難渋しておりますが、今月しか観られない貴重な舞台の数々、何とか後悔なく観に行けたらと思います。

***

1年半ほど続けております本ブログ、どなたかのお役に立てているかいないか分かりませんが、本年も地道に続けていこうと思います。
相変わらずマイペースな更新になるかと思いますが、自分自身の「好き」と全力で向き合っていく所存です。

本年もどうぞ宜しくお願いいたします!



プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇5年目。このご時世でなかなか劇場に通えず悶々とする日々。
◆着物好きの友人と踊りの師匠のおかげで、気軽に着物を着られるようになってきた今日この頃。

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