ほんのり*和もの好き

歌舞伎や文楽、日本舞踊、着物のことなど、肩肘張らない「和もの」の楽しみを、初心者の視点で語ります。

お稽古

【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる⑤老松

大変長らくご無沙汰しております。わこです。
過ごしにくい日々が続いていますが、お元気でお過ごしでしょうか?

私は諸々ありまして、またもや生活が激変し、情勢も相俟ってなかなかお芝居に行けず、お稽古の回数も減ってしまいましたが、相変わらず踊り大好き・着物大好き・お芝居大好きで過ごしております。

最近は近所にいいリサイクル着物のお店を見つけ、物欲と必死で闘ったりなどしておりました。来週行ってまだ売れ残ってたらあの着物買う、、(敗北)

さて、お芝居や公演に行く機会が減ってしまったこともあり、なかなか更新できていませんでしたが、お盆休みになったのでちょいと更新してみます。

日本舞踊を始めてから今までに習った曲を、習った順に振り返ってみる企画の第5回です。

これまでのシリーズはこちら 

※ひとつお断りしておくと、流派によって、どころでなく同じ流派でも先生によって、振付は全く異なります。あくまで、私が習った振りでのお話です。
 
***

2年目の春先から秋まで踊っていた気がする『老松』。
 
長い曲のほんの一部を教えていただいたのですが、お扇子を二枚使うというだいぶ高難度の曲でした。

右手ですらままならないのに左手でも持つの?
そんで要返しやるの?!
えっしかも投げるの?!という、、
(※要返し(かなめがえし)・・・お扇子をくるんと回転させる技(?)。基本ですがなかなか難しく、先輩にコツを教わりながら家でもよく練習していました。)

片方のお扇子を投げて、一回転させながらもう片方の上をまたがせてキャッチする、という振りがあったのですが、
ここを初めて習ったときに、一緒に踊る同期全員でお扇子を落とすというお約束をやったのがよい思い出です。

両手を上げて二枚のお扇子を松に見立てて持ち、体を反らせるという振りのところで、同期が急に色気を放ち始めてすごく悔しかったのも印象深い。
あの肩のライン、、どこで身につけたんでしょう。いまだに悔しい。笑

松の太夫の裲襠(うちかけ)は〜」で始まる曲後半は、曲調もがらりと変わり、廓の情景を踊る場面になります。
ここからをいかに全身で踊るかというところに全力を注いでいた記憶があります。

外八文字という遊女の歩き方があるのですが、その振りのところでいかに美しく体を捻るか。
男の胸をとって「行かないで!」とやる振りを、いかにかわいらしくやるか。

とはいえ高が知れているのですが。笑

でもそうやって「美しく見せたい!」と思うくらいには、もう踊りが楽しくて好きでたまらなくなっていたんですよね。

***

実は2年目に入るタイミングで、いろいろあって先生が変わりました。
この曲を踊った本番には、一番最初に教えていただいていた先生が観にきてくださったのですが、
踊り終わった私に「すっかりお姉さんになって〜!」と声をかけてくださったのが嬉しくて嬉しくて忘れられません。

少しお姉さんらしく踊れるようになったかしら。
2年目になっても踊りが大好きで、頑張っているのが伝わっているといいな。

その後、この先生とは長いことお会いできていないのですが、
このときの気持ちのまま、まだ踊りを続けています。

 

【日本舞踊】この3つを押さえれば上手く見えるのでは説


日本舞踊がとにかく好きで、お稽古場に居座っていることが多いのですが、年次やら曲やら様々なお稽古を見ているうちに、

もしかしてこれさえ押さえればある程度上手く見えるのではないか?

というポイントを見つけました!

いや、気付くの遅いのですが。
そしてあくまで私個人の見解なのですが。

でも、この3点に気を付けると、それまでよりちょっとばかり整って見えるのは間違いないはず…!
初心者の小さな発見を、思い切って記事にしてみたいと思います!!


【1】親指


まず一つ目は指先です。

これはサークル時代にも先輩にアドバイスいただいたのですが、指先がスッと揃っていると、それだけでだいぶ踊りが締まって見えます

これは実践してみて、あるいは同期の踊りを見ていて、私自身とても納得したポイントでした。

で、さらに。

親指が手にくっついているか離れているかで、また全然違うのです。

日本舞踊は、手先で表現することがあまり多くありません。
平たく伸ばすことが多い印象です。

それだけに、手先の美しさがものを言う気がします。

親指は第一関節を曲げて、平たくなるように手にくっつける。
これだけで、かなりきっちりした感じが出るかと思います。

ただ、役によっても手の使い方は違うので、上に述べたのはあくまで基本的な形の話です。

たとえば男の踊りで勢いや力を出すときなんかは、手を広げていたりもするので、ちょっと変わってくるかと思います。
あとは動物の踊りも全然違いますね。笑 


【2】内股


これも女の踊りに限った話ではありますが…手前に見えている足がきちんと内股になっているかどうかは、ものすごく大きい!

あえて「前の足」と書かずに「見えている足」という書き方をしたのは、たとえば後ろを向いているときの後ろ足(=お客さんから見えている方)にも言えると思うからです。
自分の踊っている映像を見ると、後ろ足がうっかり外に向いていたりして、後向きで止まったときに非常に形が悪くてとても目に付くのです。

踊りの一瞬一瞬で、すぐに足を正しく内股に持っていけるかどうか
きまったときに、きちんと前の足が内側を向いているか

特に前者は、些細なようでいてめちゃくちゃ大きいのではないかと最近感じております。

「一瞬」というところが重要な気がする。
どうしても向きを変えるときに外向きになってしまう瞬間はあると思うのですが、その時間を極力短くしようというのは意識してみています。

【3】体の角度


これも最近やっと身をもって気付いたこと。ですが、すでに読んでいた坂東三津五郎さんの本にちゃんと書いてありました↓

「踊りはじめて十年もやっているのに、正面で決まることができないお弟子さんが意外に多いのです。/足を引いてもおへそが舞台の縁と平行に、まっすぐ向いている。それは日本舞踊の所作にはない形なのです。」(『坂東三津五郎 踊りの愉しみ』(岩波現代文庫、2015年) p. 13)

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関連記事 ▶︎ 坂東三津五郎さんが踊りを語る本『坂東三津五郎 踊りの愉しみ』

文で読むのと、実際に見たり動いたりするのとでは、やっぱり違いますね。百聞は一見にしかずというのはこのことか。。

たとえ同じ形でも、正しい角度で止まっているか否かで、見え方が全然違います
きまるときに真正面を向くことはほとんどなくて、どうやら斜め45度くらいの方向できまるのが良さそうです。


***

以上、これさえ押さえればちょっとばかり整って見えるのではポイントでした。

引き続き一生懸命お稽古を見て、お稽古していただいて、より素敵に踊れるように精進いたします!



【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる④春雨

日本舞踊を始めてから今までに習った曲を、習った順に振り返ってみる企画の第4回です。

これまでのシリーズはこちら 

※ひとつお断りしておくと、流派によって、どころでなく同じ流派でも先生によって、振付は全く異なります。あくまで、私が習った振りでのお話です。
 
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1年目の冬から春にかけて教えていただいた曲。
こうやって振り返ると、そのときのレベルだけでなく、やはり先生は季節も意識して曲を選んでくださっていたんだな、と思います。


そして!これは!急に難しくなったんですよ!!
だから楽しかった!!!笑

振りがこれまでの曲よりも細かく増えて、当然知らない動きもたくさん出てきて。
お扇子を投げたり、早い間ですべったり。順番がごちゃごちゃになりそうな似た動きが何度も出てきたり。 

一番苦戦したのは、手を正面で一つ叩いてから「膝・膝・膝・胸・胸」と左右交互の手で打って、最後に手を正面に伸ばしてとんとんと二つ踏むところ。(伝わらない説明その1)
これは割と定番の動きで、いろんな曲にいろんな速さで出てくるのですが、初めてだとやっぱり大混乱です。

先生に「器械体操じゃないのよ~」と言われつつ。笑

初めての動きの何が難しいかというと、何をやらされているのかさっぱり分からないところなんですよね。
先生の動きを見ても、自分が何を目指してどうすればいいのか頭の中でつながらないのです。
機械音が聞こえてきそうなほどぎこちない動きをしていたのでした。笑

でもこの頃、おこがましくも自分の中に「もうちょっとしっとり踊ってみたいなぁ」というのが芽生えてきたんですよね。

というのも、この曲がとても好きだったんです。
鶯の声で始まる曲なのですが、最初はしっとりとした曲調、途中からお三味線が少し調子よくなって、何というか、大人の余裕が感じられる曲だったんですね。(伝わらない説明その2) 

とにかくまずは振りを覚えるのに今まで以上に必死で、先輩を掴まえて一緒に踊っていただいたり、どうしても分からないところを何度も教えていただいたりしながら何とか最後まで。
その一方で、自分なりに首の振り方を変えてみたり、滑り方を変えてみたり、いろいろと工夫をしてみたのでした。

***

苦労した分、この曲が上がったあとは今までよりも少しだけ自信がついた気がします。
多分、「できることが増えた」という実感があったのではないかな、と。

自信がついた分、それまで以上に積極的になった気がします。
もっとできる、もっとやってみたい、という気持ちがぐんぐん出てくるんですね。

そうです。
その気になりやすいタイプなんです。笑

今でもそういう気持ちは変わりません。
一曲上がるたびに、「次はもっとできることが増えるかもしれない」と思います。
同じくらいの大きさで「覚えられなかったらどうしよう…」という不安もあるのですが。笑


2年目からは、だんだんと長い曲が増えてきます。 
諸般の事情でここには書かない曲もありますが、気長にお付き合いいただけますと幸いです。

 

【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる③紅葉の橋


日本舞踊を始めてから今までに習った曲を、習った順に振り返ってみる企画の第3回です。

第1回はこちら▶︎ 【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる①初稽古〜京の四季

***

3曲目は「紅葉の橋」。

多分、踊ったのは紅葉の季節だったんでしょうね。
季節に合わせた曲のセレクトができるのも、日本舞踊の楽しいところです。

今までの2曲よりも少しテンポが早く、明るい印象の曲です。
先生が私の踊り口を見て、「あなたはこういう曲が合うと思う」と選んでくださった曲でした。 

たった2曲しか踊っていないのに、個性がもう出てくるんですね。
それを活かして曲を選んでくださる先生の、引き出しの多さに今更ながら驚き、尊敬の念を新たにするのです。 

***

この曲、自分の中では「やっとん祭り」でした。笑

やっとん、というのは何かというと、踏むリズムとでも言えば良いのでしょうかね、

やっとん、やっとん、やっとんとん

というリズムが、日本舞踊には非常によく出てくるのです。
「やっ」のところは溜めて、「とん」で踏みます。
溜めて、と書きましたが、ここでお扇子を打ったり、手を打ったり、膝を打ったりしてリズムを取ることが多いです。
 
確か「梅にも春」にも出てきたと思うのですが、「紅葉の橋」には特にたくさん出てきました。

これ、できるようになると何だか楽しいんです!
自分でリズムが取れている、音に乗って踊れている、という気持ちよさ
何せ音が聞き取れないところからのスタートだったので。笑

踏むところ、お扇子を打つところ、とにかく音に合わせて踊る楽しさを実感した一曲です。

***

歌詞はこんな感じ↓

紅葉の橋の たもとから
袖を垣根の 言伝に
ちょっと耳をば かささぎの
霜もいつしか 白々と
積もるほどなほ 深くなる
雪をめぐらす 舞の手や
ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤサ


縁語、掛詞が多用されているのがお分かりいただけると思います!

橋の袂と、袖の袂。
「袖を垣根の」は「袖をかき合わせる」からの流れでしょうか。
「耳をばかささぎの」は「耳を貸す」からの「かささぎの」ですね。

そんな歌詞の楽しみ。
そうです。
この頃には歌詞が聞き取れるようになっているんです! 

少しずつではありますが、やっと邦楽に耳が慣れてきた。
音が聞き取れるということは、覚えやすさにも、踊る楽しさにも繋がってくると思います。


かささぎって何で出てくるんだろう、と思って調べてみたら、
七夕にはかささぎが、天の川に橋を渡すという伝説があるようで。

さらに言えば、紅葉の橋も「古今和歌集」(秋上)に有名な歌があったんですね。

天の川 紅葉を橋に わたせばや 七夕つめの 秋をしも待つ (よみ人知らず)

そしてやはりこちらも七夕の歌です。
こういうちょっとした知識が、歌詞を通して増えていくのもまた嬉しい。

七夕の季節感で始まった歌ですが、季節が移ろい、冬で終わります。
これも3分くらいの短い曲ですが、風情があるなぁと思いました。

***

振りは、さっきの「やっとん」に加え、
かささぎの橋のところで波を表現する振りがついていたり、
雪が積もるところで手を重ねていくような振りがついていたり、
いろんな方法で歌詞を表現できるんだな、というのが改めて感じられた曲でした。

あとね、細かい話なのですが、
この曲、初めて「奥から走って出てくる」振りだったんです。

今まではどうかというと、
例えばお辞儀をしたところから始まったり、後ろを向いているところから始まったりと、
すでにその場にいるところから踊り始めるパターンでした(幕が開いたときに舞台にいることを「板付(いたつき)」といいます)

曲が始まってから出ていく、という踊りは初めてだったんです。

たかだかこれだけでも、ちょっと進歩した気分になれるというか(別に関係ないとは思うのですが笑)、
また新鮮な気持ちで踊ることができます。

こういう少しずつの変化や、新しいこととの出会いが、どんどん私を日本舞踊にはまらせていったわけです。笑



【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる②梅にも春


日本舞踊を始めてから習った曲を、習った順に振り返ってみる企画の第2回です。

第1回はこちら▶︎ 【日本舞踊】習った曲を振り返ってみる①初稽古〜京の四季

始めてから確か2ヶ月くらい。
2曲目に教えていただいたのは、「梅にも春」という、こちらも3分ほどの曲です。

「京の四季」もそうだったのですが、この曲も畳1枚の中で踊れます。
基本的には踊り始めた位置で踊り終わる日本舞踊。
今思い返せば、元の位置から大きく動かない踊りから始めることで、その基本を知らず知らずのうちに教えていただいていたのではないかな、と思います。

※ひとつお断りしておくと、流派によって、どころでなく同じ流派でも先生によって、振付は全く異なります。あくまで、私が習った振りでのお話です。
 
***

これもいろんな風物が出てきて、お扇子も大活躍で、ますます日本舞踊がおもしろくなった一曲でした。


たとえば裾をちょっと押さえて、袂を帯に挟んで、井戸の水を汲む振り。

生活の中で着物を汚さないように、あるいは動きやすいようにするにはこうやっていたんだ、というのが分かる振りですよね。
ちょっとしたこの仕草がまた、なんだかしっとりお上品に感じられたりするのです。

井戸だって触ったことがあるのは人生に2回ほど。
実際に井戸が見えるように踊るのは、まだ2曲目では難しかった
でも、そう見せようと工夫するのがまたおもしろい!


それから、煙管に草を詰めて、火をつけて吸ったり、笠をかぶったり、駕籠に揺られたり…
浮世絵で見るような光景は、こんな風に動いていたのかな、と。

今まで知らなかった昔の暮らしの一片が、踊りを通して立ち上がってくるのです。

***

踊りの面で言えば、この曲を始める少し前に初めて舞踊の公演を観に行き、「自分がやっているのはこういうことなのか!」というのがほんの少しだけ見えたのは大きかったと思います。

「首を振る」って、「おすべり」って、「踏む」ってこういうことか、と。

そんなわけで、この曲あたりから首を意識的に動かすようになりました。
まだちゃんと触れるレベルではなく、あとから映像を見直すとただひたすらにぐにゃんぐにゃんです。
いいんです。ここからです。笑

▶︎【日本舞踊】首振り三年?
 
***

「踊りって楽しい!」と思い始めたのは、この曲からだったと思います。
もちろん1曲目も楽しかったに違いないのですが、まだまだ頭の中が未分化で、自分が何をしているのかが掴みきれていなかった。
それを、「踊り」として認識して踊れるようになったのはここからだった気がします。

教えていただいた曲はどれもこれも大好きだし思い入れがありますが、その意味において「梅にも春」は、とても大切で思い出深い曲です。


プロフィール

わこ

◆首都圏在住╱平成生まれOL。
◆大学で日本舞踊に出会う
→社会に出てから歌舞伎と文楽にはまる
→観劇5年目。このご時世でなかなか劇場に通えず悶々とする日々。
◆着物好きの友人と踊りの師匠のおかげで、気軽に着物を着られるようになってきた今日この頃。

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