お久しぶりです、と書き始めるのももどかしいくらいとにかく素晴らしかったので、大変失礼ながらもう一切合切抜きにして語り始めますね。
本当に本当に、配信でこんなに心打たれるものが、しかも新作が、今この時期に観られるとは思わなかった。
あの熱さ、美しさ、、
泣けて泣けて仕方ありませんでした。
ART歌舞伎 公式サイト
↑ここから、7月19日(日)18時までアーカイブのチケットが買えます。
7月19日(日)23時まで観られます!!
少しでも興味があるなら、どうかぜひ観てほしいです。
あらゆる文化芸能が行き詰まって、心が疲れてしまっている今こそ、ぜひ観てほしい!!
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ART歌舞伎とは何ぞや、という説明はもう公式サイトを見てください(丸投げ)
早くしないと自分のこの気持ちがどこかに逃げてしまうので、まずは語らせてください。一曲ごとに!!!
1.四神降臨
曲も踊りも文句なくかっこいい一曲で幕開け。
どの瞬間も観ていて気持ちがよくて、やっぱり踊りが大好きだ!!!と心から思った作品です。
そういう新作の踊りが観られる幸せと言ったら!(楽しみにしていた日本舞踊の公演がことごとく延期になってしまっていたので。。)
四神それぞれの一人踊りがあるのですが、それぞれ箏(中井智弥さん)、笛(藤舎推峰さん)、津軽三味線(浅野祥さん)、太鼓(山部泰嗣さん)の楽器に合わせて踊るのです。
これがすごくて。
それぞれの楽器の間、踊りの間ってあると思うのですが、楽器と踊りとの融合が見事で、「うわ、その音でそうやって動くのか!」というのが面白くてかっこよくて。
踊りはやっぱり楽しい。かっこいい。どこまでも可能性がある。
収録日は雨だったのですが(※屋外の能舞台での撮影です)、この作品において雨は「生憎のお天気」ではないんです。
偶然拾われた雨音の、何とふさわしいことか。
映り込む雨すら、まるで演出であるかのような美しさです。
夜の能舞台、というところがまた儀式のような雰囲気を高めていて、とにかく曲・踊りに加えてシチュエーションまで完璧に噛み合っていました。
シチュエーション、と書きましたが、でもやっぱりこれは劇場で生で観たら、また全く違った良さがあるんだろうな。
客席も一緒に熱くなるんだろうな。うわぁっと拍手が起こるんだろうな。
映像を観ながら、ちょっとそんな劇場の空気を勝手に感じていました。
2.五穀豊穣
浅野祥さんによる民謡と三味線、山部泰嗣さんの太鼓で奏でられる音楽。
これはぜひ生で聴く機会がほしい。生で聴いたら、音圧にやられること間違いなしです。
配信で観るときは、イヤホンもしくはヘッドホン推奨。
私はヘッドホンで、結構な音量で聴きました。打楽器好きの血が騒ぐ。
地を轟かすような太鼓。
これまでの鬱屈した日々を切り拓くような三味線。
これなら、この音楽があるなら、ちゃんとまたいろんなものが蘇るはずだと思えるような力強さとエネルギー。
めちゃくちゃかっこいいです。もう言葉はいらぬ。
3.祈望祭事
これは途中から三番叟の節で、お扇子(これも作品に合わせた装飾に驚く)と鈴で踊るのですが、ここから先のエネルギーがすさまじい。
今しか出すことのできない熱量にガツンとやられてしまうんです。
いつもとは違った楽器編成で奏でられる三番叟、どんどん早くなっていって、踊りもどんどん激しくなっていって。
これまで何ヶ月もずっと堪えてきた想い、今こうして舞台を創り上げることができる歓び、そういういろんな感情が一気に爆発したような時間。
その力に触れたのが、私は何だか嬉しくてたまらなくて、泣けるドラマがあるような演目ではないのに、涙が止まりませんでした。
ただもう、ありがとう、という気持ち。
多分、この踊りでこんなに泣けてしまうのは、今だからなんだろうな、と思います。
この踊りにあれほどまでのエネルギーが溢れているのも。
もちろん作品としてとても好きなのですが、これを今観ることができたことに、とても大きな意味があると思うのです。
4.花のこゝろ
見事。の一言に尽きます。(と言ってがちゃがちゃ語りますが)
一本の良質な映画を観たような充足感と余韻。映画と比べるべきか悩むけれど。。
陰翳や、思わぬところのアップなど、映像でなければ叶わないような繊細な表現に何度も感嘆しました。
写真だけ見ると奇抜な拵えかもしれませんが、全く負けていない、違和感がない、むしろこれでなければ成り立たなかったような気にすらさせる世界観。
中村壱太郎さんと尾上右近さんが踊りで紡いでいく世界はどこまでも濃やかで、切なくて、表情一つとっても一瞬たりとも見逃せない。
そしてクライマックスの花柳源九郎さんと藤間涼太朗さんお二人の踊り、たまらなく心揺さぶるのです。
お二人の手許だけがアップになる場面があるのですが、私はここで涙腺崩壊でした。これネタバレになるんですかね、言わない方がいいんですかね。。
でもこれだけは言いたい、手許だけでこんなに胸打たれるのは、映像だったからなんです。
舞台では、ここまで手許がクローズアップされることはほぼないと思う。
一連の物語を観てきて、一番感情が盛り上がってきた場面で踊るお二人の、あの指先に込められたものを思うと切なくて。。
あと、この「花のこゝろ」、特筆すべきは音楽なんです。
兎にも角にも曲がいい。
二十五絃箏の中井智弥さんの楽曲が使われているのですが、彩り豊かで目が覚めるようで、もうこの演目にはこれ以外にない、というドラマティックさ。
演奏も熱くて、舞台にいるすべての演者さんの熱量がぎゅっと凝り集まってぶわっと広がるような、映像であるにも関わらずその熱がこちらにも直に届いてくるような舞台でした。
演者さんだけでなく、関わっているすべての方々の思う方向性、傾ける気持ちの量が、がっちり合っていらしたに違いない。
アートを、芸術を、芸能を、絶対にここで途絶えさせてはならないんだと、観終わったあとに強く思いました。
あぁだめだ、言葉が足りない。。どうしたら伝わるんだろう。。
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正直、観るかどうかぎりぎりまで迷ったんです。
チケット買ったの、配信1時間前ですからね(割と本気のぎりぎり)
というのも、配信公演というものが私はどうしても苦手で。
チケットを買うのも、映像を観るのも、デジタルが苦手な自分にとっては何だか億劫な気がしてしまって…その上、舞台の臨場感にはやっぱりどうしても敵わないし。
と迷いに迷いつつ、でも壱太郎さんと右近さんだよな…きっと間違いないよな…えいやっ!とチケットを買った結果、
観終わった翌日の今日も一日余韻に浸っています。
あまり良くないことと思いつつ、見逃し配信でぎりぎりまで観させていただいて、またぼろぼろ泣いて。
あー、歌舞伎が好きでよかった。
踊りが好きでよかった。
思い切ってチケットを買ってよかった。
ART歌舞伎に出会えて、本当に本当によかった。
見た目でちょっと引いてしまった方、観終わったら絶対「このアートワーク以外にない」と思っているはずです。
「新作より古典の方が好き」という方、私もそうですよ。
配信に抵抗がある方、この作品は映像で観るからこその良さがいたるところに詰まっています。
もちろん生の舞台が大好き。
でも、この作品に関しては、映像として残していってほしいと心から思います。
このブログを随分止めてしまって、この先どうしようと思っていたところで出会ったART歌舞伎。
どうしても書いておきたかったんです。そういう作品だったんです。
もう一度リンクを貼らせてください。
ART歌舞伎の公式サイト
今、この時節にこの作品を作って届けてくださったことに、心から感謝しています。