ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

雑記

「どうして歌舞伎が好きなの?」への答え。

先日、「あなたは何で歌舞伎が好きなの?」と聞かれて
返答に詰まってしまいました。

えぇ…何でだろう…笑

「好き」を説明するって、難しいですよね。
その場では上手くまとまらず、うやむやにしてしまったので、
ここで少し考えてみました。

***

まず、
私は特定の役者さんを贔屓にして、
その感情を表に出す、ということが苦手です。

もちろん演目を選ぶときは、
どなたが出るのかに大きく影響されますし、

観ている中で特定の役者さんに圧倒されたり、
惹かれたりすることだってありますし、
 
初めて自分で観にいった歌舞伎も一番の目的は
「仁左衛門さんの当たり役をみること」だったのですが、
 
できる限り役者さんに引っ張られ過ぎないようにしています。

なるべく自分の目で、フラットに、
自分だけの価値観を作って
自分だけの感想を持てるようになりたいと思っているからです。 

盲目的に流されるようなことは避けたい。
ちゃんと軸を作っていきたい。 
(何かにはまると一直線になってしまうのを自覚しているので笑) 

だから、「●●さんが好きだから歌舞伎が好き!」というわけではないのです。

***

「伝統文化好きだよね」と言われることもありますが
「伝統文化」だから好きなわけでもありません

何百年も伝えて、芸能を守り続けてきたことには素直に頭が下がる。

でも、歌舞伎にしろ文楽にしろ、
私は「伝統文化」だと思って観ていません。

確かに多少言葉が分かりにくくて、
時代背景も全然現代ではありませんが、
かっこいい、かわいらしい、
可笑しい、悔しい、悲しい、
そういう感情は何も変わらないと思うし、
素直に心が動きます。

歌舞伎や文楽からは離れますが、
最古の歌集と言われる『万葉集』だって、
今からあれだけ時が遡るのに
ものすごく純粋に胸を打つ。
学生時代、特に万葉挽歌(悼む歌)に触れるたびに
いつも涙が出そうでした。

遠回りしてしまいましたが、
何が言いたいかというと、
「伝統文化」と括られるものでも
人間の生の部分は大きくは変わっていないということ。

そしてスーパー蛇足ですが、「古いから内容が分からない」という観点から言えば、
私は人の顔を覚えることと話の展開に予測をつけて理解することが苦手なので、
何なら現代演劇でもドラマでも
背景や人間関係が分からないまま終わることが多々あります。笑

***

では歌舞伎の何に惹かれてしまうのかというと、
たぶんそれは、全部引っくるめたあの空気なんです。

提灯がずらりと並ぶ劇場内、
幕が開く前から囃子が鳴り始めてわくわくを高め、
ついにジャーっと音を立てて定式幕が開いていく。

音楽が賑やかに響き、
揚幕がシャリンと開いて花道を役者さんが歩き、
あんなに客席に近いところでお芝居が始まる。

盛り上がるところはツケがばたばたばたっと鳴って、
舞台上では役者さんたちが、
これでもか!というほど見せつけてくる。

はっとするほど美しい瞬間があり、
人間らしさにぐっとくる瞬間があり、
ずるいくらいかっこいい瞬間がある。 

幕間になれば幕の内側でトンカントンカン舞台を作る音が聞こえ、
また音楽が始まり、わくわくのうちに幕が開く…

華やかで生き生きして、
舞台だけでなく劇場全部を巻き込む、
あの空気に圧倒されて、どうしようもなく血が騒ぐ。

そこに理由なんてないのです。

***

聞かれたときにはうまく答えられなかったけれど、
多分私の「好き」の中身はこんな感じ。

こうやってまとめてみると、
歌舞伎の音響効果ってすごいんですね。
私が音フェチというのもあるのですが笑

今、この文章を書きながら劇場の空気を思い出して
それだけでわくわくできるくらいには、
「歌舞伎が好き」と言えるのではないかと思っています。 

浪費と挫折と再起。私の着物歴②

昨日の記事(こちら)の続きです。

「着物を着ること」に早々と挫折した私。
そんな出だしのつまづきから、
だんだんと着物好きになってきた今に至るまでの話です。

先に結論を申しますと、
着物に積極的になれたのは

・着物を着なければならない回数が圧倒的に増えたこと
・特別じゃない日に着るようにしたこと

が大きかったと思います。


1.お稽古=絶対に着物を着る時間


大学を出てから今のお稽古場に来て、
今まで週1回だったお稽古が倍以上になりました。

日舞のお稽古は浴衣か着物なので、
当然、和服を着る機会も倍以上。
お稽古場には、着方を直してくださる先輩方もたくさんいます。

そういう中で、
「着物を着る」ということ自体のハードルが
徐々に低くなっていきました

やっぱり(半強制的にでも)数をこなすと違います。
「着物を着るってこんなもんなのか!」と、
いい意味で軽く構えられるようになります。

特に、大学時代は基本的には浴衣でのお稽古だったため、
今のお稽古場で着物も着るようになったことで
お稽古に合わせて短時間で着物を着付ける、というのが
とてもいい訓練になったのではないかと思います。


2.「特別じゃない日」こそ着物日和!


これに気付いて、随分気が楽になりました。

着物を特別な服にしてしまうと、
どうしても気負う。
失敗が怖くなる。

合わせ方が間違っていないか、とか、
着方が汚いんじゃないか、とか。 

でも、友達と遊びに行くときや
一人でぶらぶらお散歩をするとき、
何なら家で一日何もしない日だっていい、 
「いつもの日だけどちょっとテンションを上げたい日」
に着てしまえば、失敗したってそれほど恥ずかしくない。

そもそも普段着の着物は
そんなに堅苦しいきまりがあるわけでもなし! 

(ちなみに特別な日の着物の難しさについては
この記事で嘆きました。笑)

たとえて言えば、

一人のときに思いつきで適当な料理を作ってみて、
あんまり美味しくなくても
温かいからまぁいいか!みたいな感覚でしょうか(料理下手)

いろいろな着方や合わせ方を試すのに、
「特別じゃない日」はもってこいなのです。

ここにプラスして、
おしゃれな友人が着物にはまったことも
私には幸いでした。

彼女たちとどんどん着物で出かけ、
その着こなしを見ながら、
ファッションセンスのない自分も
徐々に「かわいいもの」に目が慣れていったというか、
「こういう合わせ方はいいかもしれない」
というのがおぼろげに見えてきたのでした。 

これもやっぱり普段着の着物ですよね。
ちょっと遊びに行こう、というときに
気軽に着物を着てみる。

お互い初心者なので、待ち合わせに遅れたら
「あぁ、着付けに手間取っているな」
とお互いが何も言わないうちに分かります。笑 

格とか季節の柄とかにこだわりすぎずに、
かわいいと思えるもの、
これを着ていると嬉しい、と思えるものを
いつもの気持ちで着る。

一度そう考えられるようになると、
俄然 着物が楽しくなってきました。

正しいか正しくないかではなくて、
好きか嫌いかの軸
で着物を選べば、
出かける前に着物のコーディネートを考えるのも
わくわく嬉しい時間になるのです。

***

そんなわけで、私が着物を楽しめるようになったきっかけは
とりあえず数こなしてみること、
そして着物を特別じゃないものにすること。

そしてごちゃごちゃ考えずに、
まずは好きなものを「好き!」と思って着ること! 

もちろん未だ分からないことの方が多くて、

先日も外してはならないしつけを解いてしまったばかりだし、
京袋帯なるものもついこの間知ったばかりです。

踊りや歌舞伎の公演など「特別な日」には、
まだ着物を着る勇気が出ない。

でも、それでも着物が好きなんです。

着物を楽しむ日々は始まったばかり。
これからどんどん着物を着て、知識を増やして、
今よりももっと気軽に
着物を着られるようになりたいな、と思っています。
 

浪費と挫折と再起。私の着物歴①

着物を「よく着る」ようになってから
たぶん2年ほどしか経っていないのですが、
「着物を着始めたころ」というと、実はちょっと遡ります。

日舞を始めた、大学生の頃。

週に一度のサークルのおかげで、
浴衣を自力で着られるようになったのが嬉しく、
着物も着てみたくなったのでした。

しかし、ここからすんなりと
着物にはまったわけではないんですね。

ここからの日々をざっくりと分けると、
浪費の時期と、
挫折の時期と、
再起の時期とになるでしょうか。

小心者でおしゃれ下手な私の
6年近くにわたる着物との距離を、
2回に分けて語ります。

本日は浪費期と、挫折期のこと。 

ちょっとネガティブな話になってしまいましたが、
今では(まだまだ分からないことだらけではありますが)
着物が大好きになりましたので、

どうか着物を着始めたばかりの方も
この記事だけを読んで不安にならないでください!!笑  


1.浪費期〜着物が着たくてとにかく買いまくる〜


最初の着物は、友人にいただいたもの。
幸い着物好きが身近におり、
お下がりをもらうには不自由しませんでした。

しかし、合う帯が分からない。

それを探すために、
リサイクル着物のお店に入り浸るようになります。

生来のおしゃれ下手なので、
店員さんのアドバイスに頼って
いろいろ買ってみる。

まだどの色が必要で
どの色が足りていないのかも分かっていないので、
この時期は本当にいろいろ買いました。

たくさん買って、たくさん着ようと思っていたんですね。

買ってみては
「今度これを着てみよう!」
「これは合うに違いない!」
と思いつつ、
なかなか着る機会を作れないまま日々が過ぎていきました。


2.挫折期〜正しい着こなしが分からない!〜


さて、いつ着ていくか。
何を着ていくか。

それを考えたとき、ふと思ったわけですよ。

何か着物の格とか季節とか、
全然理解してない!

買う前に気付くべき話ですが、
そういうの、分からないんですよ。

何を分かって着物を揃えていけばいいのかが分からない。

とりあえず「着物を着られる状況を整える」ことに勤しんでしまうのです。

そこで私は、着物屋さんが企画している
着物はじめて講座的なものに行ってみました。

着物の時期と種類、
織りと染め、
訪問着から普段着までの格、
紋の話…等々、

アットホームな空間で、いろいろ丁寧に教えていただきました。
すごく分かるようになった気持ちで帰ってきました。

が、

家に帰って自分の着物を見てみると、

「で、これはどれに分類されるの?」
「結局この着物にこの帯はどこまで出かけていいの??」

と、やっぱり分からないことだらけ。

おまけにファッションセンス皆無ゆえ、
「はたしてこのコーデは合っているのか…?」
というのがいまいち掴めない。(これは今でも)

そんなこんなで
だんだん着物を着るのが不安になってきてしまい、
「着物でお出かけ」のわくわくが
少しずつ遠ざかっていったのでした。

*** 

これが、着物を着始めて
1〜2年のころでしょうか。

あのころ揃えた帯や着物、
うまく活用できなくて、
大して着ないまま売りに出してしまったものもあります

もったいない気もしますが、
それもまた勉強だったんですよね。 

(お金を払わずに着物なんて上手に着られない、というようなお言葉を
幸田文さんの本で読んだ気がするのですが…記憶違いだったら申し訳ない。)
 

*** 

そんな私ですが、
ここ2年くらい、年に何度かは
友人たちと着物で出かけるようになりました。

お出かけの前に、ああでもないこうでもないと
コーディネートを考えている時間が
楽しくて仕方ない。 

着物って楽しい、着物が好き。
そう思えるようになった流れは、
*初心者から初心者への一言アドバイス*

新たに着物や帯を買うときは、
合わせたい着物・帯をお店に持っていくことを強く強くおすすめします!!
特に私のように、あまりファッションに自信がない方は必須ですー!
着物を持ち運ぶのは重いですが、頑張りましょう★

100均×着物!補整用バスタオル篇

着付けにちょこちょこと
100均アイテムを使っています。

今回は、補整用タオルについて。
100均バスタオルの薄さがちょうどいいんです!

こうやって縦に三つ折したら、

IMG_20181106_233012


真ん中をお腹の方にして巻き付けて、
腰紐で止めます。

IMG_20181106_232730
絵心のなさが自慢です。

私はおしりが大きい上に反り腰なので、
着物を着たときに腰の部分がとてもくぼんで
浮いてしまうのですが、
 
この方法で巻くことで
後ろに来るタオルが二重になるので、
ちょうどよく腰の浮きをカバーしてくれます。

うまくすると脇腹のささやかなくびれまでカバーしてくれますが、
お腹周りが太るとタオルの長さが脇腹まで足りなくなります。笑


これが、ちょっといいバスタオルだと
分厚かったり大きかったりで
なかなか上手くフィットしない。

以前は普通のタオルをたたんで
腰のところにだけ当てていたのですが、

これがどうにもいい位置に固定されなかったので
(絶対やり方が悪いだけなんですけどね笑)
100均バスタオルを巻き付ける方法に乗り換えました。

不器用な私でも、補整したい位置からタオルがずれることなく
一人で何とかなっています! 

体の前にもタオルがあるので
固定のための腰紐が食い込まず、痛くありません 
ちなみにここの腰紐に結び目を作ってしまうと
ごろついたり でこぼこしたりするかな?と思い、
2回ほどからげて残りは挟み込んで終わり
にしています。

補整なんてご家庭内にあるタオルで
十分に事足りるとは思うのですが、

私は踊りのちょっとした本番などで
誰かに着せてもらうことが多く、
普段使っているタオルを人様にお見せするのが
とても恥ずかしかったので(笑)、
補整用のタオルを持つに至りました。

ご参考までに!


日本舞踊*振りの意味を理解する瞬間


最近、日舞以外のものを見て
「あの振りってそういう意味だったのか!」
と思う瞬間がよくあります。

たとえば、傘を差す振り

雨が降ったときの差し方ではなく、
体の前で傘を広げ、
体の後ろに回して差すのですが、
これがどういう状況なのか
いまいち理解していなかったのです。

そんな中、先日見た「助六」の、
傾城・揚巻が登場する花魁道中にて、

揚巻の後ろにいたんですよ。

傘を前で広げ、後ろに回して差す男性が!!

あれは花魁道中の、花魁に傘を差しかける振りだったんですね!
「助六」で初めてピンと来ました。

それから、NHKEテレの「にっぽんの芸能」にて
能を初めてちゃんと見てみたとき。

踊りに時々出てくる、足をぱたん、と踏む動き(「踏む」というのか…踵を支点に足をぱたんとするもの、何と言うのでしょう…)
能にどのように出てくるのか
初めて意識して見られたんです。

どんな場面で出てくるのか、
どういう流れで出てくるのか…
ほんの1時間、3演目をかいつまんでしか見ていないのですが、
「ほう、これか!」と思いました。

***

知識として勉強して頭に入れるのではなく、
こうやって偶然出会って気付く瞬間が、
私にとって大きな喜びです。

覚えようとして覚えたことよりも、
出会いにインパクトがある分
頭に残るような気がしています。

「自分で気付けた」というのも
一つ成長した気がしてなんだか嬉しい。笑

そして、

こういうものを分かっておくと、
踊りが全然違うと思うのです。

知識を付けることの大切さは
市川猿之助さんが『舞うひと』で述べていらしたところ。

積極的にいろんなものを見て、
納得できる知識との出会いのチャンスを
どんどん増やしていけたらと思います!


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プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇5年目。このご時世でなかなか劇場に通えず悶々とする日々。
◆着物好きの友人と踊りの師匠のおかげで、気軽に着物を着られるようになってきた今日この頃。

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